「咲夜と美鈴の髪」
美鈴が両手に怪我を負った。
何でも武術家との戦いで負傷したらしい。
とにかく両手が使えない彼女のために、私は今夕食のおでんを彼女に食べさせてあげている。
私に直接何かあるわけではないのだがこうして仕事が回ってやってくるのだ。
まぁ美鈴の部屋に二人きりで居れるわけだから役得だと思っているのだけれど。
「それにしてもどうしてそんな怪我したのよ、あなたにしては珍しいじゃない」
普段だったらしないであろう怪我。
相手が巫女や魔法使いならまだしも相手は一般人だ、美鈴が後れを取るとは思えない。
「あ、あはは、そうですねぇ。答えなきゃだめですか? あっ、ちょっ、熱いです咲夜さん、冷ましてくれないとっ!」
明らかに誤魔化そうとしている美鈴の顔に、熱々のおでんを箸で掴み寄せる。
立って逃げればいいものを、美鈴は椅子に座ったままいやいやと顔を逸らして逃げようとするのだから可愛いくて仕方が無い。
しかも結局逃げ切れずにそれをもろに当てられているため、美鈴の奇声が部屋に響いている。
まったく、縛っているわけでもないというのに律儀と言うか素直と言うか。
しかしこれは加虐心を煽られ過ぎる、このぐらいでやめておこう。
「それで、どうしてなの?」
いったん箸を引き笑顔を浮かべ美鈴の顔を見ると、涙目になった彼女が何か言いたげな顔でこちらを見ている。
「脅すなんて卑怯ですよぉ」
そしてごにょごにょと拗ねた様に文句を言う美鈴に極上の笑みを見せ、おでんの種をもう一度持ち上げて見せると彼女は慌てて顔をぶんぶん振り出した。
最初から素直に言えばいいのよ、美鈴。
「うぅ。だ、だって、私が負けたら咲夜さんを連れて行くって言い出して……だからつい熱くなってしまって」
「……え?」
美鈴の言葉が静かな部屋に染み込むように溶けていく。
もちろん私の中にも響き、それに反応するように胸の鼓動が一際大きく脈打った。
コチコチと時計が秒を刻む音がする。
それがやけに遠くに聞こえ、何だか現実味が無い。
足元がふわふわとして、まるで浮いているようだ。
恥かしくて体が熱い、顔も熱を持っていく。
「あ、あれですよ咲夜さん、私を本気にさせるための口実で……いや、どうしたってそんな事させませんけどっ!」
黙ってしまった私を見て慌てて美鈴が言葉を続ける。
ああ、何だと言うのだ。
美鈴が手を怪我した事によって私が優勢に立ったはずだったのに。
普段何食わぬ顔で「あ、怪我してるじゃないですか!」とかいって手を握ってきたり「寒くないですか?」と言って肩を引き寄せてきたりと、とにかく彼女のせいで私はいつもいっぱいいっぱいなのだ。
大体からして美鈴の手は綺麗過ぎる。
外にいる時間が長く風に晒され、その上庭の手入れまでしているというのに指は細く長く、肌も綺麗できめ細かく傷一つない。
そんな手で手を握られたりするものだから正直堪ったものじゃない。
しかも相手は特にこれと言って意識してやっているわけではないので、こちらが一方的に恥かしく嬉しく真っ赤になるのだ。
だから怪我をして手が使えない今、いつもの仕返しに美鈴を辱めてやろうと食事の準備しながら内心楽しみにしていたというのに。
それがどうだ、結局彼女は平然とそうやって恥かしいことを言う。
私はそれにやられて、真っ赤になり俯いてしまう。
「敵わないなぁ……」
「え? 何かいいましたか?」
「心配してるのにって言ったのよ」
だから私は精一杯の意地を張る。
向かい合って座る美鈴の方へ前のめりになると、彼女の胸倉を掴んで引き寄せた。
すぐそこには目を見開き驚きに固まった彼女の顔。
私は小さく鼻で笑い口を開く。
「心配してるのに、何で貴女はいつもいつも怪我をするのかしら?」
「あ、あはは、ごめんなさい……」
「もう、本当にわかってるのかしらねぇ?」
そういいながらおでんの種を彼女の鼻頭にくっつける。
少し冷めてしまっただろうがまだまだ熱いはずだ。
「あつつっ! 咲夜さん熱いです!」
離れようとばたばたと暴れ、体を押してくるが離してあげない。
むしろゆっくりとそれを口元へと移動させてゆく。
「ふふふ、本当に心配してるのよ? 反省してる?」
「し、してまふ! してまふからお許しをっ!」
流石にやりすぎては可愛そうだろう。
そう思い手を離すと、逃げようとしていた勢いで美鈴が椅子へと戻っていった。
