Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

2012/05/17 02:21:43
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※タグのとおりの内容です



春である。気温はあったかぽかぽかで蝶は舞い、花は咲き乱れ、鳥は歌う。

縁側で少女が寝そべっている。
薄い掛け布団を体にぐるんと巻き付け、下に敷いた部分は縁板の筋が体につくのを防ぎ、上に被っている部分は保温を図っている。
枕なんて洒落たものはなく取り込んだタオルを積んでそれを枕代わりに使っていた。ふあぁっと大きく伸びをしたかと思うと布団から出た手足をしまう。
その目蓋の奥では幸せな夢でも見ているのだろうか。春の日差しは残酷で常に手招きをしてくる。おまけにいくら寝ても寝足りない。
ちょっと家事の手を止めて日なたぼっこと自分を甘やかした時点で即ち負けなのだ。この少女も春にやられたらしい。
カゴの中、中途半端に残った洗濯物は早く干してくれとジメジメしているし、いくらか干された洗濯物は微弱な風に乗って泳ぎつつ日光浴をしている。
寝ている少女―村紗水蜜という名だ―は心底安らかな表情で眠っていた。

そこに悪戯妖怪がやってきた。待てど暮らせど戻ってこない村紗の元に追加の洗濯物を持ってやってきたのだ。
両手が洗濯カゴで塞がっているから行儀悪く足で障子を開ける。この前の定期手入れで敷居にロウをたっぷり塗りつけてあるので良く滑って簡単に開いた。
一歩足を踏み出すと、目当ての彼女が足元で蹲り眠っているところが目に入る。
ぬゅふふなんてお決まりの笑い声を漏らしニヤリ目を細めて意地悪く笑う。耳には心地よい寝息が聞こえてくる。
さて、水をかぶせてやろうか、鼻をつまんでやろうか、枕代わりのタオルを引っこ抜いてやろうか。
通り道にいるのだから踏んづけてやろうか、干した洗濯物を落っことしてやろうか。
でもどうせなら驚くことをしてやりたい。目が覚めて最も驚くこととは何だ?
悪戯妖怪―封獣ぬえという―は考えた。追加で持ってきている洗濯物は水を吸っていて重い。

「水蜜ーぅ」
「………。」
「みなみつ、ねむい?」
「…すぅ。」

ひときわ大きく息を吸い込んで吐き出して、可愛らしい寝息と共に肩が上下する。
村紗は生きているのだと安心すると同時に、あまりに可愛すぎて起こすのも気が引ける。
春の陽気は憎たらしいくらいに微笑んで悪巧みをする気持ちを殺いでいくし、おまけに惚れた弱みがあるというもの。
こんなに可愛い寝顔を消してしまうのは勿体無い。なので、悪い悪戯で驚かせるのはやめた。どうせなら良いことをしておこう。
そう心に決めて村紗のやり残した洗濯物に手をつけた。近頃の命蓮寺は大所帯である。
一日に何度も洗濯機を回さなくてはいけないし、乾きが悪い曇りや雨の日は一輪の機嫌が悪い。

シーツなど大判のものを奥の方に干していき、次に服などを。一番手前にはプライベートな下着類を。
大小様々なパンティやブラジャーなどが並ぶ様は圧巻であった。星のブラの隣にナズーリンのブラを干すとすっぽり嵌るようなサイズ差。
そんなナズーリンのパンティは必要最低限の布地しかないかなり攻めたデザインだし、マミゾウのブラは下手したら自分の頭が包まるんじゃないかと恐れるほど。
一輪のパンティは「雲」居の名に恥じぬような絶妙なスケスケ具合で本人とのギャップに驚く。
響子のブラは体格に見合ったそこそこのサイズだが、成長段階らしくすぐに小さくなると困っていた。
聖に至っては合うブラがないと聞く。だから外側から黒紐でサポートをしているとか……大胸筋サポーターにも程がある。
ぬえは自分の胸を見たあとに少しだけ悔しくなってぶんぶん。かぶりを振った。ものすごーく大きく振った。
悲しみを振り払った後、枚数を確認して何とかなりそうだったから村紗のパンティを一枚くすねておいた。

