※この作品にはオリキャラが登場します。
苦手だ、あるいは嫌いだという方は、
東方キャラがオリキャラと関係を持つ
前に戻って下さい。
「・・・ん・・・。何よこの妖気・・・」
午前3時ほどといったところだろうか。普段どんな人間がこちらに流れついても変な妖気を感じることはないし、まず人間が強い妖気など持っているはずがない。だというのに感じるこの強力な妖気。間違いなく面倒くさいくらいまでに強い妖怪であろう。
「面倒くさいわねぇ・・・。紫は何してんのよ・・・」
普段流れ者の管理はスキマ妖怪八雲紫が担当しているはずだ。しかしこれほどまでの妖気を放つ者がこちらに来ても、紫が動く気配はなさそうだ。かなり強い妖気ではあるが問題はないとみなしているのだろうか。はたまたただ寝ているだけか。ただ寝ているにしてもこれほどの妖気は感じとれるであろう。普通に妖怪ならパッと目が覚める。紫の式である八雲藍や藍の式である橙は今頃紫を起こしているのではなかろうか。
「はぁ・・・。夜くらいゆっくり寝かせてよ・・・」
博麗神社の主、博麗霊夢はすくっと起き上がり、非常に肌寒い冬の冷気を直に肌で感じながら着替え始めた。こうしている間にも強い妖気は動いている。何が目的でこちらに来たかはわからない。もしかしたらただ単に流れ着いただけかもしれない。それにこの妖気の放ちよう、こちらに気づいて欲しいと言わんばかりだ。強い妖怪になればなるほど妖気を隠そうとするものだろうに。
「・・・レミリアと咲夜も動いてそうね。この際他人に任せようかしら・・・」
はぁとため息をつきながらも着替え終わって渋々神社を後にする霊夢。やはり風がひどく冷たい。
「こ、凍る・・・。これヤバイってもう・・・ほんと面倒ねぇ」
霊夢が現場に向かい始めて少し経った時、隣から何やら聞き覚えのある声に話しかけられた。
「おやおや、こんばんわ」
「あんた・・・」
八雲藍である。恐らく紫本人が外出を拒否したので仕方なく自分が確認しに出てきたというところであろうか。しかし全く寒そうでない。
「・・・寒くないの?」
「寒いですよ」
涼しい顔でぬけぬけと言いやがる。そう心の中で呟く霊夢を尻目に、藍が今回の件について霊夢に問いかけ始めた。
「この妖気、どう思います?」
「どうって・・・まぁかなり強力よねぇ。異変につながるかどうかは本人の顔とかを見て決めるわ」
「顔ですか・・・」
そんな何気ない会話を続けていると、後ろから傘が開いた状態でこちらに向かってくるのに気づいた。恐らくあの2人だろう。
「こんばんわ、霊夢」
「レミリア。やっぱあんたも来たのね」
「お嬢様がたまには霊夢の役に立ちたいと」
「ただおもしろがって来ただけでしょ。それより傘に入れなさいよ。風が冷たいったらありゃしないわ」
「あら霊夢。私と相々傘したいの?」
「しばくわよ。咲夜もいるじゃないの」
レミリア・スカーレットと十六夜咲夜だ。レミリアは吸血鬼の館紅魔館の主、咲夜はその館のメイド長でありレミリアの専属メイドである。先ほどの八雲藍もそうだが、この2人は強さで言うと申し分ない。今回の異常な妖気を放つ妖怪がこちらに攻めてきたとしてもこれだけのメンバーなら負けることはまず無いだろう。そろそろ現場に着きそうだ。
「・・・あ、霊夢。誰かいるわ」
「んー・・・男ね。背が高いわ」
「霊夢は背が高い男が好みなの?」
「なぜそうなる」
4人はその妖気を放ってるらしき男の元へ飛び降り、ゆっくりと近づいた。
「ねぇあんた」
「!ぉおお!やっと人に会えた!もうほんと凍え死ぬところだったよ!」
「何してんの?」
「いやぁ話すと長くなるんだ。とりあえず温かいとこに連れてってくれないか。もう顔がヤバイ」
どうするの、とレミリアが横から話しかけてくる。霊夢は少し考えた顔をしたあと口を開いた。
「そうね。じゃああなたが私たちに害を与えない存在ということをここで証明してくれないかしら」
「え?証明っつったって何すれば・・・」
「そうねぇ。私たち4人の言うことを聞いてくれないかしら」
「言うこと?」
藍と咲夜は、え?という顔をしている。
「言うことって・・・お前らのお願いを聞けと?」
「そうよ。そうすれば温かいところで話を聞いてあげるわ」
「まぁいきなり信じろとは言わねぇが少し意味が・・・」
「じゃあ私からいくわよ。幻想郷を揺るがす勢いで地面を叩きなさい」
そのお願いを聞いた瞬間、藍はハッとなった。このお願いを利用してこの男の力などを調べようとしているのか。霊夢がお願いしたことは単純な力。ならば私は能力を調べようか。しかしどうすれば。そう藍が頭の中でグルグル考えていると、男はひざまづき拳を固めた。
「寒いから力出ねぇよ?」
「いいから思いっきりぶっ叩きなさい」
「んー・・・まぁ・・・いっとけ!!」
そう叫んで拳を叩きつけた地面は見事にへこみ、直径3mほどのクレーターができた。咲夜はあ然としている。
「・・・次、誰がいく?」
そう言いながら霊夢が振り向くと、藍がすすっと前に進み出た。
「・・・あなたのもう一つの姿を・・・あれば見せて頂きたい」
良い質問だ。霊夢はそう思った。見せることができないということは妖獣ではない。見せることができなかった場合はこの男を解明するのに微量なヒントにしかならないが、もしもう一つの姿があるならば、かなりの進歩となる。
「もう一つかぁ・・・。もう一つっつってもそっちがメインではあるんだがな。こっちの方が動きやすいからこっちにしてるだけでなぁ・・・」
