Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

眠たい。

2012/05/30 19:44:46
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 閉じているはずの視界は赤い光に染まり、耳は喧騒に包まれる。あまりに眩しくて目を開けると、赤い光の正体は暖かい朝の日差し。喧騒は小鳥たちのさえずりだった。

 部屋へと光が降り注ぐ窓ガラスになんとなく目をやってしまうと存外に眩しくて、つい舌打ちを一つ。日差しを受けた私は体を起こすのが面倒になって、半分近く起きかけていたそれをぱたりと横たえてしまう。

 ベッドの上で寝たままに首を回して掛け時計を眺めると、普段起きる時間には少し早い。このまま起きてすべきこと……作曲や練習に家事など。それらを早めにこなしてもいいのだけれど、今日は(真面目な私にしては非常に珍しいことに、と言い訳をしておく)そういった事を投げ出して寝てしまいたい気分。いつもの真面目な自分が不真面目だと責めないでもないが、そんなことより眠い。

 とにかく眠いのだ。



 気持ちのいい朝、なんて良く言われるけれどそんなものは所詮たっぷりと満足の行くまで睡眠した者の言葉だと思う。睡魔との死闘を演じる私にとっては差し込む光もその暖かさも、普段なら気にならない、むしろ美しいとさえ感じる鳥のさえずりさえもがやかましいだけ。要するに、朝、というものを構成する要素すべてがただただ不快なのだ。

 こうまで眠いのはきっと前日夜遅くまでライブを行なっていたのが悪いに違いない。……もともとその疲労も見越して今日は一日休みにしているのだ、午前中くらいは眠気に誘われるままに寝てしまおう。ほら、そこの相棒――かの有名なヴァイオリンの名を冠すと称したヴァイオリンの霊。一度口上に使った名前は果たして何だったか――も疲れてるし。彼、あるいは彼女も一緒に寝ようって言ってる、きっと。
 そんな弁解を自分にしつつ、相棒の霊を手招くとふよふよと浮いて私の横にまで来た。片手を上げて掛け布団を少し持ち上げると相棒は私の腕の中へとしゅるりと入り込んで、私はそのまま布団をかぶり直しつつ相棒をぎゅーっと抱きしめる。

 本当の楽器なら抱きしめながら寝るなんてしたら当然壊れたりしてしまうけれど、この子は霊だから大丈夫だろう。それに今は何かを抱きしめて寝たい気分なのだ。けれど枕を抱きしめてしまうと頭が落ち着かない。布団を抱きしめたら掛けるものがなくなって寒い。ほら、君しかいないでしょう? ちょっと抱きしめるには難しい形だけど、そこは長年使い慣れた楽器、抱きしめるにもちょうどいいのだ、多分。



 布団の中は程良い暖かさで、油断するとお昼時まで寝てしまいそう。それもいいかなと思わないこともないのだけれど、昨日は一日出払っていたからやることもそれなりに残っている。
 
 そうだな、さっき思った通り午前中くらいは寝ていてもいいけれど、午後まで寝てしまうときっとやるべきことが追いつかない。洗濯だってしていないし、部屋の掃除もそろそろしておきたかった。なにせ被っている布団をどかして床を眺めたら目を覆いたくなるほどに汚れているはずなのだ。書き損じたり気に入らなくて丸めて投げた楽譜がそこらに散らかっている。

 他にも今履いていない靴下は寝ている間に脱いで放ってしまっているはずだし、寝る前にはパジャマに着替える前に着ていたキュレットその他を散らかしている。
 
 端的に言って、いや、言いたくはないがダメ人間の部屋。

 私は騒霊であって人間ではないけれど、他者に見られたらきっとそう言われることだろう。そもそも着ていたもの――当然下着も――それらが散らかっているから他人になんて絶対見られたくない、恥ずかしいし。妹達にも当然見せたくないんだけど、普段から早起きな私が起きてこないとなると午後には確実に部屋に入ってくるだろう。
 それは避けたい。普段二人に散々部屋を片付けろと言っているだけにここぞとばかりに嫌味をいわれるに違いない。

 とりあえず起きたら部屋の片付けだ、そうしよう。ああでも眠いな。時間は布団で見えないけれど、もうちょっと寝ててもきっと平気。



 起きたら他には何をしないとだろう。……そうだな、とりあえずお風呂には入りたい。昨日の夜は帰ってきてパジャマに着替えるとすぐ寝てしまったから、恥ずかしいことに体も汚れている。服はともかく体なんて騒霊の身では大して汚れないのだが、気になるものは気になるのだ。一応年頃の女の子でもあるわけだし。最も、そういった恥ずかしさよりも眠気のほうが今は勝る。

