Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

完全断罪! ジャッジメント☆えーき  第一話『狙われた幻想郷。別れはいつも突然に、悲しみを乗り越えて旅立つ少女は鮮血のメロンパン』

2006/08/29 16:10:06
最終更新
サイズ
8.99KB
ページ数
1


「私の名はジャッジメント☆えーき! 唐突だけど幻想郷が狙われているわ!」
 妙に煌びやかな後光を背負って、もの凄く真面目な表情をした映姫は襖を開けた。
 折りしも夕食の時間。襖を開けた先は居間であり、畳敷きの上に丸いちゃぶ台が乗っている。
 そして、全く何事もないかのようにお櫃からご飯をよそっている小町の姿。
「で、何に狙われてるかというとね」
 言いながら映姫は小町の反対の場所にいそいそと腰を下ろす。
 ちゃぶ台の上には湯気立つ味噌汁に、惣菜、お浸し、漬物と程々に質素だが無駄のない献立が揃っていた。
「何とこの幻想郷を狙う組織の存在が!」
 無駄にヒートアップする映姫。
 小町は全く気にする事無くごはんをよそい終え、それを無言のまま映姫に差し出した。
 礼も言わずそれを受け取り、映姫は左手に椀、右手に箸を構える。
「いただきます!」
 元気のよい宣言。これでごはんも美味しいでしょう。
「それでね? 聞いてる小町」
 宣言した割に食べ物に手をつけず、映姫は小町に眼を飛ばす。
「聞いてますとも」
 小町はぞんざいに答えた。
 瞬間、映姫の柳眉がぎっ、と跳ねる。
 椀が勢いよくちゃぶ台に下ろされ、がちゃんと音を立てた。
「私に仕える死神ともあろう者が私の話を聞かないなんて! はっ! まさか小町――」
 忙しく表情を変え、最終的に映姫は疑惑のまなざしを小町へと注ぐ。
「……は?」
 全く話に付いていけていない小町。
「そう、そうだったのね。まさかあなたが組織の手先として私をスパイしていたなんて!」
 ビシィ! と人差し指を小町につき付けてまでの圧倒的断定。
 訳が分からない小町にとっては全く事情がつかめないまま何と言うか冗談じゃない。
「いやいやそれはちょっと待て!?」
 流石に“ああ毎日忙しいから四季様もとうとう可哀相に”と常ならぬ映姫の言動をスルーし続ける訳にもいかず、小町はつい声を荒げてしまう。
 通常ならこの反応は当然で問題も何もない筈なのだが、今の映姫にとってそれはもの凄い効果を生んでいた。
「それが閻魔に対する口の聞き方ですか!? やっぱり、あなたは敵の一員なんですね!」
 勢い良く立ち上がる映姫。
 そのせいでちゃぶ台の上の皿等の諸々がかちゃんと音を立てる。
「だから何でっていうか何があったんですか四季様!? ていうか敵とかなんとかどうしたんですか一体」
 このままでは何かよく分からないまま押し切られてしまうという不吉を感じた小町もまた立ち上がった。
「この期に及んでまだシラを切りますか。良いでしょう、ならばこのジャッジメント☆えーきの聖なる刃を受けてみよー!」
 そう言ってジャッジメント☆えーきは笏の代わりに箸を構える。
「落ち着けー!」
 両手でそれを制止しようとする小町。
「断る!」
 だが効果が無い。
「分かっててやってるとか言うんですか!?」
「そうやって私を油断させようという策略だというのは、全て丸っとお見通しです!」
「パクリ!?」
「うるさいうるさいうるさいーっ!」
 叫びながら持った箸をぶんぶんと振り回すその姿はまるで駄々っ子。
 だが侮る事無かれ。例え可哀相な事になったとしても、彼女は何を隠そうジャッジメント☆えーき。
 閻魔パワーによって増幅されたその力は悪を裁く正義の証。
「四季様、とりあえず落ち着きましょう。話せば分かります。っていうか分かれ」
「往生際が悪いですよ。例えあなたが私の部下だとしても、その正体が分かった以上、このまま見過ごす訳にはいきません!」
 ちゃぶ台を挟んで相対する二人。戦いの火蓋はここに切って落とされた。
 限りなく一方的に。
「喰らいなさい! これが正義の力!」
 そうして放たれるは、どこから持ち出したのか、数多の箸。