ある。そう確信した霊夢は急かすように変身を示唆した。
「早くしなさい。温かいところ行きたいでしょ」
「んー・・・じゃあ先に言っとくが、これやると妖怪が集まると思うぞ?」
「・・・どういうこと?」
「よくわからんのだがいつもあっちの姿に戻ると妖怪が集まるんだ。そしてなぜか崇めだす。やりにくいったらありゃしねぇよ」
「・・・まぁいいわ。やって」
まさか・・・神獣?。そう思った霊夢は口には出さなかった。すると男はおもむろに来ていたダウンのような服を脱いだ。寒ぃー!と叫びながらも中のシャツも次々と脱ぐ。すると肌に札らしきものが貼ってあった。
「一回しかやらねぇからよく見とけよ」
そう言うと、男はその札をゆっくりとはがし始めた。そしてはがし終わった瞬間、男の体が光に包まれ始めた。いや、男が光を発していると言った方が正しいか。見る見るうちに男の体は大きくなっていった。そして体が少し黒ずんでいっている。
「も、もしや・・・」
「多分・・・そうね・・・」
4人は見上げたまま変身する男を見守っていた。そして変身が終了した。
「こ、これは・・・」
「実物は初めてかも・・・」
「なんという・・・強大さ・・・」
「ふん、私にかかればイチコロよ」
その姿はまさしく龍だった。計り知れないほど長い。そして尋常ではないほどの妖気。その姿に呆然としている一行に龍の姿となった男は話しかけた。
「もういいかー?ここらへんでやめとかねぇと妖怪くるぞー」
「・・・妖怪が崇めだすっていう意味がわかったわ。もういいわよー」
すると龍はシュルシュルと小さくなっていき、元の男の姿に戻った。また寒ぃー!と叫びながら服を着始める。
「・・・もう十分ね」
「いいんですか?まだ私たちを襲わないかどうかは・・・」
「あんたも一応神獣に近い最強の妖獣でしょ?だったらあの男と考えてることは一緒じゃない?」
「・・・自分の力を理解しているものは無駄に力を発揮しないってことですか」
「そそ。それでも来るってなら・・・全員が相手してやるわ」
あの男が面倒くさがりながらも変身したのはやはりただ温かいところに行きたかっただけかもしれない。そう思いながら霊夢は男についてきなさいと言い飛び始めた。
「えっ!お前ら飛べんの!?」
「え?飛べないの?」
「俺あっちの姿じゃねぇと飛べねぇんだよ」
「あら・・・」
すると霊夢はふっと降り、歩き始めた。
「とりあえず紅魔館にでも行きましょうか」
「何で私ん家なの?」
「ダメ?」
「全然OK」
5人となった一行は歩きながら会話を始める。しかしなんと言っても背が高い。180cmはあるだろうか。レミリアはどう頑張っても見上げるしかなかった。
「名前は?」
「神童龍だ」
「・・・神童・・・」
その名を聞いた瞬間藍は少し考え始めた。
「何よ。知り合い?」
「いえ、どこかで聞いたことが・・・」
「・・・まぁ俺の名を知ってる者は少なからずいるだろう」
「有名なの?」
「ちょっとな。ところでお前らの名前は?」
霊夢、レミリア、咲夜は次々に名前を挙げていく。すると男は藍の名前を聞いた瞬間立ち止まった。
「どうしたの?」
「八雲・・・紫の親戚か?」
「!紫を知ってるの!?」
「・・・俺の恩人だからな・・・」
「・・・えぇ!?」
大雑把に内容を縮めると、昔龍は妖怪狩りをしていたらしい。妖怪狩りといっても依頼がないと絶対に傷つけることはしないそうだ。ある日出会った男と龍は仲良くなった。その男はただの鍛冶屋だと言っていた。龍は自分は妖怪狩りだと、悪くない妖怪狩りだと言うとその男は、俺もお前にいずれ斬られるのかねぇとつぶやいた。どういうことだと問いただすとその男は実は妖怪だと言う。しかし妖気をほとんど感じとれなかった龍は疑問に思った。嘘をつくな、妖気が感じられん。すると男はこう言ったそうだ。
「そりゃそうだ、今さっき契約してきたばっかりだからな。なりたてだ」
「・・・契約?」
その男は里ではかなりの剣豪だったらしい。しかし昔誤って友人を斬ってしまい、それ以来刀を持たなくなったそうだ。ある日男が仕事で外出している間に、妖怪に妻と娘を人質に取られたという。男は刀を持てばそこらへんの妖怪では全く歯が立たないほどの剣豪だったが、人質を取られているとなるとどうしようもない。それに刀はとうの昔に捨てた。すると妖怪は話を持ちかけてきたそうだ。
「おい人間。てめぇ強いんだってな。」
「・・・だからどうした」
「取引だ。その取引に応じればこの2人は助けてやる。どうだ?」
「・・・言ってみろ」
「神童龍という男を知っているか?」
「・・・いや、知らん」
「妖怪狩りをしている男だ。そいつを斬って欲しい。」
しかし男は口をつぐんだ。過去に斬ってしまった友人に誓って刀は二度と使わないと誓ったからだ。それに鍛冶屋にある鉄器を人殺しには使いたくはなかった。
「悪いが俺は昔刀を捨てたんだ」
「じゃあこいつらとはオサラバだな」
妖怪は男の妻と娘を結んでいる縄をグイっと上げた。男の妻はガタガタ震えている。
「お母さーん!!」
「うるせぇ!!」
「わ、わかった!その仕事は引き受ける!」
「お~う、それで良いんだよ。・・・そうだなお前が万が一その男と組むってなったらさすがに俺の命もヤバそうだからな」
「な、なんだ・・・」
「悪魔の契約だ」
「・・・なんだそれは」
