※この作品は
作者の過去作レイアリと繋がっているかもしれませんしそうじゃないかもしれませんが繋がっていると考えると幸せになれるかもしれません
何はともあれレイアリだ
「…そろそろアリスと仲良くなる方法を考えた方が良いと思うぜ」
いつもの通り神社で暇を潰していたら何故かは知らないけどげっそりとした顔つきの魔理沙がやって来て切望する様な口調で問い詰めて来た。
私は…アリスとはそれなりに良好な関係を築けていると思っているので何とする気も無かったからとりあえずお茶を出そうと「そういう薬作って来たからさ」今すぐ煎餅も付けてお茶淹れてきます。
急いであらかじめ沸かしてきたお茶を魔理沙に提供する、煎餅はこないだおせんべい屋さんに貰った特注品だ。
「はい、お茶とお煎餅」
「悪いな…最近寝不足なんだ」
「ふぅん、普段元気あり余って家に突っ込んでくる魔理沙が珍しいわね」
そういった瞬間魔理沙のこちらを見る目つきが驚きやら呆れやら色んな良くない感情がごちゃ混ぜになった物になった気がしたけれど気のせいに違いない。
取り敢えずお茶を飲んで一息つく、落ち着いて落ち着いて
「薬はどこかしら」
「…そうか、これがクーデレと言うやつか」
何を言っているのかしら、私はいつでも万人平等いつだってクールな事に定評のある博麗霊夢よ?
まさかその仲良くなる薬の事が気になって気になってお茶も喉を通らない事になっている訳が無いじゃない。
「まあ、いいんだが…これがブツだ」
そう言ってことりと置かれたのは小さい瓶に入った無色透明な液体、浪漫も何も無いが要するにこれが惚れ薬と言う物だろう。
「ほう、これを飲ませればアリスはその…ええと…」
「どうしてこんな所になるとお前は乙女を装うかな」
何故か呆れたような非常に疲れたような顔を向ける魔理沙を尻目に私はいそいそと小瓶を太陽に翳す、なんとなくだ。
綺麗な液体だった、粘性が無くまるで水みたい これなら緑茶に混ぜてもばれないだろう
「へぇ…なかなかやるじゃない」
「まあ、お前らがあんまりにもあれすぎるから私の精神疲労がマッハなんだがな」
「何か言った?」
「いいや何にも」
誤魔化すように帽子を深く被る魔理沙、変なの
「とにかく、それさえ使えばアリスはお前の物だ 後はご自由にやると良いさ」
「それってまるで私が悪人みたいじゃないの」
「そうだが、得てして魔法使いなんてそんなもんさ それとも不満か?」
「いや、そうじゃなんだけどさ…アリスを薬で何とかするなんてそんな酷い事は出来ないと思うけどさ…やっぱりほら、やっぱりね…そろそろアリスと仲良くなりたいなーなんてそんな事を考えたりもするんだけどさ、ほら…まあアリス何考えてるか分からないからとっつきにくいともいうかな、話す事が見つからなくてこのままだと仲良くなれない気がしないでもない、なんて、でも薬どうしようかな、誰かの助けでしかも薬使うなんてな…使おうかな…使おう、かな 使おう?使う?う~ん…アリスに薬使って仲良くする?う~ん……」
「嫌なら没収するぞ」
「ごめんなさい許してください使います」
早く言えよと苛立ったように魔理沙が急かす、そんなに急いでいると良い事無いわよ?