「あうぅ」
背中を打ったのか、少し体を曲げている。
その姿勢のまま鼻を摩り、涙目でこちらを見上げる様は思わず鼻血が出るのではないかと思うほど可愛い。
仕返しとしては上出来だろう。
「これに懲りたら今度からは私を呼びなさい? 熱くなって怪我をするぐらいなら帰ってもらえばいいのよ」
「……咲夜さんに危険が及ぶのでいやです」
「なに言ってるのよ、ただの人間でしょ? 二人いれば何の問題も無いじゃない」
「あります! 急に刃物を取り出すような人なんですよ!?」
美鈴が勢いよく立ち上がり、言葉を荒げる。
その気迫に思わずたじろぎ無言で美鈴を見つめた。
「咲夜さんに何かあったら私はどうすればいいんですか? いやですよ、そんな事」
「美鈴……」
美鈴は顔を伏せ、しゅんとしてしまう。
彼女は彼女なりに私を一生懸命想ってくれていたようだ。
私ばかりが彼女に想いを寄せていたわけではない。
それが嬉しいと思う反面、彼女のそんな気持ちを汲み取れずにした発言に自己嫌悪を感じる。
でも……
☆★☆ ☆★☆ ☆★☆ ☆★☆ ☆★☆
(あぁ、やってしまいました。どうして咲夜さんにあんな強い言い方をしてしまったのでしょうか。)
あの後、少し冷たくなったおでんを食べさせてもらい、寝仕度を手伝ってもらって最後に手の使えない私に代わってベッドの掛け布団をかけてもらった。
会話は当然少なく、必要な事だけを話してお別れ。
咲夜さんとの数少ない二人だけの時間だったのに。
「はぁ~……」
ため息が先ほどから止まらず、暗い部屋の中に静かな音を作り出す。
それは天井まで昇って溜まり、その場の空気をより重いものにしているような気持ちにさせる。
咲夜さんは私の心配をしてくれていた。
わかっていた筈なのに、なのに咲夜さんに強く当たって……
声を荒げた時の咲夜さんの顔が頭をちらつき離れない。
咲夜さんと一緒にいたい、彼女の笑顔をもっと見ていたい。
そう思うのに私は彼女を悲しませた。
きっと彼女はもっと頼れと言いたいのだろう。
私も戦えると。
でも彼女が危険な目に遭うのはもっと嫌。
これだけは確かだ。
彼女の事だから大丈夫なのだろうけど、私一人が怪我をするぐらいなら何とでもなる。
妖怪なのだから、怪我の治りも早いし体も丈夫。
現に傷はとっくの昔ににふさがっているであろう。
咲夜さんに面倒を見てもらいたいから、彼女との時間を作りたいからと言う口実に使っているのだ。
我ながらわがままな事をしていると思う。
そのくせ肝心なところで彼女に頼らないのだから尚たちが悪い。
「これでは眠れそうもありませんね~……」
一人暗闇の中つぶやき、ごろんっと寝返りを打つ。
視線の先にある掃き出し窓からは、薄いカーテン越しに月明かりが差し込んでいる。
今頃咲夜さんは目を覚ましたお嬢様の相手をしているのだろうか。
時を止めてまで着替えを急いだと言う事は今日はきっと満月。
満月の日はお嬢様が元気になるので咲夜さんが忙しくなる。
よく滅茶苦茶なお願いをされて、一人でそれを叶えるべく出かける咲夜さんと二人で夜道を歩いたりするのだ。
二人で歩いた夜道を思い出しふっと笑みがこぼれる。
「あ、そういえば……」
よく考えたら両手の包帯を変えていない。
見てみれば包帯の結び目が少し崩れている。
さすがに咲夜さんもそこまでは頭が回らなかったのか、さっき寝支度の時変え忘れていたのだろう。
別に外してしまっても構わないのだが、折角咲夜さんが私のために巻いてくれた包帯だ、明日まではつけていたい。
(しかしこのままでは外れてしまいそうですね)
包帯を巻くことぐらいなら自分でもできるので巻き直すとしよう。
それでは意味がないような気もするが、その辺は気持ちの問題。
口で包帯の結び目を咥えてツイッと引っ張る。
包帯が解け、はらはらとベッドに落ちてゆく。
「……え?」
そんな様を目で追いながら包帯の外れた左手を見ると、その小指に何かが巻きついていた。
そして手の平には、バカと大きく2文字。
呆気に取られ、思わず2度3度と確認をするようにそれを見直す。
そして、いろいろな事が繋がり、いろいろと気付き。
いつの間にか、私は笑みを漏らしていた。
「あはは、そうですかそうですか、そうですよねぇ」
クスクスと笑い声が止まらない。
こんな満ち溢れた幸せな気持ちはいつぶりだろうか?
