あらすじ
それはあなたの心の中に
森である
この言葉は外の世界においてはただの名詞だがこの幻想郷においての「森」と言えば十中八九魔法の森である、魔法使いが二人住んでいるし妖精もいる、偶に魔法実験の残骸と思わしきものが蠢いているので夏場は心霊スポットして人気を博し、そのあまりの出来具合から戻ってこなくなった人間もいるくらいである。
ちなみにこの森に多く生息する者の割合表をあげていくと
植物型クリーチャー ……………… 57%
動物型クリーチャー ……………… 25%
普通の動物 ……………… 17%
人形 ……………… 2%
普通の魔法使い ……………… 一個体
魔法使い兼人形師 ……………… 一個体
何かが隠れているダンボール …… 極稀に見つかる、近づくと足が生えて逃げる
となっている、当然のごとく合計が100%にならないのはそれを統計したのが妖精と暇つぶしに来ていた小悪魔だからである。因みに小悪魔は後でパチュリーに折檻されたと言うが事実確認は本人が「拷問部屋」なる物騒極まりない部屋に入れられている為に不可能と言う事が3か月前にパチュリーの調べで分かった、当の本人なのはその本人曰く「入れたのをすっかり忘れていた、私は悪くない」だそうでその言葉の真偽については現在メイド長が取り調べを行っている。
―――――――――――――文々。新聞「今日の茶番」の項より抜粋
そんな魔法の森の中で今、一人の少女が歩いていた
緑髪に巫女服―――巫女ではないが幻想郷の住人にとって神職は残らず巫女と認知されている、それと幻想郷基準少女胸囲(GSK 単位:% 博麗の巫女を0%とする)47%を誇る胸と言ったら東風谷早苗に他ならない。現在は約50%だが彼女は人間である故に今後の成長が期待される有望株である。霊夢は爆発した
普段なら人当たりのよさそうな笑顔を浮かべているか常識に捕われない妖怪退治の顔をしている彼女だがその表情は険しく、かなり緊張しているように思われた。例えて言うなれば大学受験の試験会場試験開始3分前に急にトイレに行きたくなってしまった受験生の表情である。もしくは急いで部長を呼ぼうとしたがその名前が坂田なのか佐藤なのか分からずに必死に思い出そうとしている顔でもある。
早苗はそんな面持ちで森の中をただただ静かに歩いて行った、なぜ飛ばないのかと言えば簡単な話で、余程この森について熟知していないと飛んだ瞬間木に激突なんて事がざらにあるからである。因みにこの森に住む霧雨魔理沙は箒で滑空していたらスズメバチの巣にぶち当たったそうだ。
歩きながら森の中を調べているとこの森には様々な魑魅魍魎が生息している事が分かる。
例えば足が生えて所々を猛進しながら胞子を撒き散らすキノコや人面犬、ダンボール、まさにへんちくりんな生物選り取り見取り、なんとツチノコもいた。
「これを捕まえればテレビに出られますね!」
そう言ってみるものの幻想郷にはテレビは無いしツチノコなんてものは案外日常的に生息する物かもしれない、そもそもツチノコなんて捕まえられるか分からないし。そう思ったのでツチノコ捕獲は諦めざるを得ない早苗だった。
そんな森の小道をしばらく歩くと急に開けた場所に出る、その広場には白いこじゃれた家が一軒建っている。これが森の人形師であるアリス・マーガトロイドの家である。
早苗はまさに人形の家と言うべきその風貌にわぁ、と軽い溜息の様な感嘆の声をあげた。
ちなみに早苗が初めて人形に触れたのはシル○ニアファミリーで当時5歳だった早苗はそれを使い様々な遊びを考案した物だった、例えばもっとも熱中したのは任侠物である。神奈子は当時を振り返り「まさか熊や兎の人形が家の中でドスやチャカやポン刀持ってドンパチ騒ぎを始めると思わなかった」としみじみ語っている。