その妖怪が言った悪魔の契約とか次のようなものだ。まず主と従者を決める。契約を結んだ2人はいつもお互いがどこにいるかわかる。従者は主に一生仕えなければならない。主も従者にしっかりと仕えてくれている礼をしなければならない。契約を結べばお互いに多大な力を得る。人間の場合は悪魔になる。この契約は従者からは解除できず、主の判断のみとする。主が死んだ場合は従者も死するものとする。
「悪魔だと・・・」
「そうだこの契約をしてお前にはあの男を殺しにいってもらう」
「ふざけるな!大体貴様は俺に何の恨みが・・・」
「おっと、そんなこと言っていいのかぁ?この子に首が飛ぶぜぇ」
妖怪は男の娘を縛っている縄をグイっと上げ長く尖ったつめを男の娘ののどに当てた。女の子は泣き叫んでいる。
「クソ・・・外道が・・・」
「やるのかやらないのかハッキリしろ」
「・・・・・・わかった・・・やってやる・・・」
龍は顔が青ざめていた。俺じゃん!。そう心で思っていた。
「まだお前の名前は聞いてないが・・・お前はそうでないと願うよ・・・。お前みたいな良いやつは斬りたくない・・・」
「・・・」
どうするどうするどうする。龍は決断した。
「・・・すまない。俺が神童龍だ」
「・・・やっぱりか・・・悲しき運命だなぁ・・・」
すると男は腰にかけていた刀を抜き、いきなり斬りかかってきた。
「!」
「本当にすまねぇ・・・何の恨みもねぇのに・・・本当に・・・」
男は泣いていた。どうすれば、どうすればこの家族を救える。龍は必死に考えていた。俺と手を組んで外道妖怪を殺して男も死ぬ。恐らくそれくらいの覚悟はあるだろう。しかしなぜやらないか。自分が死んだあとのことを思っているからだ。父のいない娘、主のいない家。自分の不在による一家の悲しみを生みたくない。だから刺し違えてでも外道妖怪を殺すということができないんだ。
「その契約はどうやったんだ?」
「・・・聞いてどうする」
「助けられるかもしれん」
「!!」
でまかせで言ったができないわけではない。内容を聞いてみないと。
「・・・何か紙のようなものに書いてたな・・・」
「・・・よし、任せろ」
「・・・!おい、お前の夫が帰ってきたぞ」
「え・・・」
ギィっとドアが開く。そこにはぐったりとしている龍を抱えた男が居た。
「ほ、ほんとに殺ったのか・・・!すばらしい・・・ヤツを殺せるとは・・・見込んだとおりだ・・・!」
「約束の品だ」
そういうと男は龍は地面に放り投げた。妖怪は龍の胴体にバツ印のように付いている血のあとを見ると確信したようにうなずいた。
「ふっふっふ・・・すまないな・・・礼を・・・言おう・・・」
「早く妻と娘を解放し、俺の契約を解除してくれ」
「ふっふ・・・わかった・・・」
すると妖怪はいきなり懐からナイフを取り出し妻と娘に斬りかかった。
「てめぇらはもう用済みだなぁ!」
「!!やめろぉ!!」
「キャーーー!!!」
しかしその動作を遥かに上回る圧倒的なスピードで龍は起き上がり妖怪を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた妖怪は壁に埋まり、うめき声をあげている。
「あっぶねぇ。予想はできてたが少し怖かったな」
「すまない・・・お前の言うとおりだった・・・」
「だろぉ?ああゆうバカは大抵そうなんだ。さて契約書みたいなものは・・・」
龍と男が人質の縄をほどいていると、不気味な笑い声が聞こえた。
「ぐっふっふっふ・・・」
「あぁ?まだ息あんのか」
「もう逃がさんぞ・・・2人とも・・・いや、全員始末してくれる・・・」
するといきなり男が低いうめき声をあげ始めた。
「!?あなた!?」
「てめぇ!何をした!」
「契約を追加したのさ・・・俺の寿命と引き換えに・・・その男を理性の飛んだ凶暴な魔獣に・・・してやったよ・・・」
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その男の周りは闇で覆われていた。龍はまずいと感じ、男の妻と娘を抱いてすぐに安全なところへ走っていった。ずいぶん走ったところで、古い民家の小屋のようなところに2人を座らせた。
「・・・あの・・・」
「ん?」
「あの人は・・・」
「・・・」
「大丈夫・・・ですよね?助かりますよね?」
「・・・あぁ」
「本当に助かりますよね・・・?」
「・・・すまん」
そう言うと龍は走り出し、男の元で走って行った。
「あ・・・」
男の妻が悲しい目で龍を見送っていると、耳元で誰かが囁いた。
「じゃーん」
「きゃあ!」
「ふふふー」
「だ、誰ですか!?」
「んー、このストーリーを最初から見てた視聴者みたいな感じかな?」
「え・・・?」
その女性はこのやりとりを全て最初から見ていたという。すると妻は少し狂い始めた。
「なんで・・・」
「ん?」
「なんで!なんで助けてくれなかったんですか!見てたんでしょ!?助けて下さいよ!苦しかったんですよ!あの人は今でも苦しいんです!あなたが手助けしてくれたらもしかしたら助かってたかもしてないのに・・・!」
「・・・なんで?」
「え・・・?」
「なんで助けなければならないの?このストーリーの登場人物に私はいないのよ?なぜ私が何かしなくちゃならないのよ」
「な・・・何がストーリーですか!人が苦しんでるのを見て楽しいですか!」
「楽しくないから居るんじゃなぁい」
「・・・え?」
するとどこからか巫女服を来た女性が飛んできた。男の妻と話していた女性を呼んでいるらしい。その巫女はスタっと舞い降りると女性に話しかけた。
「あいつ?」
「そうよ」
「面倒ねぇ。悪魔って強いのよ」
「いいじゃない暇なんだから」
