※実はこっちが、予定していた『下がり怪談』の続きです
ヴワル図書館
物理的に涼しく精神的にも涼しい静寂なる本の聖域
そんな場所よりさらに奥深く、とある部屋に一人の魔女がいた
「別に難しくは無いけど、面倒ね。惚れ薬」
彼女の名前はパチュリー・ノーレッジ、恋する乙女のパチュリー・ノーレッジ
初めての惚れ薬精製に苦難する彼女は、こういった地味に疲れる作業は苦手なのである
ちなみに掻き混ぜる速さが勝負の『魔力回復薬』だけは3秒で作れるのが魔女の自慢だった
「うぅー、パチュリー様が一段落したら食事を取ると言っときながらずっと食べてないー」
そんな魔女を心配する、小さな悪魔が此処にいる
図書館の司書をしている小悪魔、最近創作ネタに凝り始めた小さな悪魔
そして聞かせたネタを誰かが信じて大変な事になっても責任は取らない、小さくても悪魔だった
「小悪魔ー」
「はーい! 」
悪魔の心配する気持ちが通じたのか、魔女は悪魔を呼び出した
悪魔はやっと食事をしてくれると嬉しそうに部屋に飛び込む
「手伝いなさい」
「まず何か食べてください」
違った、食べる気無し
だから思わず即答してしまう悪魔、魔女の眼が少し細まった
「一段落したらね」
「そう言ってまる一日何も食べてないじゃないですか。いい加減倒れちゃいますよ」
魔女の眼がさらに細まった
悪魔は怖くない怖くないと自分に言い聞かせながら魔女に食事をさせようと頑張る
そこで思いついたのは、魔女が此処まで頑張る原因を餌にする事だった
「パチュリー様。もし今から食事をして下さるなら、不肖ながらこの小悪魔めがパチュリー様にとって大変興味深いであろう話をさせて頂きます」
「後でね」
「美鈴さんについての話ですけど? 」
「食事を持って来なさい、迅速に」
MISSION COMPLETE
悪魔は保温の魔法をかけて用意してあった食事を部屋に持ち込む
出来れば別の場所で食べて欲しいと思うが、其処までは無理だろうと思う悪魔だった
「で、どんな話なの? 」
「パチュリー様、まずは食べてください」
魔女は食べている間に喋る事が出来ない、これなら突っ込み無しの喋り放題だ
食べ始めたのを見て、策士小悪魔は語り始める
「美鈴さんですけど、下着を着ていません」
「ぐぶぅ! 」
魔女は、何とか食事中の物を噴出すの事を阻止した
悪魔は自分のミスを今更ながらに気づく、噴出したら其れが自分にかかってしまう
水で流し込んだ魔女の視線が冷たい、悪魔は頬を伝う冷や汗を無視して語り続ける
「パチュリー様は知らないかもしれませんが、一時期メイド達の間で話題になった事です」
「・・・・・・・・次も、止められるとは思わないことね」
「肝に命じて置きましょう」
魔女が食事を再開したのを見ながら、危険な言葉を出すタイミングを計りながら悪魔は語る
「門番である彼女にした、あるメイドの質問が発端でした」
「もぐもぐごっくん」
「『何時も胸が揺れていますけれど、下着はつけていないのですか? 』」
「・・・・・・・・・・ちり紙は何処? 」
「此処に」
明確に想像した魔女の鼻から、食事中の物ではない何かが垂れる
それを館の主の吸血鬼は、いくら親友でも其処から出たのは飲みたくないなぁと思いながら隠れ観ていた
悪魔は何故か幻想郷に流通している、箱型のティッシュケースを魔女に渡して語る
「その質問に、彼女はこう答えたそうです」
「ちーん・・・・・ふぅ」
「『つけたときの窮屈な感じが、どうにも苦手で』」
「・・・・・・・・・」
「あ、食事は続けてくださいね」
「食べるから、続けなさい」
紅く染まったティッシュ-ペーパーを持ちながら動きの止まった魔女に悪魔は見逃さず指摘する
魔女は高級ちり紙をゴミ箱に魔法で飛ばして食事を再開、悪魔の語りが再開した
「メイド達は彼女の答えに興奮しました。曰く『生乳! 生乳! 』と」
「・・・・・・・もぐもぐごくん」
「けれどパチュリー様も知っての通り、彼女の服装では何処ぞの巫女とは違って横から見る事など出来ません」
「もぐもぐ」
「しかしメイド達は諦めませんでした。そしてなんとか見ようとして、彼女を見ていたメイドは気づきます」
「ごくん」
「穿いてない、と」
「バリバリムシャムシャ! 」
魔女は興奮し勢いあまって皿まで食べる、毒喰らわば皿まで
悪魔の出した食事に毒は入っていなかったが、悪魔の語る話に毒が入っていたらしい
そんな魔女を微笑ましく見詰めながら悪魔は語る
「気づきましたが本人に聞くわけにも行きません。だからメイド達はどうにかして覗こうと躍起になります」
「バキバキゴクン! 」
「勿論そんな邪な気に彼女が気づかない訳はありません、メイド達は覗く事が出来ませんでした」