 ジャッジメント☆えーきを中心に放射状に繰り出されたそれは、狙った物にも狙っていない物にも平等に正義の鉄槌を与えていった。
 そんな物で語られる正義が一体どんなものなのか、小町は知る由もないし、知りたいとも思わない。
 何よりも大切なのは戦場と化したちゃぶ台の上に並んだ献立をいかに守るか。
 既に左手にご飯、右手に味噌汁は確保した。
 だが両手が塞がった今、それ以上の確保は困難を極める。
 そうしている間にも、ジャッジメント☆えーきの攻撃はその激しさを増していき、やがてそれはちゃぶ台の上に残された最後の聖域へと。
「ちょ、ご飯! お茶倒れてる! あぁっ、漬物が串刺しに!」
 無常かな、戦場においては信じられるのは自分のみ。
 力を持たない者(食材)たちはただただ蹂躙されるばかり。
 しかし戦火の中に散っていくのが小町の分だけなのは、狙っているのか偶然なのか。
 そして、小町がその両手に守っていた茶碗が箸に貫かれたその時、不意にジャッジメント☆えーきが動きを止めた。
「このプレッシャー……」
 右手の指に挟んだ三本の箸を放とうとした姿勢のまま、目の前に立つ小町の姿を見やる。
 床も壁も天井もボロボロ、ちゃぶ台も自分の分の献立が乗った部分以外は悲惨なもので。
 だがジャッジメント☆えーきはそんな事は気にしていない。犠牲なくして正義は成り立たないのだ。
 そんな事よりも――
「四季様……」
 小町が小さく呟いた瞬間、その場の空気ががらりと変わった。
 冷たく、どこまでも冷たく、それは音さえも凍り付いてしまいそうな程で。
「ふふ、ようやく本性を現しましたね。やはり私の目に狂いは無かった! ならばこちらも本気でいきましょう!」
 ジャッジメント☆えーきが高らかに声を上げると、持っていた箸を振り捨てて右手を背中に回す。
 そこからスルスルと出てきたのは一本の笏。
 それを胸の前で横一文字に構えると、どこからともなくこの場に全く相応しくないファンシーな音楽が流れてくる。
「封印解除!」
 ジャッジメント☆えーきが短く叫ぶと同時に、笏から虹色の光が溢れ出た。
 今までその身を纏っていた閻魔の衣装は光のとなって弾け飛んで、それに代わるように虹色の光が全身を覆っていく。
 そしてそれは左右に小さな白い羽飾りの付いた可愛らしい靴となり、紺のハイソックスとなり。
 同じく紺のやたらと短いプリーツスカート、白いセーラー服の襟には二本のラインが輝いていた。
 そして虹色の光も弾け飛ぶと、ジャッジメント☆えーきが半身になって突き出した左手の指先をビシっと小町へと向けた。
「あなたの罪を完全断罪! ジャッジメント☆えーき、ここに登場!」
「あのぅ……そろそろいいっすか?」
 すでに裁判長なのか弁護士なのかよく解らないポーズを決めたジャッジメント☆えーきに小町がおずおずと尋ねる。
「あ、どうぞ」
 こういう所で律儀に返事をしてしまうジャッジメント☆えーきこと四季映姫は骨の隋まで楽園の裁判長であった。
 とかく、変身中は攻撃してはいけない、というお約束は守られる事に意義があるのだ。
「それじゃいきますよ……!」
 小町は右手を掲げ、空に向かって相棒を呼び寄せる。
「デス・シックルー! カァーム・ヒア!」
 ガシャーン! という窓ガラスの砕ける音と共に外から飛び込んで来たのは小町愛用の死神の鎌。
 先端がへにょりと曲がっているのがチャームポイントの粋なアイツである。
「ふふふ……四季様、とうとうあたいを本気にさせちまったんですね……」
 愛用の鎌を横手に構えながら不敵に嗤う小町はまさに悪役。
 すなわち、悪即斬である。
「いきなりですが究極必殺!」
 高らかと宣言するジャッジメント☆えーきの両手が掲げる笏から白光が迸り、天高く伸びていく。
「いきなりっすかー!? こういうのは一度ピンチになってからだってこないだ運んだヤツが言ってましたよー!? リュックサック装備の」
 小町の抗議と訳の解らない倒置法は無視して光は伸び続け、天へと届く。
「ラァーストォ! ジャァァッッジメーーーーーーーーーーーーントォ!!!」
 聖なる審判の光は真理の輝きを白と定めてジャッジメント☆えーきの雄叫びと共に振り下ろされる!
「わわわっ! 文句なら……」