素直じゃない、彼女のこの行為。
きっと私に何か後ろめたい思いでもあったのではないだろうか?
そう、たとえば私の想いを汲み取れなかったとか。
結局、私も同じように思っていたので似たような物だろうけど。
それにしても本当に素直じゃない、素直じゃない。
時を止めてまで私の手にこんな事をして。
でもよく考えたら私自身に気付いてほしかったのかな?
私だって貴女と同じぐらい貴女のことが心配だって。
左手の小指には、私の髪の毛が巻きつけられており――
私の髪の毛は赤色で――。
きっと彼女の左手にも、その顔と同じ真っ赤な色をした私の髪の毛が、巻き付けられているのだろう。
結局二人が二人、お互いのことを本当に心配して、大切に思っていた事。
交差した二つの想いが、今一つに繋がったような……
そんな気がした。
美鈴が両手に怪我を負った。
何でも武術家との戦いで負傷したらしい。
とにかく両手が使えない彼女のために、私は今夕食のおでんを彼女に食べさせてあげている。
私に直接何かあるわけではないのだがこうして仕事が回ってやってくるのだ。
まぁ美鈴の部屋に二人きりで居れるわけだから役得だと思っているのだけれど。
「それにしてもどうしてそんな怪我したのよ、あなたにしては珍しいじゃない」
普段だったらしないであろう怪我。
相手が巫女や魔法使いならまだしも相手は一般人だ、美鈴が後れを取るとは思えない。
「あ、あはは、そうですねぇ。答えなきゃだめですか? あっ、ちょっ、熱いです咲夜さん、冷ましてくれないとっ!」
明らかに誤魔化そうとしている美鈴の顔に、熱々のおでんを箸で掴み寄せる。
立って逃げればいいものを、美鈴は椅子に座ったままいやいやと顔を逸らして逃げようとするのだから可愛いくて仕方が無い。
しかも結局逃げ切れずにそれをもろに当てられているため、美鈴の奇声が部屋に響いている。
まったく、縛っているわけでもないというのに律儀と言うか素直と言うか。
しかしこれは加虐心を煽られ過ぎる、このぐらいでやめておこう。
「それで、どうしてなの?」
いったん箸を引き笑顔を浮かべ美鈴の顔を見ると、涙目になった彼女が何か言いたげな顔でこちらを見ている。
「脅すなんて卑怯ですよぉ」
そしてごにょごにょと拗ねた様に文句を言う美鈴に極上の笑みを見せ、おでんの種をもう一度持ち上げて見せると彼女は慌てて顔をぶんぶん振り出した。
最初から素直に言えばいいのよ、美鈴。
「うぅ。だ、だって、私が負けたら咲夜さんを連れて行くって言い出して……だからつい熱くなってしまって」
「……え?」
美鈴の言葉が静かな部屋に染み込むように溶けていく。
もちろん私の中にも響き、それに反応するように胸の鼓動が一際大きく脈打った。
コチコチと時計が秒を刻む音がする。
それがやけに遠くに聞こえ、何だか現実味が無い。
足元がふわふわとして、まるで浮いているようだ。
恥かしくて体が熱い、顔も熱を持っていく。
「あ、あれですよ咲夜さん、私を本気にさせるための口実で……いや、どうしたってそんな事させませんけどっ!」
黙ってしまった私を見て慌てて美鈴が言葉を続ける。
ああ、何だと言うのだ。
美鈴が手を怪我した事によって私が優勢に立ったはずだったのに。
普段何食わぬ顔で「あ、怪我してるじゃないですか!」とかいって手を握ってきたり「寒くないですか?」と言って肩を引き寄せてきたりと、とにかく彼女のせいで私はいつもいっぱいいっぱいなのだ。
大体からして美鈴の手は綺麗過ぎる。
外にいる時間が長く風に晒され、その上庭の手入れまでしているというのに指は細く長く、肌も綺麗できめ細かく傷一つない。
そんな手で手を握られたりするものだから正直堪ったものじゃない。
しかも相手は特にこれと言って意識してやっているわけではないので、こちらが一方的に恥かしく嬉しく真っ赤になるのだ。
