Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ただマリアリがちゅっちゅするだけの話

2012/03/26 22:26:19
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決まって三時、彼女はお茶を飲みに来る。
でもそれは毎日ではない。
彼女は気が向いた日だけ私の家に来て、決まった席に座って、他愛もない話をして帰っていく。
そして今日もやってきた彼女はテーブルに片肘をつき、お茶の用意をする私の背中をじっと見つめていた。
緩く、穏やかな沈黙に響くのは、ケトルから沸き立つ蒸気と、それをポットに注ぐ音。
ポットで踊る茶葉を見ながら、美味しく淹れたいという気持ちで少し手に力を込める。
そういえば最初の頃は、紅茶より緑茶が飲みたいってよく文句を言われたっけ。
今では香りで紅茶の種類がわかるくらい、彼女は紅茶に慣れてしまった。

「なあ、アリス」
「何?魔理沙」

不意に魔理沙が口を開いた。
その声に振りかえり一瞬視線が重なっても、すぐにその視線は逃げるようにあらぬ方向に向いてしまう。
一向に答えようとしない魔理沙に小首を傾げながら、カップの乗ったトレイを手に歩みを寄せ、
彼女の前にいつもの紅茶を差し出すと、黙ったままカップを持ち上げ、一口。
見開いた目から察するに、今日の紅茶もお気に召したみたい。
少しして小さく咳払いをすると、カシャンと乱暴な音と立ててカップを置き、
椅子の背にもう片方の肘を乗せて、体ごと私の方を向く。

「私達、付き合ってるんだよな?」

魔理沙らしい直接的な問いかけ。
そう、ちょうど永夜の異変が終わって一ヶ月経った日の事。
私と魔理沙は付き合い始めた。
まぁ付き合いだしてすぐに変化があるわけでもなく、よく喧嘩もするし、お互いに何かを相手に求めるわけでもない。
変わったことといえば本当に魔理沙が頻繁に家に来るようになったことくらい。
ゆっくりを瞬きをし、泳いでいた視線が私を捉えるとその視線は思ったより鋭く私に突き刺さる。
改めて言われるだけでこうも照れくさい気持ちになるものだろうか。

「そうよ、それがどうしたの」

恥ずかしい気持ちを抑え毅然と見つめ返すと、胸の前でしっかりとトレイを抱いて言葉を紡いだ。
わざと眉間に皺を寄せ、上ずった声には気付かないふりをして。
ここで変に照れたり目を逸らしたりすると、魔理沙に負けた気分になる。
勝ち負けではないと分かっていても、相手に主導権を取られるのは本意ではない。

「キスしたいんだけど」

強く握った手はじんわりと汗をかいて、銀のトレイにうっすら曇りを作り、
予想外の言葉に顔から火が出るかと思うほど、頭に熱が昇って。
心臓は魔理沙に聞えてしまうんじゃないかってくらいに大きな音で跳ねる。

「お、お伺い立てるようなことじゃないでしょ!」
「お前が立ってたら届かないだろ」

口の端を片方つり上げ、ちょいちょいと手招きをする。
ああ、この顔だ。私が大好きな、意地悪そうな魔理沙の顔。
琥珀の瞳に顔を近づけて、自分の視界が肌色で一杯になると、そのまま唇へ。
一瞬だけ落とした唇は意外に柔らかく、微かな薬品の香りが鼻孔をくすぐった。
離れた後も魔理沙は、金魚のように口を開いてはいたものの、はっと我に返って私を睨みつけた。



◆ ------------------- ◆ ------------------- ◆



私の予定では、もっと格好良く…アリスを引きよせて、真っ赤な顔にキスをする予定だったっていうのに…これは一体どういうことだ。
頬を桜色に染めたアリスが、颯爽と私の唇を奪ってしまった。
さっきまで持っていた余裕なんてとっくにどこかに言ってしまって。
トレイに映る私は耳まで真っ赤で、ぽかんと口はだらしなく開いたまんま。
その姿が私を現実へをひき戻す。

