ざわざわ
ここは紅魔館大広間~グレートキャッツガーデン~
普段は使われないこの部屋に紅魔館中のメイド+αが終結している
「あーマイクテス、マイクテス……んっ大丈夫そうね」
壇上にてマイクテストしてるのは我らがメイド長
「それじゃ全員こちらに注目しなさい」
さあ、戦争の始まりだ
「先の満月から月が欠けまた満ちるまで、生粋の従属たる貴女達には多大なる鬱憤を溜め込ませてしまった事をここに謝罪しましょう。
そしてそんな貴女達に朗報があります。
今宵の満月にもかの馬鹿馬鹿しく壮大な戦が開かれることになりました。
どうにもこうにもお嬢様方は満月の夜には、この地に多大な従属の血を吸わせなければ気が済まないようね。
まったく馬鹿馬鹿しいわ。
理由の無い戦なんて無用だとは思わないのかしら?
あら失礼、ここに集まっているのは所詮私と同じ馬鹿の集まりだったわね。
……でも貴女達?私は正直不安よ前回の満月から今宵の満月まで、この生きるための馬鹿馬鹿しい戦から離れていた貴女達が本当に戦えるのかしら?
武器を後ろ手に隠しながら偽りの涙を浮かべて命を乞う敵を躊躇なく倒せるのかしら?
私はとてもとても心配なの、だから聞かせて頂戴貴女達!!
割と平和……かもしれない生活に牙を抜かれたかも知れない貴女達!!
貴女達は命の危険の……きっと無い安穏とした生活を捨ててまで、種の根源に関わる同族殺しを掲げてまで、この丸い月と私に一体何を望む!」
「「「「「戦争!(クリーク!) 戦争!(クリーク!) 戦争!(クリーク!)」」」」」
「よろしいならば戦争(クリーク)よ。
今宵も滞りなくこの戦が行われる事になった事をまずは感謝し、そして感謝を終えたなら最早その感情は邪魔だから捨て去ってしまいなさい。
己が身体に残しておくのは、命令を忠実にこなす狗のような神経回路と泣き叫ぶ敵を笑いながら十六等分できるだけのとち狂った神経回路のみ。
たった今から。
我々は開戦する。
我々は蹂躙する。
そして我々は勝利する。
一人一食、場合によっては二食、三食しても構わない。
戦績による鉄十字章授与は無いが、それにも勝る何かが確実に貴女達の胸の内に宿る事でしょう。
とにかく
眼前の敵は咀嚼しろ。
死に絶えた牛に包丁を入れろ。
折れた小骨と共に唾を飲み込め。
石をも穿つ程の鉄血たる意思を箸に宿らせ、三千世界の悉くに我等の熱き空腹を叩きつけろ!」
メイド達のぎらついた眼を見回すと満足したようにうなずき先ほどから紅魔館当主専用椅子~酸味の効いたAB型~に腰掛けながら黙って聴いていたレミリアにうやうやしく頭をたれる
「お嬢様ご命令を」
「命令(オーダー)は唯一つ(オンリーワン)見敵必食(サーチアンドデストロイ)、以上よ(オーバー)」
「それでは只今より、第18回ドキッメイドだらけの紅魔館焼肉大会~ポロリもあるよ~を開催します!!!」
うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ
そして大広間は熱狂の渦に包まれた
「その肉は私のだぁぁぁぁぁぁっ」
「あっずるい、それまだ焼けてないじゃん!!」
「へっへー今回のレギュレーションはレアありだもんねー」
「いくらレア有りだからって表面の色すら変わってない肉を持っていくなー」
「ちょっとなんで今回の大会には鳥肉がないよ!!」
「なんでも屋台の店主から苦情がきたらしいわよ」
「ウェルダン好み組はいつ食べれるのよぉぉぉぉぉぉぉっ」
「焼肉はレア組が圧倒的に有利だからねぇ」
「ロース50人前あがりっ!!」
「カルビ25人前とハラミ10人前オーダーはいりましたー!!」
「だぁぁぁぁぁっ厨房組はいつ参加できるのよ!!」
まさに戦争、まさに阿鼻叫喚
今この瞬間確かに大広間では敵味方入り混じった泥沼戦が行われていた
「……それにしても」
「どうなされました?お嬢様」
メイド達とは離れた場所で紅茶を飲んでいたレミリア
空になったカップに咲夜が紅茶をそそいでいる
「毎度毎度呆れるぐらい騒がしくなるわねこの会は」
「まあ焼肉は戦争ですから」
「…………そう?」
「戦争です」
「あーっ、そこのゲスト二人!!レギュレーションはちゃんと守ってください。
魔理沙さん!!箒でバレルロールしながら肉を攫って行くのは禁止ですよ!!
霊夢さんも針で肉を刺すの禁止です!!」
「ちょっとぐらいいいだろ?小悪魔」
「そうよ少しぐらい多めに見てよね」
「ダメです!!」
「…………平和な戦争ね」