まだ暗いけど、何か左の方が寒いので目が覚めた。
寒いのが嫌だからとりあえず右の方に転がる。目を開けてみると見慣れぬ風景が。
何故見慣れぬ所に寝ているのか、ボーっとした頭で思い出そうとする。
…あー…確か咽に咽て酷い事になったレミリア撫で撫でし続けてたんだっけ。
それからレミリアを抱きしめてたら…咲夜が今日どうするのか聞きに来て…。
うん、思い出した。
帰っちゃヤだって言われたからお泊りする事にしたんだ。
左の寒い方…背中の方へコロンと向き直る。
羽消したレミリアがちょっと寂しそうな顔して、こっち向いて寝てる。
頬に触れてみるとひんやり。なるほど寒いと感じるわけだ。
少しだけ接近。
すー…すー…と、普通の人よりゆっくりな寝息。
起きる気配が無いので寝息を肌で感じれるほど接近。
綺麗な綺麗な顔が目の前に。
頬をつついてみる。ふにふにと柔らかい。
目を隠してる髪を掻き上げてみると、睫毛の一本一本までよく見えた。
眉は細く伸びやかで。目は閉じられてても凛々しくて、鼻筋真直ぐ通ってて。
だけど口はちょっとだらしなく半開きで犬歯が少し見えてて。
本当に綺麗だよなー…レミリアの奴…と、少し嫉妬。ぱるぱる。
布団の中を探ってレミリアの手を発見。少し冷たいそれを優しく包む。
足をゴソゴソして湯たんぽ独占してるレミリアの足に絡める。
冷え性だ…って言ってたし、レミリアのために布団の中に入れて暖かくなるモノ作ろっかなー…と、考える。
こたつはこの部屋に似合わないから布団の中に入れるモノだ。
湯たんぽより広い面積暖めれて、肌が弱いレミリアが低温火傷しないモノ。
…河童に聞くか?…いや、河童は駄目だ。連中、水の中で寝るし。
そしたら…こーりんか早苗に聞いたらわかるのかなぁ…。
…あー何か考え事してたらまた眠くなってきた…。
お休み、お姉ちゃん。
それからある程度の時間が経って夢を見始めて。
夢の中で何かいいアイデアが浮かんだ!…と、思った瞬間。
冷たい何かが首筋に触れて『びょうっ!』って感じで一気に目が覚めた。
半分寝てる目を無理やり開いてみるとレミリアが私を抱きかかえるようにしていた。
なるほどそれでか…外明るいし、完全に目、覚めちゃったよ…。
なおも私を手繰り寄せようとするから更に接近して。
もっと手繰り寄せられたから…もっと接近してレミリアの胸に顔が埋まってしまった。
やっぱりやーらかい。ふにゅんふにゅん。冷たいけどふにゅんふにゅん。
じゃあ暖めてやるぜとレミリアを抱きしめる。
レミリアは冷たいけど暖める…って、思ってるから平気。
何となくクンクン匂いを嗅いでみる。とってもいい匂いがする。
くすぐったいのかギュッてされた。仕返しに顔で胸をぐりぐり。
あんまり動かなくていい範囲…二の腕をゆっくり撫で撫で。
しばらくしてるとほんのり暖かくなった。抱いてる手からも力が抜けた。
次は肩を撫で撫で。暖かくなって脱力したら次は背中。
ほ~れ、ほれ…思う存分蕩けるが良い。
…体感時間で二十分位、経過。
そこには脱力仕切ったレミリアがくてっ…と、上向いて寝ていた。
何か凄く可愛い。今なら…その、おでこだったらチューできるかも。
そんな事を考えてると扉がノックされた。慌てて布団の中に隠れる。
ノックした奴は咲夜。どうやらレミリアの起床時間らしい。
扉を開けて入って来て。ベッドの近く…レミリアのそばまで来て足音が止まる。
何か咲夜がくすくす笑ってる声がして。
足音が私の方に回って来て私の方だけ布団を捲られる。
「おはよう、魔理沙」
「…わ、私は湯たんぽだぜ」
また撫でられた。
何か恥ずかしいから無意識にレミリアの手、ギュッてした。
そしたらまた撫でられた。
「よかったらお嬢様起こしてくれる?」
「咲夜が出てったら湯たんぽから目覚ましに転職する」
「はいはい」
またくすくす笑われて布団掛けられた。
ある事思いついて布団をちょっと捲って。
「咲夜~…」
