「もうすっかり秋ね」
「秋ね」
「秋……っくひゅいっ!」
「秋ね」
「秋ね」
「秋……っくひゅいん!」
………
「なんでにとりってば、妖怪なのに花粉症なの?」
「ほらにとりって、ひきこもりがちだから貧弱なんじゃない? 夢中になると食事も睡眠も忘れるって雛がぼやいてたし」
「ひゅううぅ~…」
布団には、病に苦しむかわいそうなにとり。かわいそうなかわいいにとり。
そのそばに、2柱。楽しそうなのと、呆れた様子なのと。看病でも見舞いでもなく、冷やかしに来たやつらだ。
呆れた様子の神様がため息をつく。
「山に生きるのに花粉症ってどうなのよ」
「いつか…いつか、この身体が治ったら、花粉(あくま)を取り除く空気清浄フィルターを開発するんだ。山の平和のために…!」
「巫女に頼んだら、そーいう結界、すぐ作ってくれるんじゃない?」
う。そうかも。
「花粉症っていきなり来るらしいわね。風邪かと思って放っておいたら、あっという間にピーク期、そしてぶっ倒れる…」
「個人差もあるでしょうけれど、なりたてって、特に辛いらしいわね。薬も用意してないし」
「にとりは頭にもキテるみたいだから余計だわね」
「ちょっと、頭おかしくなってるみたいに言うのやめてくれる?」
花粉症が鼻水だけと思うな。のどの痛み、微熱、それに伴う関節痛と、いわゆる風邪のような症状も現れるのだ…。
そして花粉症初心者の私、にとりは見事に花粉(あくま)にやられ、体調ぐずぐず、鼻水ぐずぐず。
こうして雛が取りに行ってくれている薬を待っているんだ。
…雛の帰りをじっと待つ病床の私…なんか御伽噺みたい。
『ああ勇者さま、にとりのために危険な旅に出るなんて…』
『姫のためでしたら、たとえ火の中水の中。怖いものなどありません…』
『でも、今度の旅は花粉(あくま)の中を征くと聞きました…』
『大丈夫です、必ず戻ります。そうしたら、姫、私と…』
…おお、テキトーに妄想したけど、雛、白タイツ似合うだろうな。今度履いてもらおう。
ぴちぴちの服も、雛、スタイルいいから……ふふふ。…って、人間には見せないぞ!いくら盟友だからって!!だめだって、こら!想像するなーっ!!
…にとり、さっきからだれに話してるの?
ちょ、モノローグにまで入ってこないで。っていうか聞こえてたぁあ!?
「神様だものー」
「モノローグにセリフで返事しないでください」
「雛の白タイツ…見たい?」
「えっ」
「昔、お遊戯会でね…」
「ちょっと姉さん!その写真、私も写ってるやつでしょ!?」
「そうよ。王子様とお姫様。二人とも可愛かったわー。他のお母さんたちにも褒められてね」
お遊戯会て。神様の保育園でもあるのか…?
「ほらこれ」
「ちょっ、なんで持ってるのよ!!」
静葉がどこからともなく取り出した写真には、お姫様のかっこをした小さい穣子(こっちはどうでもいい)と、王子様のかっこをした、小さいころの雛…!
穣子に阻止されて一瞬しか見れなかったけど、これは……!!
………
「ねえ、なんで帰ってきたら症状が貧血に変わっているの…?」
「さあ?私たちはおしゃべりしていただけだわ」
「…なんで穣子は顔が紅いの?」
「さあ。風邪かもね」
「(姉さんのせいでしょうが…)」
あのあと。
「写真が一枚きりだと思わないことね」「なん…だと…?」、という姉妹の攻防が始まった。私の頭上で。
戦場からこぼれ落ちる一枚一枚、すべてがツボで、ドツボで、花粉(あくま)によって粘膜を痛めつけられていたことも相まって、私の鼻の血管は容易に切れ、そして貧血へ…。
剣を持ってポーズを取る雛、かいじゅう役のしめ縄の神様幼児とたたかう小さい雛、お姫様(不服ながら穣子)を救い出して笑顔の雛…。
ああ、何年早く生まれていればあの姿を直で見られたんだろう。神様ってスケールでかいからな…千で足りるかな…。
「にとり? だいじょうぶ…?」
あー、雛かわいい、ずっと年上だけどかわいい。花粉症になっちゃうくらい弱っちいんだ、私はきっと雛よりずっと先に…。
「にとりってば。なんでそんな泣きそうな顔…」
泣きそうなのはどっちだよ、雛ぁ。これからはちゃんと体調管理気をつける、だからそんな悲しい顔しないで、私はまだ大丈夫だから。だから…
「今度、白タイツ履いて…」
「秋ね」
「秋……っくひゅいっ!」
「秋ね」
「秋ね」
