『花火大会をしませんか!』
さとり様はぼんやりとした表情で、実現できたらいいですね、とだけ呟いた。
『なんとかかけあってみますから!』
誰の目からも、さとり様があまり乗り気ではないのは明らかだったけれど、おくうには関係ないみたいだった。
それよりもあたいは、おくうが花火大会を開ける器量があるのかというほうが心配で、当然あたいのところにまわってくるんだろうと思いながらハンバーグをフォークで刺した。
地上と地底で交流が細々と始まったとはいっても、地底の妖怪が地上に出ることはあまりなかった。
今では地底でも作物を育てることができるし、わざわざ地上まで出て行く用事もないし、おてんと様を有り難がるような連中も早々いないから。
おくうだけは妖怪の山で神様たちと仕事をしているらしいけど、あたいは一度もそこには行ったことがない。
ヤタガラスの力を授けた――そんな言い方をすれば聞こえはいいけれど、妖獣の身には過ぎた力であることは間違いない。
一度は暴走をしかけて、博麗の巫女と魔法使いがそれを止めることになったけれど、できることならそんな力、手放して欲しい。
けれどうつほは『うにゅ?』なんて言ってまともに取り合ってくれない。
自分の力がどんなに危ないものなのか。万が一、その力が間違った方向に使われてしまったら。
「おりんはさ、花火って見たことある?」
「ないね」
「こないだ、こーんなちっちゃいやつがパチパチってはじけてるのを見たよ。すごく綺麗だった。おりんにも見せてあげたかったなー」
ベッドに座ったおくうが、うっとりした顔で花火がいかに綺麗かを演説しているのに対して、あたいは相槌を打つ。
こうやって二人で話すのも、しばらくぶりだったけど、あたいのテンションは上向いてこない。
おくうは花火で頭が一杯みたいだったけど。
「それでね、早苗が言ってたんだけど、外の世界ではこーんなおっきなのがぱーんって弾けたりするんだって。それも、一発だけじゃなくて、いっぱい」
手を広げて、こーんなにおっきいんだよ、って言うけれど、それがどういうものかは想像ができない。
綺麗なものなんだろうけど、毎日火のある場所へ通って煤を被っているから、あまり興味が湧かないというのが正直なところ。
「それでねそれでね、せっかくだからみんなで花火大会を開こうって、人里のなんだっけ? なんか女の人とか、いっぱいの人たちと一緒にやろうよって」
「人里!? おくう、人里にも顔を出してるの?」
「え、うん。たまにだけど、早苗とかが連れて行ってくれるよ。そこでお菓子とかを食べたりするよ。甘いのとか、そうじゃないのとか。おりんも今度一緒に行こうよ」
「あたいは……」
一応、博麗神社の飼い猫ではあるけど、地上の、それも人里に行くのには抵抗があった。
そも、野良猫だったあたいは人間から盗んで腹を満たしたりもしていたから、人間は棒を持って追いかけてくるような印象ばかりあって、正直なところ苦手だ。
「あたいは、遠慮しておくよ。花火大会、するんだろ?」
「うん。さとり様も、こいし様も、おりんも招待できたらいいなって」
「うん」
「あ、鴉天狗も記事にしたいからってこう、パシャパシャ! っていろいろ写真を撮ったりしてるよ」
嬉しそうに喋ってくるおくうに対して、あたいの心はちょっと冷めてた。
おくうには頼る相手はあたいしか居ないと思っていたら、あたいが知らない名前がポンポン出てくる。
ずっと一緒だった親友が、あの一件から遠くへ行ってしまったような気がしてたのが、現実として突きつけられている。
これからどうすればいいのかを迫られているようで、胸が段々苦しくなってきた。
「おりん?」
「ん」
「なんだか顔色悪いよ? 熱でもある?」
額をくっつけると、おくうのほうがちょっぴり熱かった。興奮して体温も少し上がってるのかも。
「私のがちょっぴり熱いね。おりんが変な顔してたから、心配になっちゃった」
「あたいは大丈夫だよ。おくうこそ、やること一杯あるんだったら早く寝ないといけないんじゃぁないかな」
「う?」
おくうは首を傾げて、頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。もちろん見えないけれど、そういう雰囲気を出しているということ。
