Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

魔法少女と店主

2012/01/26 20:58:12
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過去の話を捏造(?)妄想話です。それでも良いという方は
良ければ読んでいってください。


























僕は今日という日のために、人里にある霧雨商店へと向かっていた。
霧雨商店は僕が商人としての知識や話術、日常生活までと幅広くお世話なった大恩師の店である。
今日はその大恩師の娘、霧雨魔理沙の誕生日なのだ。
誰の誕生日だろうが普段なら出かけることなく読書しているのだが、この日の僕は動いてた。
というものの最近魔理沙は僕の店、香霖堂(僕が営んでいる店である)にやってくる度に
自分の誕生日を僕に念入りに散々伝え、しまいには誕生日を祝う約束をさせらてしまったのだ。


昔の幻想郷に比べれば、人間を襲う妖怪も減り物騒なことは以前よりも減っている。それでも彼女はまだ幼く、
危険なことにはなるべく関わらせたくはないのだが、何度注意しても彼女はここへ一人でやって来るのだった。
一応魔除けのお守りを持たせてはあるが、それでも危険であることに変わりはない。
この誕生日をきっかけに僕の店、香霖堂へ来ることをやめるようにきっちり言い聞かせておこう。
そう思い、護身用のミニ八卦炉と女の子用の黒白の服を携え里に向かっていた。


せっかくの日にもかかわらず天は雨模様だった。
空は重苦しくどんよりとした暗さで包まれており、
無愛想な顔が普段よりも一層増す。

「頼むから僕が里に着く前に降らないでくれよ…」

僕は言ってもしょうがないと思いつつも天に向かい愚痴をこぼした。
持っている風呂敷をそっと見る。
風呂敷の中には黒いシンプルなローブと機能的な白いエプロンを入れてある。  
黒いローブを作った理由は彼女が魔女という存在に憧れている、ただそれだけの理由だ。
黒とは光を吸収する色であり、光とは超越的存在者を示す属性である。
その光を吸収するということはあらゆる自然という魔法を取り込むことを……


そう思考を繰り広げている間に足が石に接触していることに気がつかなかった。
ドスンという音とともに顔から地面へ突っ込んだ。
幸運なことに顔に掛けている眼鏡は無事だ。風呂敷も先ほどカバンに入れていたためこちらも無事だ。
今度からはなるべく歩いている途中に思いふけることはやめておこうと思う、まぁ出来ればの話なのだが

白いエプロンは彼女がなかなか家庭的で、小さいながらもよく料理をする姿を見ていたので役に
立つだろうという理由と、黒のローブだけというのは何か味気ないと思ったためである。

魔理沙との出会いを思い出す。
一番最初に出会ったときは赤ん坊の時だったろうか、
気がつけば彼女は僕のことを香霖と呼ぶようになっていた。
本を一緒に読んだり、僕が作った御伽噺を聞かせたりと、様々な記憶が浮かんでくる。
そうこう懐かしく感じてる間に目的の里へとついた。

里へついて最初に見たものはとても元気よく遊ぶ子供達の姿だった。
雨が降りそうだというの子供達は元気なものである。
その中に魔理沙が混ざっていないだろうかと思い見渡してみるが、魔理沙の姿はなかった。
よく店を抜け出して里の子供達と遊んでいると魔理沙は言っていたが、
どうやら今日は店を抜け出していないようだ。
その証拠に霧雨商店から親父さんの怒鳴り声が聞こえていた。
魔理沙が僕の店に一人来るようになってから、必ず家にまで送っていくという習慣ができてしまったため、
最近では霧雨商店に訪れることが多くなっていた。
魔理沙が家に帰るたびに怒鳴り声が飛び、そして魔理沙が反抗するというものだ。
大方いつもどおりなのだろうが、今日はなぜかいつもとは違う異様な気を感じる。

「お邪魔するよ、親父さんはいるかな?」

店の正面から入り、目的の人物を探すが、店番を任せられている店員しかいない。

「ああ、霖之助さんかいらっしゃい」

「ものすごい声が聞こえたが、また何かあったのかい?」

「ああ、霖之助さんも知ってるとは思うが、今日はお嬢の誕生日だろ?    
 お嬢も先ほどまで上機嫌で料理を作っていたみたいなんだが、急に雲域が怪しくなってね
 大体1時間くらいこんな調子さ」