だから怪我をして手が使えない今、いつもの仕返しに美鈴を辱めてやろうと食事の準備しながら内心楽しみにしていたというのに。
それがどうだ、結局彼女は平然とそうやって恥かしいことを言う。
私はそれにやられて、真っ赤になり俯いてしまう。
「敵わないなぁ……」
「え? 何かいいましたか?」
「心配してるのにって言ったのよ」
だから私は精一杯の意地を張る。
向かい合って座る美鈴の方へ前のめりになると、彼女の胸倉を掴んで引き寄せた。
すぐそこには目を見開き驚きに固まった彼女の顔。
私は小さく鼻で笑い口を開く。
「心配してるのに、何で貴女はいつもいつも怪我をするのかしら?」
「あ、あはは、ごめんなさい……」
「もう、本当にわかってるのかしらねぇ?」
そういいながらおでんの種を彼女の鼻頭にくっつける。
少し冷めてしまっただろうがまだまだ熱いはずだ。
「あつつっ! 咲夜さん熱いです!」
離れようとばたばたと暴れ、体を押してくるが離してあげない。
むしろゆっくりとそれを口元へと移動させてゆく。
「ふふふ、本当に心配してるのよ? 反省してる?」
「し、してまふ! してまふからお許しをっ!」
流石にやりすぎては可愛そうだろう。
そう思い手を離すと、逃げようとしていた勢いで美鈴が椅子へと戻っていった。
「あうぅ」
背中を打ったのか、少し体を曲げている。
その姿勢のまま鼻を摩り、涙目でこちらを見上げる様は思わず鼻血が出るのではないかと思うほど可愛い。
仕返しとしては上出来だろう。
「これに懲りたら今度からは私を呼びなさい? 熱くなって怪我をするぐらいなら帰ってもらえばいいのよ」
「……咲夜さんに危険が及ぶのでいやです」
「なに言ってるのよ、ただの人間でしょ? 二人いれば何の問題も無いじゃない」
「あります! 急に刃物を取り出すような人なんですよ!?」
美鈴が勢いよく立ち上がり、言葉を荒げる。
その気迫に思わずたじろぎ無言で美鈴を見つめた。
「咲夜さんに何かあったら私はどうすればいいんですか? いやですよ、そんな事」
「美鈴……」
美鈴は顔を伏せ、しゅんとしてしまう。
彼女は彼女なりに私を一生懸命想ってくれていたようだ。
私ばかりが彼女に想いを寄せていたわけではない。
それが嬉しいと思う反面、彼女のそんな気持ちを汲み取れずにした発言に自己嫌悪を感じる。
でも……
☆★☆ ☆★☆ ☆★☆ ☆★☆ ☆★☆
(あぁ、やってしまいました。どうして咲夜さんにあんな強い言い方をしてしまったのでしょうか。)
あの後、少し冷たくなったおでんを食べさせてもらい、寝仕度を手伝ってもらって最後に手の使えない私に代わってベッドの掛け布団をかけてもらった。
会話は当然少なく、必要な事だけを話してお別れ。
咲夜さんとの数少ない二人だけの時間だったのに。
「はぁ~……」
ため息が先ほどから止まらず、暗い部屋の中に静かな音を作り出す。
それは天井まで昇って溜まり、その場の空気をより重いものにしているような気持ちにさせる。
咲夜さんは私の心配をしてくれていた。
わかっていた筈なのに、なのに咲夜さんに強く当たって……
声を荒げた時の咲夜さんの顔が頭をちらつき離れない。
咲夜さんと一緒にいたい、彼女の笑顔をもっと見ていたい。
そう思うのに私は彼女を悲しませた。
きっと彼女はもっと頼れと言いたいのだろう。
私も戦えると。
でも彼女が危険な目に遭うのはもっと嫌。
これだけは確かだ。
彼女の事だから大丈夫なのだろうけど、私一人が怪我をするぐらいなら何とでもなる。
妖怪なのだから、怪我の治りも早いし体も丈夫。
現に傷はとっくの昔ににふさがっているであろう。
咲夜さんに面倒を見てもらいたいから、彼女との時間を作りたいからと言う口実に使っているのだ。