「どうしたの?」
「レミリアのご飯作った?まだなら私が作る」
レミリアが泊まってくれた時、起してくれてついでに朝ご飯作ってくれたから。
どうして?と聞かれたからそう答えた。
咲夜の答えはまだ作ってない、お願いするわ。だった。
ついでにフランとパチュリーと美鈴の朝ご飯も頼まれた。
更には美鈴はもう起きてるからなるべく早くしてねと追加注文。
そう言った後、布団の上から私をポンポンして咲夜は出て行った。
二人きりなのを改めて確認し、起きる。周囲に他の気配は無い。
隣ではレミリアがにゃむにゃむ言いながら寝息立ててる。
貴女はお姫様、幸せなお姫様~♪
鼻歌歌いつつそ~っと、頬をつつく。
「朝なのぜ~」
言うが返事無し。
揺すってみる。
こっち向きに転がるレミリア。
「ンぅ…咲夜ぁ…後、五分…」
私は霧雨魔理沙だぜ。
レミリアのナイトキャップを外して撫で撫で。
おおっと、安心したのか幸せそうな溜息が聞けたぜ。
ふうっ…と耳に息を吹きかける。レミリアは身を竦ませた。
目を隠してる髪を掻き上げて額にキス。
目がギンッ!と見開かれた。けどすぐに硬く固く閉じられる。
「朝なのぜ~」
言うが返事無し。
でも、耳はとてもとても真っ赤になってる。
よし、起きた。…狸寝入りしてるけど、とりあえずは起きた。
そんな訳で真っ赤になってる耳たぶをば…。
「ひゃうっ!…やっ!?やめ…」
口に含んでみた。そして更にぺろぺろ舐めてから。
「起きた…って言わないとまた舐めr…」
「起きた」
即答である。
真っ赤になってるレミリアの全身が隠れるように布団を被せ、ベッドから降りる。
「私はレミリアの朝ご飯作ってるぜ。気が向いたら出てきて食べてくれ」
言ってモゾモゾ動いてる布団饅頭をポンポン叩く。
綺麗に洗濯されてた服に袖を通す。
さて、どんな材料があるのかな?
場所は変わって厨房。
作る献立はサラダ、オムレツにトーストに決定。
パンは咲夜が作ってる…から、私が作るのはサラダとオムレツだな。
一人暮らしの経験生かしてササッと自分好みのを作るとしましょうか。
「咲夜~…美鈴の分はサンドイッチにした方が良いか?」
粉吹き芋作りながらパン焼き窯と睨めっこしてる咲夜に聞く。
「あー…おやつ用に作ってくれると嬉しいわね~…」
「了解したのぜ~」
返事しながら粉吹き芋完成。時を止めて貰う。
次はレタスをザクザク千切って、キュウリも切って時を止めて貰う。
パンもこんがり焼けて時止め中。
では、オムレツ量産開始。
途中、三妖精や何時もの小さいサイズのフランが摘み食いしに来たりしたけど何とか完成。
「咲夜って凄いよなー…」
レミリア達のを盛り付けしながらメイド妖精達の朝ご飯を同じく盛り付けしてる咲夜を見て呟く。
私が六人分のオムレツ作ってる間にメイド妖精達の粉吹き芋作っちゃうんだもん。
私と同じ味のを何百人分と。瞬きする間の一瞬で。
ちょっとしょんぼりする私に咲夜はにっこり微笑んで。
「メイドさんだからね」
言って、また、撫でられた。
「だーから撫でるなよー…」
「可愛いから愛でる。それは正義よ」
「どんな正義だ、どんな」
盛り付け終わってから食堂に皆が揃うまでの間、ず~っと撫でられた。
やっぱりまたやって来たフランや三妖精にも撫でられた。
因みに美鈴のおやつ用に作ったサンドイッチはいつの間にかフランが食べてた。
皆揃ったと火の妖精が呼びに来たから食堂へ。
レミリアは真っ赤になって椅子にちょこんと座ってた。
目があった。すぐ逸らされた。
「ま、まだその恥ずかしい…のよ…」
蚊の鳴くような声。
撫で撫でしてから自分が作った料理を配っていく。
「…私、魔理沙さんが作ったの食べてみたい…」
わがまま言う奴…即ちルナチャ。サニーとスターもそんな顔。
だから。
「和食で良いなら今度家に遊びに来たら作ってやるぜ」
三妖精はキラキラ笑顔になった。ちょっと待て。全員で来るのか?