「よぉーし、出来たわよ!」

やり遂げた達成感に包まれてぬえは腰に手を当て庭を見渡した。風に洗濯物が泳ぐ、そよぐ、はためく。洗濯物たちにぐるっと囲まれて清々しい気分になる。
せっけんのにおいと日に反射する白さとで浄化された心持ちがして、たまにはこういう日もいいかもしれないと思う。
だから今日は悪戯するのはやめておこうと心に決めた。
悪戯をやめて守った寝顔が見たくなって腰を屈めた。寝息がより近くで聞こえ、もっと聞きたくなって村紗と同じように寝そべった。
肘を縁板について間近で見つめる。すやすやと、それはもう気持ちよさそうに眠っていた。こんなに日が高い内から寝るだなんて良いご身分だ。
他のみんなはもちろん仕事をしている。仮に居眠りをしている者がいるとしても、こんなに堂々と眠りこけているのは村紗くらいのものだろう。
だが、ぬえには惚れた弱みとは別の起こす事が憚られる事象があった。

「みなみつ……」

昨夜、たくさん村紗を愛した。眠いと目を擦る村紗を無視してたっぷり甘やかして愛した。いつもみたいに意地悪なことはしていない。
途中からは彼女も覚醒してノリノリで時が経つのも忘れて愛し合っていただけ。夜は更ける。二人はお互いに耽る。
その熱はゆるやかに分散して今は跡形もないけれど、姿を隠しているだけでいつでも内に秘めてくすぶっていた。
熱を思い出し、脳が勝手に記憶をなぞり始めた。耐え切れなくなって、おずおずと手を伸ばす。
すぴすぴと寝息が漏れる口元にそうっと近付ける。むにゅっと柔らかなほっぺたに着地して、少し力を入れると弾力に指を跳ね返される。

「ん、ぅ……」
「!」

ぬえは起こしてしまっただろうかと、びくり。固まって身構える。

「すぅー……」

その不安も束の間、再び規則正しく繰り返し始めた村紗の吐息を聞いて安堵する。身体の強張りを解いて、同じように羽もぐにゃりと脱力していた。
はたから見たら、ぬえが悪戯してやろうと考えていたなど誰が思うだろうか。ぬえも一つ、大きく息を吸って呼吸を整える。
触れた頬の柔らかさと温かさを噛みしめつつもそれだけでは物足りなくなって、もっと触れたくなって、もっと記憶に近いものをなぞりたくなって。
さっき指で触れたほっぺたにキスをした。ちゅ。小鳥のさえずりのような、こどもがするような、ささやかなキス。邪念など一切ない純粋な好意の行為。
まじりっけのない素直なぬえの気持ち。昨夜の熱には到底及ばないが、それでも確かにぬえの心の芯はほかほかと温かくなった。
とっくの昔に一線を越えているくせに、「見ている方が気恥ずかしさ故に熱くなるようなやりとりをする。いい加減にしてほしい」とは一輪の弁である。

春である。彼女らに春が訪れからそれなりの月日が経つ。それからケンカしたり、勘違いしたり、すれ違ったりして紆余曲折経ても春は成就したまま。

見つめて寝息を聞いて、頬に指で触れて唇で触れただけ。ただ、それだけのこと。それだけのことなのに、何故だかぬえは酷く満足してしまって戻ろうと思った。
洗濯カゴが元からあったものと自分が持ってきたものと二つあるから持って帰らなければならないし、やり残してきた仕事がある。
この寺の一員たるためには働いて馴染んで、聖たちの考えを良く理解していなければならないのだった。名残惜しいが肘を縁板から離して足を立てる。
未だ眠る村紗はそのままに寝かせておこうと思って勢いよく立ち上がった。ら、

「ぬきゅっ!?」

べしゃりと顔から縁板に突っ伏してしまった。あまりに唐突の出来事にぬえは何が起こったのか一瞬、理解できなかった。

「……それだけ?」
「起きてたのね、意地悪」

突っ伏したままの姿勢でぬえは答えた。声には不機嫌がにじんでいる。どうやらワンピースを引っ張られたらしい。

「今起きたのよ、意気地なし」
「ほほ~ぅ。そいつぁ聞き捨てならないですね。てか真昼間から惰眠貪ってる人に言われたくないんだけど」
「そうさせた原因は誰よ」
「だから代わりに洗濯物干しといたわよ、ほら見なさい!」
「たかだかそんだけで。えばってんじゃないわよ」
「なにおぅ!」

眠っていた時の村紗の可愛らしさは遠い彼方へと吹っ飛んでしまっていた。
完全に起き上って腰を据え、いちいちぬえの癪に障るようなことを言っては片目を閉じ、厭らしい挑発の笑みを浮かべている。

「ちょっとお昼寝くらい良いじゃない。だって春なんだし。そもそも私の昼寝ひとつの間にあんたは一体どれだけ仕事がこなせるっていうのよ」
「ちっとも可愛くないことを言うのはどの口?」
「この、お・く・ち」

