みなさんこんばんは。子悪魔こと小悪魔です。暑い日が続いていますが、皆さまいかがお過ごしでしょうか。
今、私はパチュリーさまの書斎に幽閉されています。
「こぁー」
「こぁー」
パチュリーさまとレミリアさまは揃って私の前でやる気のない顔で遊んでいます。
私はとりあえず床に体育座りして見物してます。してますというか、後が怖いので逃げられずにいます。
「こぁー!」
「こぁー!」
両手を挙げてうだってます。
「パチェ、おでん食べたい」
「あつい」
「パチェ、かき氷食べたい」
「さむい」
「いつでも快適、紅魔館っ☆」
「きゃはー」
☆って何ですか? ヒトデです。
「パチェ食べたい」
「きゃはー」
きゃはーの瞬間こぼれる、パチュリーさまの見たこともない満面の笑顔。誰ですかあなた。
私、ちょっとだけときめいちゃいました。きゃはー。
「こぁー」
「こぁー」
これはよくわかりません。
「こぁあー」
「こぁあー」
これもよくわかりません。
「こぁ!」
「こぁ!」
よくわかりませんが怒られました。
元気なのはよいことです。
「パチェ、毎日毎日暑いわ」
「そうね」
いつでも快適な紅魔館はどちらへ。
「こう暑いと元気なくなるわね」
「そうね」
私よりずっと元気ですよ、あなたたち。
「アツイ!」
「このアツイビート!」
どこからか、パチュリーさまはエレキギター、レミリアさまはマイクを取り出して叫びました。そして歌い始めました。
「アル晴レタ日ノ」
おっと、大人の事情でこれ以上は色々と無理です。
私はフルで聴かされましたが。
しかもお二人のオリジナル・ロック・アレンジ・ヴァージョンです。
「幻想郷に著作権はあるのか!」
「知るか」
ここで私は、パチュリーさまからレミリアさまに話しかけたことが一切ないことに気付きました。どうでもいいですね。気付いたから記しただけです。
きっとレミリアさまはきっかけ担当で、パチュリーさまはよくわかりません。知りません。彼女の複雑すぎる脳内は私のような凡人が考えても仕方がないのです。
「あー。パチェ食べたい」
レミリアさまはまだ言ってます。
「ねーパチェ、食べてもいい?」
「バニシュ」
「あらまあ体が消えたわ。イリュージョン」
「デス」
文字通りの必殺コンボです。
レミリアさまはこの世から消えました。
「あー。パチェ食べたい」
それでも話しかけてきます。さすがは紅魔館のお嬢さま。並大抵のことでは死にません。
「パフェにしときなさい」
「はーい」
レミリアさまも素直に言うこと聞いていることだし、ちょうどそこに高さ一・五メートルのパフェがあるので、私はいつもの癖で用意してみました。
「小悪魔、用意はいいけどでかすぎるわ」
「でかすぎるわ」
初めてパチュリーさまから先に口を開きました。
「それにあなた、ちょっと胸もでかくなったんじゃない?」
「なったんじゃない?」
本以外は見てないようでよく見てるんですね、パチュリーさま。ぽっ。
「うざいわね」
「うざいわ」
罵りはレミリアさまのほうが早い。むかつきます。
「このばかこあくま!」
「ばかこあくま!」
「ざこ」
「むのう」
「ばか」
「へんたい」
あらまー、私ってばパチュリーさまにまで罵られまくりです。ぽっ。
レミリアさまの声は届きません。
「まあせっかく小悪魔が用意してくれたし」
「してくれたし」
「食べましょう」
「しょう」
さすがパチュリーさま。アメとムチの使い方がお上手。ぽっ。
「このばかこあくま!」
で、またパチュリーさまは怒り出しました。ぽっ。
「すぷーんがないじゃないのぉぐげほげほごふげは」
パチュリーさまはむせました。