大体予想どおりだが少しばかり時間が長すぎる。いつもなら15分くらいで終わるはずなのだが、
しかしあの怒鳴り声が一時間か……物を買いにきた客も逃げてしまうだろう

「そうか、君も大変っだろう? 御疲れ様」

「ははは……そうだ! ついでだから何か買っていかないかい?」

「悪いが今日はコレを魔理沙に届けにきたんだ」

カバンから風呂敷を出し、掲げて店員に見えやすい高さまで持ち上げる。
とても残念そうな顔の店員が見えたが、まぁ気にしないようにしよう。
あわよくば今日は泊めてもらおうと考えていたが、どうやら今日は無理そうだ。

「そうか……あ、親父さんなら店の奥の方にいるよ。そういえば霖之助さんが店に入ってからぴたりと静かになったな、
 よければ親父さんの様子を見て、いや、なだめてきてくれないかい?」

とびっきりの笑顔で人に物を頼む店員だ。苦笑しつつも頑張ってはみるよとは答えた。
親父さんは店にも自分にも厳しい人である。
それ故にほとんどの店員は頭が上がらない。頭が上がらないといえばそれは僕もだが。

会釈をして店の奥のほうへ入ると、そこにいたのは壁に向かって顔を見せない男だった。

「誰だ……?」

「森近霖之助です」

顔を合わせることなく、会話は進む。
……らしくない。
接客の基本は客としっかり向き合ことと教えてくれたのは
他ならぬ彼だというのに。
その教えを自分が守れているかといえば答えは……まぁ、守れているだろう。

「悪いが今日は誰とでも会う気分じゃない。せっかく来てくれたんだがすまんな、
帰ってくれ」

「そうですか……」

まぁ、今日の目的は魔理沙に会うことだ。
親父さんとも魔理沙について話そうとも考えてはいたのだが、
今日は諦める事にしておこう。
しかし、肝心な魔理沙が見渡す限りどこにもいない。

「失礼、帰る前に魔理沙に会って行こうと思うのですが、魔理沙は今どこに?」

先ほどからピリピリでしていた空気がより一層濃くなった。
しばらくの間沈黙が続く。
蝋燭のチリチリという音が耳に響きわたる。
店内の方から聞こえていた慌てただしい声も聞こえない。
まるでこの部屋の空間だけが別世界へと切り分けられたような、そんな雰囲気を放っていた。
その場にいるのが居た堪れなくなり、声をかけようとしたが

「知らん」

親父さんのほうから口を開く。
どこにいるかぐらいは知っているだろうと思っていたのだが、
それを問うつもりで口開こうとするが、親父さんが先に口を開く。

「あいつはもう霧雨家の娘でもなんでもない。どこに行こうがどこで何をしようが
 もう俺には関係ない」

耳を疑った。僕には信じられない言葉だったからだ。
魔理沙も親父さんも御互い頑固なところがあるためか、衝突しあうことはよくある。
それでも魔理沙が生まれた時の親父さんのはしゃぎっぷりと喜びようは今でも覚えている。
知人という知人を呼び、朝まで大宴会ではしゃぎ回る彼に付き合わされたのだ。
宴会という騒がしいのが好きではない僕でも、あの時だけは心から楽しんだ。
何のかんの言っても、魔理沙に対する深い愛情があるのは傍目からでも分かりすぎるくらいに分かる
よく似た物同士の仲の良い親子なのだ。
だから間抜けな質問をした

「は? 今何と言いました……?」



空から小粒の雨が降り出していた。
目に見えるか見えないかの雨、一つ一つの水滴はとても小さい。
その小さい雨が無数に一人の少女を打ち付けていた。

私は大事に抱えている風呂敷を見る。
それは今まで私が集めてきた大切な宝物だ。
私が集めてきた宝物をあの家に置いていきたくはなかった。
二度と戻ることはないあの家に……
その大切な宝物も、とても小さい雨粒によってどんどん濡らされていく。
その宝物の中には雨によって傷ついてしまうものもある。
濡れていく宝物を見て彼の事を思い出す。