 ぼこぉ!

 あ、なんか嫌な音がした。
 それもそのはず、ジャッジメント☆えーきは白い光じゃなくて手に持った笏を思い切り小町の脳天に叩きつけたのである。
 ちなみに白い審判の光は伸びただけで部屋の天井を突き破る事も無く、家屋は無事なままであるあたりがジャッジメント☆えーきの粋な計らいなのだ。
「ほぉぉぉぉぉ……」
 脳天を襲った物理的な痛みに思わず頭を抱えてしゃがみこむ小町。いっそ白光に裁かれた方がマシだったのかもしれない。
 悪人と戦うからって他の人妖の住む建物は破壊してはいけない。そんな事をするのは光の巨人達だけで十分だ。
 部屋中に箸が突き刺さってたり、すでに部屋はいっそ壊してくれた方が清々する気もするがそれはこの際置いておこう。
「これにて断罪完了ですっ!!」
 背後から左右に3本ずつのレーザーで後光を演出しながら小町に背を向けて笏を振り払うジャッジメント☆えーき、所為決めポーズというやつである。
 どうでもいいが計6本のレーザーは部屋の襖や障子を突き破っているあたり、ジャッジメント☆えーきも結構天然なのかもしれない。
 ともあれ、悪は滅びた。
 虹色の光に再び包まれたジャッジメント☆えーきは元の四季映姫の姿へと戻る。
「さぁ小町、敵の組織に付いて話すのです」
 映姫は小町を優しく抱きかかえ、膝枕をしてやる。これもお約束というやつである。
「うぅ……四季様……あたい……」
 小町が苦しげに口を開く。
「そ、組織なんて知らな――うぐっ!」
 ヒュッ! という風切り音が鋭く二人の間を駆け抜け――
「何者です!?」
 小町の額に黒々とした矢が突き刺さる!
「小町! どうしたのです小町! 組織とはなんですか!」
 映姫は小町を激しく揺さぶりながら問い続ける。
「四季様……またいつか二人で……賽の河原へピクニックに行きましょうね……」
 ガクッと首をたれて小町は意識を失った。
「小町!? 小町ぃ! こぉぉぉまぁぁぁぁぁぁちぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
 映姫の絶叫が空しく木魂した。
「この矢は……八意製……永遠亭に何か関係が!?」
 すくっと立ち上がる映姫の手は笏をきつく握り絞めていた。
 ゴトンッ! と音がして小町の頭が床に落ち「きゃん!」という声が聞こえた気がしたが、あえて無視をする。
 そんな小町を悔しそうな表情で見つめる映姫。
「小町……必ずあなたの仇は討ってみせます! 安らかにお眠りなさい……仕事をサボっていいわけじゃありませんが」
 さりげなく小町へと釘を刺すのを忘れない映姫は決意を新たにする。
「永遠亭……まずはそこに向かってみましょう!」
 いつの間に時間が経ったのか誰にも解らないが、とにかく夕日をバックに歩き出す映姫。流れた訳でもないがとりあえず涙を拭う。

 ジャッジメント☆えーきの苦難の旅の始まりであった……。




























(注:続きません)
日本の中心でゆあきん(炉)可愛いよと叫ぶ。
ジャッジメント☆えーき 製作委員会
コメント



1.名無し妖怪削除
何かタイトルに火曜サスペンス混じってません?
2.名無し妖怪削除
不覚にもあとがきで吹いたw
3.名前が無い程度の能力削除
もうね。すごいw