「最近、ウドンゲが調子に乗ってウザいから少し懲らしめたウサ」
「その結果がこれかい?」
「ンムー!ンンー!!」
「生きの良い新鮮な兎肉だよ!!!」
「ンー!!!」
それは大晦日の夕方に起きた事だ。
いきなり訪れた客(いや、この場合は客では無いか?)は物騒な事を言いながらまたとんでもない物を出してきた。
押しかけた客……因幡てゐは清々しい笑顔をしながら世にも恐ろしい事を言い放ち、片や兎肉呼ばわりされた鈴仙は亀甲縛りで身体の自由を奪われ、目隠しで視界を封じ口にはギャグボール。
オマケに首輪とリードも着いてる仕様………正直、目のやり場に困る。
「ンー!ンムンムー!!!」
「親友なんだろ?もう許してやったらどうだ?」
と言うより『僕を巻き込むな!』なんて言葉は喉まで出かかったが引っ込める、言えば更に面倒臭い話になるだけだ。
「鈴仙は人里では八意女史の弟子として有名な薬売りだし彼女の世話になった者が兎年の〆と掛けて感謝と労いをするのは当然だろう、君だって同じ兎の怪として何か感謝されたんじゃないか?」
「月の兎と地上の兎は全くの別物さ、こいつへの感謝と私への感謝は同一視されたくは無いね。人助けしたのが鈴仙なら、人を幸せにしたのが私さ」
だから何だよ?って流したくなるがグッと堪える。
てゐとの会話は冷静さを欠けば主導権を奪われてそのままとんとん拍子で彼女の望むオチに行き着く、無視してやり過ごそう物なら勝手に話を進めるから逃げることも退くことも出来ない。
「それは失礼、僕からしてみれば二人とも兎妖怪で認識してたからね。矢張り、今代の阿礼乙女の幻想郷縁起は出鱈目だな」
ならばこちらに取れる手段は多くない、だが全くない訳ではない。彼女を満足させながら自分に対する矛先を逸らす。
こう言ったこんな私怨混じりの悪戯はとことん他人視点で見て見ぬ振りする方が安全確保が出来る……見えない所でやってほしいが。
「だから香霖堂にこの兎をあげる、今夜はピチピチの肉を楽しんで年を越すと良いウサ」
「ムっ!ン!ン!」
「いや………別に僕は…」
「香霖堂は食べたくないのか?」
そういいながらてゐは鈴仙の目隠しとギャグボールを取り外す。
「この若くて美味しそうな可愛い小兎を食べたいと思わないか?」
「ハァ……て、店主さぁん…」
目尻に溜まる涙、唾液で光る口元、身体のラインを強調しスタイルの良さが手に取る様に解る肢体。
「………これは、上質な兎肉だね。てゐ、どうせなら君も一緒に頂こうじゃないか」
「おんや?私もかい?」
「え…!?そ、そんな…ま、待って…!」
………鈴仙、君が悪い訳でも無いが。
「一人で食べるには勿体ない、君も嫌いじゃないだろ?こういうのは」
「悪くないね、それなら私は私で愉しませて貰うウサ。香霖堂もさっさと準備すると良いウサ」
「い…嫌ぁ…こんなのって…」
(よし、これで最悪の事態の保険は取れた!)
(ウサウサ……香霖堂、楽しませてもらうよ…!)
(ど…どうしよう!このままじゃ私…)
何もそそられない。
僕はそれ以上に早くこの悪戯兎との会話を終らせたいだけだ、てゐを誘ったのは最悪の事態になった時に責任をなすりつける為。
僕が高ぶったのはこの不毛な会話が終ることの安堵の心だ、鈴仙には何もする気はないから適当に帰せば良い。
こんな所、魔理沙や霊夢とかに目撃されたら言葉通りに妖怪駆除されかねない。
退治ではなく駆除、正に言葉通りだ。
「へぇ……香霖は今夜は兎かぁ…」
「ふーん……なら私達は今夜は半人半妖かしら?」
よぉーく聞き慣れた声、そして新たに高ぶるは恐怖の心。
おや、てゐの姿が見えないな…。
「あぁ………魔理沙に霊夢か、いらっしゃい。誤解してるといけないが…」
「今てゐが裸同然の格好で泣きながら出ていったぜ?」
「ウドンゲを縛り上げて床を濡らした人に何か言い分でも有るの?」
「ひう…か、は…てんしゅしゃん…」
そうか……てゐは最初からこれを狙ってたか。一本取られたな。
あの兎詐欺ェ…!
