「よう」
「……また来たのね」
能天気な声に溜息を漏らして振り返る。
反対側の欄干にもたれかかるそいつは、今やすっかり見慣れてしまった金髪を揺らして笑う。
「だって、お前といると退屈しないし」
「私は疲れ果ててへとへとになるんだけど」
「そんなの私の知ったことじゃないね」
「言うと思ったわ」
また一つ溜息を吐くとそいつは足音を響かせて隣に立った。
「どうしたんだよ、元気ないな」
誰の所為よと言うかわりに髪を引っ張る。……思ったよりさらさらしていた。妬ましい。
「いてて、なんだよ急に」
「……別に」
「変だぞ」
「いつも変な奴に言われたくないわね」
「おいおい、私のどこが変なんだよ」
「変でしょう。わざわざこんなところまで来るなんて」
そいつは私の言葉にしばらく口を閉ざし、小さく首を傾げた。
「そんなに変か?」
「変よ」
「そうか? 私の知る限りじゃ、友達のところへ遊びに行くのを変だって言う奴はいないんだけどな」
「――――」
思わず絶句した。
「…………本当に、変な奴ね」
「はっきり言うなぁ」
おそらく苦笑しているであろうそいつの顔を見られず顔を伏せた。
だって、友達、なんて。
「っと、しまった、もうこんな時間か。また明日にでも来るから。それと――」
嵐のように去っていったあいつは、きっと本当に明日も来るのだろう。
その時は、
『それと、私の名前は変な奴じゃない。明日はちゃんと呼んでくれよ』
去り際の言葉を蒸し返して、私に魔理沙と呼ばせるのだろう。
なかなかおもしろい組み合わせですね