ともかく折角貰えるなら貰っておくのが吉だろう
魔理沙は箒に乗ってどこかへとすっ飛んで行った、今までで最高の速さだ
飛行機雲を見ながら小瓶を摘まんで上に掲げる、知らず知らずのうちに笑みが零れた。
「ふふ、ふふふふふふ、うふふ ふ」
これさえあればアリスを落とせる、そう考えるとこの笑いは当然の事だろう
「散々手こずらせて、落とし前は付けてもらうわよ」
そうだ、私は博麗の巫女 欲しい者は殺してでも奪い取ると評判の横暴巫女 怖いものなぞ私には無い。
しかし薬を飲ませるにしてもアリスにお茶を飲ませるタイミングが思いつかない、普段アリスは紅茶を持って来るし、それは美味しいから私も飲んじゃうんだけどどうにかして緑茶を飲ませないと、紅茶に混ぜたら普段飲んでいるアリスに気がつかれちゃうかもしれないし絶対に緑茶じゃないといけない。
そこでまた考え込む事態が一つ、アリスは何故か私の入れてくれた緑茶をあまり飲まない、
味が渋いのが苦手とかだそうで、まあいいんだけど、そんな所が可愛いんだけど、でもこの場合厄介極まりない。
しかしそれさえ越えてしまえば…
知らず知らずのうちに再び浮かんできた笑みを頬をはったたいて元に戻す、決行の日を待つまでも無いだろう、大体毎日神社に来てくれるアリスの事だ、今日も来てくれるに違いない。
そう、毎日 毎日だ
雨の日も風の日もアリスは私の場所に来てくれる、美味しいお菓子を持ってきたり夕食を持ってきたりしてくれる。
アリスは私を裏切らない、アリスは私に嘘をつかない、アリスは信頼できる
…ふふ、うふふ 待っていてねアリス
くるくると和室で回りながら華麗にステップ、気分高揚順風満帆、思わず小躍りしたくなり気持ちは誰とも共有できないしする気も無い。
そう思っていると誰かが庭に降り立つ気配がした、作戦を気取られない様に出来るだけ愛想よく振る舞おう、いつもの様に、いつもの様にだ 決して急いてはいけないし落ち着きすぎても逆効果なのが難しい所だが。
「あら、いらっしゃい」
「言い忘れた事があってな」
「しゃうっ!」
「あべぇし!?」
アリスかと思ったら魔理沙だった、こんな時の私の嘆きを分かってくれる人はいないだろう。
思わず愛の巫女ストレート、30m/sの拳が宙を駆けて魔理沙を吹き飛ばした うむ、今日も良いきれだ。
しかしこのままでは魔理沙がくたばってしまいかねないので駆けより介抱…息しているから問題ないわね。
「えほっ げはっ…酷い事するな」
「アリスじゃない魔理沙が悪いわ」
「なにそれ怖い」
「冗談よ」
「冗談に聞こえないんだが」
まあいいわ、魔理沙は何かを伝えにここに来たようだし 万が一出歯亀でもしようものなら肉片も残さないけど。
「目つきが怖いぜ」
「気のせいよ、それより大事な事って何?」
もし下らない様だったら即座に巫女ストレート弐式を喰らわせてやるわ
―――――――――ワシのストレートは108式まであるぞ!
…何だか余計なのが入った気がするわ
「んじゃ、手短に話すぞ その薬の制約についてだ」
制約?まさか使用期限とか、使用されるとアリスの体に副作用があるとか?
前者ならまだしも後者だとしたらアリスに使う訳にはいかないわね
だが魔理沙はちっちっ と指を軽く振って制する
「その薬にはちょっと厄介な性質があってだな、飲ませて一時間以内に『ある事』を言わせないと効果が発現しない様に出来ているんだ」
「ふぅん、成程ね」
確かに厄介だが何のことは無い、言わせれば勝ちだとしたならば無理やりにでも言わせてしまえばいいのだ、そうだそうだそうしよう。
「よし、その言葉って何かしら」
「それはだな」
ごにょごにょ
「ん?なんて言ったの?」
「だからだな…」
ごにょごにょ
「え?え?」
「そうだ、そう言わせればお前の勝ちだ」
「でも…え…え?」
その後、神社に私の絶叫が響いたのはそれから悠に10秒は過ぎた頃だった。
■□■
森の中を疾走して私は神社を監視できるスポットへと入る、ここならば幾ら様子を見ようとばれないとは隙間妖怪の弁だ、信用できるだろう。
霊夢が成功すると良いが、と言うよりも成功させるてもらわないと私の精神力ががりがり削られていく訳だが。
まあ、霊夢に渡したのは惚れ薬でも何でもない訳だが、あれはただ『素直になる薬』。
ただアリスも霊夢も強情極まりないので一言何かきっかけになるアプローチが無いとその効果が発生しないのは予想外だった。
しかしだ、もし成功しなかったら私はこれから博麗神社に行く事を軽く考慮せねばならなくなる、なにせ行くたびにあんな光景を見せられては色々と不味い。誤字じゃなく不味い。
そんな事を考えていると丁度空に一点の影が出来上がった、そうらお出ましだ。
せめてうまくやってくれよ、私ができる事と言ったら霊夢にそう願う事ぐらいしかできなかった。
■□■
「あ、アリス」
「あら、こんにちは霊夢」
「うん…じゃなくって、折角来たならちょっと上がっていきなさいよ」
「……?別に頼まなくともいつも上がるじゃない」
ああ、どうしよう アリスの顔がまともに見れない、これも全部魔理沙の薬が悪いんだそうに決まっている、おにれ魔理沙め後で痛い目に合わせてやるから覚悟しているがいい。
「具合悪いの?」
そう思っていると目の前には心配そうな顔をしたアリスの顔が、近い近い近い!