私はちょうどそこにあったスプーンをお二人に差し上げ、ちょうどそこにあったマスクをパチュリーさまに装着しました。
「装着!」
「この間0.05秒」
レミリアさまはうるさいです。
「男なんだからグズグズしないの」
男じゃないですけど、はい。パチュリーさまが仰るのなら。
レミリアさまはパフェのてっぺんにお星様を乗せてました。
「このばかこあくま!」
「ばかこあくま!」
怒られました。ぽぽぽっ。
「マスクしてたらパフェが食べられないじゃない!」
「じゃない!」
ごめんなさい。
「げほげほ」
そこでむせますか。ごめんなさい、外せばいいのか悪いのかわかりません。
「こぁー」
「こぁー」
またですか。
こぁーって私のことですかね、ひょっとして。
「コァッ」
「コァッ」
裏声まで使って何ですか、もう。
「しゃーくねーつ」
「ごっどふぃんがー」
二人でやる気のないねこぱんち。
………。
何でしょう、これ。
「こぁちゃん! コァー! アァー!!」
………。
やっぱり私のことなんでしょうか。
と、ここでおじょーさまの気合一発、掛け声が入ります。
「ハイ!」
「ちゃちゃちゃちゃーちゃーちゃーちゃっちゃちゃー」
お二人は勝ったようです。えふえふ。
「こぁー」
「こぁー」
………。
「たいへんよレミィ」
「どうしたパチェ」
「小悪魔怒っちゃったみたい」
「そう?」
全然そんなことないですが。
「小悪魔をなだめなきゃ」
「どうするの?」
別に怒ってないですが、怒ってることになりました。
「レミィ、アレを使うわよ」
「OK牧場」
何でしょう。
「小悪魔」
はいパチュリーさまなんでしょう。告白ですか? きゃっ。
「好きよ」
「こぁ!?」
………は? あ、え、あっ、ええ、な、えっ……。
レミリアさまも私も時が止まりました。
と、ここでおじょーさま恒例の気合の掛け声。
「ハイ!」
「発する発する」
発されました。ポン!
そして時は動き出す。今の話はなかったことになりました。
「十秒後にあなたの首が折れる魔法をかけたわ」
それは大変だ。
そして恒例のー。
「ハイ!」
「は、はほい」
あれっ。パチュリーさまってば動転してます。アドリブ通じなかったみたい。
「………」
「………」
あ、気まずい沈黙。
「ハイ!」
「てない」
………。
……………。
…。
パチュリーさま、それはご自身のことで?
「テイク3いくわよ。ハイ!」
「ここで舞台は遊園地!」
フォローする側、される側。これは絆でしょうか。
「ねえねえパチェ、あれに乗りたいわ」
「ジェットコースターね。よーし、お姉ちゃん頑張っちゃうわ」
パチュリーさまパチュリーさま。あなたがそんなものに乗ったら死にそうな気がしますよ。
「私があなたのジェットコースター! さあお乗りになって!」
………。
「貧弱そうだけどよし、お嬢様またがるわよ!」
四つんばいのパチュリーさまと、それにまたがるレミリアさま。
とてもとても怪しいです。
「うふふふ、お姉ちゃんトばしちゃうわよー」
「イっちゃえー!」
………。
「ハイ!」
レミリアさまの掛け声とほぼ同時に二人並んで立ち上がる。速い。動きより切り替えが。
「ここで舞台は屋台へ移る」
向き合う二人。
「いらっしゃい! 貧弱そうなお嬢さん」
「物静かだと言ってくれないかしら」
レミリアさまは店主のつもりらしくお寿司を握る真似をしています。寿司屋台?
空中に腰かけるパチュリーさま。いわゆる空気イスです。
細い足がプルプルしてますが、大丈夫でしょうか。折れそうです。
「へいらっしゃい物好きなお嬢さん。ご注文はなんにします?」
レミリアさまは、荒っぽいけど気さくな店主をやりたいみたいです。巻き舌。るるぁっしゃいっ!