「・・・・・もぐもぐ」
もしも覗けていたりしたら、そのメイドに明日は無いだろうと思いながら悪魔は語り続ける
「そんな時に現れたのが、烏天狗でした」
「もぐ」
「何処でメイド達の話を聞いていたのか、その話の真実を確かめるべく烏天狗は彼女と弾幕ごっこを開始します」
「もぐ」
「とは言っても、彼女の弾幕を烏天狗が避けるだけの内容で中々決着がつきません」
「ごくん」
「だけど烏天狗の能力が発動し、遂にメイド達の憶測が真実であるか嘘であるかを証明したのです」
「・・・・・・ごくん」
魔女の食事が終了したが、此処で話を終えたら自分が大変な事になりそうだと悪魔は語り続ける
「メイド達が見守る中、強く方向性を持った風が吹きます
『エッチな風キター! 』
メイド達の歓声を無視して、彼女は烏天狗に接近します
『シャッターチャンス! 』
烏天狗の行動と彼女の行動は、全くの同時でした
『どっちだー!? 』
メイド達の悲鳴を背景に、地に落ちたのは烏天狗でした」
そして悪魔は語り終えた
そんな語り終えた悪魔を見詰めながら呆然とする魔女、其処で切るのか貴様と腸が煮えくり返っている
怒りに震える魔女が我慢できずに立ち上がるのと、悪魔が語るのを再開するのは同時だった
「パチュリー様は、絶対領域をご存知ですか? 」
「・・・・結界魔法の事? 」
出鼻を挫かれた魔女は悪魔の質問に答えるが、悪魔は違いますと首を横に振る
「別の名を、不可視の隙間。それは見ることの許されない場所に存在する不思議な何か、禁域への道筋を断ち隔てる深き断崖」
「隙間、アレね」
「つまり、そう言う事です」
「そう言う事ね」
魔女は満足げに頷き再び席に着きながら、まだ語ろうとする悪魔に胡乱下な視線を向ける
そんな視線を向けられた悪魔は、実に楽しそうな表情で語り続ける
「でもパチュリー様、こう考える事も出来るのです」
「何よ? 」
「隙間が邪魔で見えない場所を、隙間が邪魔とならない誰かが、何時も見ていのではないかと」
精製途中の薬を放っておいて、部屋を飛び出る魔女を見送りながら散らばった食器を片付ける悪魔は誰もいない場所に話しかける
「今回のパチュリー様は本気を出されると思いますが、貴女様はどうなさいますか? 」
そして一匹の蝙蝠が、部屋を飛び立った
其の日、幻想郷の境は紅く染まる
ヴワル図書館
物理的に涼しく精神的にも涼しい静寂なる本の聖域
そんな場所よりさらに奥深く、とある部屋に一人の魔女がいた
「別に難しくは無いけど、面倒ね。惚れ薬」
彼女の名前はパチュリー・ノーレッジ、恋する乙女のパチュリー・ノーレッジ
初めての惚れ薬精製に苦難する彼女は、こういった地味に疲れる作業は苦手なのである
ちなみに掻き混ぜる速さが勝負の『魔力回復薬』だけは3秒で作れるのが魔女の自慢だった
「うぅー、パチュリー様が一段落したら食事を取ると言っときながらずっと食べてないー」
そんな魔女を心配する、小さな悪魔が此処にいる
図書館の司書をしている小悪魔、最近創作ネタに凝り始めた小さな悪魔
そして聞かせたネタを誰かが信じて大変な事になっても責任は取らない、小さくても悪魔だった
「小悪魔ー」
「はーい! 」
悪魔の心配する気持ちが通じたのか、魔女は悪魔を呼び出した
悪魔はやっと食事をしてくれると嬉しそうに部屋に飛び込む
「手伝いなさい」
「まず何か食べてください」
違った、食べる気無し
だから思わず即答してしまう悪魔、魔女の眼が少し細まった
「一段落したらね」
「そう言ってまる一日何も食べてないじゃないですか。いい加減倒れちゃいますよ」
魔女の眼がさらに細まった
悪魔は怖くない怖くないと自分に言い聞かせながら魔女に食事をさせようと頑張る
そこで思いついたのは、魔女が此処まで頑張る原因を餌にする事だった
「パチュリー様。もし今から食事をして下さるなら、不肖ながらこの小悪魔めがパチュリー様にとって大変興味深いであろう話をさせて頂きます」
「後でね」
「美鈴さんについての話ですけど? 」
「食事を持って来なさい、迅速に」
MISSION COMPLETE
悪魔は保温の魔法をかけて用意してあった食事を部屋に持ち込む
出来れば別の場所で食べて欲しいと思うが、其処までは無理だろうと思う悪魔だった
「で、どんな話なの? 」
「パチュリー様、まずは食べてください」
魔女は食べている間に喋る事が出来ない、これなら突っ込み無しの喋り放題だ
食べ始めたのを見て、策士小悪魔は語り始める
「美鈴さんですけど、下着を着ていません」
「ぐぶぅ! 」
魔女は、何とか食事中の物を噴出すの事を阻止した
