※初投稿です。
タイトルと内容はそんなに関係ないです。
文章稚拙ですみません。
「それにしても……」
博麗神社で始まったハロウィンパーティー……という名の馬鹿騒ぎ。それを少々離れた木の下で眺めながら咲夜は呟いた。
なお、ハロウィンという事で咲夜の頭にはパチュリーの魔法薬で生やした犬耳。主であるレミリアから、神社に向かう際に「咲夜は悪魔の狗なんだから犬耳よ!!」との言葉を賜った訳だが、自他共に瀟洒と称する咲夜としては、もう少し捻りが欲しかったところだ。
そんな咲夜の視線の先には猫耳つけた紅くて白い巫女さん。霊夢自身は仮装などするつもりなど無かったのだが、どうやらスキマ妖怪にまたちょっかいだされたらしい。ちなみに顔を真っ赤にして俯いた彼女は借りてきた猫状態。ここ彼女の自宅でもあるのに……。
「霊夢、可愛いわね……」
グッジョブスキマ。今度紅魔館に来た時はケーキくらいはもてなしましょう。
まだ幼少の頃に彼女を拾い、育ててきた紅魔館の面々ですら見たことない蕩けた微笑みを見せる咲夜。ちなみに彼女は甘いものに目が無い部類の人間だが、里で人気のスイーツ店、その一番人気のメニューを前にしてもこの微笑みは見られなかった。
現在、彼女の脳内では猫巫女は彼女に背後から抱き締められ、頭を撫でられ喉を擽られ、嬉しそうに無邪気に笑っている。そんな巫女さんに更なるスキンシップを謀る咲夜は段々と彼女の身体、腰や足にまで手を伸ばしていく。
さて、そんな若干脳みそが蕩け気味のメイドさんに視姦されているとは露とも思っていない霊夢は、白地に銀や青で刺繍を施した着物に身を包んだアリス(なんと自作。雪女のつもりらしい)に「可愛い!似合う!」などと普段の都会派知性派の優しく落ち着いたお姉さんな仮面をいとも容易く「そぉい!!」と魔界に向けて全力で投げつけ、猫耳をふにふにしていた。その横では今回ハロウィンという習慣を幻想郷に持ち込み、パーティーの首謀者の片割れでもある早苗は何故かナース服でアリスの言葉に「ですよね!ですよね!!」と下戸の割には凄まじい酒臭さを撒き散らしながら首肯していた。
捕捉しておくと首謀者その1である魔理沙は参加者全員からお菓子を貰うと(あくまで本人は貰ったと主張。決して目を離した隙にちょろまかした訳ではない。決して。)魔法の森の道具屋目掛けて飛んで行った。大方、店主に対してお菓子を用いたアプローチを行うのだろう。彼がそれに靡くかは甚だ謎でしかないが。
更に蛇足ではあるが、アリスが投げ捨てた仮面は仕事投げ出してパーティーに参加しようと転移魔法を発動させた彼女の母である魔界神の顔面にぶち当たり、人が変わったように仕事を片付けているそうだ。赤いメイドは涙を流して喜んでいるらしい。
他にも、幻想郷の人気者である為か、霊夢の元には人妖入り乱れ、どいつもこいつも「トリック・オア・トリート!!」と叫んではお菓子を貰い、お菓子を渡している。もはやお菓子の大交換会である。ハロウィンどこ行った?と妄想に思考の8割を使用していた咲夜は残りの2割で考えていた。
これでは計画が実行できないが、しかしここは幻想郷。底なしの胃袋を持つご令嬢が居たりする。
「ふむ……」
妄想を一旦打ちきると、咲夜は背中を木から離し、自身の所望する最高の「お菓子」を得る為に亡霊の姫君の元へと近づいていった。
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「はあ……」
パーティーが終わり、片づけも終わらせて居間に倒れこむ猫耳霊夢。
「幽々子のアレはなんだったのよぉ……」
倒れこんだ体勢でため息をつく霊夢。それもそのはず、パーティー終盤に急に幽々子がピンクの悪魔に勝るとも劣らぬ強烈なバキュームを発動。その場にあった全てのお菓子を吸いこんでしまったのだ。
唖然とする一同を尻目に逃げ出す幽々子。それを追いかける者達。戦いは幻想郷の空で幽々子VS多くの妖怪達という展開に発展し、最終的には霊夢が全員をしばき倒し、幽々子には次の宴会の場所に白玉楼の庭を提供させる事でなんとか事態は終息した。
「霊夢、大丈夫?」
そんなタレ巫女を労わるように声を掛けたのは犬耳咲夜。先ほどまでアリスと一緒に片づけの手伝いをしていたのだ。
「疲れた……」
「そう……ちょっと待ってて。お布団敷くから」
そう言った瞬間、出現する布団。更には霊夢も布団の上に横たわっていた。
「もう寝ちゃう?」
見るからにぐったりとしている霊夢の頭を撫でる咲夜。
「ん……もうちょっとこのまま……」
撫でてて、と本当にわずかな声で呟く霊夢。咲夜は満面の笑みで優しく撫で続ける。
「ねえ、霊夢?」
「なに?」
しばらく黙って撫で、霊夢もそれを穏やかな心持で受けていると、唐突に咲夜が口を開いた。
そして信じられない言葉を口にする。
「トリック・オア・トリート?」
「へ?」
今更?と霊夢は目を見開く。
「いや、咲夜?」
「何かしら?」
「さっき幽々子が全部食べちゃったわよね。それは知ってる?」
「もちろんよ」
「だから、もうお菓子無いわよ?」
「でも私、霊夢から貰ってないわ」
未だ生えている犬耳がシュンと下がる。それを見て「う……可愛い……」とか思っている時点でこの巫女も大概である。
「で、でも……」
「そう、くれないのね。じゃあ……」
咲夜は霊夢の身体を跨ぎ、覆い被さる。
「え、ちょ、咲夜!?」
そしてそのまま右手を霊夢の頬に添えると反対側の頬を、
ぺろり
一舐め、その赤い舌を走らせた。
「――――――!?」
当然、真っ赤になる霊夢。
「あ、そうそう。今日の亡霊のお姫様の暴走、あれね、私が煽ったの」
「はあっ!?」
「今度フルコースを奢るって約束したの。それで……ね」
「なんの為に……」
「この時の為に。貴女(極上のお菓子)を味わう為に」
いけしゃあしゃあと言い放つ咲夜。ちなみに今のやり取りの間に霊夢の両手首を彼女のリボンを使って縛っていた。
「じゃあ、霊夢」
「ちょ……!!」
右手は霊夢の胸に置かれ、左手は指を鳴らす。
「Trick or treat?(貴女をくれなきゃ悪戯するわよ?)」
左手のパチンという音と共に、開け放たれていた障子が独りでに閉まった。
God Jobっす