ともかくアリスの家に行く事が目的だったので早苗は此処でひとまず一息つくことにした。
しかし、ひとまずの目的は達したはずの早苗の顔に緩みと言うものは無く、寧ろ先程よりも緊張の面持ちが見れる。それもそのはず、早苗にとって勝負はこれからなのである。
「まずは深呼吸ですね、深呼吸です」
アリスの家の入口から少し離れた所で深呼吸を始める、執拗に、何度も。揺れる
早苗はアリスの家を横目で見ながら息が落ち着くのを待っていた、変なタイミングで入ったらアリスとの関係に何か支障が出てしまうのではないかと言う事を恐れていたのだ、無論早苗はそんなことは無いと踏んでいたがなにせここは幻想郷、何があってもおかしくは無い世界、突然入ったが最後、ありとあらゆるトラップやらなんやらに引っかかって御陀仏と言う事もありうる世界、まずは慎重に期を伺うのが吉と早苗は考えたのだ。
そう、期である
まるで曇り空から差し出す一条の光の如く、くじ引き券を何枚も持って行ったのに一枚目で金が出てしまうのと同じが如く、ごっつぁんゴールが如く、あわやの所で部長の名前が田中である事を思い出すが如く、それを人は奇跡と呼ぶのだ。
奇跡、そのタイミングを早苗は虎視眈々とうかがっていたのだ。
そしてその時は訪れる
突如として早苗の後ろに降り立ったアリスによって
「…なにを、しているのかしら」
「あ…アリスさ…アリスさん!?どうして此処に?」
「それは此処が私の家だからよ」
いきなりの来訪に一瞬の隙をつかれ、早苗の口から支離滅裂な言葉が飛び出した、そしてそれを難なくかわすアリス、流石は都会派である。
「はっ、そうでした!ならばなぜ私の後ろに?まさかアリスさんは忍者の末裔ですか?伊賀忍者ですか?」
「私は魔法使いよ、それに今丁度人里に買い出しに行ってたところなの」
「へっ?やっぱり人形の為の糸とか布とか」
「早苗が今日来るからお菓子とかの材料と茶葉を買い出しに行ったのよ」
アリスは若干の困り顔を浮かべながら早苗の質問を捌いていく
「わざわざ私の為にですか」
「まあ招いたのは私なわけだし、家主としての責任よ」
アリスは返答するが早苗は「私の為…私の為かぁ…」とやや赤らんだ顔で繰り返していて全く聞いている気配が見れない。
しょうがないなぁ、そうアリスは苦笑して家の中に入ってしまう事にした、もうすぐ冬と言う事もあって若干寒さが強まってきたところ、しかも妖怪であるアリスはともかく早苗はその中を歩いてきたので家の中に速い所招き入れたかったのだ。ちなみにアリスには早苗が何と言っているかは聞こえていない。
「ほら、早く入りなさい。寒いでしょう?」
「ああ、ありがとうございます!」
かくして二人は家に入り、扉は閉じれらた
「おっと、トラップ解除するの忘れる所だったわ」
「…奇跡です」
「じゃあちょっと待ってなさい、今お茶を淹れてくるから」
「ありがとうございます」
家の一階部分にあるリビングに早苗を通したアリスは彼女を椅子に座らせるとお茶を沸かしに行ってしまった、早苗は人形に作らせればいいと思ったがアリスが入れた紅茶と言うのも飲みたいので黙って待っている事にする。
アリスの家の中には様々な人形が圧倒される程の量壁に配置されていた、それも種類がワンパターンではなく様々な種類がある。早苗は驚嘆の表情を浮かべて端から順繰りに眺めていく事にした。
普通の上海人形に似た雰囲気の人形(こちらは色違いだ)、酒瓶を片手に持った男性の人形(何故か神聖なものを感じる)、緑色の恐竜の人形(ヨッシーは乗り捨てるものである)、しげる、幻想郷の面々の人形(何とも精巧だ、中には早苗のもあった)、髪が異様に長い筋肉質の大生の人形(どれほどの代償を払えばこれだけのオーラを…!)、ヤンキー風の男(髪型の事を言われるとプッツンしそうだ)、ザク。見ていて飽きないコレクションだった、アリスがこれだけの人形を作り上げたのだ、そう思うと早苗はアリスに尊敬の意と共に「初代ガンダムも作ってください」という思いを抱いた。
