何だか今日の霊夢は機嫌が悪い。
いつものように縁側に座って、
いつものようにお茶をすすっているその姿に、
いつもとは違う雰囲気を感じ取ったアリスは、やぶ蛇をつつく前に出直そうと、きびすを返したところで霊夢に捕まった。
「何してんの?あんた」
「霊夢が親のかたきを苦虫でも噛み締めながら見てるような目してるから帰ろうかなと思ったところ」
「あっそ、じゃあね」
アリスから視線を外してヒラヒラ振る手。言外に機嫌の悪さがにじみ出ていた。
お言葉に甘えようか……とアリスは考える。
しかし、帰ったら折角持ってきたこれはどうする。
見つからなければ出直すこともできたけど、見つかってしまっては出直すこともできないし。
少し考えて、これは霊夢に渡してそれから帰ろうと結論を出した。
機嫌が悪いからといって、食べ物にまで八つ当たりするような人間じゃない。
「ねぇ、霊夢」
「何?」
「お菓子作ってきたから食べて」
オレンジ色の紙で丁寧に包装された袋を差し出すアリスに、ちょっと待ちなさいと霊夢。
「何?」
「お茶出すから座って待ってて」
ああ、これは愚痴られる。
奥に引っ込む背中に、苦笑いを浮かべた。
「で、何があったの?」
「何があった!?何も無いのよ!何も出来ないのよ!今日は何の日か知ってる?
ハロウィンよ、ハロウィン!どいつもこいつもハロウィン!
トリックオアトリートでお菓子が貰える日!」
「……霊夢も参加すればいいじゃない……」
「宗派が違うでしょ」
「え!?貴女がそんなこと気にするなんて思ってもみなかったわ」
「ええ、気にしてないわ、ハロウィンなんて参加したくなかったのよ、初めから、いやほんとに」
はあああああと深い深いため息をついて空を見上げる霊夢。
一方アリスは、お祭りごとに参加できないだけで、この世の終わりのような顔をするなぁと完全に他人事モードで考えを巡らせていた。
魔女や吸血鬼が出入りするのはいいのに、ハロウィンはダメなのか。
線引きがよく分からない。
ここで私が、トリックオアトリート!とかはじけてみたらどうだろう。
いやいや、冷めた目で見られてお菓子持って帰れとか言われたら、さすがにちょっと堪える。
というか、きっと妖精やら何やらからひっきりなしに言われてここまで機嫌が悪くなったんだろうから、自殺行為すぎる。
いやはやどうしたものかと考えていると、目の前に突然現れる人。
普段の緑色の巫女服とはうってかわった衣装にぽかんと呆ける2人をよそに、
先に口を開いたのは、早苗だった。
「トリックオアトリート!……あれ?どうしたんですか?」
「いやいやいやいやいや……何普通に参加してんのよ、あんた」
「そりゃ参加しますよ。霊夢さんは参加しないんですか?」
「え?いいの?巫女が違う宗派のお祭りごとに参加するとか、ありなの?」
「もちろんありですよ。諏訪子様も神奈子様も、参加されてますし。そんなことよりお菓子ください。神社にいたずらしますよ」
早苗が神社にするいたずらも見てみたい気もするけど、困惑顔の霊夢に代わり、私は早苗にお菓子を渡した。
受け取ってニコニコ顔の早苗はハッピーハロウィン!と手を振って去っていった、見送ってから隣の霊夢に目をやる。
やる気に満ちた目。
これは参加する腹が決まったなと思う。
よし!と気合を入れて立ち上がる、先ほどの機嫌の悪さはどこへやら。
「さぁアリス、服を交換するわよ」
「その仮装、ちょっと安易すぎない?」
「いいのよ、大事なのは外見じゃなくて中身だってよく言うじゃない。
この私の溢れんばかりのハロウィン愛からすれば、そんなものは些細なことよ」
ほらほらチャキチャキ脱ぐ!後ろから押されて部屋に通された。
霊夢の服は着脱が楽だ。
袖を取って、上着を脱いでスカートを脱ぐだけ。
当然霊夢よりも脱ぐのが遅いアリスは、その視線に晒されることになる。
好奇の目を背中にビンビン感じ、ソワソワと視線を泳がせながら抗議する。
「ねぇ、霊夢。恥ずかしいからそんなに見ないでよ……」