「まだ眠たくないよ? それに、久しぶりにおりんとお話できる時間があるから、もうちょっと一緒に居たいんだ」
おくうの無邪気さがときには煩わしく感じられる。それがまさにいまだった。
怒鳴りつけてやろうかと思ったけれど、そうするとこいつは泣き出すかもしれない。
「うん。やっぱりちょっと体調が悪いみたいだ。あたいももうちょっとおくうと話していたかったけれど、頭がちょっと痛いんだ。ごめん、先に休むよ」
「そう? 痛いの痛いの飛んでくといいね。さとり様が昔はそういうおまじないをしてくれたよ」
右手を使おうとして、さっと引っ込めて左手で頭を撫でられた。
右足だって、鉄のようなものに覆われてしまったし、右手は言わずもがな。
「痛いの痛いの、飛んでけ……。おりん? なんだか苦しそうだよ?」
「んぁあ、大丈夫大丈夫。寝たら治るよ、すぐに治るから」
「そう? じゃあ私も部屋に帰るね。明日からは、また地上に出ないとだから」
おくうが部屋に戻ってから、ちょっとだけ、以前のことを思い出して泣いてしまった。
黙々と仕事をしていると、一日が過ぎるのがひどく早く感じる。
朝早く地霊殿を出て、夕食を食べてからすぐに寝ての繰り返し。
おくうは今では大半は地上で寝泊りしているから、自然と顔を合わせない日が続いた。
「おりん」
「はい?」
「これ、招待状らしいけど」
「おくうからですか?」
「ええ、日付を見ると、明日の晩ですって。あの子のことだから、うっかり送るのを忘れてたんでしょうね」
手渡された、おくうの手書きの文字。
左手しか使えないから、ミミズがのたくったみたいな字で、日付と、『ぜったいきてね』とだけ書かれていた。
「さとり様は?」
「可愛いペットの晴れ舞台だから、行くつもりだけど。特等席を用意してくれているらしいし」
「そうですか」
「乗り気じゃないの? 親友が絶対来てねって言ってたんじゃないのかしら?」
心を読まれているから隠してもしょうがないけれども、一字一句はっきり読み取られるわけではないから。
「あたい、人間がたくさん居るところって苦手で」
「それだけじゃないでしょ? まぁ、あえて聞き出すつもりはないけど、来なかったらきっと後悔するでしょうね」
せっかくいいこと言ってるのに、来ないことを期待しているような口角の上げ方をしないでほしい。
さとり妖怪だから嫌われるんじゃなくて、こういう性格だから嫌われるんじゃないか。
「最近お茶飲み友達が増えたからそうでもないですよ。萃香さんなんか、お前は正直に顔に出る下衆だから好きだって」
「それ絶対褒められてません」
「それほどでもないって返しておいたんです」
「だから妹が家出すんですよ!」
「明日こいしも来るって」
「会話を成立する努力をしてくださいませんかさとり様」
「」
「あたいは心読めないんですけど」
さとり様の相手をすると物凄く疲れるので勘弁してほしい。
そう思ってるとさとり様は部屋に帰っていった。できればもう出てこないで欲しい。
それにしても、明日の晩か。正直、今も行くかどうか悩んでるけれども。
結局仕事を早引けして、さとり様と一緒に地上へと向かうことになった。旧都も心なしか、出歩いている者が少なかったように思える。
橋を渡るときに、橋守の水橋にも嫉妬の目線を向けられた。あたいが思っていた以上に、みんなが花火大会に期待しているのか。
歩いているうちに、同じ目的地へと向かうだろう妖怪たちが増えてきて、知らない者から見れば不気味な集団へと膨れ上がっていた。
途中出会ったヤマメに聞くに、守矢神社が地上と地底の交流と題して花火大会を企画し、中有の道からテキヤも呼んだ結構本格的な物になっているんだとか。
「命蓮寺の連中も信徒を増やすべく出店してるみたいだけどね。え、博……麗……?」
おつかれいむ。
近づくにつれて、段々と騒がしくなってきた。妖怪たちばかりかと思ったけれども、思った以上に人間が多かった。
「今の人間は地底の妖怪たちをよく知らないんでしょう。特別忌避しているわけでもなさそうですから」
さとり様の言うとおり、プリズムリバーのライブにジャンプしている人間たちなんかは、そのまま地底に住んでも順応できそうだった。