「ち、ちがう!お前じゃない!私がキスするんだよ!」
「別にどっちからでもいいでしょ!」
「よくない!それじゃ私が主導権を握られたみたいで腹が立つ!やりなおしを要求する!」

背もたれに半分預けていた体を起こし、腰を曲げたままのアリスに不満たっぷりの視線を送ると、頬を膨らませた私を見るや否や、その顔を綻ばせた。
折った腰を伸ばし、あまつさえその指で私の頬を突く。
空気を含んだそれはアリスの指を適度な弾力で押し返して、私の口の中は押された空気がもぞもぞと動いてなんだか気持ちが悪い。
嬉々として私の頬をつっつくアリスの長く綺麗な指が視界に入ると、悪戯心が目を覚まし、餌に食いつく犬のごとくその指めがけて大きく噛みついた。
がう、とわざとらしい声をたて、歯を鳴らす。
反射的に引く指を追いかけて掴み、その体ごと力一杯引き寄せた。
バランスを崩したアリスはそのまま私に抱きつく形で、私の膝に座り込む。
抱きしめる腕に力を込めるものの、体勢はちょうどアリスの太ももの間に私の右膝が入りこむ形。
薄い布越しに伝わる温もりが…なんていうかその、ちょっとエロい。

「ね、魔理沙…ちょっと、体勢つら…」

あれ、おかしいな。なんで私はこんなに熱いんだろう。
腰掛けたのが浅かった事もあってか、アリスが辛そうなので足を少し前にずらすと、より深く挿しこんだ腿にアリスの熱を感じて。
私の顔はアリスの胸元にあって、ふんわりと香るバラの香りは、アリスがよく付けてるハンドクリームと同じ香り。
肩に回していた手を包み込むように頬に添えたら、頭一つ分高いアリスと視線が交わる。
そのままゆっくりと顔を近づけ、ぎゅっと強く閉じた瞳に顔を緩めながら、そっとくちびるを寄せた。
初めは何度か角度を変えて啄ばむように触れ、それから味わう様にそのくちびるを重ねた。
肩を掴む手には固く握られて、少し離すと酸素を求めて薄く開かれた隙を逃さず、そっと舌を挿し入れる。
どっちが優位とか、主導権とか、もうそんなものはどうでもよくて。
ただ、ただ、アリスが可愛かった。

「…っ…ん…」

歯列をなぞり、逃げる舌に自分のそれを絡めるように奥へ奥へと進んで。
漏れる声がは妙に征服欲を駆り立てて、押さえつけるようにくちびるを重ねると、頬の内側を撫で回し、上顎をくすぐってやる。
じれったいほど丁寧にアリスの口内を貪っていると、おずおずと差し出されるアリスの舌が私のそれと触れた。
腿とは比べ物にならない程の熱が高揚感を生んで…頬の手は耳へ、首へ、いつの間にかアリスの体を蹂躙していた。
触れるたびに体が熱を持ち、空を飛ぶより、もっとふわふわとした気分。
どれくらい、時間が過ぎたんだろうか。
荒い呼吸で肩が大きく上下に揺れ、コクンと音を立てて、混ざる唾液が喉を降りた。
辛そうなアリスの息遣いに名残惜しさを感じながらも、仕方なくくちびるを離すと
恥ずかしそうにはにかんだアリスは私の首元に顔を埋め、時折息が耳にかかる。
まるで子供をあやす様に、背中を叩いてやると、アリスは小さく掻き消えそうな声で、馬鹿魔理沙と呟いた。