「香霖の泣き顔か、母性本能が滾るぜ」
「霖之助さんの…ウフフリンノスケサン…」
「二人ともまずはおち」
その後の事は覚えてない。
「除夜の鐘は僕の断末魔かぁ!!!」
「「問答無用!!!!!!」」
魔理沙のブレイジングスターと霊夢の八方鬼縛陣を激しくお見舞いされたのが最後の記憶だった……気がする…。
「………明けてもめでたくない…」
僕が目を覚ましたのは永遠亭のベッドの上で全身に包帯を巻いてる状態、知らない内に勝手に年が明けて正月も過ぎ去っていた。
「あっはははは!大きな駄々っ子みたいだよ香霖堂!あ、それからあけおめとことよろ!」
「あ、あの香霖堂さん!?明けましておめでとうございますとごめんなさいと今年も宜しくお願いしますとご迷惑お掛けしましたとあわわわわ!!!」
てゐは悪戯が成功した憎たらしい笑顔をして鈴仙は真っ赤な顔をしながらひたすらに謝った。
「さらば、兎年…おいでませ、辰年…」
今年は、兎肉は食べたくない。
それが僕の今年の抱負だ。
「その結果がこれかい?」
「ンムー!ンンー!!」
「生きの良い新鮮な兎肉だよ!!!」
「ンー!!!」
それは大晦日の夕方に起きた事だ。
いきなり訪れた客(いや、この場合は客では無いか?)は物騒な事を言いながらまたとんでもない物を出してきた。
押しかけた客……因幡てゐは清々しい笑顔をしながら世にも恐ろしい事を言い放ち、片や兎肉呼ばわりされた鈴仙は亀甲縛りで身体の自由を奪われ、目隠しで視界を封じ口にはギャグボール。
オマケに首輪とリードも着いてる仕様………正直、目のやり場に困る。
「ンー!ンムンムー!!!」
「親友なんだろ?もう許してやったらどうだ?」
と言うより『僕を巻き込むな!』なんて言葉は喉まで出かかったが引っ込める、言えば更に面倒臭い話になるだけだ。
「鈴仙は人里では八意女史の弟子として有名な薬売りだし彼女の世話になった者が兎年の〆と掛けて感謝と労いをするのは当然だろう、君だって同じ兎の怪として何か感謝されたんじゃないか?」
「月の兎と地上の兎は全くの別物さ、こいつへの感謝と私への感謝は同一視されたくは無いね。人助けしたのが鈴仙なら、人を幸せにしたのが私さ」
だから何だよ?って流したくなるがグッと堪える。
てゐとの会話は冷静さを欠けば主導権を奪われてそのままとんとん拍子で彼女の望むオチに行き着く、無視してやり過ごそう物なら勝手に話を進めるから逃げることも退くことも出来ない。
「それは失礼、僕からしてみれば二人とも兎妖怪で認識してたからね。矢張り、今代の阿礼乙女の幻想郷縁起は出鱈目だな」
ならばこちらに取れる手段は多くない、だが全くない訳ではない。彼女を満足させながら自分に対する矛先を逸らす。
こう言ったこんな私怨混じりの悪戯はとことん他人視点で見て見ぬ振りする方が安全確保が出来る……見えない所でやってほしいが。
「だから香霖堂にこの兎をあげる、今夜はピチピチの肉を楽しんで年を越すと良いウサ」
「ムっ!ン!ン!」
「いや………別に僕は…」
「香霖堂は食べたくないのか?」
そういいながらてゐは鈴仙の目隠しとギャグボールを取り外す。
「この若くて美味しそうな可愛い小兎を食べたいと思わないか?」
「ハァ……て、店主さぁん…」
目尻に溜まる涙、唾液で光る口元、身体のラインを強調しスタイルの良さが手に取る様に解る肢体。
「………これは、上質な兎肉だね。てゐ、どうせなら君も一緒に頂こうじゃないか」
「おんや?私もかい?」
「え…!?そ、そんな…ま、待って…!」
………鈴仙、君が悪い訳でも無いが。
「一人で食べるには勿体ない、君も嫌いじゃないだろ?こういうのは」
「悪くないね、それなら私は私で愉しませて貰うウサ。香霖堂もさっさと準備すると良いウサ」
「い…嫌ぁ…こんなのって…」
(よし、これで最悪の事態の保険は取れた!)
(ウサウサ……香霖堂、楽しませてもらうよ…!)
(ど…どうしよう!このままじゃ私…)
何もそそられない。
僕はそれ以上に早くこの悪戯兎との会話を終らせたいだけだ、てゐを誘ったのは最悪の事態になった時に責任をなすりつける為。
僕が高ぶったのはこの不毛な会話が終ることの安堵の心だ、鈴仙には何もする気はないから適当に帰せば良い。
こんな所、魔理沙や霊夢とかに目撃されたら言葉通りに妖怪駆除されかねない。
退治ではなく駆除、正に言葉通りだ。
「へぇ……香霖は今夜は兎かぁ…」
「ふーん……なら私達は今夜は半人半妖かしら?」
よぉーく聞き慣れた声、そして新たに高ぶるは恐怖の心。
おや、てゐの姿が見えないな…。
「あぁ………魔理沙に霊夢か、いらっしゃい。誤解してるといけないが…」
「今てゐが裸同然の格好で泣きながら出ていったぜ?」
「ウドンゲを縛り上げて床を濡らした人に何か言い分でも有るの?」
「ひう…か、は…てんしゅしゃん…」
そうか……てゐは最初からこれを狙ってたか。一本取られたな。
あの兎詐欺ェ…!
「香霖の泣き顔か、母性本能が滾るぜ」
「霖之助さんの…ウフフリンノスケサン…」
「二人ともまずはおち」
その後の事は覚えてない。
「除夜の鐘は僕の断末魔かぁ!!!」
「「問答無用!!!!!!」」
魔理沙のブレイジングスターと霊夢の八方鬼縛陣を激しくお見舞いされたのが最後の記憶だった……気がする…。
「………明けてもめでたくない…」
僕が目を覚ましたのは永遠亭のベッドの上で全身に包帯を巻いてる状態、知らない内に勝手に年が明けて正月も過ぎ去っていた。
「あっはははは!大きな駄々っ子みたいだよ香霖堂!あ、それからあけおめとことよろ!」
「あ、あの香霖堂さん!?明けましておめでとうございますとごめんなさいと今年も宜しくお願いしますとご迷惑お掛けしましたとあわわわわ!!!」
てゐは悪戯が成功した憎たらしい笑顔をして鈴仙は真っ赤な顔をしながらひたすらに謝った。
「さらば、兎年…おいでませ、辰年…」
今年は、兎肉は食べたくない。
それが僕の今年の抱負だ。