二度、三度と咳をしても喉の調子がよくならない。
風邪をひいたのだろうか。とにかく喉がむずむずして気持ち悪い。
猫が出入りできるようにと開けていた障子を閉めるついでにどこかへ仕舞った飴を探そうと立ち上がりかけて、また咳き込む。
「舐めます?」
「ああ、ありがとうござい――え?」
飴の入った袋を差し出しているのは、にこにこと笑みを浮かべているブン屋だった。
「何の用ですか。そもそもいつの間に」
「用というのはですね」
二つ目に答える気はないらしい。
「大した用ではないんですが」
「何かあったんですか?」
「異変とかそういった類のものではないです。ただ、これを」
そう言って渡されたのは、先程差し出された袋だった。
「風邪をひいているようですので。お口に合うと良いんですが」
「え、あの」
「無理はしないでくださいね。あなた方人間は脆いんですから」
「えっと」
「それでは失礼します」
「あ、はい……って」
そうじゃなくて。
しかし彼女は呼び止めるより先に飛び去ってしまっていた。
残された袋には包装された十数個の飴玉。
一つ取り出し陽に透かしてみると、鮮烈な赤が目を焼いた。
去り際わずかに細められた、あの目のような赤。
口に放ると苺の味が広がって喉を癒していく。
「……あまい」
思わず頬が緩む。
縁起の編纂も頑張れそうだ。
せめて、短いのを合わせて短編集みたいにしたらどうですか?
次回から5話で1つぐらいにしようと思います。
ご意見ありがとうございます。