「貧弱ラーメン」
ラーメン屋台でした。じゃあ、レミリアさまのその手の動き何? ってことになるし、それは誰にもわからない。ヤバイ。誰にもわからないなんて凄すぎる。
「ハイ!」
いつもの掛け声。今のがオチだったみたいです。
「ここで小悪魔の首が折れたー」
ぎゃあ。
明らかに十秒以上経ってましたが、まあ延命処置とかを施してくれたんでしょう。
「PO・KI・PO・KI☆」
折れた音ですか。またヒトデですか。
「小悪魔」
はい。
「さっきから体育座りしてるけど」
はい。
「ぱんつ見えてるわよ」
きゃー。
とりあえず正座します。
「おいレミィ」
レミリアさまは何を思ったのか、おもむろに私の隣で体育座りしてました。いつのまにか。
「なぁにパチェ」
「あんたは見せびらかすんじゃないの」
このお嬢、ちゃんとパチュリーさまのいる角度でのみ見えるように見せ方を調節し私の位置からだと見えそで見えないもどかしさにぱんつぱんつ。そしてパチュリーさまの視界に君臨する(と思われる)ぱんつ。ぱんつ。ぱんつ。ぱんつ…。
あー、いやまあ、別に私、ぱんつに興味はないんですが。パチュリーさまのしか。
「実はぶるまでしたー」
………。
それはそれで……あ、いや……。
……何二人で私の反応うかがってますか。
「ハイ!」
はい。
気付けばレミリアさまは既にパチュリーさまの隣です。速すぎます。
「りゃりゃまる!」
「パチュコロ!」
………。
いきなり揃って私のほう見て、何ですか。ネタ振りですか? 突っ込み待ちですか? 困ります。
………。
こぁりー☆ とでも言えばいいんですか。
「テイク2ね。ハイ!」
あのー、これ無理がありませんか?
「からまる!」
「ころがる!」
………。
無理があるどころの話じゃなくなりました。でも彼女たちは容赦ってものを知らないんです。
だから揃って見つめないでくださいよ。
ドキドキしちゃうじゃないですか。私だって乙女なんですよ?
「テイク3。ハイ!」
今日はいったい何回この掛け声を聞けばいいのでしょう。
「はげまる!」
「ぴっかり!」
てーかりー。
「テイク4」
あ、ダメでしたか。そりゃまー、何も言ってないから当り前ですが。
「小悪魔」
はい。
「あなた黙ってないで何か言いなさい」
そんなこと言われても、あなたたちのパゥワァーに対抗できる自信がなくて、声が声になりませんパチュリーさま。こんな私を叱ってください、罵ってください、さっきみたいに。もっともっとぉっ。
でも陰湿ないじめはやめてください。
「ハイ!」
さっきから、「ハイ!」ってタイミングを合わせるのはレミリアさまですが。最初にセリフを放つのもレミリアさまなのであまり意味はなさそうな気がします。これ以上ないくらいどうでもいいですが。
「こあくま!」
「しましま!」
………。
人のぱんつの柄を大声で叫ぶのもいじめでしょうか。
「テイク5。ハイ!」
今更ですけどね。もうこれ絶対いじめだ。
「こあくま!」
「昨日は黒!」
昨日も見てやがりましたか。いつの間に。勘弁してください。
……これでも悪魔ですので、淫魔っぽくアダルティな黒にしてみました。そう、目指すはオトナの女っ。あ、どうでもいいですか。すみません。
「テイク6。ハイ!」
私が何か言うまで続けるつもりなのでしょうか。
「こあくま!」
「おとといは知らない!」
よかった。
………。
おとといはパチュリーさまに倣って、はいてませんでした。
………嘘ですよ? 嘘ですからね?
「………」
「………」
なんとなく時が止まりました。
この人達がちょっと黙っただけで、ヴワルの中はとても静かになります。館内ではお静かにお願いします、無理とは思いますが。
関係ないですが足が痺れてきました。姿勢崩したら怒られますかね。何をしても怒られそうです。
ああ、パチュリーさまこわい。でも好きです。レミリアさまはひたすら怖いですガクブル。
「ハイ!」
まだやりますか。
「こあくま!」
「明日は白! にしてほしい!」
そんなご希望を申し上げられましても、なんと答えてよいやら。
困っちゃった私に、急に声のトーンをワンランク下げたパチュリーさまは言います。
「小悪魔」
はい。
「そうやって『ちょこん』って正座するあなたの姿はとても可愛らしいわ」
嬉しいですが、余計困ります。足が痺れたのを見越して言っていませんか?
