A.守矢神社にて
凍える空気も服の隙間を縫うような、年の瀬も迫る12月24日。
普段は神様2柱と巫女さん1人で、のんびり切り盛りしている神社の広間にて
いつになく荘厳なる雰囲気の2柱が、巫女さんともう一つの人影と対峙していた。
「……で、あんたが小傘とやらだね」
「は、はいぃ!」
「ふむ、噂には聞いていたが、中々どうして個性的な色合いじゃないか」
「は、はいぃ!」
「落ち着きなさいな小傘さん」
「だってぇ……」
半べそをかきながら、隣に座っている早苗に泣きつく小傘。
まぁ無理も無い。
一付喪神である小傘が、早苗との清い交際を認めてもらうために山の神の総大将に報告に来たのだ。
例えるなら、新米ライダーが娘さんと結婚するため、おやっさんに会いに行くようなものなのだ。おっさん大歓喜である。
「時に小傘よ」
「ひぃ!」
「お前、うちの早苗がこの神社の大事な秘蔵っ子だというのはわかっているね?」
「一子相伝の秘術を継いだ現人神さね。その子と付き合おうと言うんだ、わかっているかい?」
「は……はい」
恐ろしいほどまでの気迫を感じながらも、小傘は必死にその目線を正面から受け止めてた。
どう思われようと、自分が早苗を想う気持ちに偽りは無い。
ここで負けてしまっては、付喪神としての名が廃る!
「ふむ……気概はよし、と」
諏訪子はそっと目線を神奈子に向けると、そっと頷く相棒を見て自身の背中に手を回す。
「なら、小傘や」
その、右手に取り出したるは、一本の酒瓶。
「まぁ、飲もうや」
「あっはっはっはっ!!いや、小傘は可愛いねぇ!」
「あ、あの」
「んー、ここの骨が痛んでるじゃないかぁ。ダメだぞぉ、女の子は身だしなみに気をつけないとぉ!」
「あ、す、すいま」
「おーっと、小傘ちゃんの下着は何色かなぁ?」
「ひやぁ!?」
「おー、初々しいねぇ。早苗にもこんな頃があったもんだ……」
「神奈子、早苗だってね、大人になっていくもんなんだよ」
「そうだねぇ……こればっかりはどうしようもないねぇ…子が離れていく親の辛さよ……」
「神奈子……私なら、いつだってそばにいるよ」
「諏訪子、あんたってやつは……!」
「うわーん! 神奈子愛してるー!」
「私だってー!!」
赤ら顔を更に上気させて、大盛り上がりをする2柱。
小傘はおろおろしながら、引きつった笑を浮かべてはさまれていた。
「ねぇかなちゃぁん、私、ちょっと火照ってきちゃったぁ」
「そうさねぇ、今日はクリスマスだし、夜も盛り上げていくかぁ!」
「え、クリスマスって他宗じゃ」
「ぃよし!後は若いもんに任せて、私たちはもうひと騒ぎするか!」
「早苗! がんばるんだよ! 女の子は初めてが肝心だからね!」
「はい!」
「早苗?!」
がははと笑いながら部屋を出て行く2柱を、呆然と眺めながら口がふさがらない小傘。
いったいなんなんだこれは。
「ふふ。よかったですね、認めてもらえて」
「え、あれ認めてたの?!」
「そりゃあ、あれだけ盛大に祝ってくれてたら認めてくれたものでしょう」
「あれ祝ってたんだ」
はぁーとため息をつく小傘に吹き出しながら
「でもまぁ、これで落ち着きました?」
「う、うん……そっか、これで私、早苗と一緒にいられるんだ」
「前から気にすることないって言ってたでしょうに」
「だって、やっぱり神社の巫女さんだし、あの二人はいい顔しないかなぁって」
「まさか。なんたって私が選んだ相手ですよ? 反対されるわけないじゃないですか」
「……やっぱり早苗には敵わないや」
ばさっと畳の上に寝転び、思い切り伸びをする小傘。
「……それでどうします?」
「どうって?」
「今日はクリスマスだし、折角だからそれなりのことでもしようかなぁと」
「え、だって他宗じゃないの?」
「細かいことはいいんです!」