交流を閉ざしている間に移り変わっていたのでしょう、なんて呟いているけれど、その日暮らしだったあたいみたいな妖獣にはそういう事情はあまり関係がなかった。
おくうもそう。あいつは地底生まれで灼熱地獄を遊び場にしていた生粋の地獄烏だけど、妖怪たちの事情なんて関係がなかった。
結局ある程度力があるとか、そういう妖怪でもなければ関係のない話。
比較的若いさとり様が今、地霊殿を仕切っているのも禍根に囚われすぎないという理由があったりする。
面識のある守矢の巫女(風祝です、なんて言うけど大して差もない)から、関係者席へと案内された。
一般客が立ち見をしているから、ござとはいえ、座れる場所へと通されると少しばかし尻込みしてしまう。
「お茶ください」
さとり様はそうでもないみたいだった。
忙しく給仕してまわっている巫女に対して、あーだこーだと注文をしている。
ここまで厚かましく生きていられると、楽しそうだな、なんて思う。
「嫌われ者は卑屈に生きるか、開き直って図々しく振舞うものです。どちらが本人にとって生きやすいかという違いしかありませんがね」
憎まれっ子世に憚る、なんてものはそういう行き方しか出来なかっただけだ、とさとり様は言って、首を回して関節をコキコキと鳴らしていた。
恥ずかしいからやめてほしいと言っているのに、この人は本当に。
「それよりあの子はどこですか? 招待状を送った主は」
「ああそういえば」
そういえば、あの子が何の役職で花火大会を手伝っているのかを知らないままでここへ来てしまった。
「まぁ、ここに居ればいずれ来るでしょう。お腹空いたので何か買ってきてくれませんか」
「パシリですか」
「ペットだけに」
「いいですけど、そうやって傍若無人な振る舞いばかりしているとペットの信頼も失いますよ」
「これでも控えているほうなんですけどね」
そうですか。
金魚掬いだの、ヨーヨー掬いだの、射的だの。
商魂逞しい人間は、ときに妖怪よりも妖怪らしく見える。
こういう奴らがのたれ死ぬと金を生んだりするんだろうけど。
辟易しながら林檎飴とチョコバナナ(さとり様は甘党である)とを買って戻ろうとしていると、博麗のほうの巫女の後ろ姿が見えた。
「よっ!」
「ん? ああ。あんたか」
それ、くれるの? ってチョコバナナをじっと眺められても。
「さとり様の分なので」
「私もあんたのご主人みたいなもんじゃない」
「いや、それはちょっとねぇ……あたいの裁量じゃどうにもならないっていうか」
「ちょっとそこでジャンプしてみなさいよ」
「お金はあるけど……そんなに困窮してるのかい?」
「んー。あんたの暗い顔の相談料ってことで」
「会話になってない会話になってない」
「だってあんた物凄い顔してるんだもん。その気持ちが晴れるかもしれないってのにちょこばなな一本だったら安いもんじゃない?」
「そんなに?」
「うんにゃ、適当にカマかけただけだけど案の定ってとこかしらね」
「はぁ、お姉さんには敵わないなぁ」
「そうやってキャラを無理やり作ってるときは、あんたが無理してるっていう証拠なのよね」
癖が見抜かれるほど長い付き合いだったっけ、とまじまじと顔を見てしまうと、今も表情に出てると返されてしまった。
ハッタリだけで生きているんじゃなかろうか。この巫女は。
「まぁ私からのアドバイスはこれでおしまい」
「何も聞いてないじゃん?」
「こういう楽しい場所でそんな不貞腐れたような顔をしてたって、しょうがないってことぐらい。ほい、じゃあちょこばなな一本」
「そんなにがめついと地獄行きじゃ済まなくなるかも」
「難しいことは死んでから考えるからいいの」
お金を所望されるかと思っていたら、手に持っていたほうを持っていってそのまま人込みへと紛れていってしまった。
誰かとぶつからずに歩くのも難しいこの場所で、どうしてああもすいすいと進んでいけるのか。
博麗の巫女も不思議なもんだねぇとぼんやりと思いながら、チョコバナナを買いなおす。
たしかに、こういう食べ物は地底じゃ滅多に手に入らないけどねぇ。
こういうものから風情を感じないのが、あたいの生まれもった気質みたいなものなのかもしれない。
さとり様が冷えた焼きそばに対してあれこれ薀蓄を垂れ流す頃になっても、おくうは一向に姿を現さなかった。
