まだまだ寒さが身にしみる今日この頃
いつもなら、借りている長屋の中で色々と考え事をするのだが
今日の私は里の中をぶらぶら歩いていた
今先ほどまで背負っていた内職の納品も無事に終えた事や
運良く、少し前に仕事が来たことで今は懐に余裕があるので
たまには、里をぶらぶらして買い物をするのもいいかと思っていた時だった
「おーい、そこの普段里の中歩かない珍しい人物」
そんな私の背中に聞き覚えがある声が聞こえてきたので振り返る
そこにいたのは作業着を着たかなり目立つ人物の姿
「あっ!先輩お久しぶりです」
「もう先輩じゃないって」
私の呼び名に少しだけ苦笑して先輩はこっちにやってきた
先輩というのはもともと長屋に先に住んでいた為についた呼称である
自分が住んでいる長屋の中で一番の古参であることと、他に長屋にやってきた子に
色々と教えてくれることから、尊敬の念をこめて先輩と呼んでいる
「でも、一応長屋の方には先輩の部屋残ってますよ?」
「そうなのか?」
一応、先輩は副業の方で里の中にある結構有名な建築会社に勤めている
最近その真面目さと面倒見の良さから、部下を持つようになったので
本業よりもそっちの方が忙しくなったのだ
その為、そこでの寝泊りが多いから最近はめっきり長屋に戻らなくなった
「大家さんもたまに掃除してくれてますよ」
「あの人、忙しいのにねぇ」
先輩と苦笑しながら大家さんの事を思い浮かべる
大家さんという人はこの先輩でも頭が上がらない
私も長屋に来たときに一度会ってから数度しか会っていない
それでも、長屋にいる者達からは皆大家さんに感謝している
「我々のような者を住まわせてくれる所はなかなかないからね」
先輩の呟きにしみじみと頷く
収入が不安定な私たちのような者を敷金礼金無しで
なおかつ、格安の家賃で住まわせてくれるのだ
「それに美人ですしね」
「そうそう、料理もおいしい」
先輩がそう言うと同時に私のお腹がぐぅと鳴った
なるほど、そういえば内職の納品をしたのはお昼を少し過ぎてから
しかも朝から何も食べずに居たのでお腹もなる時間帯である
「食べに行く?丁度私も仕事が一段落したから、明日は休みなんだ」
先輩もそれを感じたのか食べに行く提案をしてくれた
「それはありがたいですけど、先輩はお腹大丈夫なんですか?」
「はっはっは、食べる事なら巫女にも負けないよ」
先輩がそういって胸を張るのを見てなんだかホッとした
長屋に最近戻って来ていないが、その姿は長屋で皆の夜食を
食らい切った時のものと全く同じで変わってない姿であった
「無論、おごりだよね?」
「……大家さーん!」
「待って、冗談だから!」
……なお、その後長屋の大家さんにこっぴどく怒られたことも追記しておく
・・・
「お邪魔するよ~」
「お邪魔しますね~」
先輩と里を歩きながら向かったのは、一軒のお店であった
入り口には『準備中』の暖簾がかかっていたが
中の女将を知っている我々二人は堂々とお店の中に入っていった
「邪魔するなら帰って~♪」
やれやれといった様子の笑顔と挨拶で返してくれたのは
もともと長屋に住んでいたもう一人の古参の先輩の姿であった
こちらの先輩もお店を構えてから繁盛しているので中々長屋に戻らない
「あらら?珍しい人が一人と珍しくないのが一匹」
珍しい人物とは私の事、まあ、今は色々とやることがあるから
中々このお店に来ることもできない
そんでもって珍しくないと言われたのは
「ねぇ、なんで私は人扱いじゃないの?」
「あれれ?ぐでんぐでんに酔っ払って私を食べそうになったケダモノさんは誰?」
「……モウシワケアリマセン」
うん、今盛大に頭を下げている先輩の方
一応、先輩の方が女将さんよりも古くから長屋にいるのだけど
どういうわけか、先輩は女将さんには頭が上がらない
「ツケを払ってくれないし、何でも勝手に食べるし、閉店になっても平気でお店に居座るし……」
「アノトキハスミマセンデシタ、ミステナイデ、ゴメン」
もっとも、女将さんが先輩にだけ意地悪なところがあるので
外からそれを眺めるのは楽しいのだけど
「あの、もうそろそろ許してあげた方が……」
「……そうだね、そしたら顔を上げて、二人とも食べにきたんでしょ?」
軽く先輩を弄り倒した女将さんが泣きそうな先輩を離して
私達の前に胡瓜の漬物を出してくれた
なかなかに美味しい漬物を先輩と私がぽりぽりと齧る
「……先輩、そろそろ泣きやんでくださいって」
「……ぐずぐず……うん……(ポリポリ)」
女将が料理を作ってくれる間に、泣き止んだ先輩と話をする
「そういえば、もう一人の古参の先輩はどうしてるんでしょうね?」
「うん?……ああ、あいつはまだ本業の方で出番があるから忙しいみたい」
もう一人の先輩というのは目の前で漬物を齧りながらお茶を飲んでいる先輩と同期の方である