「いいのかなぁ」
首をかしげながら腕を組む小傘だが、
「ま、いいや。でも私、クリスマスになにするか良く知らないんだよね」
「そうですねぇ。私も小さい頃は、赤い服を着た御老人に、贈り物を無差別に贈られるという行事だったのですが」
「なにそれこわい」
「まぁ年頃になると、少しずつ意味合いも変わってくる行事ですねぇ」
「どんな?」
「こんな」
ちょいちょいと襖を指さす早苗に不思議がりながら、そっと襖を開けると
そこには、ぴしっと綺麗に叱敷かれた布団が二組、寄せ合うように並んでいた。
「さ、さな」
「だから、こういう日なんですよ」
そう言って艶やかに微笑むと、早苗はそっと袴の結びを緩め
(省略されました・・全てを読むには『さなこが流行れ』と書き込んでください)
A.人里の離れにある民家にて
「あー、疲れた!」
「お疲れ様。お陰で盛況だったよ」
座布団に勢いよく座る妹紅に、笑いながら労いの言葉をかける慧音。
今日は雪もちらつくクリスマス。
折角の祝い事なのだからと一計を案じ、寺子屋でささやかなクリスマスパーティを行ったのだった。
事前に相談していた妹紅の活躍もあり、慎ましいながらも賑やかで楽しいパーティとなった。
「それにしてもやっぱり慧音はすごいね。あの人数をいつも面倒みてるんだから」
「そんなことないよ。私にできることを精一杯やってるだけさ」
「んー、それが凄いと思うんだけどなぁ」
ごそごそともう一枚の座布団をたたむと、それを枕にして横になる妹紅。
「ふわぁ……眠くなってきちゃった」
「徹夜だったからなぁ。もう寝るか?」
「んー……まだちょっと小腹が」
「そっか。よし、軽くお茶漬けでも作ってくるから、待っててくれ」
「いや、いいよそんな。自分でやるって」
「いいからいいから。ちょっとしたお駄賃さ」
ひらひらと手を振って炊事場に向かう慧音を見送り、はふぅと息をつく妹紅。
――そうか、クリスマスか。
まどろみながら、ふと今日の行事について思いを馳せる。
思えば、こうやって人並みに祝い事を過ごすようになったのも、本当に最近になってからだった。
今まで人目を避け、輝夜と対立し、ただただその日を過ごすだけの毎日。
宴会で盛り上がる永遠亭の様子を、影で見ながら過ごすこともあったっけ。
「……出来すぎだよなぁ」
それが今じゃ、慧音と一緒に幸せな日々を送れている。
一緒に笑い、一緒に泣き、一緒に祝う。
これだけのことをしてもいい資格が、自分にはあるんだろうか。
「あーあ」
幾度と無く自問自答した問題を、頭を振って無理矢理追い出し
姿勢を変えて目を瞑る。
クリスマスにはプレゼントをもらえるものだというし、果報は寝てまて、さ……
「ん、んー……」
寝返りをうとうとして、妙な違和感を感じそっと目を開ける。
「あ、すまない。起こしてしまったか」
「慧音……?」
ぼんやりしたままの頭で見つめると、いやに慧音の顔が近い。
なんだか頭の下もあったかくて柔らかいし……
……ああ、膝枕か。
目の前の光景が絶景過ぎると思った。
「夜食の具を聞こうとしたらもう寝ててな。先に湯浴みだけ済ませてもらったよ」
「んー……」
丁寧に髪を梳いてくる慧音に喉を鳴らしながら、再び来る眠気に思わず目を瞑りそうになる妹紅。
「どうする? まだ作ってないけど、何か作ろうか?」
「んー……」
「子どもみたいだなぁ。 何が食べたい?」
「んー……慧音」
ころんと膝の上で首の向きを変え、寝息を立てようとする妹紅。
……が、ふと冷静に今の自分の発言を思い返す。
――……? 今私、なんて言ったっけ?
「……っああ!? あ、じゃなくて、その口が滑、いや、その」
慌てて寝転んだまま正面を向き、弁明する妹紅。
――いかん、一体私は何を口走っているんだ!