もうすぐ花火が上がるということで、周りも思い思いの場所へ座って、いまかいまかと待ち遠しそうにしているというのに。
仕様もないので、守矢のほうの巫女へと声をかける。
「ちょっと、もし」
「あ、お茶のお代わりですか?」
「うんにゃ、そうじゃなくって、おくうは何をしてるのかなって思って。あいつも手伝ってるんだろ?」
「あれ? 聞いてなかったんですか?」
「何を?」
ひどい行き違いを感じる。
さとり様が喉に焼きそばを詰まらせてお茶を取りに戻ったので、そこで一度中断。
一息ついたさとり様は、わた菓子が鼻についたことに憤慨していた。
恥ずかしいからやめてください。
「おくうちゃんは今日の主役なんですよ」
「主役? あいつが?」
「ええ、この花火大会って言っても、河童たちにこれを作って! って頼んでもロクな結果になりませんからね。なぜか人工衛星を飛ばす話に発展していきましたし。あ、人工衛星って知ってます?」
「話がずれてるよ」
「ああすみませんすみません。それで花火代わりに弾幕を打ち上げればいいじゃないかっていう話になって。そこで手を挙げたんですよ。打ち上げる模様から何まで全部、一生懸命考えてたんですよ」
「へぇー……」
話の区切りがついたところで、また別の人に呼ばれていってしまった。
なんとまぁ。
あいつのことはあたいは何でも知っているつもりだったけれど、そうでもなかったみたいだ。
「そんなもんですよ」
「そんなもんですか?」
「近しい者ほど、知っているつもりで知らないものです」
「さとり様が言うと説得力ありますね」
「私はなんでも知ってますよ。こいしがそこに居ることも」
「あ、バレた」
さとり様がドヤ顔をしていらっしゃるけど、半分ぐらいの確率で外していることもあたいは知っている。
適当でしょ、絶対に。
「目の前でお菓子が減っていってれば誰でもわかりますよ」
なるほどね。
打ち上げ花火が始まった。
光が生まれる場所に、おくうは居るんだろう。
打ちあがる火が弾けて、一瞬あたいたちの顔を照らして、また薄暗くなった。
白黒魔法使いもどこからか聞きつけてきたのか、上空を物凄いスピードで旋回してから、星の魔法で空を埋め尽くしてそのままどこかへと飛んでいってしまった。
目立ちたがり屋のくせに、変なところで弁えた奴だ。
さとり様も、こいし様も、一緒になって空を眺めている。
打ち上がっては、弾けて、消えていく。
蔑まれた妖怪たちの住む地底で生まれた、屍肉を漁って飢えをしのいでいた妖獣が。
大勢の妖怪と、人間たちの心を動かしている。
おくうがこれだけ大きなことを成し遂げているのに、あたいには何ができるんだろう。
実際のところ、あたいはおくうの世話をしてやっているつもりになっていただけで、何もできちゃいかなかったんじゃないか。
前に立って歩いているつもりなだけで、本当に手を引かれていたのは、あたいのほうだったんだ。
「おりん?」
「ちょっと、前のほうで見てきます」
「そう」
さとり様は深く問うつもりもないようだったから、あたいは関係者席を出て、人ごみにまぎれて時間を潰した。
上を見上げる勇気は、湧いてこなかった。
潮を引くようにして人が居なくなった後で、開かれていた出店も次々と引き上げていく。
ほんの数時間前まではあれほど騒がしかったこの場所も、人っ子一人見当たらない。
これが普段のこの場所の姿なんだろうけど、ずっとここに居ると、寂しさやらなんやらでどうにかなりそうだった。
さとり様とこいし様は二人で早々に引き上げて、あたいは用事もないのにぽつんと一人。
地霊殿も、いつのまにか閑散としてしまったように思える。
こいし様が滅多に帰らなくなってから。
あたいやおくうが自分のやるべきことを見出して、日中は仕事に出るようになってから。
火の消えたようになった地霊殿で、さとり様は何を思って過ごしていたのだろうか。
それを伺い知るすべはないのだけど、きっと色んな感情が渦巻いて、整理がつけられなかったときもあったんじゃないかって思う。
「帰ろうかね」
何を期待していたわけでもないけれど、ため息を吐いて歩き出そうとすると、不意に空が明るくなって真昼のようになった。
驚いて身を竦めたけれど、すぐに誰がそうしているのかわかった。
おくうの奴が、したり顔で一発、どでかいのを打ち上げてこっちを見ていた。