「魔理沙、君が集めいてる物を大事にしてあげてるかい?」

「……?」

「道具は自らの意思で動いて何かをしでかそうとはしないが、
 それでもあの子達にも心があるんだ」               

「どうぐにこころ?」

いつもながらこーりんは突拍子のない事を言う。
常に道具と心をかわすとかそんなことも言っていた。

「ああ、そうさ」

金色のウェーブのかかった私の長い髪を優しく撫でながら彼はそう答えた

「だから魔理沙、君が何で集めているかは知らないが、その集めた物達を
 大事に扱ってあげるんだよ」

彼は微笑んでそう言いながら、この前拾ってきた『けーたいでんわ』という道具を
大事にそして丁寧に水で洗っていた。

「こーりん……それのおていれのしかた、それでほんとにあってんのか?」


私は宝物を入れている風呂敷をぎゅっと抱きしめた。


太陽がいよいよ月へと託し始めようとする時間
びしょ濡れになりながらも、僕は一人の少女を里中探していた。
里中の彼女の友人らしき家をすべて訪ねまわったが、無駄足で終わる。
そう遠くへはまだ行っていないはず……そう思いたい。
僕が霧雨商店へ入ったと同時に魔理沙は裏口から飛び出したのだろうか。
入れ違いになってどれくらいの時間がたったのだろう…
悠長に話しをしていなければ……後悔をするが今はそんな暇はない。今は魔理沙だ。
もう魔理沙は里を出ていってしまったのかも知れない。薄暗く危険な夜に一人で。
僕は里の出入り口へと向かった。
里の中には人を襲う妖怪は絶対入れない。
里には妖怪退治が出来る人間もいるため、里で騒ぎを起こすような妖怪は退治されてしまうからだ。
だから門番という存在もなく、里の出入り口はほとんどいつも無人だ。
時間が夜ということもあり、人気は全くなくひっそり静まりかえっている。
入り口の周辺を探していると、見覚えのあるものが見つかった。
魔理沙に渡したはずのお守りだ……
嫌な予感がする。僕はそれを握りしめて里の外へ走りだしていた。


夜の道は昼とはまったく姿を変え、普段なら気に止めることもない一つ一つの木々さえも
不気味な化け物みたいに恐ろしいものへと少女の目には映っていた。
風でゆれる木の葉の音にも全身で驚きを表現する少女の姿があった。

「た、たしかこっちの方にボロボロの家があったはず……
 
 はずなのに……」

魔女とは孤高の存在であり、誰にも頼らず一人で生きていく覚悟が必要である。
そして魔法の森という所は名前からして魔女にとって相応しい場所なのだ
私は魔女としての力を開花させるために鼻息を荒くして魔法の森に向かっていた。
ボロボロの家はこーりんの所に遊びに行くついでに魔法の森へ立ち寄り偶然見つけた家だった。
中には誰も住んではいなく、人が住める状態ではないけれど、この雨を凌げる場所としては
ちょうど良い場所だった。
あそこをしばらくの間は寝床にしようと考えていたのだが、夜と昼との森では
自分の知っている記憶とは違い、道がまったく分からなかった。
雨で地面が濡れているせいもあり、途中で何度も転んだりした。
普通なら諦めて家に帰ろうとするものなのだろう。
でも私には帰らない理由があった。
親父がこの誕生日をきっかけに私の夢である魔女になることを諦めろと言ったのだ。
お前には魔女になる才能などないやら、素質がないやら、挙句に魔女について散々馬鹿にしてこき下ろしたのだ。
それだけなら私も聞き流すことはできた。だがあの親父は私の母の事まで口走った。

「お前の母親は碌でもない奴だった…」

その言葉を聴いた瞬間、私はカッと頭に血がのぼった。その後あの糞親父は何かを言おうとしていたが、私は耳をかさず、
親父にしゃべる暇も与えず、ただ言葉という言葉の弾丸を糞親父にぶつけまくった。
親父も黙っている筈もなく、大喧嘩になり仕舞いにはあの糞親父はお前など娘でも何でもないとまで言い出した。
私はその言葉を喜んで受け取り、そして縁を切るという形で私は家を飛び出た。
とにかく家にはもう戻りたくはない。もう戻ることは出来ない。




いつの間にか地面に倒れていた。いったい何時間宝物を詰め込んだ重い荷物を背負って歩き続けたのだろう。
とうとう体力も限界が近づいているらしい。何度もこけてしまったせいか体もすり傷だらけだ。
道にも完全に迷い、どこにいけばいいのかも分からない。
いっそこのままで濡れながら寝てしまおうかと考えていると、
ガサという音とともに得体の知れないおぞましい生き物が私を覗いていたことに気がつく。妖怪だ。
ッパと見れば小柄な人間の様にも見えるが、人間の手の爪とは思えないような長い爪を持っていた。
とっさに立ち上がり妖怪の方を睨みつけるが、妖怪は私を見てケラケラと笑っていた。
最近は人を襲う妖怪も減っていると聞かされていたのだが、里以外で妖怪を見たらまず動揺を見せるなと言われていた。
なんとか深呼吸をする。そして妖怪をじっくりと見ると、爪を出し、目をギラつかせて明らかな悪意を向けていた。
今の状況をまたなんとか息を整えて自己分析する。散々歩きまわったせいで疲れ果てていたが、
今持っている宝物を投げ出せば逃げ切れるかもしれない。
だけどこの宝物を置いていくなんて考えられない。
置いていってしまえば宝物と一緒に大切な何かを失ってしまうように思えたからだ。
妖怪が爪を出し飛び掛かってきた。慌てて避けるが薄皮一枚切れる。