「忙しいわよ、失礼ね」
「あの・・・」
「ん?」
男の妻は困った様子で2人のやり取りを見ていたが、たまりかねて声をかけた。
「そちらは・・・」
「んーまぁ正義のヒーローよ」
「え?」
「さっきまでからかってごめんねぇ」
「え?え?」
「それじゃあストーリーむちゃくちゃにしてくるから」
そういうと2人は飛んで行った。
「ぐがああああああああああああ!!」
「うぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
悪魔化した男と龍は戦っていた。当初は均衡しているように思えたが、戦いが長引くに連れて龍が不利になっていった。
「クソ・・・なんちゅうバカ力だよ・・・」
「がぁぁぁぁぁぁぁ!」
「だがな・・・力比べじゃ負けたことねぇんだよ!」
そう言いながら龍は男の顔面を思いっきりぶん殴った。男の顔はひどく伸びたが、戻り様にボディブローが龍の横腹をえぐった。
「ぐっふ・・・」
龍は吐血し、体勢が大きく崩れた。すの隙に男は黒いまがまがしい弾を龍めがけて飛ばした。かなりの至近距離だったため龍は避けきれず、横腹が少しえぐれた。
「ぐぉぁ・・・」
龍は力尽きたようにそのまま倒れこんだ。その龍に向かってトドメを刺そうと男は先ほどよりも大きな弾を用意していた。そして倒れている龍に思いっきり放った。が、その黒弾は何かにはじかれた。
「!?」
「危ない危ない」
「間に合ったわねぇ」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「あんたみたいなのを野放しにすると後々面倒なのよ。さっさと消えてちょうだい」
「ダメよ。封印するの」
「はぁ?」
「ちょっとアイツの相手しててくれないかしら」
そういうと女性は倒れている龍の元に駆け寄った。
「ちょ、ちょっと!なんでそうなるわけ・・・うわっ!」
女性は龍にゆっくりと話しかけた。
「生きてるー?」
「・・・だ・・・誰だ・・・」
「八雲紫って言うの。聞いたことあるでしょ」
「・・・賢者だったっけな。そんな有名人が・・・何の用だ・・・」
「今からあなたを外の世界に送るわ」
「!?」
龍はうつぶせに倒れたまま、顔だけを紫の方向に向けた。
「こっちにも優秀な医者がいるんだけど今忙しそうで相手してくれそうにないの」
「・・・なぜそんなことをする・・・」
「・・・あなたほどの強者があっさり消えたんじゃつまらないわ。あなた龍でしょ?」
「・・・なんで俺の名を・・・」
「名じゃないわ。真の姿よ」
「!!」
龍は驚いた顔を紫に見せた。紫は微笑んでいる。
「昔会った龍と妖気が似てたわ」
「な・・・」
「とりあえず傷がヤバそうだから送るわね。大丈夫よ。あっちの医者も結構優秀らしいから。今度迎えにいくわ」
「ちょ、ちょっと待っ・・・」
すると龍の真下にスキマができ、龍は吸い込まれるように落ちて行った。
「んでまぁ今に至るってわけだ。紫に礼がしたくてな」
「つってもあんた龍でしょ?悪魔くらい簡単に倒せるんじゃないの?」
「・・・殺したくなかっただけだ」
この話をレミリアと咲夜は興味津々に聞いている。藍は紫の意外な素顔を見たような感じでうれしいような不思議な感覚に陥っていた。
「こっちにはどうやって来たの?」
「いやぁだいぶ探したんだ。するとこっちのことを知ってる2人が居てな。手伝ってもたったよ」
「へぇ」
「あぁあと俺を助けてくれた巫女の方だが・・・お前の母さんじゃねぇかな?」
「!」
「似てたし」
「着いたわ」
「お」
レミリアが指差す方向には暗い闇に包まれているような不気味かつ見事な館があった。
「今日は泊まっていきなさい」
「すまん。・・・あ、そういえば・・・藍と言ったな」
「あ、ハイ」
「紫の知り合いっつーか親戚みたいな感じだろ?紫によろしく言っておいてくれ」
「わかりました」
そう言うと藍はひゅーっと飛んでいった。
「じゃあ私も帰るかしらね」
「霊夢は泊まっていかないの?」
「え?」
「泊まってってよ」
「あー・・・」
「俺からも頼む。15年間もここを出てたんだ。何か変わってないか聞きたい。」
「あんたまで・・・まぁいいわよ」
「やったぁ!咲夜!紅茶用意してて!」
「かしこまりました」
そういうと咲夜はタンと飛び立ち館に入って行った。すると龍はいきなり辛気臭い顔をしてしゃべり始めた。
「・・・ほんと、すまんな」
「何が?」
「まずこんな真夜中に来てくれたこと。それと・・・お前の親にな・・・世話になったから」
「・・・ふん。礼が言いたいなら今度神社に賽銭でも入れなさい」
「ハッハッハ。了解」
「紫様ぁ」
「んー・・・」
「言ってきましたよー」
「んー・・・」
「伝言があります」
「んー・・・」
「神童龍という男がよろしく言っておいてくれと・・・」
「・・・やっぱりあの男だったのねぇ」
すると紫はムクリと起き上がってボソっとつぶやいた。
「迎えにいくって言ったんだけどねぇ・・・まぁいっか」
「え?」
「藍」
「はい?」
「話は聞いた?」
「まぁ・・・はい」
「話に出てきた悪魔の男の契約解除と封印解除するから忙しくなるわよ」
「かしこまりました」
「あと藍」
「はい?」
「晩御飯まだ?」
「・・・もう朝ですが」
苦手だ、あるいは嫌いだという方は、
東方キャラがオリキャラと関係を持つ
前に戻って下さい。
「・・・ん・・・。何よこの妖気・・・」