「だからこのマスクそろそろ取ってちょうだい。パフェが食べたいのよ私」
それを聞いたレミリアさまは、ちょうどそこにあったチェックのベレー帽と、赤みのかかったサングラスをパチュリーさまに装着しました。
「この間、僅か0.05秒」
レミリアさま、うるさいです。
「おいこらレミィ。あなた、私を何者に仕立て上げるつもりなのよ」
「変態」
「あなたと同類になるつもりはないわよ」
レミリアさまは変態でしたか。知ってましたが。
それに加えてパチュリーさままで変態になられては、ああ、でも、いややっぱり、いいかも。
きゃはー。
「でも残念ね。それを装備した時点であなたは変態なのよ」
な、なんだってー。
「なぜなら!」
「別に聞いてないんだけど」
「いいから聞きなさいよねー」
テンションが普段のものになってきました。あーよかった、そろそろ私も解放されそうです。
これで普段のものなんですか? そうなのです。
「じゃあ聞くけどWhy?」
「だって、パチェってば私を色眼鏡を通して見てるんですものっ」
赤いサングラス。
「………」
「………」
………。
言い切って満足げな表情のレミリアさまですが。
「小悪魔」
はい。
「ざぶとん全部持ってって」
…はい。
「えー。今の面白いじゃないっ」
お嬢さまは、さぞかし落胆のご様子です。私は久々に足が伸ばせたので幸せです。パチュリーさまはジト目です。
「帽子について言及されてない。テンポ悪い。満足げな顔がむかつく。諸々」
てってけてれれれ、てんてん、ぱふ。
楽太郎さま、大変かと思いますが頑張ってください。代アニで。
「小悪魔。ついでに私のサングラスと帽子とマスクも持ってって」
はい。取りました。
「ハイ!」
「パチュリーと!」
「レミリア!」
「あと小悪魔の」
「でっどまんずちぇすとー」
あー。テンション戻りましたね。嫌だ。私を巻き込んでほしくなかったです。
二人は仲がよさそうに笑顔で手を繋ぎ合ってました。いつのまにか。一瞬で。
「小悪魔」
はい。
「あなたクラーケン役よ」
無理です。ようかん食べてもあの大きさにはなれません。いくら悪魔でも、契約者の命令でも、不可能の壁は越えられません。
「じゃあパチェはジャックの役ね。貧弱そうだけど」
今度はレミリアさまが無理難題を仰りました。
「わかったわ。じゃあ小悪魔」
はい。
パチュリーさまは割とノリノリです。
「私に思いっきりツバ吐きかけなさいよ」
!!
そのシーンですか!?
ご主人さま、それはレベル高すぎます。私のような低級悪魔にはそんなこと不可能です!
あーでも汚すほうも楽しそうだなあ、なんて思いましたが、すぐ「永遠に無理だろう」と思い直しました。
「やったら殺すけどね」
お嬢様のこんな脅迫もあり。彼女のこれはもう脅迫では済みませんので利口にすることにします。
「やったら殺すけどね」
ご主人さまも脅迫してきました。そうですよね。すぐ行動に移さなくてよかったです。みんな怖いよう。
会話の流れが不自然だとか、そんなのはもう、あまり気になりません。
「ハイ!」
「パチュリーと!」
「レミリアの!」
「はい魔法いくわよ」
「OKOKいつでもきなさい」
急ですねパチュリーさま。そういうとこ好きです。
「きしゃーっ」
「ぐにゃーっ」
魔法ですか。魔法ですよ。
「ぐもぐも」
「ぐへぐへ」
魔法と言うより不思議な踊りです。MP下げられっぱなしです。
「びちょびちょ」
「あふんあふん」
「ぎしぎし」
「あんあん」
「んっ…ぁあぁっ」
パチュリーさま。最後の声はせくすぃーすぎます。心の中で悶えてみました。きゃはー。
と、ここで空中から突如ギターとマイクが再来。
「まほうのことばー。ふたりだけにはわ」
大人の事情で。
「こぁー」
「こぁー」
はい。
「ところでレミィ」
「なによ」
あ、別に私のこと呼んでるわけじゃないみたいです。まだよくわかりません。
「甘い恋がしたい」
「私とハチミツのように甘い夜を過ごしましょう」
いやいや、ここは私とどうですか?