「くぅぅ……」

思わず涙が出る。そしてその様子を見て妖怪はさらにケラケラと笑う。
私が傷つく様子を見て妖怪は楽しんでるようにみえた。

「くそ! 何笑ってやがんだ!」

いきがってはみるが正直怖い……
恐怖で体が震えなかなか思うように体が動いてはくれない。
だがらといって簡単に妖怪に食われてしまうなんてまっぴらごめんだ。
自分に渇を入れ、呼吸をゆっくりと整える。そして全意識を妖怪へと向けた。
先ほどまでじっくりと私の様子見て楽しんでいた妖怪も殺気を感じとったのか
今度は猛然と私に襲いかかってこようとしている。

「っく……!」

妖怪が私に飛びかかろうとしたその瞬間、私は体勢をくずしそうになるのをこらえながら
意識を妖怪へと集中させ、もてる力を全てつぎ込むよう手に意識を集中させる。

「吹っ飛べぇえええ!!」


手から光が溢れ出しレーザーのような光が妖怪を吹き飛ばす。            
妖怪は数十メートル先の森へと吹き飛んでいった。
魔法の練習は今まで何度もやっていたが、ここまで力を出せたのは初めてだ。
全身から力が抜けてペタンと座り込む。立とうとしても立ち上がれないほど疲労感を感じていた。

「は…はは……やってやったぜ…」

座りこみ今にも倒れそうなのだが、私は完璧な魔法を放てた喜びを感じていた。
数年間練習に打ち込んでいたものが今やっとこの手で発揮されたのだ。
しかし、喜んでいるのも束の間、先ほど吹き飛ばした妖怪が怒りを剥き出しにして立ち上がっていた。

「嘘だろ……もう動けないぜ……」

体がまったく動かない。先ほどと同じように魔法を放とうとするが出ない。
妖怪は私に少しずつ近づいてくる。
全身から殺気を放ち一歩ずつ、着実に……
途中から、私が魔法を放てない事を感づいたのか、表情を笑みへ変えていた
歩みは速くなり近づいてくる、爪を出し殺意を向けて


私まで後数歩というところで足が止まった
私は一瞬目を閉じたが、もう一度見開いて妖怪の様子を見てみる。
先ほどの表情が消えうせ、恐怖を隠そうとせず何者かに怯えていた。
目をまんまるにしてその様子をみていたのだが、あんまりにも動かないので悪戯心を灯し
「ワン」
と何食わぬ顔で脅かしてやった。襲ってくることもなく何となく発言したその言葉を放った途端
途中何度も転びながら脱兎の如く森の方へと逃げ出していった。

「なんだったんだ……」

あっけない終わりに疑問を持ちつつ辺りを見渡してみるとそこには見慣れた顔があった。

「こーりん……?」

目を疑った、そこにはいるはずのない霖之助の姿があった。

「やぁ魔理沙、こんな夜に一人で散歩かい?」

そう言いつつ上着を脱ぎそれを魔理沙にかけた

「うぉっぷ、こーりん何でこんな所に?」

「君は自分が言った約束すら覚えていないのかい? それとこれは君の大事な物だろ?」

「あ……」

そう言い私の宝物を何故かこーりんの手から受け渡された

「何でこーりんが持ってるんだ……?」

私の宝物が入っている風呂敷のほうへ指を向けていた。
よく見ると小さい穴が開いている、中には少し尖っている物も入れていたことを思い出す
何度か転んだ衝撃で破けてしまったようだ。

「道具は大事に扱えと言っただろう? 」 

少しだけ声が低くなり、顔の表情を変えていた。
それについては反論することができなかった。
自分なりに大事に扱っていたつもりなのだ。だが、自分の不注意のせいで
失うところだったので感謝しなければならない
だけど、今その事についてとやかく言われなければならないのかと少しだけ腹がたった。