しかし、慧音は何を言うでもなくじっと俯いている。
「……慧音?」
「……ぞ」
「へ?」
「……い、いいぞ。その、妹紅が、したいなら……折角の、その、クリスマスだし、な」
「え、あ、うん……」
「……」
「……」
秒針の進む音がいやに耳につき、上気させた顔で見詰め合う二人
慧音は寝巻きの前合わせに手を当てると……
ぐうぅ
「……っ!」
なんとも間抜けな音をたてたお腹に、慌てて手を当てる妹紅に吹き出し
「よし、やっぱり軽くなにか作ってこようか。もう寝るんじゃないぞ?」
と、優しく頭を座布団の上に降ろし、炊事場へ向かう慧音。
「ああ、湯浴みも早く済ませたほうがいいぞ。そろそろ湯も冷めてくる頃だ」
「……はぁい」
妹紅は気の抜けたような顔でぺたんと座り込むと、壁にもたれて天井を仰ぐ。
――……やっぱり、恵まれてるよなぁ
A.地底のとある長屋にて
「えへへへー、パルスィはぱるぱるしてるなぁ」
「わけわかんないわよそれ」
雪の降る夜も更けた子一つ刻。
眉間に深い皺を刻んだパルスィは、へべれけな勇儀を肩に担ぎ
よろよろとしながら町外れの長屋まで運んでいた。
「ほら、ついたわよ」
「んんー、あんがとさんー」
「まったく、こんなに酔って……はやくお風呂入ってきなさいな」
「あいあいー」
千鳥足に成りながら浴室へ消える勇儀の背を、ため息混じりに眺めるパルスィ。
今夜は地底の面々が揃って大掛かりなクリスマスパーティ。
とはいえ面子が面子なので、とにかく名目にかこつけて飲みまくるという、いつも通りな宴会だったわけで。
久しく来ていなかった顔も見せたこともあって、普段以上に飲みまくった勇儀は上機嫌な酔っ払いで帰ってきたのだった。
「しかしまぁ……」
――私も、よくもこれだけ面倒みるものだわ
なんて、畳に座りながらつくづく思うパルスィ。
豪放磊落な性分に始めはうんざりしつつも、いつしかその器量の大きさに惹かれていって。
葛藤の末の告白で承諾をもらい、一応は恋人ということにはなったのだが
それからそれらしいことは全く進展せずで。
さりげなく手を組もうとしても、すっと身をよけてしまったりで、抱擁やキスなんて夢の夢。
酔いの勢いで口づけしようにも、するりとかわして逃げてしまう。
「今日も、ちょっと期待してたのだけど……」
ことんと柱に頭をもたれさせ、寂しそうにぽつりと呟く。
先日勇儀からパーティの誘いがあり、顔には出さないまでも少し心躍ったものだ。
しかし、蓋を開ければいつも通りの飲み比べ。
傍に寄り添ってくれるでもなく、周りを練り歩いては杯を傾ける勇儀。
――私、やっぱり重かったのかしら……
「……う゛ぅ…」
考えているうちに悲しくなり、ぽつりと涙が膝を濡らす。
「うえぇ……勇儀ぃ……」
ぐしぐしと涙を手の甲で拭い、表情を整えて頬を軽く叩く。
――今日はもう帰ろう。そして明日嫌みったらしく皮肉ればいいや。
頭を振って息をつき、少し晴れやかな顔になってから後ろを振り向く
が
「すまん!」
「うぉおあ?!」
バスタオル1枚で土下座している勇儀の姿を見つけ腰を抜かすパルスィ。
「な、なにやってんのあんた」
「何って……その、パルスィが泣いてたからさ」
「泣いてたからって……理由も知らないくせに」
「いやまぁ……薄々気づくさ、様子を見てたら」
「……じゃあ、なんでいっつも素っ気無いのよ」
「素っ気無い、というかなぁ……」
胡坐をかいて座り込み、頭をかきながら
「別に素っ気無くしたつもりじゃないんだけど、その、なぁ……」
「うん」
「私って、結構奔放に見えるかもしれなけど……こういうことには、本当に疎いんだよ」
「うん」
「だから、ああいうことって、どうすればいいのかもわかんなくて」
「うん……」
「その、変にがっついて、嫌われたくなくて……」
俯きながらぽつりぽつりと呟く勇儀に、少し気が抜けたように佇むパルスィ。
彼女なりに悩んだ告白を聞くうち、胸にあったもやもやが消えていくような気がしてきた。
「その……それにな」
「うん」
「そういうことはこう、結婚してからするもんだろう」
「うん……うん?」
「それに、せ、接吻とか、その、こ、子どもができちゃったら、なぁ……」
「……」
真っ赤になりしどろもどろで弁解する勇儀を、呆れ顔で見つめながら考える。
――なんだ、私はこんなしょうもない理由で悩んでいたのか