「魔理沙としたい」
「ダメ。あいつはダメ。レミリア許さない」
とりあえず私も反対します! というより私に恋してください! お願いします! 怖くて声には出せませんが!
ずっと陰から見守っているけど、どうしても声をかけることができない私純情少女なのでお願いしますパチュリーさま。
「じゃあ駆け落ちするわ」
「いやああああ」
ずっと陰から見守っているけど、どうしても声をかけることができない私純情少女なのでお願いしますパチュリーさま。
「愛の逃避行」
「嫌よパチェ、私を置いていかないで!」
ずっと陰から見守っているけど、どうしても声をかけることができない私純情少女なのでお願いしますパチュリーさま。
「それより、どうして小悪魔は喋ってくれないのかしら」
ずっと陰から見守っているけど、どうしても声をかけることができない私純情少女だからです。
ホントのところは、迂闊に喋って白けさせでもしたら殺されるからです。というか、この二人に絡まれた場合、何を言ってもデッドエンドですし。
大抵のひとは展開についていけず首が折れます。私はー、まー、慣れてますから。
理想と現実の溝は大きいですね。
「三人同時に喋ったら読みにくいからよ」
「そーなのかー」
「そーなのよー」
なるほど、そうでしたか。思わず本人も納得してしまいました。そんな読者を第一に考えた理由も、あったりなかったりします。
………。
「ハイ!」
「パチュリーと!」
「レミリアの!」
「ど忘れ」
………。
「レミィ、正直忘れてたわ」
「なにを?」
「あなたへの恋心」
「ぱちぇーっ」
「きゃー」
………。
飛びつくレミリアさま、押し倒されるパチュリーさま。
嫉妬心、オレのこころに、嫉妬心。
「なんてものならよかったんだけど、そんなチンケなものじゃないのよ」
「ちんけ……」
しかし、パチュリーさまはすぐに起き上がってレミリアさまを払いのけてました。
レミリアさま、ちょっとショック受けてます。
安堵感。オレのココ以下略。レミリアさまには悪いですが。
「アレを加熱したままだったわ」
「アレってなによ」
朝に作ってたアレですか。媚薬。
「ひみつ☆」
ヒトデ好きですね、この人たち。
「アレはアレよ。魔法の薬とだけ言っておくわ」
「回りくどいのはあなたの得意技ね」
そこがいいんじゃないですか! レミリアさまのばか!
「要するにあれよ、このままじゃ爆発するわ。もうそろそろ」
あーあ。
「こぁー」
「こぁー」
えと、こぁー。
「このばかこあくま!」
「ばかこあくま!」
私のせいじゃないです。
「ヴワル吹き飛ぶわねー」
それはまずいですね。
「私の屋敷は?」
「吹き飛ぶわねー。この辺り一帯、一光年ぐらい」
それはもはや「この辺り」じゃなくて世界の破滅です。いつぞやの目が粒子砲の比ではない威力です。
「こぁ!」
「こぁ!」
怒られました。がーん。私悪くないのにー。
「こぁこぁ!」
「こぁこぁ!」
理不尽に怒られるなんでいつものことですけどね。
あと、いちいち復唱するレミリアさまが可愛らしいながら腹立ちます。
「小悪魔」
はい何でしょうご主人さま。
「最期に頼みがあるの」
もうすぐ世界が破滅しちゃいますものねー。頼みのひとつぐらい聞きますよ。毎日聞いてますし。
「メイド服着でぇぅぇげほごほぐはげはぐひゃ!」
興奮したようで、言いながらむせてました。
「だめよパチェ、無理しちゃ」
「だって! だって、こぁたんのメイド服姿を見るまでは死ねないじゃない! 死ねないのよぐはごほがふぁぶへ」
「それはこの世の理だけどね!? あなた、このままじゃ爆発が起きる前に死ぬわよ!?」
理ならば仕方ありませんね。じゃー、ちょっと着替えてきます。
「どっちにしろもうすぐ破滅だし」