「まぁ、今回はその子達の御蔭で君に会える事が出来たから良しとしておこうか」
「……どういうことだ?」
「色々あってね、これからもその子達を大切に扱ってあげるんだよ」
「お前なんかに言われなくてもそのつもりだぜ」
「そうか……」

表情は温かみのある表情へと変わっていた。

 今回魔理沙を見つけることが出来たのは魔理沙の宝物のおかげだ。
お守りを見つけて途中までは足跡を追えていたのだが、
雨で消されたのか足跡が途中で消えてしまい、
どこに向かったのか分からなくなっていた。
そんな時に魔理沙の宝物を発見したのだった。
その宝物を辿っていけば追いつけるかと思い、辺りを見渡してみるが
そうそう都合よく落としていてくれるはずもなく、どうしようかと考えていた。
手がかりが何もない僕は魔理沙の落し物に藁にもすがる思いでそっと手で触れた。
僕の能力、未知の道具の名前と用途分かる能力を『宝物』に使用したのだ。

名前:ガラクタ 用途:霧雨魔理沙を助けたい物

驚きを隠せなかった。自然と進む道が頭の中でイメージが出来上がっていた。
僕はそのイメージを頼りに進む方向を決めていった。しばらくすると名前も用途も
見えなくなった。それから何度試しても、名前と用途が見えることはなかった。

「ところで魔理沙」
「ん?」
「こんなところで言うのもなんなんだが、誕生日おめでとう」
「……本当にこんなところでだな」
「そして、生まれてきてくれてありがとう」

勘当されたやつに嫌味かよと軽口を返してやろうと思ったのだが
何故かそれを今日はできなかった。
あいつは困った顔をしながら私をそっと引き寄せ、抱きしめた。
それからしばらくの間、何も言わず霖之助は私を抱きしめて頭に手を置いていた。
思い返せば色々な事が起こり、疲れていたのか普段なら見せない失態を見せていた。
気がつけば雨は止んでいた。ひょっとしたらとっくに止んでいたのかもしれない
だが今この時だけは雨が降っていてほしかった。


「魔理沙、これから行く当てはあるのかい?」


一応あるといえばある、とてつもなくボロボロだが


「まぁ、あるとしてもしばらくは家にいてもらうよ、誕生日プレゼントとは別に
 僕の自信作を渡しているわけだからね。少しばかり働いてもらわないと割りに合わない」


黒白の服とは別にミニ八卦炉も渡しておいた。
魔理沙の行動は突発的で危なっかしい。魔法の森には化け物茸の胞子が舞っており、妖怪も森の瘴気を嫌い
普段なら森に入ろうとする妖怪もいないのだが、極稀に森の瘴気を好み立ち入る妖怪もいる。
魔理沙も森の中なら安全だと判断していたかもしれないが、今日のような出来事にまた遭遇する可能性だってある。
一番良いのは実家に帰ってもらうことなのだが、里にも実家にも帰らないと一点張りだ。
彼女は必ず今日のような向う見ずな行動を平気でやるだろう。そしてそれを僕が止めたって聞きはしないし、
四六時中僕も彼女のことを見守ってはいられない。それならいっそ注意して聞かせるよりも、
八卦炉という自衛手段を持たしていた方が彼女にとっては安全だろうと考えたのだった。


「はぁ? お前私のことを散々邪魔扱いしてたじゃないか」

「ああ、邪魔でしょうがないよ、本当に邪魔だ、こんな危険なことをしでかして
 この僕をこんなにしんぱ・・・動かしたんだからね、僕の負担を少なくするためにも君には居てもらうよ」

「……っへ、なんだかんだ言ってるが実は一人でいるのが寂しくなっただけじゃないのか?」


言い方にムっときたのでからかうつもりで言ってみた。どうせあいつの事だから減らず口を返して来るそう思っていた。


「ああ、そうかもしれないね……」

「!?」


予想とは違う返答に調子を狂わされる。いつもの調子とは違い、表情も少しだけ寂しそうに見えた。
そして私も今日の出来事で色々と疲れ果てていた。


「……しょうがない、寂しがりやのこーりんのためにしばらくはいてやるよ
 こんな美少女と暮らせるんだ、ありがたいと思えよ!」

「ああ、この身に余る光栄さだ。よろしく頼むよ」


あちこち傷だらけでボロボロの魔理沙を背中に乗せ、ゆっくりと香霖堂へと歩く。
最初は自分で歩くと言っていたが、数歩動くたびに体をよろけさせ足取りが不安定だった。
そんな姿を見せられては歩かせるわけにもいかず、僕は無理やりに魔理沙を背負うことにした。
最初の内はしぶしぶだったのが、自分で歩くよりも楽だと悟ったのかしだいに笑い声が背中から
聞こえてくるようになる。
すっかり雨は止んでおり、魔理沙がうれしそうな声で騒ぐ