我ながらわがままな事をしていると思う。
そのくせ肝心なところで彼女に頼らないのだから尚たちが悪い。
「これでは眠れそうもありませんね~……」
一人暗闇の中つぶやき、ごろんっと寝返りを打つ。
視線の先にある掃き出し窓からは、薄いカーテン越しに月明かりが差し込んでいる。
今頃咲夜さんは目を覚ましたお嬢様の相手をしているのだろうか。
時を止めてまで着替えを急いだと言う事は今日はきっと満月。
満月の日はお嬢様が元気になるので咲夜さんが忙しくなる。
よく滅茶苦茶なお願いをされて、一人でそれを叶えるべく出かける咲夜さんと二人で夜道を歩いたりするのだ。
二人で歩いた夜道を思い出しふっと笑みがこぼれる。
「あ、そういえば……」
よく考えたら両手の包帯を変えていない。
見てみれば包帯の結び目が少し崩れている。
さすがに咲夜さんもそこまでは頭が回らなかったのか、さっき寝支度の時変え忘れていたのだろう。
別に外してしまっても構わないのだが、折角咲夜さんが私のために巻いてくれた包帯だ、明日まではつけていたい。
(しかしこのままでは外れてしまいそうですね)
包帯を巻くことぐらいなら自分でもできるので巻き直すとしよう。
それでは意味がないような気もするが、その辺は気持ちの問題。
口で包帯の結び目を咥えてツイッと引っ張る。
包帯が解け、はらはらとベッドに落ちてゆく。
「……え?」
そんな様を目で追いながら包帯の外れた左手を見ると、その小指に何かが巻きついていた。
そして手の平には、バカと大きく2文字。
呆気に取られ、思わず2度3度と確認をするようにそれを見直す。
そして、いろいろな事が繋がり、いろいろと気付き。
いつの間にか、私は笑みを漏らしていた。
「あはは、そうですかそうですか、そうですよねぇ」
クスクスと笑い声が止まらない。
こんな満ち溢れた幸せな気持ちはいつぶりだろうか?
素直じゃない、彼女のこの行為。
きっと私に何か後ろめたい思いでもあったのではないだろうか?
そう、たとえば私の想いを汲み取れなかったとか。
結局、私も同じように思っていたので似たような物だろうけど。
それにしても本当に素直じゃない、素直じゃない。
時を止めてまで私の手にこんな事をして。
でもよく考えたら私自身に気付いてほしかったのかな?
私だって貴女と同じぐらい貴女のことが心配だって。
左手の小指には、私の髪の毛が巻きつけられており――
私の髪の毛は赤色で――。
きっと彼女の左手にも、その顔と同じ真っ赤な色をした私の髪の毛が、巻き付けられているのだろう。
結局二人が二人、お互いのことを本当に心配して、大切に思っていた事。
交差した二つの想いが、今一つに繋がったような……
そんな気がした。
ピクッ
おでんが甘いぜ!
そっちの方が安いからね!
おでんがエラく甘く感じるいいめーさくだ。地の分の描写が個人的にはかなりツボだったなぁ。
お久しぶりです。
いつもいつもコメントありがとうございます。
個人的にかなり上手に書けたつもりでしたのでコメントがついてかなり嬉しかったり……!
この間コンビニで白滝を買ったのですが、寒空の下だとくそ美味く感じるのですね、新しい発見でしたw
>>2さん
コメントありがとうございます!
お弁当屋さんでもおでんって売っているのです?
あまり利用しないというか付近にお弁当屋さんないのでよく知らないのです…
今度機会があるようだったら覗いてみたいですね~
>>タナバンさん
こちらではお久しぶりです。
コメントありがとうございます!
なんだかんだで奇声さんと並び古くから見守っていただき、こうやってコメントがついたりするとつい顔がにやけてしまうのですが健全でしょうか?
もっとやりますがんばります、これからもマイペースにやっていくので応援お願いいたします。