「いいじゃない。減るもんでもあるまいし。むしろ「わかった!わかったから!見てもいいから黙ってて!」
変に意識してしまい、無駄に羞恥心をくすぐられ、
中にもう一枚着ておくんだったと、いまさらながらに後悔した。
「ヒューヒュー、色っぽいね、お姉ちゃん!」
中々脱がないアリスに、霊夢から野次が飛ぶ。
ちらと肩越しに覗き見れば、やんややんやと一人盛り上がる霊夢が見えた。
サラシにドロワーズ姿で座り込んで、羞恥心を煽るように吹く口笛に、血が上った。
「うるさい!脱げばいいんでしょ、脱げば!」
「そうよ、ちゃっちゃと脱げばいいのよ、脱げば」
茶化されて苛立ち、乱暴に脱いだ服を渡そう突き出すように差し出す。
それを受け取ろうとした霊夢の腕を見て、アリスは思わず笑った。
「はい、って、あはは、すごい鳥肌じゃない」
「私が鳥に進化しないうちにはやく服」
「はいはい」
やっとこ脱いだアリスの服を、霊夢は鼻歌交じりで身に着けている。
脱ぐのは遅かったアリスだったが、着るのは速かった。
霊夢の上着を着て、スカートをはく。袖は……思案した末、まぁ一応つけようかなという結論に達したようだ。
袖をつける為に、腕を上げ視線を下げて気がついてしまった。
霊夢の服は……
「アリス、あんたブラ見えてるわよ」
「服返して……」
「ダメ。大丈夫大丈夫。ケープは返してあげるから」
じゃ、いってくるわねとそのまま飛んでいってしまう霊夢に、アリスは頭を抱えた。
ケープがあっても腕あげたら見えるじゃない……
はぁ……誰かに見つかる前に家に帰ろう……
上手いこと誰にも会わずに家に帰ってこられてほっと一息。
服を着替えて、紅茶を一杯。
あー、酷い目にあった。
でも、霊夢も一応巫女さんやってたんだなぁと今日の出来事を思い出すと口元がほころんだ。
今頃色んな人妖からお菓子を貰ったり、あげたりしてるのかしら。
ひんやりしはじめた空気に体をぶるりと震わせ、暖炉を眺める。
そろそろ火を入れてもいい時期になってきた。
少し冷めた紅茶を、口に運んでいると、ドアがノックされた。
はて、誰だろう。迷い人かしら。
「はーい、ちょっと待って」
ひっきりなしに叩かれる扉に閉口しつつ、早足で扉に近づく。
ガンガン叩かれていたドアが、ノブを掴んだとたん大人しくなった。
その勘の良さで、相手が分かる。
「はいはい、霊夢いらっしゃい。服返しに来たの?」
「トリックオアトリート」
「は?お昼にあげたじゃない、お菓子」
「貰ってないわ」
「え?…………あっ!」
しまった、霊夢にあげようと思ってたお菓子。早苗にあげてた……。
「無いの?」
「……無いわ」
「じゃあ、いたずらね」
「いや、ちょっと……まっ……アッー!」
いつものように縁側に座って、
いつものようにお茶をすすっているその姿に、
いつもとは違う雰囲気を感じ取ったアリスは、やぶ蛇をつつく前に出直そうと、きびすを返したところで霊夢に捕まった。
「何してんの?あんた」
「霊夢が親のかたきを苦虫でも噛み締めながら見てるような目してるから帰ろうかなと思ったところ」
「あっそ、じゃあね」
アリスから視線を外してヒラヒラ振る手。言外に機嫌の悪さがにじみ出ていた。
お言葉に甘えようか……とアリスは考える。
しかし、帰ったら折角持ってきたこれはどうする。
見つからなければ出直すこともできたけど、見つかってしまっては出直すこともできないし。
少し考えて、これは霊夢に渡してそれから帰ろうと結論を出した。
機嫌が悪いからといって、食べ物にまで八つ当たりするような人間じゃない。
「ねぇ、霊夢」
「何?」
「お菓子作ってきたから食べて」
オレンジ色の紙で丁寧に包装された袋を差し出すアリスに、ちょっと待ちなさいと霊夢。
「何?」
「お茶出すから座って待ってて」
ああ、これは愚痴られる。
奥に引っ込む背中に、苦笑いを浮かべた。
「で、何があったの?」
「何があった!?何も無いのよ!何も出来ないのよ!今日は何の日か知ってる?
ハロウィンよ、ハロウィン!どいつもこいつもハロウィン!