「上を見てみろこーりん!」


それはとてもきれいな星空だった

 
家に帰ってそれからしばらく後の出来事


「なぁ、こーりん……お前がくれた服なんだが……」

「ああ、それかい? まずその黒のローブなんだが、黒という色は魔女を表すのにも相応しく
 そしてなおかつ魔法にも適した色なんだ。それについてそもそも……」

「いや、私が言いたいことはそうじゃない、そんなことは……ちょっと気になるけど今はどうでもいいんだよ」

「……何か不満でも?」

「服のセンスがはっきり言ってダサイ、なんなんだこの服の選びは、黒いローブとただの白いエプロンって」

「良くないかい? 魔女をイメージしてみたんだが」

「はぁ…… ダメ野郎こーりん、それを略してダーりんに乙女心の何たるかを教えといてやるぜ」

「魔理沙、ダーリンという言葉について外ではどんな風に使われているか知らないだろうから教えといてあげよう。
 まずdarlin、ダーリンという言葉の意味は、外では最愛の人という意味で使われている。そして外の世界では女性から男性への甘やかな
 言葉、親しい関係の上位で使われている言葉なんだ。そして僕はダメな奴ではない」

「……私がそんな意味で言ってるわけないだろう? そんなことも分かってない事を含めてお前はやっぱりダーりんだ」

「言葉というものは正しい意味を理解した上で自分の伝えたい事を伝える物でもあるんだ。そしては僕はダメな奴ではない
 それについてもそもそも……」

「あーもういい、服についての話にもどすぜ
 汚れとか目立たないという点では良いとは思うが、はっきり言ってこのままの服じゃあ私は不満だ。可愛くない」

「……僕はこのままでも良いと思うんだが、じゃあどうしろと?」

「そこで私の出番だ。私に服の形を決めさせてくれ」

「……まぁ君の服だからかまわないが、それでこの服をどんな感じに仕立てろと?」

「それはだな、とりあえずこの外の世界の本を借りるぜ、まずここに書かれているブラウスっていうのをだなぁーー」

「ほう……それでこれをどうしたらいい?」

「それはこれとこれを合わせてーー」

その後色々と意見を言い終えた魔理沙は疲れ果ててその場で眠ってしまった。寝室にそっと魔理沙を運んだ後
作業場へ外界の本「ファッション雑誌」と呼ばれる本とミニ八卦炉を抱え一晩明けるまで作業をこなす霖之助だった。





あとがきのあとがき

まずここまで読んでくださったあなたに感謝を

魔理沙の服をもし霖之助が作ったとしたら…… という考えで、あとがきを書いてしまいました。
自分から見た現在の魔理沙さんや霊夢さんの服は、女の子らしい可愛いデザインだよなぁと思います。
こんな女の子らしい服を霖之助さん一人で作ることを想像できなかったため、魔理沙さんと一緒に作っていればいいなぁと思い
おまけのあとがきが生まれました。





最後に


こんな妄想話をここまで読んでくださったあなたにもう一度感謝を
読みづらく、拙い文章なのですが 本当にここまで読んでくださりありがとうございました

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コメントをこちらの方でお返しさせていただきます

>>1様
ご指摘ありがとうございます、修正し直しました~

>>2様
読んで楽しんでいただけたなら幸せです!
ありがとうございました~

>>3様
誤字報告ありがとうございます、なんだかんだ言われても世話を焼いてしまう霖之助さんですw
亀吉
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
>ああ、霖之助さんも知ってるとは思うが、今日はお嬢の誕生日だろ?    ←修正
>それでもあの子達にも心があるんだ」               ←セリフ改造
修正するならちゃんと修正してから投稿した方が良いですよ
2.名前が正体不明である程度の能力削除
おもしろかった。
3.名前が無い程度の能力削除
魔理沙にデザインであーだこーだ言われながらも服を作ってあげる霖之助さん…ニヤニヤ

霖之助の「之」が「乃」になってる部分が数ヶ所ありました