人差し指でちょんちょんと指さして誘う村紗の唇は艶めいてしっとり濡れた果実にも思えた。ぬえの目には毒の果実として映り込む。
ぬえがにやり笑って村紗の目と視線を合わせれば早くくれとねだっていた。

「欲しがり」
「じゃあ昨晩欲しがったのは誰?」
「この、わ・た・し」

おでこをこつんと突き合せて上目遣いに相手を見やる。
未だ昼寝の名残のある目尻の涙にぬえは舌を伸ばした。涙珠を輝く真珠と錯覚する。

「んっ…」

鼻から抜ける甘い声を出して村紗は目を閉じた。村紗は自分を綺麗だといつも褒めちぎってくるが、己の美しさに気付いているのだろうか。
ぬえは生粋の妖怪らしく、どこかしら作り物じみた、完璧すぎる、人間とは一線を画す美しさだった。
対する村紗は人間の少女と女性との間で揺れ動く、脆く儚い美しさを永遠に閉じ込めていた。
ぬえよりも全体的に女性的な円みを帯びたボディラインと、ただ白いだけではない淡く輝く白肌にぬえは真珠を思い描く。
そして少女よりは成長した時分に、女性と呼ぶには早すぎる時分に成長が止まってしまった彼女を形容するならば、それこそ歪んだ真珠とでもいうべきか。
いつか壊してしまうんじゃないかと恐怖で手が止まる。

「……ぬえ?」
「水蜜、大好きだよー」
「私もだいすき」

抱きしめ返された村紗の腕の力強さは人間のものではない。妖怪として生き続けていくであろうことを再確認する瞬間である。
けれどどうも村紗の中にある人間らしさを拭い去ることが出来ず、ぬえは優しく三対の羽で村紗の身体を覆い抱き寄せた。
互いの身体を隙間なくぴったり合わせて、おとがいで村紗の首に擦り寄る。
何度か匂いを移すように擦って顔を離すと、察した村紗は何も言わずに悪戯っぽい笑みを浮かべて鼻頭をかじった。

「あぃてゃ」
「そんな泣きそうな顔しないの、ヘタレ」
「うっさい! ……水蜜には分かんないでしょ、寝たまんま呼吸が止まってある日ぽっくり成仏して私の前から居なくなるんじゃないかってこの気持ち!」
「あんたが居る限り未練しかないからオチオチ成仏なんてしてらんないわよ」

そのまま村紗はぬえの顔を両手で包み込んで固定し、自分の鼻を近付けた。

「ちゅっ」

ちょっとかじられて、泣きそうで赤くなった、ぬえの鼻と、平常と何ら変わらない村紗の鼻が合わさってキスでもしているような恰好になった。

「水蜜のこと、いつか壊しちゃいそうって思って怖い……」
「私、そこまで弱くはないつもりだけれど」
「水蜜が真珠みたいに綺麗だからよぉ!」
「んー……どっちかというと、ぬえの方がいつか急に姿をくらましてそのまま死んでっちゃいそうな気がするんだけど」
「矢で射ぬかれても、太刀で串刺しにされても死ななかった私よ? 外の世界でも有名だからちっとも死ぬ予感なんてしないわ」
「それは頼もしい限りで。成仏の心配してくれるのは嬉しいんだけど、それよりも、別の意味で成仏させて欲しいかしら……?」

村紗は唇をゆっくり見せつけるように舐める。さっきよりもっと、毒の果実らしさを増した唇が微かに、ちょうだい。と動いた。
ねだられ続けて応えないわけにはいかない。ぬえは自分の唇をちろり。舐めてから同じように村紗の唇に舌を伸ばして触れた。
ぬえの舌と村紗の唇が一続きになる。この唇は毒の果実に見えたからきっと表面には毒がある。
それを綺麗さっぱり、ぺろっと舐め取ってぬえはヒーロー気取りだった。村紗は唇をとんがらせて笑っている。

「ぬえかわいい」
「みなみつかわいい」

とんがらせた唇を挟み込む形でキスをして、お互いの唇を啄み合った。くっつけては離す。
唇の先端が伸びるんじゃないかと思うくらいバードキスを繰り返した。鵺の声の正体はトラツグミだからバードキスが好きなのかもしれない。
村紗はぬえの背中に回した腕をきゅっと抱きしめ直す。二人とも胴は垂直状態で抱き合っていたが、村紗がぬえに体重をかけはじめ一転した。