もっとも、もともと住処が決まっている人なので長屋に来ることはないが
「まあ、あの人はほっておけないって魅力がありますからね」
「だね」
物怖じしない人物なのと放って置けない魅力がある人物なので
今でも道であったら軽く声をかけてきてくれる
「まあ、子供っぽいのと飽きやすいのは困り者ですけどね」
「それもまた、あいつの魅力なんだと思うけどね」
「はーい、虹鱒の印京焼出来たよ」
私と先輩が苦笑していたら、女将がお皿をもって来てくれた
虹鱒を開いて焼いた物に秘伝のタレがかかった料理に
美味しそうに湯気が上がるのを見て先輩と私が急いで手を合わせると
『頂きます』
「はーい、召し上がれ♪」
急いで口に運んだ
・・・
「そう言えば、女将と同期の先輩はどうしたんですか?」
はふはふと言いながら虹鱒を食べてから、既に別の料理とお酒を飲み始めている
先輩を横に置いておきながら、女将に声をかけた
その言葉に、女将が手早く料理を作りながら答えてくれた
「うん、あの子は一応、貴重品の蜜を集める仕事をしているんだけど」
貴重品の蜜を集めるのはかなりの危険を伴う
だけど、あの先輩だったら確かにうってつけの仕事だろう
それに、必要とする組織と場所もある
「でもね、大変な事に色んな所から目をつけられているみたいよ?」
「えっ?何かやばい事でもしちゃったんですか?」
そ、そんなことするような人じゃないはずだったと思うんですけど
「やばい事じゃなくって、気に入られちゃったみたい」
「……ああ、なんか納得」
確かに、あの先輩は宝塚的な意味でもてそうな感じだったもんね
「長屋に来てくれた時にも、宴会芸で一度だけタキシード着て皆にお酒入れてくれた事もありましたっけ」
「そうそう、あの時は何人か頬が真っ赤になっていた子もいたわね」
そんな事を言う女将さんも思い出したのか少しだけ頬が紅かった
「ねぇ?新しく長屋に来た子達はどう?」
「えっ?」
出来上がった料理を手渡してくれた女将がそういってきたので
思わず声を上げると、女将がそっとお酒を用意してくれた
「……これが情報料の代わり、たまには後輩達の話も聞きたいのよ」
「かないませんね」
今度は此方が話をする番であった
「……でも、その前によだれ流して寝ている隣の先輩何とかしないと」
「あはは、そこの長椅子がそいつの指定席だから運びましょうか」
・・・
むにゃむにゃと気持ちよさそうに寝ている先輩を長椅子に横にさせて
毛布を上からかぶせると、御店の中から出てきた女将がお酒を持ってきて椅子に座った
「さて、どこから言ったものでしょうか?」
「とりあえず、貴方の同期の方は?」
女将の言葉に、自分と同期の子の事を思い出す
「あいつは、もともと会社に入っている者でしたから」
里に新しく出来た組織の者だったので、私のようなフリーターのような者ではない
「でも、一応長屋に名前あるんでしょ?」
「はい、たまに『隠れ家』とか『仕事の道具の置き場』とかって言って自分の部屋でくつろいでますけど」
ちなみに、長屋に泊まるときは自分の主と喧嘩をした時みたい
その時は、お酒の相手という名の惚気がはいるから少し勘弁してほしい
「あ、それとその組織に入ってきたもう一人の子も……」
「ああ、毎朝元気な声で挨拶をしてくれる子」
一番最近長屋に入ってきた明るい子なのだけど
どうやら、色々とあってもともといた所をやめて
今の組織に入ったらしい
「長屋の前も掃除してくれるし、大家さんもたまに頭を撫でてくれるって言ってましたね」
「うんうん、あの子は人から可愛がられそうな感じがするからね」
それもまた人徳だと思う
大きな声で挨拶をされると悪い気はしない
「でも、酔っ払った人からは頭に響くから勘弁してほしいって言われた事もあるけどね」
「ああ、なんだかよくわかる」
女将の言葉に私も苦笑して頷いた
「後は……そう言えば修行中だと言っていた先輩が里の豆腐屋さんで働いてましたっけ」
「そうそう、私もよく会うわ、本当はもっと凄い仕事できるはずなんだろうけど……」
豆腐屋で働いている先輩はまた別の家に住んでいる
幻想郷でもかなり重要な組織に居るのらしいのだけど
今はまだまだ己の修行中だと言っていた
一度だけその先輩の上司と言う人あってみたけど
文字通り化け物であった……
「プロポーション的な意味で」
「ん?どうしたの?」
「あ、なんでもないです」
此方を向いた女将にお茶を濁すと手にしていたお酒が丁度いい具合に空になっていた
「……もうそろそろ、帰ろうかな?」
「あらそう?」
程よくお腹も膨れてきたのでそろそろ御暇しようと立ち上がる
女将もそれを見越して、並べていたお皿を手早く運ぶ
「それじゃあ、御愛想お願いします……先輩、そろそろ行きますよ?」
かなりおまけしてくれた料理の料金を支払うと