「ていっ!」
「うお?!」
急に畳に押し倒された勇儀は目を白黒させると、じっと見つめるパルスィから思わず目を逸らす。
「……とりあえず、今まであれこれ悩んでた私がばかだったというのが理解できたわ」
「へ」
「もう四の五の言わせないわよ。さっきからあんたの格好、胡坐かいたらどうなるかわかってんでしょうに」
「なんのことだ?」
「……もうっ!」
相変わらず鈍い勇儀に業を煮やし、両手で頬を包むと
「……私が好きって言うことに、偽りは無い?」
「むぃ……もちろん、鬼に二言はないさね」
「よろしい」
吹っ切れたように頷くパルスィは、そのまま身体を預けて口づけする。
「今までの分、まとめて相手してもらうんだから覚悟なさい」
A.中有の道にて
「幽々子様! 見てください!」
「あら、人魂ボンボン。まだ売ってるのねー」
「幽々子様、それなんですか?」
「たこ焼きよー。一つ食べる?」
「あ、いただきます!」
道の外れの小さな休憩スペースで、まったり寛ぐ二人。
中有の道も今日は聖誕祭にちなみ、派手にお祭り騒ぎをやっている。
いつもの出店に加えて休憩スペースにパフォーマンス。
大人から子どもまでがやがやと楽しそうに騒ぐのであった。
「そういえば、妖夢とこんな風に散歩するのも久々ねぇ」
「んー……あ、そうですね。そもそも幽々子様が滅多に出歩かれないですし」
「まぁ、失礼ね。私だって忙しいのよ」
「そうなんですか?」
「ええ。散歩とか、お茶とか、花見とか」
「ふわぁ」
幽々子はのんびりお団子を頬張りながら
「クリスマスねぇ。私はいい子にしてたけどなにかもらえるのかしら」
「はぁ」
「妖夢は、今年はいい子にしてた?」
「え? え、えーと。どうなんでしょう?」
「私に聞いたらダメよー」
「うーん、うーん……」
真剣に悩む妖夢を見ながら、にこにこと扇子で妖夢の頭を扇ぐ幽々子。
「ほらほら、そよそよー」
「うわぁ、寒いじゃないですか」
「うふふ」
ぐしぐしと髪を直す妖夢の頭を撫でながら
「そうしたら、多分妖夢はいい子だったから、私からプレゼントをしましょう」
「え、ほんとですか?」
「ええ」
「わぁ。一体なんですか?」
「なんにも決めてないわぁ」
「ええぇ」
呆れ顔の妖夢の鼻をぴっと押さえると
「だから、妖夢が欲しいもの1個、叶えてあげる」
「欲しいものって、なんでもですか?」
「この西行寺幽々子、叶えられないものなんてほとんどないわー」
のほほんと妙な自信を漂わせながら言い切る幽々子に首を捻りながら
それならば、とプレゼントを思案する妖夢。
「ほんとになんでもいいんですか?」
「いいわよぉ。なんだったら、私を一晩好きにしてくれても」
「なに言ってるんですかっ」
頬に赤みをさして膨らませつつ、思案顔でうんうん悩む。
すると、急にもじもじしだし
「その……ほんとに何でもいいんですか?」
「ん? どうしたの?」
口の中でもごもご言いながら言いよどんでいたが、意を決したように前を向き
「こ、今晩、その、一緒に寝てもらいたいなぁって……」
「……あらぁ?」
「あ、その、今晩とか冷え込みそうですし、幽々子様のお体が冷えてしまってはと思いまして!」
「妖夢が暖になってくれるの?」
「はい!」
「でも、私は妖夢のしたいことを叶えてあげるっていったのだけれど」
「いいんです! 幽々子様のためになることが私の喜びですから!」
ふんすと鼻息荒く宣言する妖夢に、妖艶な笑みを浮かべる幽々子は
「……あらあら、でも、隣で寝るだけでいいの?」
「はい?」
「そこまでするんなら、もっと先も期待してるんじゃなくって?」
「……っ?! な、そ、そんなことは!」
ぶんぶんと首を降る妖夢に、幽々子はくすくすと笑い
「まぁ、最近髪もさわるようにもなってきたようだし、妖夢もいつまでもネンネじゃないのねぇ」
「ゆ、幽々子様!」
「まぁ、いいわよー。好きなだけ同衾なさいな」
「そ、そんなんじゃ……」
涙目になりながらぶつぶつ言う妖夢に苦笑し
「そしたら、いい子だった私も妖夢からプレゼントでももらおうかしら」
「ふえ?」
「いいじゃないの。私だってプレゼント欲しいわー」
「欲しいわと言われても……生憎、私も準備できる余裕はありませんが」
「あら、いいのよー」
きょとんとする妖夢に微笑みかけると、そっと自分の身体で周りから隠し、身をかがめて額にキスをする。