「!? んふっ。くぅふぅ……」

ぬえは若干仰け反りながら村紗を抱き止める。

「んーえー…」

触れては離すを繰り返していた唇を固定したまま村紗はぬえに圧し掛かった。その強さと重みが村紗の想いの丈だと言わんばかりにぐいぐい押される。
言葉を発することなく力による愛情表現。あと少しでぬえの背中が完全に縁板についてしまうという所でぬえは唇を開いて村紗の閉じた唇をこじ開けようとした。
ぐりぐり攻め込む内に村紗の唇にも隙間が生まれ、全体に一瞬の隙ができた。その隙に今まで村紗を包み込んでいた羽を解き、バネにして抜け出した。

「あうっ、ふぅ……負けちゃうとこだったや」
「ぬえより強いつもりだよ? 力も、想いも」
「水蜜が力強いのは認めるけど、それは違うと思うなー。水蜜は私がどれだけ水蜜のこと好きなのか分かってない」

意地の悪い微笑みを面に張り付けて、薄く唇を開きその奥に舌をチラつかせながらゆっくり村紗に迫る。
釣られて村紗も同じように唇を開いて、ぬえを迎え入れる準備をしてからキスをした。

「ちゅっ、んふっ、ぬっちゅ…」

ぬえは自分と同じように開いた口の中にそろりと舌を差し入れ村紗の舌を探る。
ぬる、り…。生温かく柔らかい村紗の舌を発見して、先端部分だけに触れ、おいでおいでと誘うように舌を動かす。
村紗はもっと触れ合う部分が欲しくてぬえの咥内に舌を進めた。

「ちゅ…ぢゅるる……っ」
「んくぅ、…っ!?」
「れろぉ…じゅる、る、じゅうるるr……」

ぬえは村紗の頭部に手を添えて自分になるべく近付けながら舌を強く吸い込んだ。
びっくりした村紗は舌を引っ込めようとするが狭い咥内で特に逃げ場はなくあっという間にぬえに舌を絡め取られた。
惰性でれうれう舌を絡め合っていると間に信じられないくらいの唾液が溜まる。ぬえの唾液。村紗の唾液。飲み込んで相手を自分の一部とした。
喉を通っていくとき、喉骨が上下して飲み下した瞬間から成立するひとつになるという感覚。
それを喉で体感する。互いに舌で舌を刺激し続けているため飲み込めない大量の唾液が出てくる。それは口の端からこぼれて、だらしなく口周りを汚した。

咥内にたっぷり唾液が溜まったところでぬえは村紗の頭部に添えていた手で、今度は両耳を塞いだ。
これによって村紗の外部に対する聴覚は遮断され、自分の中の音がよく聞こえる状態になる。
ぬえが口中をめちゃくちゃに掻き混ぜると、その音が脳にダイレクトに伝わって村紗は脳味噌を犯されているような気分になる。
ぬえが舌を唾液の海に叩きつけると一層大きな音が出て、それは波のように耳に、頭に反響する。ぬえの舌が村紗の咥内をくまなく舐め上げる。
天井部分、歯の表と裏、隙間と隙間。デリケートな喉の粘膜、舌の表面と裏側、その下の柔肉。
たっぷりと時間をかけて続けられた脳を揺さぶる水音はぬえの想いの方が強いと認めたくもなるまで村紗を責め立てた。

「っっはぁあ、はぁ…」
「ぬ、え…はげし」
「こういうの嫌いじゃないでしょ」
「ぷぁ…っ……うん」

酸素を求めて浅い呼吸を繰り返す村紗は紅潮していて、ぬえの視覚を刺激する。
毒の果実の正体はりんごだったのかな。なんてトンチンカンな感想を抱いた。

「手ぇ繋ごうよ」

ぬえの発言にいいわよ。と短く答えた村紗は、指と指の間をがっしり外れないように絡み合わせて互いの意志の強さを手で感じる。
普段は全く意識しないのに、恋人繋ぎは一番手の触れる面積が多い素敵な繋ぎ方だと改めて実感した。

「ちゅうー」
「ねずみ」
「鵺よ」

落ち着いて、ゆるく口を開いたままキスをする。首を傾け積極的に求める。
ぬえが差し入れた舌を村紗は自分の舌を台にして、前歯ではぬゅはぬゅ食む。緩慢な刺激がじれったく、さざ波の如くぬえのに打ち寄せる。

「あぐっ」
「ふぁにすんのひょ」

ぬえは村紗の口を包み込むように大口を開けて自分の咥内に飲み込もうとした。

「みなみつのくち ひゃべう」
「やーらー」

村紗も負けじとさらに大きく口を開いてぬえの口を飲み込もうとする。
あぐあぐと唇の表皮をこそぎ落とす勢いで開いては食べるを繰り返し、呼吸も忘れて没頭した。いつまでそうやっていただろうか。
ついには二人とも疲れ果てぜぇはぁと肩で息をして離れた。