きっと顔面が真っ赤になっているだろうから覆い隠すようにアリスから遠ざかる、こういう事をするとアリスは何故か異常に傷つくから「目に塵が入っちゃった」と誤魔化しながら。
どうにかこうにかいつもお茶を飲んでいる所までついた、ここまでは予定通りだ
アリスがいつもの様にポットから紅茶を出そうとするのを手で制する、うう、アリスの紅茶は美味しいけど今日だけは我慢だ。
「あら、紅茶飲まないの?」
「ううん、今日は紅茶の気分じゃない」
「でも私は飲むのよ」
「アリスも緑茶飲んで」
「いきなり緑茶を強要するなんて珍しいわね」
アリスは若干不満そうだ、だがここで引く訳には絶対にいかない
勇気を振り絞って力押しに任せてしまう事にする
「アリス…私と一緒の緑茶を飲むの、駄目?」
精一杯のお願い、これでだめなら絶対に駄目だろう
アリスは暫くこちらを見つめて黙っていたが「仕方ないわねぇ」と了承してくれた。
心の中でガッツポーズを取りつつ台所で緑茶を淹れる、と言うよりも元々用意してあった。
二杯の湯呑の片一方に魔理沙から貰った小瓶の中身を注ぎ込み、よく撹拌する うん、これならばれないだろう。
「待たせたわね」
「あら、随分と早いじゃない まさか用意してあったとか?」
一瞬心が読まれたかと思ってびくっとするがアリスは微笑んでいるばかりで気が付いた様子は無いようだった、安心した。
そのまま緑茶を一口、二口 綺麗な桃色の唇に緑茶が啜られていくのを私はただ見ている。
「…ふぅ、久々に飲むと緑茶も美味しいわね」
「でしょ?紅茶ばっかし飲むなんて偏見も良い所よ、人生の大半は損しているわ」
「私は妖怪だけどね」
「関係ないわ」
…よし、アリスは全部飲んだ、魔理沙によればこの薬は速攻性らしい、今からでも効果はあるに違いない。
これから『あの言葉』を言わせれば良い訳だが…また顔面が紅潮していくのをありありと感じる うう、恥ずかしい。
ええい何を躊躇っているんだ、たった二言言わせればいい話じゃないか、そう、たった二言言わせればいいだけじゃないか。
霊夢 好き
これだけ、これだけ言わせればいいんだ
でも駄目、考えれば考える程足が竦むようになって動けなくなる
それを言わせると言う事はアリスがなんらかを私から感じ取ると言う事で、それは下手をするとこうしてアリスとのんびりしていられる時間も無くなっちゃうかもしれないと言う事で。
怖い
でも
でもこうしないと私はいつまで経ってもこのままなんじゃないかと思ってしまう
その方が、ずっと怖い
だから
「ねぇ、アリス」
だから
「何?」
「言って欲しい言葉があるの」
だから!
「別に、あんまりひどい言葉じゃなければ言ってあげるけど」
「そう?ありがとう アリスに言って欲しい言葉はね…」
神様、私に勇気を下さい
これからへたれても良いですから、今だけはありったけの勇気を下さい
「れ…」
「れ?」
どうか
「れ…」
神様…
「れみりあ う~☆」
その瞬間射命丸文の鉄壁の内側が瞬間だけ垣間見え
霧雨魔理沙はガッデムと言いながら天を仰ぎ見て血涙を流し
紅魔館では10cmの地盤沈下が起き
けーね先生にまさかのはいてない疑惑が浮上し
森近香霖がついに瞬獄殺をマスターし
八雲紫がいきなり起床した事により「主人とどきどきキス目前ごっこ」を楽しんでいた藍と接触するが優秀なクッションの影響により辛うじて歯がかち合うのみのノーダメージで済み
一時的にレイラ・プリズムリバーが甦り
稗田家主催の即売会が人里において開催決定し
比那名居天子が永江衣玖の放った雷撃を躱すもまさかの地上で飲んでいた星熊勇儀の避雷針に直撃し
白玉楼は今日も平和です
地底で三日三晩ぶっ続け宴会が勃発し
松崎しげる色の黒成分が微増し
鈴仙・優曇華・イナバが世紀の大技連続投げっぱなしジャーマンを閃いた
■□■
夕闇の空にアリスが溶けていく、もうじき妖怪の時間となるだろう
幸いにもアリスはキノコのシチューを差し入れてくれた、アリスの料理はいつだって一級品だ。
結局、あの後も私は言い出す事が出来なかった、それどころかアリスとまともに話す事すらできなかった。
しかし、今はこんな調子ても いつか必ずアリスを振り向かせてみせる
私は沈みゆく夕日にそう誓ったのだった
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ひゃっほう!
連続ボケに耐えたのに松崎しげるで負けたw
レイアリ…幸せにな
進展して欲しい気がしたりしなかったり