トリックオアトリートでお菓子が貰える日!」
「……霊夢も参加すればいいじゃない……」
「宗派が違うでしょ」
「え!?貴女がそんなこと気にするなんて思ってもみなかったわ」
「ええ、気にしてないわ、ハロウィンなんて参加したくなかったのよ、初めから、いやほんとに」
はあああああと深い深いため息をついて空を見上げる霊夢。
一方アリスは、お祭りごとに参加できないだけで、この世の終わりのような顔をするなぁと完全に他人事モードで考えを巡らせていた。
魔女や吸血鬼が出入りするのはいいのに、ハロウィンはダメなのか。
線引きがよく分からない。
ここで私が、トリックオアトリート!とかはじけてみたらどうだろう。
いやいや、冷めた目で見られてお菓子持って帰れとか言われたら、さすがにちょっと堪える。
というか、きっと妖精やら何やらからひっきりなしに言われてここまで機嫌が悪くなったんだろうから、自殺行為すぎる。
いやはやどうしたものかと考えていると、目の前に突然現れる人。
普段の緑色の巫女服とはうってかわった衣装にぽかんと呆ける2人をよそに、
先に口を開いたのは、早苗だった。
「トリックオアトリート!……あれ?どうしたんですか?」
「いやいやいやいやいや……何普通に参加してんのよ、あんた」
「そりゃ参加しますよ。霊夢さんは参加しないんですか?」
「え?いいの?巫女が違う宗派のお祭りごとに参加するとか、ありなの?」
「もちろんありですよ。諏訪子様も神奈子様も、参加されてますし。そんなことよりお菓子ください。神社にいたずらしますよ」
早苗が神社にするいたずらも見てみたい気もするけど、困惑顔の霊夢に代わり、私は早苗にお菓子を渡した。
受け取ってニコニコ顔の早苗はハッピーハロウィン!と手を振って去っていった、見送ってから隣の霊夢に目をやる。
やる気に満ちた目。
これは参加する腹が決まったなと思う。
よし!と気合を入れて立ち上がる、先ほどの機嫌の悪さはどこへやら。
「さぁアリス、服を交換するわよ」
「その仮装、ちょっと安易すぎない?」
「いいのよ、大事なのは外見じゃなくて中身だってよく言うじゃない。
この私の溢れんばかりのハロウィン愛からすれば、そんなものは些細なことよ」
ほらほらチャキチャキ脱ぐ!後ろから押されて部屋に通された。
霊夢の服は着脱が楽だ。
袖を取って、上着を脱いでスカートを脱ぐだけ。
当然霊夢よりも脱ぐのが遅いアリスは、その視線に晒されることになる。
好奇の目を背中にビンビン感じ、ソワソワと視線を泳がせながら抗議する。
「ねぇ、霊夢。恥ずかしいからそんなに見ないでよ……」
「いいじゃない。減るもんでもあるまいし。むしろ「わかった!わかったから!見てもいいから黙ってて!」
変に意識してしまい、無駄に羞恥心をくすぐられ、
中にもう一枚着ておくんだったと、いまさらながらに後悔した。
「ヒューヒュー、色っぽいね、お姉ちゃん!」
中々脱がないアリスに、霊夢から野次が飛ぶ。
ちらと肩越しに覗き見れば、やんややんやと一人盛り上がる霊夢が見えた。
サラシにドロワーズ姿で座り込んで、羞恥心を煽るように吹く口笛に、血が上った。
「うるさい!脱げばいいんでしょ、脱げば!」
「そうよ、ちゃっちゃと脱げばいいのよ、脱げば」
茶化されて苛立ち、乱暴に脱いだ服を渡そう突き出すように差し出す。
それを受け取ろうとした霊夢の腕を見て、アリスは思わず笑った。
「はい、って、あはは、すごい鳥肌じゃない」
「私が鳥に進化しないうちにはやく服」
「はいはい」
やっとこ脱いだアリスの服を、霊夢は鼻歌交じりで身に着けている。
脱ぐのは遅かったアリスだったが、着るのは速かった。
霊夢の上着を着て、スカートをはく。袖は……思案した末、まぁ一応つけようかなという結論に達したようだ。
袖をつける為に、腕を上げ視線を下げて気がついてしまった。
霊夢の服は……
「アリス、あんたブラ見えてるわよ」
「服返して……」
「ダメ。大丈夫大丈夫。ケープは返してあげるから」
じゃ、いってくるわねとそのまま飛んでいってしまう霊夢に、アリスは頭を抱えた。
ケープがあっても腕あげたら見えるじゃない……
はぁ……誰かに見つかる前に家に帰ろう……
上手いこと誰にも会わずに家に帰ってこられてほっと一息。
服を着替えて、紅茶を一杯。
あー、酷い目にあった。
でも、霊夢も一応巫女さんやってたんだなぁと今日の出来事を思い出すと口元がほころんだ。
今頃色んな人妖からお菓子を貰ったり、あげたりしてるのかしら。
ひんやりしはじめた空気に体をぶるりと震わせ、暖炉を眺める。
そろそろ火を入れてもいい時期になってきた。
少し冷めた紅茶を、口に運んでいると、ドアがノックされた。
はて、誰だろう。迷い人かしら。
「はーい、ちょっと待って」
ひっきりなしに叩かれる扉に閉口しつつ、早足で扉に近づく。
ガンガン叩かれていたドアが、ノブを掴んだとたん大人しくなった。
その勘の良さで、相手が分かる。
「はいはい、霊夢いらっしゃい。服返しに来たの?」
「トリックオアトリート」
「は?お昼にあげたじゃない、お菓子」
「貰ってないわ」
「え?…………あっ!」
しまった、霊夢にあげようと思ってたお菓子。早苗にあげてた……。
「無いの?」
「……無いわ」
「じゃあ、いたずらね」
「いや、ちょっと……まっ……アッー!」
逆にアリスが霊夢の服を着たら胸のところがきつくて辛そうだ
ところで、肝心の悪戯シーンが見当たらないのだが…
ごちそうさまでした!
アリスの服の霊夢と霊夢の服のアリス両方見たいっす、エエ
やっぱりレイアリは甘いのがいいね!いや、悲恋とかBadEndもたまらんけども!
お菓子をくれない悪い子にはいたずらですよね