「あなたへプレゼントをあげるときに、私も一緒にもらうんだから」
A.博麗神社にて
「じんぐるべーじんぐるべー」
「やめなさいな、そんなやる気の無い声で」
「だってぇ」
人影も失せた、赤い巫女さんの神社にて。
こたつに入った霊夢は、赤い丸鼻をつけてのんべんだらりと歌っていた。
今はもう、闇夜に雪もちらつく丑三つ時。
神社の中は、豪勢な宴会が終わって閑散といた。
「そもそもねぇ。クリスマスなんて異教の行事なのに、神社でやるってのもどうなのよ」
「そういうところで柔軟さを見せないから、参拝客もさっぱりなのね」
「いいのよ。私はまったりといくんだから」
鼻を外して放り投げると、思い切りのびをしてこたつの中にもぐりこむ。
「風邪ひくわよ」
「平気平気」
ごろごろと毛布に包まりながらあくびをし
「全く、みんな飲んで食べてさっさと帰るんだから。後片付けのせいで眠いったらありゃしないわ」
「いいじゃないの。細かい気遣いで関係を保っていくのは、博麗の巫女にとっても大事なことよ」
「面倒だなぁ」
巫女らしからぬ発言でのびをしていると
「……そういえば、今日はあんたの式は見かけなかったわね。どうしたの?」
「ああ、あの二人ならマヨヒガでお留守番してるわ。昨日みんなでパーティしたから、今晩はあの子達水入らずでしょう」
「ふーん」
「昨日の藍の様子を見せてあげたかったわぁ。あの甘えっぷりは見てて目じりが下がるわねぇ」
「あの藍がぁ?」
「あらぁ、あの子、普段はしっかりしてるけど、気が抜けたときはそれはもうデレデレよぉ」
ふふふと笑みをこぼす紫に訝しげな視線を送る霊夢。
「だから、今晩はもう予定なし。泊まって行ってもいいんでしょう?」
「どうせ駄目っていってもいるでしょうに」
「ご名答」
蜜柑をむきながらくつくつ笑う紫にため息をつき、ごそごそとこたつにもぐる。
「あ、こら。危ないわよ」
「大丈夫大丈夫」
下をもぐって、紫の側からひょこっと顔を出すと
「1個ちょうだい」
「仕方ないわねぇ」
わこわこと剥いた一欠けらを、膝の上に乗っかっている霊夢の口に放り込む。
「んー」
「美味しそうに食べちゃって」
苦笑しながら手を動かし、また一つ剥いて今度は自分の口の中へ。
「んー」
霊夢は自分で一つ向いて口に放り込むと、眠くなったのか目をこすり始める。
「あら、もう寝るの?」
「んー……」
くるっと器用に向きを変えて紫の方へ向き直ると、胸元に向かってそっと倒れこむ。
「んー……」
「あらあら」
心地よさそうに擦り寄ってくる霊夢の頭を撫でながら、紫は足を楽な姿勢に組みなおす。
「ねぇ紫」
「なぁに?」
「あんた、私のこと好き?」
「んー……そうね。多分、霊夢が思ってる以上に好きよ」
「ふーん」
ふわふわした抑揚の声で問いかけ、ぼんやりと紫を見つめる霊夢。
「そんなにぽーっとしちゃって。もう布団しいてあげるから寝なさいな」
「んー……」
ぐしぐしと目をこすり、少し眉間に皺を寄せると
「……私も、あんたがそれなりに好き」
「それなりって?」
「……紫が思ってる以上ぐらい」
「そう。光栄ね」
手際よく布団を引っ張り出し、服を調えてから霊夢をそっと横たわらせる。
「……ねぇ紫」
「うん?」
「私、多分また起きたら当分言わないから、眠気に任せて今のうちに言っておくけど」
霊夢は欠伸をしつつ、紫のほうをしっかり向くと
「好きよ、紫。愛してる」
「……今日はいやに素直ねぇ」
「いいのよ。クリスマスプレゼントとでも思ってなさい」
頬を染めるでもなく言い切る霊夢に笑いかけながら
「でも、ありがとう。嬉しいわ」
「ん」
そっと両腕で抱きしめられると、溶け込むように背中に手を回し心地よさそうに目を閉じる。
「紫、一緒に寝よ」
「はいはい」
手を伸ばして灯りを消し、霊夢の口元に唇を落とすと
そのまま目を閉じ、部屋の暗がりに目を任せれば
ほどなく二つの寝息が部屋を満たした。
どうかどうか今晩が、あなたにとっての幸せでありますように
全体的に甘くて満足です、さなこが流行れ
誤字報告を
》霊夢は自分で一つ向いて口に放り込むと、
「剥いて」ですね
寝間着に着替えて二人寄り添って寝た描写を早く書いてください
特に霊夢と紫のほのぼのした関係が良かったです。
さなこが大好きですもっと増えろーw