「さあ、入ったわよ」
そうこうしているうちにアリスは紅茶を淹れてきたようだ、仄かに良い香りが漂っている。
「今、人形に焼き菓子を作らせているから。しばらく待ってて」
そう言って静かに紅茶を啜ったアリスはの姿はまさにどこかのお嬢様といった感じだった、早苗ははぁ~、といった表情でその光景に思わず見とれてしまう。
暫く見ているとアリスは首を僅かに傾げて「どうかしたの?」と言った、どうやら早苗の様子が何か言いたげだったからだろう。
首を傾げる仕草も、何もかもも優雅だと早苗は思った。冥界の姫君とは違った慎ましさの中に押し隠されるように、だかしっかりと存在を主張する高貴さ。
そう言えばアリスの身の上を聞いたことが無かった、早苗はそこでそんな事を思い出した。アリスの家に来たのもこれが初めてだし、アリスの事も魔法使いで人形使いと言う事ぐらいしかまだ分かっていない。
まあ、そんなもんで良いんじゃないか。早苗はそう考える、今は分からなくとも後々聞けばいいし、後々そんな機会が無ければその後々々聞けばいい。時間なんて自分が生きている間はあるのだから。
兎も角今は、アリスの家で歓談しているこの時間を楽しもう、そう思った早苗はアリスに砂糖2つとミルクを注文した。
「そういえば、今日はアリスさん人形は連れていないんですか?」
アリスの傍らにいつも姿を見せる上海人形と蓬莱人形がいない事に気がついたのは早苗がカップ半分ほどのミルクティーを飲み終えた時だった、ちなみにアリスはストレートである。
「メンテナンス中よ」
そっけない口調で窓際の方をちらと向きながら答えるアリスの目には口調とは裏腹に僅かな心配と、優しげな感情が浮かんでいた。
ああ、この人は人形が本当に好きなんだな。改めて早苗は紅茶を啜りながらそう思った
「アリスさんはどうして人形が好きなんですか?」
そこで試しに聞いてみる事にする、アリス自身の事は早苗もあまり知らないのでこれを期によりアリスの事について知り、距離を縮めようとする作戦である。
しかしアリスは暫く考えた後「そりゃあ、まあ、いろいろよ」と言ったきり黙ってしまったのでその計画は敢え無く頓挫した。早苗は心の中でぐぬぬぬと悔しがっていた。
ともかく今日はアリスと一緒に居る時間がたっぷりとあるのだ、ここでアリスから色々な情報を聞き出しておきたい、例えば好きな物を聞き出しておけばアリスが来訪した時に喜んでもらえるだろう。苦手な物を聞いておけば奇跡パワーで何とかなる、私が神だ。興味のあるものを聞いておけばそれを起点に話題作りができるかもしれない、ともかく普段情報を出さないアリスからそんな事を聞き出す千載一遇のチャンスである、善哉が好物なのは神奈子だが。
ふっふっふっ、待っていて下さいよアリスさん。今早苗がアリスさんのあんなことやこんなことを丸裸にしてくれます。そしてあわよくば…
早苗はそう思いながら黒い笑いを浮かべる、だがその顔の前にぬっとアリスが現れた。
「ねえ、やっぱりどうかしたの?」
「うっひゃあ!ア ア ア アリスさん!?」
どうやらその日が来るのはだいぶ先の様である。
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パロネタがいつになく多い気がするぜ…サザエさん風の髪型の人とか色々
ファースト好きな早苗さんだと…許せる!
ここから糖分追加期待してます
誤字報告を
〉〉人面権
犬が権に…
あの微笑ましい感じがよく出てると思います。
むふふ
これはまだ序章にすぎないんですよね?ですよね?