悪魔は自分のミスを今更ながらに気づく、噴出したら其れが自分にかかってしまう
水で流し込んだ魔女の視線が冷たい、悪魔は頬を伝う冷や汗を無視して語り続ける
「パチュリー様は知らないかもしれませんが、一時期メイド達の間で話題になった事です」
「・・・・・・・・次も、止められるとは思わないことね」
「肝に命じて置きましょう」
魔女が食事を再開したのを見ながら、危険な言葉を出すタイミングを計りながら悪魔は語る
「門番である彼女にした、あるメイドの質問が発端でした」
「もぐもぐごっくん」
「『何時も胸が揺れていますけれど、下着はつけていないのですか? 』」
「・・・・・・・・・・ちり紙は何処? 」
「此処に」
明確に想像した魔女の鼻から、食事中の物ではない何かが垂れる
それを館の主の吸血鬼は、いくら親友でも其処から出たのは飲みたくないなぁと思いながら隠れ観ていた
悪魔は何故か幻想郷に流通している、箱型のティッシュケースを魔女に渡して語る
「その質問に、彼女はこう答えたそうです」
「ちーん・・・・・ふぅ」
「『つけたときの窮屈な感じが、どうにも苦手で』」
「・・・・・・・・・」
「あ、食事は続けてくださいね」
「食べるから、続けなさい」
紅く染まったティッシュ-ペーパーを持ちながら動きの止まった魔女に悪魔は見逃さず指摘する
魔女は高級ちり紙をゴミ箱に魔法で飛ばして食事を再開、悪魔の語りが再開した
「メイド達は彼女の答えに興奮しました。曰く『生乳! 生乳! 』と」
「・・・・・・・もぐもぐごくん」
「けれどパチュリー様も知っての通り、彼女の服装では何処ぞの巫女とは違って横から見る事など出来ません」
「もぐもぐ」
「しかしメイド達は諦めませんでした。そしてなんとか見ようとして、彼女を見ていたメイドは気づきます」
「ごくん」
「穿いてない、と」
「バリバリムシャムシャ! 」
魔女は興奮し勢いあまって皿まで食べる、毒喰らわば皿まで
悪魔の出した食事に毒は入っていなかったが、悪魔の語る話に毒が入っていたらしい
そんな魔女を微笑ましく見詰めながら悪魔は語る
「気づきましたが本人に聞くわけにも行きません。だからメイド達はどうにかして覗こうと躍起になります」
「バキバキゴクン! 」
「勿論そんな邪な気に彼女が気づかない訳はありません、メイド達は覗く事が出来ませんでした」
「・・・・・もぐもぐ」
もしも覗けていたりしたら、そのメイドに明日は無いだろうと思いながら悪魔は語り続ける
「そんな時に現れたのが、烏天狗でした」
「もぐ」
「何処でメイド達の話を聞いていたのか、その話の真実を確かめるべく烏天狗は彼女と弾幕ごっこを開始します」
「もぐ」
「とは言っても、彼女の弾幕を烏天狗が避けるだけの内容で中々決着がつきません」
「ごくん」
「だけど烏天狗の能力が発動し、遂にメイド達の憶測が真実であるか嘘であるかを証明したのです」
「・・・・・・ごくん」
魔女の食事が終了したが、此処で話を終えたら自分が大変な事になりそうだと悪魔は語り続ける
「メイド達が見守る中、強く方向性を持った風が吹きます
『エッチな風キター! 』
メイド達の歓声を無視して、彼女は烏天狗に接近します
『シャッターチャンス! 』
烏天狗の行動と彼女の行動は、全くの同時でした
『どっちだー!? 』
メイド達の悲鳴を背景に、地に落ちたのは烏天狗でした」
そして悪魔は語り終えた
そんな語り終えた悪魔を見詰めながら呆然とする魔女、其処で切るのか貴様と腸が煮えくり返っている
怒りに震える魔女が我慢できずに立ち上がるのと、悪魔が語るのを再開するのは同時だった
「パチュリー様は、絶対領域をご存知ですか? 」
「・・・・結界魔法の事? 」
出鼻を挫かれた魔女は悪魔の質問に答えるが、悪魔は違いますと首を横に振る
「別の名を、不可視の隙間。それは見ることの許されない場所に存在する不思議な何か、禁域への道筋を断ち隔てる深き断崖」
「隙間、アレね」
「つまり、そう言う事です」
「そう言う事ね」
魔女は満足げに頷き再び席に着きながら、まだ語ろうとする悪魔に胡乱下な視線を向ける
そんな視線を向けられた悪魔は、実に楽しそうな表情で語り続ける
「でもパチュリー様、こう考える事も出来るのです」
「何よ? 」
「隙間が邪魔で見えない場所を、隙間が邪魔とならない誰かが、何時も見ていのではないかと」
精製途中の薬を放っておいて、部屋を飛び出る魔女を見送りながら散らばった食器を片付ける悪魔は誰もいない場所に話しかける
「今回のパチュリー様は本気を出されると思いますが、貴女様はどうなさいますか? 」
そして一匹の蝙蝠が、部屋を飛び立った
其の日、幻想郷の境は紅く染まる
いや悪魔か。