気持ちよさそうに寝ている先輩を起こそうとしたら女将がそれを止めてきた
「そのままにしておいて、下手すると貴方も噛み付かれるから」
「……お願いします」
そう言えば、寝ている先輩はかなり強暴だと言う事を忘れていた
一度、寝ぼけた先輩に御尻を噛み付かれたときもあったっけ
その点、女将は扱いに慣れているので安心して任せられる
「ああそうそう、これお土産ね」
「どうもスミマセン」
挙句に、本来なら先輩が食べるはずだった串焼きをお土産に貰える事になった
「……今度、また長屋の方に皆集めて飲みませんか?」
「あら、それは良いわね……大家さんにも会いたいしね」
女将がそう良いながら、寝ている先輩を膝枕するのを見届けて
私はそっと御店の入り口を閉めた
・・・
真っ暗になった道を私はゆっくりと歩いていた
少し肌寒いが、長屋に帰る前にもう少しだけ外に居たい気分であった
「と言うわけで、調子はどう?」
「あ~、夜になってようやく意識がすっきりしてきたよ」
そんな思いから、私は少し前に仕事場で出会った友達の下に来ていた
女将から貰った串焼きを仕事場のそばにある小屋の中で寝ていた
友達と共に齧りながら話をしていた
「うまいな~これ」
「今度一緒に食べに行く?」
一人だと女将さんのお店に行きにくいけど
目の前のこいつと行くのなら楽しそうである
「う~ん、いきたいけど此処から離れるわけにいかないしな~」
「あーそうだったっけ」
そう言えばこいつは仕事の都合上此処から離れる事が出来ないんだった
「まあ、仕方がない……にしても美味しいなこれ」
「……そんなにたくさんよく食べれるね」
よく考えたら持ってきた串焼きの殆どを目の前のこいつに食べられていた
全く、この食欲なら先ほど別れた先輩と良い勝負かもしれない
……あっ、良い案が浮かんだ
「そうだ、今度私の住んでいる長屋で宴会するんだけど、その時に一緒に来る?」
「長屋で宴会?これが出るのか~?」
「他にも美味しい物が集まると思うよ」
よっぽど串焼きが美味しかったのだろう
私の言葉に普段仕事している時よりも真面目な顔で考え込む
「むぅ~……いけるように上司に相談してみるかな?」
「なんならその上司さんも一緒に行けばいいしね」
私のその言葉に目の前で串焼きを食べていた友達が
『おー』と感心した様子でうなずいた
「良い案だ、すぐにでも上司に相談する」
「それが良いよ」
「だから、忘れないように残っているこの串焼き全部貰っていいか~?」
「…………」
うん、本当に先輩と良い勝負してくれそうだ
・・・
その後『そろそろ柔軟体操しなきゃならない』と言う友達を見送って、
私は長屋に帰ってきて、自分の部屋のドアを開ける
ご飯も食べてきたし、後は布団に入って眠るだけかな~と思って居ると
「……あっ!」
部屋の中を見て大変な事に気がついた
『……』
部屋の隅のほうから此方を向いて拗ねた様子で見ているものが居たのだ
その姿を見て、私は乾いた笑いをしながら声を出した
「は、ははっ……た、ただいま~……うん、早く戻るつもりだったんだよ?」
『…………』
「で、でも外でルーミア先輩とかミスティアの女将さんとかに会っちゃって……」
『………………』
「そ、そうそう!今度長屋の中でまた宴会をするんだよ!?リグル先輩や橙先輩も呼ぶし!チ、チルノさんとか!ほ、ほら!?他にも芳香さんとか……」
『………………(怒)』
そこまでしか喋らせて貰えなかった、目の前の自分の本体である
傘がすぐに戻ってくるからと部屋に置きっぱなしにして
長い間放って置いた事に怒って頭を叩きに飛び上がったからだ
「う、うわわわっ!?ご、ごめん忘れてたの謝るよ~!」
『(大激怒)』
「痛っ!?ごめん!許してぇ~!」
こうして、その日の晩遅くまで、私は傘に追いかけられる事になったのだ……
女将が落ち着いている……だと……?
おもしろかったです
読んだ感想はよくわからないまま始まってよくわからないまま終わったって感じ。
きっと作者の中じゃ誰が何をしゃべってるのかわかっているんだろうけど、こっちは微妙にわかり辛い。まぁ最後に名前が出たからなんとかね。
なんでこんなにコメントが入らないのかと読んでみたら納得した。こりゃつまんねぇ。
それからね、タグと後書きが非常に気持ち悪い。なんというか、作者は面白いと思ってやったんだろうけど裏目に出てるって言うか。
確かにこれまでの作品にもこういう感じの後書きはたくさんあったけど、なんと言うか今回はずば抜けて気持ちが悪い。
>『………………(怒)』
>『(大激怒)』
それにこういう風に書くと状況がいまいちわからなくなるのね。しっかり書いて欲しいなぁと。
悪い言い方ですが、全体的に気持ちが悪くつまらないだけの作品でした。次は面白い話を期待してますよ。