フランもキラキラ笑顔になった。待てちょっと。妹様も来るのか?
少し頭痛がした。
のんびり食べて食後のお茶。
私や妖精達にパチュリー美鈴咲夜は普通の紅茶。
レミリアとフランは無痛無傷な血液採取魔法を使って出した私の血を飲んでる。
「…と、言う訳だからレミリアと同じくらいの背になるまで勉強して…。
それから種族魔法使いになる事にしたのぜ。寿命無くなって長生きだぜ」
これからどうするの?ってフランに聞かれたから答えた。
理由はレミリアが言うなって目をしてるから言わなかった。
「…て事は勉強中は居候するんですか?紅魔館に」
「メインは住み慣れた魔法の森だぜ」
門番仕事楽できるやったーって顔してる美鈴に聞かれた。
答えたら嫌な顔された。フランはニコニコしてる。
戦闘の腕も磨かなきゃならないからな。
「種族が変わるまでなら本の貸し出しは許可するわ。
ただし、私に一言断りいれるのと大事に扱う事だけは忘れないで」
「ありがとうだぜ」
パチュリーに礼を言っけど、何故かニヤニヤしてる。
「ただし、図書室の前には…」
「私が居るのさ!戦闘の腕も磨かなきゃならないからね!!」
「…入るの難儀しそうなのぜ…」
やたら元気なフランにちょっとげんなり。
「…それで…魔理沙は今日、どうするの?」
持ち直したレミリアに聞かれる。
「こーりんや早苗の所に行っていろいろ聞く予定。
何か薄くてあったかくて湯たんぽの代わりになるの作りたいから」
きょとんとしたレミリアに集まる皆の視線。
「お嬢様、冷え症ですからねぇ…」
「真夏でも湯たんぽ欠かせないレミィには嬉しい知らせね」
美鈴とパチュリーにニヤニヤされ、レミリアわたわた。
「そう言えばお姉さま…今日は顔色良かったよね?」
「今日は魔理沙と言う名の湯たんぽが暖めたようですわ」
フランと咲夜もニヤニヤ。
「魔理沙さんがレミリア様ギュッてしてた」
「私も混ざりたかったな~…」
「でも、耳舐めたりするのはちょっとねぇ…」
三妖精の言葉も相まってレミリアは降参し、机に突っ伏す。
私も見られてた事が暴露されて恥ずかしくなった。
…お前等どうやって忍び込んだんだ?周囲の気配、確認したぞ?
と、とにかく!
「…ま、魔理沙さんはレミリアぽかぽか大作戦があるからそろそろ失礼するぜ」
言って席を…肩を抑えられて立てなかった。
振り向くとフランが三人ニヤニヤしてた。
「さあ、魔理沙…」
「お姉様の耳舐めた所」
「詳しく説明してもらうわよ」
「「「性的に」」」
悪魔じゃ、天使の顔をした悪魔がおる…。