「秋……っくひゅいん!」
………
「なんでにとりってば、妖怪なのに花粉症なの?」
「ほらにとりって、ひきこもりがちだから貧弱なんじゃない? 夢中になると食事も睡眠も忘れるって雛がぼやいてたし」
「ひゅううぅ~…」
布団には、病に苦しむかわいそうなにとり。かわいそうなかわいいにとり。
そのそばに、2柱。楽しそうなのと、呆れた様子なのと。看病でも見舞いでもなく、冷やかしに来たやつらだ。
呆れた様子の神様がため息をつく。
「山に生きるのに花粉症ってどうなのよ」
「いつか…いつか、この身体が治ったら、花粉(あくま)を取り除く空気清浄フィルターを開発するんだ。山の平和のために…!」
「巫女に頼んだら、そーいう結界、すぐ作ってくれるんじゃない?」
う。そうかも。
「花粉症っていきなり来るらしいわね。風邪かと思って放っておいたら、あっという間にピーク期、そしてぶっ倒れる…」
「個人差もあるでしょうけれど、なりたてって、特に辛いらしいわね。薬も用意してないし」
「にとりは頭にもキテるみたいだから余計だわね」
「ちょっと、頭おかしくなってるみたいに言うのやめてくれる?」
花粉症が鼻水だけと思うな。のどの痛み、微熱、それに伴う関節痛と、いわゆる風邪のような症状も現れるのだ…。
そして花粉症初心者の私、にとりは見事に花粉(あくま)にやられ、体調ぐずぐず、鼻水ぐずぐず。
こうして雛が取りに行ってくれている薬を待っているんだ。
…雛の帰りをじっと待つ病床の私…なんか御伽噺みたい。
『ああ勇者さま、にとりのために危険な旅に出るなんて…』
『姫のためでしたら、たとえ火の中水の中。怖いものなどありません…』
『でも、今度の旅は花粉(あくま)の中を征くと聞きました…』
『大丈夫です、必ず戻ります。そうしたら、姫、私と…』
…おお、テキトーに妄想したけど、雛、白タイツ似合うだろうな。今度履いてもらおう。
ぴちぴちの服も、雛、スタイルいいから……ふふふ。…って、人間には見せないぞ!いくら盟友だからって!!だめだって、こら!想像するなーっ!!
…にとり、さっきからだれに話してるの?
ちょ、モノローグにまで入ってこないで。っていうか聞こえてたぁあ!?
「神様だものー」
「モノローグにセリフで返事しないでください」
「雛の白タイツ…見たい?」
「えっ」
「昔、お遊戯会でね…」
「ちょっと姉さん!その写真、私も写ってるやつでしょ!?」
「そうよ。王子様とお姫様。二人とも可愛かったわー。他のお母さんたちにも褒められてね」
お遊戯会て。神様の保育園でもあるのか…?
「ほらこれ」
「ちょっ、なんで持ってるのよ!!」
静葉がどこからともなく取り出した写真には、お姫様のかっこをした小さい穣子(こっちはどうでもいい)と、王子様のかっこをした、小さいころの雛…!
穣子に阻止されて一瞬しか見れなかったけど、これは……!!
………
「ねえ、なんで帰ってきたら症状が貧血に変わっているの…?」
「さあ?私たちはおしゃべりしていただけだわ」
「…なんで穣子は顔が紅いの?」
「さあ。風邪かもね」
「(姉さんのせいでしょうが…)」
あのあと。
「写真が一枚きりだと思わないことね」「なん…だと…?」、という姉妹の攻防が始まった。私の頭上で。
戦場からこぼれ落ちる一枚一枚、すべてがツボで、ドツボで、花粉(あくま)によって粘膜を痛めつけられていたことも相まって、私の鼻の血管は容易に切れ、そして貧血へ…。
剣を持ってポーズを取る雛、かいじゅう役のしめ縄の神様幼児とたたかう小さい雛、お姫様(不服ながら穣子)を救い出して笑顔の雛…。
ああ、何年早く生まれていればあの姿を直で見られたんだろう。神様ってスケールでかいからな…千で足りるかな…。
「にとり? だいじょうぶ…?」
あー、雛かわいい、ずっと年上だけどかわいい。花粉症になっちゃうくらい弱っちいんだ、私はきっと雛よりずっと先に…。
「にとりってば。なんでそんな泣きそうな顔…」
泣きそうなのはどっちだよ、雛ぁ。これからはちゃんと体調管理気をつける、だからそんな悲しい顔しないで、私はまだ大丈夫だから。だから…
「今度、白タイツ履いて…」
ああ、漸く自分の体を蝕んでる病魔が分かった。花粉症になってるんだ…
それは兎も角、白タイツ凄く似合いそうですよね
なに、すぐに帰って来るさ!