午前3時ほどといったところだろうか。普段どんな人間がこちらに流れついても変な妖気を感じることはないし、まず人間が強い妖気など持っているはずがない。だというのに感じるこの強力な妖気。間違いなく面倒くさいくらいまでに強い妖怪であろう。
「面倒くさいわねぇ・・・。紫は何してんのよ・・・」
普段流れ者の管理はスキマ妖怪八雲紫が担当しているはずだ。しかしこれほどまでの妖気を放つ者がこちらに来ても、紫が動く気配はなさそうだ。かなり強い妖気ではあるが問題はないとみなしているのだろうか。はたまたただ寝ているだけか。ただ寝ているにしてもこれほどの妖気は感じとれるであろう。普通に妖怪ならパッと目が覚める。紫の式である八雲藍や藍の式である橙は今頃紫を起こしているのではなかろうか。
「はぁ・・・。夜くらいゆっくり寝かせてよ・・・」
博麗神社の主、博麗霊夢はすくっと起き上がり、非常に肌寒い冬の冷気を直に肌で感じながら着替え始めた。こうしている間にも強い妖気は動いている。何が目的でこちらに来たかはわからない。もしかしたらただ単に流れ着いただけかもしれない。それにこの妖気の放ちよう、こちらに気づいて欲しいと言わんばかりだ。強い妖怪になればなるほど妖気を隠そうとするものだろうに。
「・・・レミリアと咲夜も動いてそうね。この際他人に任せようかしら・・・」
はぁとため息をつきながらも着替え終わって渋々神社を後にする霊夢。やはり風がひどく冷たい。
「こ、凍る・・・。これヤバイってもう・・・ほんと面倒ねぇ」
霊夢が現場に向かい始めて少し経った時、隣から何やら聞き覚えのある声に話しかけられた。
「おやおや、こんばんわ」
「あんた・・・」
八雲藍である。恐らく紫本人が外出を拒否したので仕方なく自分が確認しに出てきたというところであろうか。しかし全く寒そうでない。
「・・・寒くないの?」
「寒いですよ」
涼しい顔でぬけぬけと言いやがる。そう心の中で呟く霊夢を尻目に、藍が今回の件について霊夢に問いかけ始めた。
「この妖気、どう思います?」
「どうって・・・まぁかなり強力よねぇ。異変につながるかどうかは本人の顔とかを見て決めるわ」
「顔ですか・・・」
そんな何気ない会話を続けていると、後ろから傘が開いた状態でこちらに向かってくるのに気づいた。恐らくあの2人だろう。
「こんばんわ、霊夢」
「レミリア。やっぱあんたも来たのね」
「お嬢様がたまには霊夢の役に立ちたいと」
「ただおもしろがって来ただけでしょ。それより傘に入れなさいよ。風が冷たいったらありゃしないわ」
「あら霊夢。私と相々傘したいの?」
「しばくわよ。咲夜もいるじゃないの」
レミリア・スカーレットと十六夜咲夜だ。レミリアは吸血鬼の館紅魔館の主、咲夜はその館のメイド長でありレミリアの専属メイドである。先ほどの八雲藍もそうだが、この2人は強さで言うと申し分ない。今回の異常な妖気を放つ妖怪がこちらに攻めてきたとしてもこれだけのメンバーなら負けることはまず無いだろう。そろそろ現場に着きそうだ。
「・・・あ、霊夢。誰かいるわ」
「んー・・・男ね。背が高いわ」
「霊夢は背が高い男が好みなの?」
「なぜそうなる」
4人はその妖気を放ってるらしき男の元へ飛び降り、ゆっくりと近づいた。
「ねぇあんた」
「!ぉおお!やっと人に会えた!もうほんと凍え死ぬところだったよ!」
「何してんの?」
「いやぁ話すと長くなるんだ。とりあえず温かいとこに連れてってくれないか。もう顔がヤバイ」
どうするの、とレミリアが横から話しかけてくる。霊夢は少し考えた顔をしたあと口を開いた。
「そうね。じゃああなたが私たちに害を与えない存在ということをここで証明してくれないかしら」
「え?証明っつったって何すれば・・・」
「そうねぇ。私たち4人の言うことを聞いてくれないかしら」
「言うこと?」
藍と咲夜は、え?という顔をしている。
「言うことって・・・お前らのお願いを聞けと?」
「そうよ。そうすれば温かいところで話を聞いてあげるわ」
「まぁいきなり信じろとは言わねぇが少し意味が・・・」
「じゃあ私からいくわよ。幻想郷を揺るがす勢いで地面を叩きなさい」
そのお願いを聞いた瞬間、藍はハッとなった。このお願いを利用してこの男の力などを調べようとしているのか。霊夢がお願いしたことは単純な力。ならば私は能力を調べようか。しかしどうすれば。そう藍が頭の中でグルグル考えていると、男はひざまづき拳を固めた。
「寒いから力出ねぇよ?」
「いいから思いっきりぶっ叩きなさい」
「んー・・・まぁ・・・いっとけ!!」
そう叫んで拳を叩きつけた地面は見事にへこみ、直径3mほどのクレーターができた。咲夜はあ然としている。
「・・・次、誰がいく?」
そう言いながら霊夢が振り向くと、藍がすすっと前に進み出た。
「・・・あなたのもう一つの姿を・・・あれば見せて頂きたい」
良い質問だ。霊夢はそう思った。見せることができないということは妖獣ではない。見せることができなかった場合はこの男を解明するのに微量なヒントにしかならないが、もしもう一つの姿があるならば、かなりの進歩となる。
「もう一つかぁ・・・。もう一つっつってもそっちがメインではあるんだがな。こっちの方が動きやすいからこっちにしてるだけでなぁ・・・」
ある。そう確信した霊夢は急かすように変身を示唆した。
「早くしなさい。温かいところ行きたいでしょ」
「んー・・・じゃあ先に言っとくが、これやると妖怪が集まると思うぞ?」
「・・・どういうこと?」