 そういえばお腹も減った、結局お夕飯もあんまり食べなかったっけ。ご飯とお昼はどっちを先に……間違えた。ごはんとお風呂だ。眠くて欲望に忠実になりつつあるらしい。

 食欲を優先してお風呂より先にまずは食事を先に摂ろう。もしかしたらメルランが気を利かせてご飯を用意してくれてるかもしれないし、お風呂はきっとリリカが用意してるだろう。メルランは食いしん坊でリリカは綺麗好き。やっていてくれるならこの分担のはず。
 なんと素晴らしい妹達だ、私が居なくてもきちんとそういうところはしっかりしてくれている……もちろん、起きてみたらそうじゃない可能性も大きい、むしろきっとやっていないのだけれど、この際目をつぶろう。



 お布団にいる間くらいは都合のいい夢を見てもいいと思うのだ。



 ご飯を食べて、お風呂に入ったら部屋の洗濯物を出して、それから洗濯。技術屋の河童から買った機械のお陰でだいぶ楽になった。洗濯機という名前だったっけ。洗濯をやってくれる機械、わかりやすくていいと思う。
 なにせ手洗いでやっていたのを別の作業をやりながらにして勝手にやってくれるのだ。メイドをひとり雇っているようなもので、しかも給料を払わなくていいときている。最も洗うところまでしかやってくれなくて、干すのは自分でやらなくてはならないのだけれど。 それでも洗濯の時間が一つの悩みだった私にとっては革新的な技術だった。あの河童には感謝しなくては。意外とリーズナブルな金額だったし、他の機械を買ってみるのも悪くないかもしれないな。



 洗濯の次は何をしよう、そもそも洗濯の前って何するんだったっけ、ご飯食べてお風呂で洗濯で……ああ、そうだ、洗濯物をかたす以外にも部屋の掃除をしておかないと。

 書き散らかした楽譜を拾い集めてゴミ箱に。そのあとは掃き掃除。埃も結構溜まってきてる頃だろう。

 本もそろそろ整理しないといけないかもしれない。私としては本も部屋もちょっと散らかってるくらいが落ち着くのだけれど、綺麗にしないと妹に示しがつかない。でも、この部屋を訪ねる人なんてほとんど居ないのにそのせいで片付けないといけないのは馬鹿馬鹿しくもある。

 いっそ汚れたままにしておこうか。妹たちには他にも示せるところはあるし、部屋くらいは。でも部屋の乱れは心の乱れって言うし、きっちり片さないとかな。ほら、基本的に私ってマジメだし。

 本当は結構抜けてるところもあるし怠けたいところもあるのだけれど、妹たちの手前かっこつけたいなぁ、なんて思うのだ。

 頑張らなくては。



 きちんと部屋を綺麗にしたらどうしよう。

 ご飯を早く食べてすぐにまた寝てしまおうか。今も眠いのだ、きっと早い時間に眠くなるだろうし。

 さっさと寝て、また明日頑張るのもいいかもしれない。そうだ、そうする。明日から本気出す。今日は掃除と洗濯だけしよう。

 明後日の予定は……ああ、演奏が1つあるな。今日のうちに練習しないといけない気はするけど、一曲だけだし慣れた曲だし夕方からだし、練習は午前中にやればいいだろう。となると明日もほぼ一日開く。なんだ、結構だらけていても平気じゃないか。

 どんどん堕落してる気がする。ああ、でも実際はきっと眠くても練習するだろうし、楽譜を書くだろうし、他にも家事から何から、するべきことはきちんとするのだろうな。

 となると、夢を見てる間くらいならだらけていても許されると思いたい。想像の中でさえ働かなくてもいいでしょう?



 ああ、眠たい。そろそろ起きよう。起きたら真面目な私に。
朝ってあんまり起きたくないですよね。
ミスト
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
だるナサという新ジャンル…
2.奇声を発する程度の能力削除
怠惰な感じが良いですね
3.名前が無い程度の能力削除
ああんすげぇわかる
4.名前が無い程度の能力削除
朝起きなくちゃと思っていてもやっぱり寝ていたいと思っちゃうんですよねぇ・・・