◆ ------------------- ◆ ------------------- ◆



まるで母親にくっつく子供みたいに、魔理沙の首に腕を回して私はしがみ付いた。
柔らかいふわふわしたはちみつ色の髪が手の上を滑って、少しだけくすぐったい。
あやす様に叩かれる背中の手と、頬に寄せる魔理沙の唇に首を竦めてちらり、と横顔を盗み見ると、満足げに吊りあげられた口角を視界の端へと捕えた。
魔理沙と触れ合うのが嫌なわけではない。どちらかといえば、心地よかった。
ただ、鼓動が止まらない。
むずがゆいような、でも身をゆだねてしまいようなそんな感覚が、背筋を撫でる。
こうして触れているだけでも、どうにかなってしまいそうなのに
アンタはどうして、そう余裕でいられるの?
悔しいから、そんなことは…絶対に言ってやらないけど。
しがみ付く腕に力を込める。
ぐえ、なんていう魔理沙の声が聞えた気がするけど、私はそんなことにはお構いなしに魔理沙の首に鼻を擦り合わせ、彼女の香りを吸い込んだ。

「魔理沙の匂いがする」
「私のって…どんな匂いだよ」
「いい匂い」

今まで嗅ぎ慣れていた薬品棚の様な匂いも今日は魔理沙の肌で甘く変化し、官能的な香りになって私の胸を一杯にする。
そういえば、新しい魔法を試すんだってここ数日はずっとこの匂いがしてた。
ああ、きっとこのせいだ。
熱に浮かされるのも、こうして魔理沙に溺れてしまうのも。

「ねぇ、魔理沙」



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私が付けているこの香り。リラックス効果があるらしく、外の世界ではこの花を新婚のベッドへまき散らすらしい。
予定とは大幅に違った気もするけど、成功したといってもだろうか?
この私が考えた素直になる魔法。
髪を掬うように撫でと、気持ちよさそうに目を細め、蕩けた瞳でまるで犬みたいに鼻を鳴らしてすり寄る。
そんな姿を見ていると最初の強がりが嘘みたいだと、ちょっとだけ笑えて。
囁くように私の名前を耳元に落として、アリスはもう一回とキスをねだる。
肩を掴んで身体を起こす様に促すと、首筋にくちびるを落とし、そのまま尖らせた舌を這わせる。
意識が飛んでしまわないようにか、髪をきゅうっと握りしめる必死な姿が可愛くて。

「一回で足りるのか?」
「……じゃあ、いっぱい」

私の言葉にアリスは少しだけ動きを止め、私の額に頬を寄せ表情を緩めてそう告げた。
青い瞳が閉じられて、私は今日何度目かのキスをした。
「じゃあ、アリス。続きはベッドで…な?」
「…馬鹿魔理沙」

◆ ------------------- ◆

ここまで読んで頂いてありがとうございます。
豆腐の加工食品もどきです。
少しでも皆さまの萌えの足しになれば幸いです。
(2012.03.30 誤字訂正しました。)

コメントありがとうございます!
>>1様
→ありがとうございます。当初はほのぼのちゅっちゅの予定だったのですが気付けばこうなってました。
>>2様
→何番煎じかすらわからない程出尽くしてるマリアリですが、それでも書きたくなってしまう不思議ですね。そう言って頂けるととても嬉しいです、ありがとうございます。
>>3様
ちゅっちゅ!ちゅっちゅ!
>>4様
ありがとうございます。ほのぼのを書いてたはずがこんな甘くなってしまって自分が一番直視出来ません。
>>5様
いつか外でニヤニヤして恥ずかしい思いをさせるのが夢です。嘘です!ありがとうございます!
がんもどきもどき
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
甘くて微エロな感じが良かったです
2.名前が無い程度の能力削除
ぎょえー甘甘じゃー!!
ちょっと前にやり尽くした感があるこの二人の取り合わせだけれど、
こういうSSを読んで光景想像するとやはり良いものがあるな。
3.名前が無い程度の能力削除
ちゅっちゅ!
4.名無しな程度の能力削除
直視できないくらい甘甘でしたね
5.名前が無い程度の能力削除
思わずニヤけてしまったw
6.名前が無い程度の能力削除
………………にへらぁ。