「よくわからんのだがいつもあっちの姿に戻ると妖怪が集まるんだ。そしてなぜか崇めだす。やりにくいったらありゃしねぇよ」
「・・・まぁいいわ。やって」
まさか・・・神獣?。そう思った霊夢は口には出さなかった。すると男はおもむろに来ていたダウンのような服を脱いだ。寒ぃー!と叫びながらも中のシャツも次々と脱ぐ。すると肌に札らしきものが貼ってあった。
「一回しかやらねぇからよく見とけよ」
そう言うと、男はその札をゆっくりとはがし始めた。そしてはがし終わった瞬間、男の体が光に包まれ始めた。いや、男が光を発していると言った方が正しいか。見る見るうちに男の体は大きくなっていった。そして体が少し黒ずんでいっている。
「も、もしや・・・」
「多分・・・そうね・・・」
4人は見上げたまま変身する男を見守っていた。そして変身が終了した。
「こ、これは・・・」
「実物は初めてかも・・・」
「なんという・・・強大さ・・・」
「ふん、私にかかればイチコロよ」
その姿はまさしく龍だった。計り知れないほど長い。そして尋常ではないほどの妖気。その姿に呆然としている一行に龍の姿となった男は話しかけた。
「もういいかー?ここらへんでやめとかねぇと妖怪くるぞー」
「・・・妖怪が崇めだすっていう意味がわかったわ。もういいわよー」
すると龍はシュルシュルと小さくなっていき、元の男の姿に戻った。また寒ぃー!と叫びながら服を着始める。
「・・・もう十分ね」
「いいんですか?まだ私たちを襲わないかどうかは・・・」
「あんたも一応神獣に近い最強の妖獣でしょ?だったらあの男と考えてることは一緒じゃない?」
「・・・自分の力を理解しているものは無駄に力を発揮しないってことですか」
「そそ。それでも来るってなら・・・全員が相手してやるわ」
あの男が面倒くさがりながらも変身したのはやはりただ温かいところに行きたかっただけかもしれない。そう思いながら霊夢は男についてきなさいと言い飛び始めた。
「えっ!お前ら飛べんの!?」
「え?飛べないの?」
「俺あっちの姿じゃねぇと飛べねぇんだよ」
「あら・・・」
すると霊夢はふっと降り、歩き始めた。
「とりあえず紅魔館にでも行きましょうか」
「何で私ん家なの?」
「ダメ?」
「全然OK」
5人となった一行は歩きながら会話を始める。しかしなんと言っても背が高い。180cmはあるだろうか。レミリアはどう頑張っても見上げるしかなかった。
「名前は?」
「神童龍だ」
「・・・神童・・・」
その名を聞いた瞬間藍は少し考え始めた。
「何よ。知り合い?」
「いえ、どこかで聞いたことが・・・」
「・・・まぁ俺の名を知ってる者は少なからずいるだろう」
「有名なの?」
「ちょっとな。ところでお前らの名前は?」
霊夢、レミリア、咲夜は次々に名前を挙げていく。すると男は藍の名前を聞いた瞬間立ち止まった。
「どうしたの?」
「八雲・・・紫の親戚か?」
「!紫を知ってるの!?」
「・・・俺の恩人だからな・・・」
「・・・えぇ!?」
大雑把に内容を縮めると、昔龍は妖怪狩りをしていたらしい。妖怪狩りといっても依頼がないと絶対に傷つけることはしないそうだ。ある日出会った男と龍は仲良くなった。その男はただの鍛冶屋だと言っていた。龍は自分は妖怪狩りだと、悪くない妖怪狩りだと言うとその男は、俺もお前にいずれ斬られるのかねぇとつぶやいた。どういうことだと問いただすとその男は実は妖怪だと言う。しかし妖気をほとんど感じとれなかった龍は疑問に思った。嘘をつくな、妖気が感じられん。すると男はこう言ったそうだ。
「そりゃそうだ、今さっき契約してきたばっかりだからな。なりたてだ」
「・・・契約?」
その男は里ではかなりの剣豪だったらしい。しかし昔誤って友人を斬ってしまい、それ以来刀を持たなくなったそうだ。ある日男が仕事で外出している間に、妖怪に妻と娘を人質に取られたという。男は刀を持てばそこらへんの妖怪では全く歯が立たないほどの剣豪だったが、人質を取られているとなるとどうしようもない。それに刀はとうの昔に捨てた。すると妖怪は話を持ちかけてきたそうだ。
「おい人間。てめぇ強いんだってな。」
「・・・だからどうした」
「取引だ。その取引に応じればこの2人は助けてやる。どうだ?」
「・・・言ってみろ」
「神童龍という男を知っているか?」
「・・・いや、知らん」
「妖怪狩りをしている男だ。そいつを斬って欲しい。」
しかし男は口をつぐんだ。過去に斬ってしまった友人に誓って刀は二度と使わないと誓ったからだ。それに鍛冶屋にある鉄器を人殺しには使いたくはなかった。
「悪いが俺は昔刀を捨てたんだ」
「じゃあこいつらとはオサラバだな」
妖怪は男の妻と娘を結んでいる縄をグイっと上げた。男の妻はガタガタ震えている。
「お母さーん!!」
「うるせぇ!!」
「わ、わかった!その仕事は引き受ける!」
「お~う、それで良いんだよ。・・・そうだなお前が万が一その男と組むってなったらさすがに俺の命もヤバそうだからな」
「な、なんだ・・・」
「悪魔の契約だ」
「・・・なんだそれは」
その妖怪が言った悪魔の契約とか次のようなものだ。まず主と従者を決める。契約を結んだ2人はいつもお互いがどこにいるかわかる。従者は主に一生仕えなければならない。主も従者にしっかりと仕えてくれている礼をしなければならない。契約を結べばお互いに多大な力を得る。人間の場合は悪魔になる。この契約は従者からは解除できず、主の判断のみとする。主が死んだ場合は従者も死するものとする。
「悪魔だと・・・」