「驚いた? びっくりした?」
「そりゃ、突然空がこんなに明るくなったらね」
「おりんが居たのが見えたから驚かせようと思って」
おくうは嘘をつくとき、鼻の頭を撫でる癖がある。
そもそも、鳥目のおくうが夜にあたいを見つけられるわけがないのだから。
「ねね、花火見てくれた?」
「あぁ、見たよ」
「さとり様もこいし様も?」
「凄かったって言ってた」
「おりんはどう思ったの?」
「敵わないなって、そう思った」
「そうなんだ。良かった」
屈託ない笑みを見ていると、素直に祝福できないあたいが惨めに思えて、おなかがキリキリ締め付けられるような痛みが走った。
「最近ずっと、おりん元気がなさそうだったから。元気付けてあげたくって」
腰に手を当てて胸を張るおくう。
そんなしょっぱい理由で、これだけたくさんの人を巻き込んでたなんて、馬鹿な奴。
本当に、馬鹿な奴だ。
馬鹿すぎて、眩しいよ、馬鹿おくう。
「それでね、それでね。これ貰ってきたんだ。線香花火っていう、こーんなちっちゃいのなんだけど、大事な相手とするといいよって一束貰っちゃった」
差し出された線香花火は、懐に入れていたせいでくしゃくしゃに萎びていたけれど、夜空に咲いた大輪の花よりもずっと、暖かくて、優しい火だった。
ほんの数十秒だけ控えめに燃えて、ぽとりと落ちて消えてしまう。
手元と足元をほんの少しだけ照らし出す、小さな光。
ちょうど今、あたいが欲しがっていたものがこれだったように思えるよ。
「もう大丈夫かな?」
「べっつに、あたいは最近ずっとおなかが痛かっただけだよ」
「そうなの?」
「そうなの」
なら良かったって、疑いもせずに笑っているおくう。
こいつが鳥目で本当に良かった。
あたいのみっともなくなっている顔を、見られずに済むから。
さとり様はぼんやりとした表情で、実現できたらいいですね、とだけ呟いた。
『なんとかかけあってみますから!』
誰の目からも、さとり様があまり乗り気ではないのは明らかだったけれど、おくうには関係ないみたいだった。
それよりもあたいは、おくうが花火大会を開ける器量があるのかというほうが心配で、当然あたいのところにまわってくるんだろうと思いながらハンバーグをフォークで刺した。
地上と地底で交流が細々と始まったとはいっても、地底の妖怪が地上に出ることはあまりなかった。
今では地底でも作物を育てることができるし、わざわざ地上まで出て行く用事もないし、おてんと様を有り難がるような連中も早々いないから。
おくうだけは妖怪の山で神様たちと仕事をしているらしいけど、あたいは一度もそこには行ったことがない。
ヤタガラスの力を授けた――そんな言い方をすれば聞こえはいいけれど、妖獣の身には過ぎた力であることは間違いない。
一度は暴走をしかけて、博麗の巫女と魔法使いがそれを止めることになったけれど、できることならそんな力、手放して欲しい。
けれどうつほは『うにゅ?』なんて言ってまともに取り合ってくれない。
自分の力がどんなに危ないものなのか。万が一、その力が間違った方向に使われてしまったら。
「おりんはさ、花火って見たことある?」
「ないね」
「こないだ、こーんなちっちゃいやつがパチパチってはじけてるのを見たよ。すごく綺麗だった。おりんにも見せてあげたかったなー」
ベッドに座ったおくうが、うっとりした顔で花火がいかに綺麗かを演説しているのに対して、あたいは相槌を打つ。
こうやって二人で話すのも、しばらくぶりだったけど、あたいのテンションは上向いてこない。
おくうは花火で頭が一杯みたいだったけど。
「それでね、早苗が言ってたんだけど、外の世界ではこーんなおっきなのがぱーんって弾けたりするんだって。それも、一発だけじゃなくて、いっぱい」
手を広げて、こーんなにおっきいんだよ、って言うけれど、それがどういうものかは想像ができない。
綺麗なものなんだろうけど、毎日火のある場所へ通って煤を被っているから、あまり興味が湧かないというのが正直なところ。
「それでねそれでね、せっかくだからみんなで花火大会を開こうって、人里のなんだっけ? なんか女の人とか、いっぱいの人たちと一緒にやろうよって」
「人里!? おくう、人里にも顔を出してるの?」