「そうよね、じゃあいいわ」
「って小悪魔去るな」
去り際に相変わらず不自然な会話が聞こえましたが、無視して去りました。
はい。
で、どうせみんな死にますし、この際なので紅魔館の大浴場の脱衣所からメイド服盗んで着てみました。脱ぎたてなのか、あったかいです。
やってることが変態そのものですが、もう気にしません。それどころか新しい自分を見つけられそうで嬉しいです。
それにこの程度の罪、世界の破滅に比べれば小さいことですよ。よって無罪判決。閻魔さまも納得です。
パチュリーさまの書斎に戻る途中で、錯乱してむせるパチュリーさまと普通なレミリアさまの、話し声とか叫び声が聞こえてきました。
「だって! だって小悪魔が主人の私を置いて逃げだぐげほがほじょびげぺ!」
「そうね」
「最期は一緒にいたかったのに! 私があの子と抱き合って一緒に死ぬつもりだっだのぬげがちょばわぽりづ!!」
「そう」
まだ遠くて姿は見えませんが、なぜかパチュリーさまの必死な形相が頭に浮かびました。海坊主みたいな。
「こぁー! こぁ帰ってきてよぉぉぉぉぉおおおっごほげはぎぼごあぐまっ!!」
こんなパチュリーさま初めて見ました。見てないですけど。普段はアレなパチュリーさまですが、私がいなくなった途端これほど慌てるほど、愛してくれていたとは思いませんでした。ぽぽぽぽっ。
「ところでパチェ」
「なによおおおおおおいくぁjh;kgあえおjげr」
面白いです。
「ぜんぜん爆発しないわね」
「あ、そういえばそうね」
言われてみるとそうですね。そろそろなんて話してたのに。パチュリーさま、珍しく計算ミス?
と、ここで死角から飛び出た私とお二人と目が合いました。パフェは食べ尽くされていました。
「あ、こぁちゃん!」
私に気付いて叫ぶパチュリーさま。顔じゅう涙やら鼻水やらで凄いことになってますが、気にしませんよ。
あと、こぁちゃんって私のことですか?
「あなたが加熱を止めてくれたのね!」
私のことですか。
「素晴らしいぞ小悪魔くん。君は英雄だ」
おじょーさま、そのセリフはやられ役ですがよろしいですか?
「魔法の爆発を止めたことはともかく、そのメイド服がいえひgふぁんkgr!!」
パチュリーさまは鼻血を噴いて死にました。
死ぬほど喜んでいただけるとは光栄です。ぽっ。
ところで、私はいつ爆発を止めたんでしょう。ま、きっとメイド服からにじみ出る少女のかほりが魔法の薬を大人しくさせたんでしょう。あとでこの服の持ち主にお礼を言わなくてはいけません。
「まあパチェったら、こんなに血を噴き出すなんてもったいないわ! 私が飲んであげるうふふふふ」
さすが紅魔館の主、レベルの違いをまざまざと見せ付けてくれました。この方は鼻血でも破瓜の血でも月のモノの血でもいけそうです。私ってばちょっとお下品でしたねごめんなさい。食事中の皆さまごめんなさい。
レミリアさまはパチュリーさまの鼻の穴に口をつけてちゅーちゅーと血を飲み始めました。流石だなれみ者。痺れませんし、ましてや憧れもしませんが。
「ふあぁ…れみぃ……」
パチュリーさまはパチュリーさまで、何で恍惚そうな表情しますかね。
その様子はあまりにも変ですが、さながら接吻を連想させまして、私の胸に乙女の嫉妬心がふつふつと湧き上がります。
こんな幼女にパチュリーさまを奪われるなんて、くやしい……くやしすぎる………でも……。
もう我慢できなーい!! パチュリーさまレミリアさま私にもやらせてくだs
どかーん。
そんなに関係ありませんがつい数時間前にクラーケン拝見して来た人でした。
私もヒトデ大好きですっ☆ (>ワ<)
にこ○こぷんですか……懐かしすぎて涙が…って「こぁロリ」が居ない!?
デジョンで魔界送りだ!