「そうだこの契約をしてお前にはあの男を殺しにいってもらう」
「ふざけるな!大体貴様は俺に何の恨みが・・・」
「おっと、そんなこと言っていいのかぁ?この子に首が飛ぶぜぇ」
妖怪は男の娘を縛っている縄をグイっと上げ長く尖ったつめを男の娘ののどに当てた。女の子は泣き叫んでいる。
「クソ・・・外道が・・・」
「やるのかやらないのかハッキリしろ」
「・・・・・・わかった・・・やってやる・・・」
龍は顔が青ざめていた。俺じゃん!。そう心で思っていた。
「まだお前の名前は聞いてないが・・・お前はそうでないと願うよ・・・。お前みたいな良いやつは斬りたくない・・・」
「・・・」
どうするどうするどうする。龍は決断した。
「・・・すまない。俺が神童龍だ」
「・・・やっぱりか・・・悲しき運命だなぁ・・・」
すると男は腰にかけていた刀を抜き、いきなり斬りかかってきた。
「!」
「本当にすまねぇ・・・何の恨みもねぇのに・・・本当に・・・」
男は泣いていた。どうすれば、どうすればこの家族を救える。龍は必死に考えていた。俺と手を組んで外道妖怪を殺して男も死ぬ。恐らくそれくらいの覚悟はあるだろう。しかしなぜやらないか。自分が死んだあとのことを思っているからだ。父のいない娘、主のいない家。自分の不在による一家の悲しみを生みたくない。だから刺し違えてでも外道妖怪を殺すということができないんだ。
「その契約はどうやったんだ?」
「・・・聞いてどうする」
「助けられるかもしれん」
「!!」
でまかせで言ったができないわけではない。内容を聞いてみないと。
「・・・何か紙のようなものに書いてたな・・・」
「・・・よし、任せろ」
「・・・!おい、お前の夫が帰ってきたぞ」
「え・・・」
ギィっとドアが開く。そこにはぐったりとしている龍を抱えた男が居た。
「ほ、ほんとに殺ったのか・・・!すばらしい・・・ヤツを殺せるとは・・・見込んだとおりだ・・・!」
「約束の品だ」
そういうと男は龍は地面に放り投げた。妖怪は龍の胴体にバツ印のように付いている血のあとを見ると確信したようにうなずいた。
「ふっふっふ・・・すまないな・・・礼を・・・言おう・・・」
「早く妻と娘を解放し、俺の契約を解除してくれ」
「ふっふ・・・わかった・・・」
すると妖怪はいきなり懐からナイフを取り出し妻と娘に斬りかかった。
「てめぇらはもう用済みだなぁ!」
「!!やめろぉ!!」
「キャーーー!!!」
しかしその動作を遥かに上回る圧倒的なスピードで龍は起き上がり妖怪を蹴り飛ばした。蹴り飛ばされた妖怪は壁に埋まり、うめき声をあげている。
「あっぶねぇ。予想はできてたが少し怖かったな」
「すまない・・・お前の言うとおりだった・・・」
「だろぉ?ああゆうバカは大抵そうなんだ。さて契約書みたいなものは・・・」
龍と男が人質の縄をほどいていると、不気味な笑い声が聞こえた。
「ぐっふっふっふ・・・」
「あぁ?まだ息あんのか」
「もう逃がさんぞ・・・2人とも・・・いや、全員始末してくれる・・・」
するといきなり男が低いうめき声をあげ始めた。
「!?あなた!?」
「てめぇ!何をした!」
「契約を追加したのさ・・・俺の寿命と引き換えに・・・その男を理性の飛んだ凶暴な魔獣に・・・してやったよ・・・」
「ぐがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
その男の周りは闇で覆われていた。龍はまずいと感じ、男の妻と娘を抱いてすぐに安全なところへ走っていった。ずいぶん走ったところで、古い民家の小屋のようなところに2人を座らせた。
「・・・あの・・・」
「ん?」
「あの人は・・・」
「・・・」
「大丈夫・・・ですよね?助かりますよね?」
「・・・あぁ」
「本当に助かりますよね・・・?」
「・・・すまん」
そう言うと龍は走り出し、男の元で走って行った。
「あ・・・」
男の妻が悲しい目で龍を見送っていると、耳元で誰かが囁いた。
「じゃーん」
「きゃあ!」
「ふふふー」
「だ、誰ですか!?」
「んー、このストーリーを最初から見てた視聴者みたいな感じかな?」
「え・・・?」
その女性はこのやりとりを全て最初から見ていたという。すると妻は少し狂い始めた。
「なんで・・・」
「ん?」
「なんで!なんで助けてくれなかったんですか!見てたんでしょ!?助けて下さいよ!苦しかったんですよ!あの人は今でも苦しいんです!あなたが手助けしてくれたらもしかしたら助かってたかもしてないのに・・・!」
「・・・なんで?」
「え・・・?」
「なんで助けなければならないの?このストーリーの登場人物に私はいないのよ?なぜ私が何かしなくちゃならないのよ」
「な・・・何がストーリーですか!人が苦しんでるのを見て楽しいですか!」
「楽しくないから居るんじゃなぁい」
「・・・え?」
するとどこからか巫女服を来た女性が飛んできた。男の妻と話していた女性を呼んでいるらしい。その巫女はスタっと舞い降りると女性に話しかけた。
「あいつ?」
「そうよ」
「面倒ねぇ。悪魔って強いのよ」
「いいじゃない暇なんだから」
「忙しいわよ、失礼ね」
「あの・・・」
「ん?」
男の妻は困った様子で2人のやり取りを見ていたが、たまりかねて声をかけた。
「そちらは・・・」
「んーまぁ正義のヒーローよ」
「え?」
「さっきまでからかってごめんねぇ」
「え?え?」
「それじゃあストーリーむちゃくちゃにしてくるから」
そういうと2人は飛んで行った。
