Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

秋の香り漂う日常

2011/10/18 01:24:30
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 長く続いた猛暑も何処へやら。いつの間にか季節は秋となり、周囲の景色も、緑から黄色や赤へとその色を変えていくだろう。
 霊夢としてはこの季節になると少し憂鬱な気分になる。今はまだいい。だが、そのうち紅葉だのなんだのと理由を付けて宴会が開かれるだろう。最近は片づけを手伝ってくれる人物も多少は増えたのだが、参加者もそれに比例して増加している。そして散らかす。結局、負担は減っていない。むしろ増えている気さえする。
 宴会そのものは好きなのだが、いつぞやの事件のように2~3日ごとにやられるのは勘弁してもらいたいものだ。境内を黙々と掃きながら、溜息をついた。
 同時に、はらり、と目の前を木の葉が落ちていった。それはそよ風に煽られながら、宙を舞い、先ほど掃いたばかりの地へと着地する。これから増えていくであろう落ち葉に、境内の掃除が大変になることを予想し、もう一つ、溜息をついた。
 一通り掃き終えたところで、掃除を切り上げることにする。
 箒を片付けようとした時に、風と共に、微かに甘い香りを感じ取った。箒を近くに立てかけ、香りの元を探すことにする。時折吹く風と勘を頼りにして。
 意外と近くにそれはあった。
 これからの季節のことを思うと憂鬱だったが、この香りは、そんな気持ちも吹き飛ばすほどのものだった。





 縁側でお茶を飲んでいると、風を切る音と共に、黒い影が現れた。速度を落とした影は、緩やかに着地する。

「よぉ、霊夢。やることが無くて忙しいから来てやったぜ。」
「はいはい、要するに暇つぶしでしょ。」
「そうとも言うな。」

 神社は暇つぶしのためにあるわけじゃないわよ、と嫌味を言いつつ、既に用意されていた湯飲みに、そばにある急須からお茶を注ぐ。

「お、用意がいいじゃないか。」
「なんとなく誰かが来そうな気がしただけよ。」

 魔理沙が出されたお茶を受け取ると同時に、花の奥に広がるような甘い香りを感じた。秋を実感させる香りを放つもの。それは霊夢の隣から発せれていた。

「ほほぅ、金木犀か。いいな、秋が来たって感じがするねぇ。」
「でしょ? 鳥居からちょっと離れたところにあったのよ。」

 少し水を入れた瓶に、黄色い花を付けた枝が一つ。先ほどの掃除の時とは打って変わって霊夢はご機嫌だった。魔理沙の表情も少し緩む。
 しばし香りを楽しみつつ、無言でお茶をすする。お茶請けの煎餅も用意されているが、いつもと違ってあまり減らない。『秋』を感じながらお茶をすするだけで十分。そんな気分なのだろう。
 そうそう、と前置きをして、魔理沙が何かを思い出したように、霊夢のほうを向いた。

「金木犀と言えばだな、面白い話があるんだぜ。」
「へぇ? 何?」
「金木犀ってのはな、なんでも元々月に生えていたそうだ。それが地上に降りてきたんだとさ。まあ、誰が持ってきたのか知らんが。んで、秋の月が綺麗なのは、月にある金木犀の大木が一斉に花を咲かせるから、なんだとよ。」
「ふぅん。なんか掃除が大変そうね。」
「おいおいそっちかよ。」
「でも変ね、月に行ったときそんなもの見なかったわよ?」
「んあ? そういやそうだな。ん~……あの時はあんまり見て回らなかったからなぁ、あそこから離れた場所にあるのかもしれんな。」


 一斉に花が咲くのであれば、一斉に散りもするのだろう。だとしたら、月の表面は金木犀の花で埋め尽くされているのだろうか。夜空に浮かぶ月が、いつも黄色く輝いているのは、散った金木犀の花が表面を覆っているから、なのかもしれない。月へ行ったことのある二人は、そんな想像をしながら秋を堪能していた。

「ああ、霊夢。この前紅魔館に行ったときに門番から金木犀の花を使った酒、ってのを貰ったんだよ。飲んで見ないか?」
「へぇ、そんなのがあるの?」
「私もまだ飲んでいないがな。どんなものか、楽しみだぜ。」



◆おまけの三妖精

 今日はなんとなく、霊夢と魔理沙の話を盗み聴きしていた。
 二人の話を聞いていると、たまに面白いことになるかだ。そして今日の話は、彼女らの興味を引くには十分だった。特に、ルナにとっては。

(ねぇ、今の話聞いた?)
(ええ、もちろん。)
(聞いてたわ。)
(金木犀をいっぱい集めれば、ここを地上の月にできるに違いないわっ!)

 地上に月を。それはルナが以前から計画していたことだ。月の光の妖精である彼女にとって、仮にそれが成就したとすれば、強大な力を得ることができる……かもしれない。
 そのため、よく月に関係のありそうなものを探してきて集めている。だが、これならばわざわざ探さなくても、簡単に手に入れて、さらには増やすことまでできる。

(私の計画が一気に前進するわね。)
(そうねっ……って、それ成功しても私にはあんまり効果無いような…?)
(まあいいじゃない、新手のイタズラにもなりそうだし? ほら、散った花の掃除で巫女が大変になるとか。)
(……なんか地味な効果だなぁ。)
(まあ、今回に限ったことじゃないけどね。)
(まずは家の周りから植えていこうかなー。ねぇ二人とも、早くやりましょうよ。)
(ふふ、なんだか今回はルナがリーダーみたいね。)

 一人上機嫌なルナと、面白半分で乗るスター。それにどこか煮え切らない顔でサニーもついていく。

 この日、三人の住む大木の周辺には、いくつかの金木犀が植えられた。それは妖精の力によって早く、大きく成長することだろう。来年の秋には、今年よりも多くの花から秋の香りが漂ってくるかもしれない。

 はたして、今回の件を彼女たちは来年まで覚えていられるのだろうか。
 最近急に涼しくなりましたね。なにやら秋も駆け足気味な気もします。今年も秋姉妹は夏バテでもしたのでしょうか?
 もうだいぶ散ってしまいましたが、先日、私の家の金木犀が咲きました。
 金木犀の匂いを感じると、秋を実感しますよね。でも、散るのも早いんですよねぇ…。大好きな匂いですが、それが残念です。 金木犀は挿し木で増やすそうなのですが、本来は6~7月頃にやるらしいです。あと開花まで5~7年掛かるとか…。まあその辺は妖精パワーや幻想パワーでなんとかしてもらいましょう。
生芋こんにゃく
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
まったりした雰囲気が良かったです
2.名前が無い程度の能力削除
キンモクセイ もう散ってしまって 寂しいですね
あのはなが大好きです