「ぬえー…、唇の皮剥げちゃったかも」
「リップ塗らないとね」

最初のように、おでこをこつんと合わせて息を整える。
早くなった鼓動と酸欠の頭は熱をぶり返すには容易で、じっとしていられない衝動が二人を襲う。

「……ねぇみなみつ」
「…うん、私もおんなじ気持ち」
「「もうちょっとキスしたい」」

激しいキスはもう十分に堪能した。だから今は触れるだけのキスをする。
ちゅ、ちゅ、ちゅっ。ちゅっという音が具現化してぽろぽろ零れ落ちるような優しい音色が溢れだす。
やわらかい春の日差しと溶け合ってぬえと村紗はちゅっちゅとスキンシップを重ねた。



「ねぇ、私たちいつまで二人でいられるかな」
「いつまでもいられるに決まってるじゃない」
「そうじゃなくってさ、増えたりしないの?」
「えっ……?」
「川の字になって寝るのとか夢なんだけど」
「えっ それって……」
「ここにもう一人欲しくなぁい?」

ぬえの脳裏にその過程が鮮明に描かれる。目は村紗の肢体を凝視してしまって外せない。

「もっとぉ……」

春である。頭が春である。真っ昼間から見て下さい聞いて下さいな場所で秘め事だなんて、もはや晒し事である。

「いっ、いや、いろんな意味で『ここ』では無理。絶対に無理!!」
「じゃあ続きは夜に、ねっ」
「みなみつ、おあずけ!」
「どっちがよ」
「どっちもでしょ」

じいと見つめ合っていたら何だかおかしく思えてきて、二人して笑えてきてしまう。
だって瞳の奥底には我慢できないという春に不釣り合いな情欲の炎が揺らめいているのが見て取れるから。
はじめは笑いを堪えていたが、やがて抑えが効かなくなり、またその堪えている顔がおかしくってついには声に出して笑ってしまう。

「ちょっと、マネしないでよ」
「ぬえがマネしたんでしょー?」

どちらが先に笑い出したのかは分からない。マネをし出した順番も分からずに、二人は似たような顔を見つめ合い、似たような笑い方をする。

「みなみつがマネしてるの!」
「マネしてないー」
「マネしないでよ!」
「マネしないでよ」
「ばーか!」
「ばーか」

まったく、何て微笑ましい二人なのだろうか。取っ組み合ってマウントをとろうと互いにごろごろ転げ回っている。
そこまで体格に差がないせいもあって本人たちが飽きるまでいつまでも転がり続けた。
春風が強く吹き、洗濯物たちを押し退けて二人にまで届く。前髪が舞い上がって瞳がよく見えた。萌える翠と燃える紅。

「みなみつのばーか」
「ぬえのおおばかー」

「「大好き!」」

枕代わりに使っていたタオルの山をぐしゃぐしゃに崩しつつ。春の日差しの中、二人の少女が戯れていた。
「春という字は 三人の日と書きます」
歌詞の意味とは違うのですが、こう…ニュアンスで。
ぬえむらちゅっちゅ。

メモの段階ではもっと(耳とか指とか)いちゃいちゃしてたんですが、今回は口にのみのちゅっちゅ縛りで妄想爆発させてみました。たぶんこの話が自分の思い描くぬえむら像の全てな気がします。ぬえがヘタレで、村紗がぬえ好き好きーっていう関係のぬえむらが好きです。

お読みいただきありがとうございました!

【追記 7/26】
1様 また、なんです。ほのぼの・いちゃいちゃ・ちゅっちゅです。
奇声様 この二人が可愛すぎて辛いです。
3様 作者の頭も春ですよー
4様 定期的に摂取しないと精神に支障を来たしますからねぇ……ざっくり走り書きメモでもいちゃついてます。
5様 ありがとうございます、お粗末様でした。
ニア様 いつかは、ひとさまが書いたこのような話を読みたいと考えておりますが……可能な限りは自家発電していきたいと思っております。

コメントありがとうございました!ぬえむら!!
アサトモ
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
またこの二人はw
微笑ましいもんですねぇ。
2.奇声を発する程度の能力削除
可愛いなぁ、この二人は
3.名前が無い程度の能力削除
春ですよー
4.名前が無い程度の能力削除
ぬえむら分補給完了!メモ帳怖い
5.名前が無い程度の能力削除
いやーかわいい二人だなぁ。
すばらしいぬえむらでした!
6.ニア削除
とろっとろのあまっあますぎるのに胸焼けしないでどんどん食べれる。おかわりしたいなぁ…