「ぐがああああああああああああ!!」
「うぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
悪魔化した男と龍は戦っていた。当初は均衡しているように思えたが、戦いが長引くに連れて龍が不利になっていった。
「クソ・・・なんちゅうバカ力だよ・・・」
「がぁぁぁぁぁぁぁ!」
「だがな・・・力比べじゃ負けたことねぇんだよ!」
そう言いながら龍は男の顔面を思いっきりぶん殴った。男の顔はひどく伸びたが、戻り様にボディブローが龍の横腹をえぐった。
「ぐっふ・・・」
龍は吐血し、体勢が大きく崩れた。すの隙に男は黒いまがまがしい弾を龍めがけて飛ばした。かなりの至近距離だったため龍は避けきれず、横腹が少しえぐれた。
「ぐぉぁ・・・」
龍は力尽きたようにそのまま倒れこんだ。その龍に向かってトドメを刺そうと男は先ほどよりも大きな弾を用意していた。そして倒れている龍に思いっきり放った。が、その黒弾は何かにはじかれた。
「!?」
「危ない危ない」
「間に合ったわねぇ」
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
「あんたみたいなのを野放しにすると後々面倒なのよ。さっさと消えてちょうだい」
「ダメよ。封印するの」
「はぁ?」
「ちょっとアイツの相手しててくれないかしら」
そういうと女性は倒れている龍の元に駆け寄った。
「ちょ、ちょっと!なんでそうなるわけ・・・うわっ!」
女性は龍にゆっくりと話しかけた。
「生きてるー?」
「・・・だ・・・誰だ・・・」
「八雲紫って言うの。聞いたことあるでしょ」
「・・・賢者だったっけな。そんな有名人が・・・何の用だ・・・」
「今からあなたを外の世界に送るわ」
「!?」
龍はうつぶせに倒れたまま、顔だけを紫の方向に向けた。
「こっちにも優秀な医者がいるんだけど今忙しそうで相手してくれそうにないの」
「・・・なぜそんなことをする・・・」
「・・・あなたほどの強者があっさり消えたんじゃつまらないわ。あなた龍でしょ?」
「・・・なんで俺の名を・・・」
「名じゃないわ。真の姿よ」
「!!」
龍は驚いた顔を紫に見せた。紫は微笑んでいる。
「昔会った龍と妖気が似てたわ」
「な・・・」
「とりあえず傷がヤバそうだから送るわね。大丈夫よ。あっちの医者も結構優秀らしいから。今度迎えにいくわ」
「ちょ、ちょっと待っ・・・」
すると龍の真下にスキマができ、龍は吸い込まれるように落ちて行った。
「んでまぁ今に至るってわけだ。紫に礼がしたくてな」
「つってもあんた龍でしょ?悪魔くらい簡単に倒せるんじゃないの?」
「・・・殺したくなかっただけだ」
この話をレミリアと咲夜は興味津々に聞いている。藍は紫の意外な素顔を見たような感じでうれしいような不思議な感覚に陥っていた。
「こっちにはどうやって来たの?」
「いやぁだいぶ探したんだ。するとこっちのことを知ってる2人が居てな。手伝ってもたったよ」
「へぇ」
「あぁあと俺を助けてくれた巫女の方だが・・・お前の母さんじゃねぇかな?」
「!」
「似てたし」
「着いたわ」
「お」
レミリアが指差す方向には暗い闇に包まれているような不気味かつ見事な館があった。
「今日は泊まっていきなさい」
「すまん。・・・あ、そういえば・・・藍と言ったな」
「あ、ハイ」
「紫の知り合いっつーか親戚みたいな感じだろ?紫によろしく言っておいてくれ」
「わかりました」
そう言うと藍はひゅーっと飛んでいった。
「じゃあ私も帰るかしらね」
「霊夢は泊まっていかないの?」
「え?」
「泊まってってよ」
「あー・・・」
「俺からも頼む。15年間もここを出てたんだ。何か変わってないか聞きたい。」
「あんたまで・・・まぁいいわよ」
「やったぁ!咲夜!紅茶用意してて!」
「かしこまりました」
そういうと咲夜はタンと飛び立ち館に入って行った。すると龍はいきなり辛気臭い顔をしてしゃべり始めた。
「・・・ほんと、すまんな」
「何が?」
「まずこんな真夜中に来てくれたこと。それと・・・お前の親にな・・・世話になったから」
「・・・ふん。礼が言いたいなら今度神社に賽銭でも入れなさい」
「ハッハッハ。了解」
「紫様ぁ」
「んー・・・」
「言ってきましたよー」
「んー・・・」
「伝言があります」
「んー・・・」
「神童龍という男がよろしく言っておいてくれと・・・」
「・・・やっぱりあの男だったのねぇ」
すると紫はムクリと起き上がってボソっとつぶやいた。
「迎えにいくって言ったんだけどねぇ・・・まぁいっか」
「え?」
「藍」
「はい?」
「話は聞いた?」
「まぁ・・・はい」
「話に出てきた悪魔の男の契約解除と封印解除するから忙しくなるわよ」
「かしこまりました」
「あと藍」
「はい?」
「晩御飯まだ?」
「・・・もう朝ですが」
まだまだ批判下さい
批判を頼りに精進したいです
華仙の時みたいに龍族というだけかもしれん
それに情が入った的なのも書いてあったと思うがな
まぁ作者がどう考えてるかはわからんが
これは続くのかね?
そんな雰囲気が出てるが
にじふぁん…
そんなサイトがあったにも関わらず調子に乗ってしまって申し訳ございません。
もちろん続きも考えております。
ですが少し「にじふぁん」の方で鍛えて来たいと思います。
この度は多くのご意見非常に参考になりました。
ありがとうございました。
成長して帰ってくるのを、楽しみにしてます!