「え、うん。たまにだけど、早苗とかが連れて行ってくれるよ。そこでお菓子とかを食べたりするよ。甘いのとか、そうじゃないのとか。おりんも今度一緒に行こうよ」
「あたいは……」
一応、博麗神社の飼い猫ではあるけど、地上の、それも人里に行くのには抵抗があった。
そも、野良猫だったあたいは人間から盗んで腹を満たしたりもしていたから、人間は棒を持って追いかけてくるような印象ばかりあって、正直なところ苦手だ。
「あたいは、遠慮しておくよ。花火大会、するんだろ?」
「うん。さとり様も、こいし様も、おりんも招待できたらいいなって」
「うん」
「あ、鴉天狗も記事にしたいからってこう、パシャパシャ! っていろいろ写真を撮ったりしてるよ」
嬉しそうに喋ってくるおくうに対して、あたいの心はちょっと冷めてた。
おくうには頼る相手はあたいしか居ないと思っていたら、あたいが知らない名前がポンポン出てくる。
ずっと一緒だった親友が、あの一件から遠くへ行ってしまったような気がしてたのが、現実として突きつけられている。
これからどうすればいいのかを迫られているようで、胸が段々苦しくなってきた。
「おりん?」
「ん」
「なんだか顔色悪いよ? 熱でもある?」
額をくっつけると、おくうのほうがちょっぴり熱かった。興奮して体温も少し上がってるのかも。
「私のがちょっぴり熱いね。おりんが変な顔してたから、心配になっちゃった」
「あたいは大丈夫だよ。おくうこそ、やること一杯あるんだったら早く寝ないといけないんじゃぁないかな」
「う?」
おくうは首を傾げて、頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。もちろん見えないけれど、そういう雰囲気を出しているということ。
「まだ眠たくないよ? それに、久しぶりにおりんとお話できる時間があるから、もうちょっと一緒に居たいんだ」
おくうの無邪気さがときには煩わしく感じられる。それがまさにいまだった。
怒鳴りつけてやろうかと思ったけれど、そうするとこいつは泣き出すかもしれない。
「うん。やっぱりちょっと体調が悪いみたいだ。あたいももうちょっとおくうと話していたかったけれど、頭がちょっと痛いんだ。ごめん、先に休むよ」
「そう? 痛いの痛いの飛んでくといいね。さとり様が昔はそういうおまじないをしてくれたよ」
右手を使おうとして、さっと引っ込めて左手で頭を撫でられた。
右足だって、鉄のようなものに覆われてしまったし、右手は言わずもがな。
「痛いの痛いの、飛んでけ……。おりん? なんだか苦しそうだよ?」
「んぁあ、大丈夫大丈夫。寝たら治るよ、すぐに治るから」
「そう? じゃあ私も部屋に帰るね。明日からは、また地上に出ないとだから」
おくうが部屋に戻ってから、ちょっとだけ、以前のことを思い出して泣いてしまった。
黙々と仕事をしていると、一日が過ぎるのがひどく早く感じる。
朝早く地霊殿を出て、夕食を食べてからすぐに寝ての繰り返し。
おくうは今では大半は地上で寝泊りしているから、自然と顔を合わせない日が続いた。
「おりん」
「はい?」
「これ、招待状らしいけど」
「おくうからですか?」
「ええ、日付を見ると、明日の晩ですって。あの子のことだから、うっかり送るのを忘れてたんでしょうね」
手渡された、おくうの手書きの文字。
左手しか使えないから、ミミズがのたくったみたいな字で、日付と、『ぜったいきてね』とだけ書かれていた。
「さとり様は?」
「可愛いペットの晴れ舞台だから、行くつもりだけど。特等席を用意してくれているらしいし」
「そうですか」
「乗り気じゃないの? 親友が絶対来てねって言ってたんじゃないのかしら?」
心を読まれているから隠してもしょうがないけれども、一字一句はっきり読み取られるわけではないから。
「あたい、人間がたくさん居るところって苦手で」
「それだけじゃないでしょ? まぁ、あえて聞き出すつもりはないけど、来なかったらきっと後悔するでしょうね」
せっかくいいこと言ってるのに、来ないことを期待しているような口角の上げ方をしないでほしい。
さとり妖怪だから嫌われるんじゃなくて、こういう性格だから嫌われるんじゃないか。
「最近お茶飲み友達が増えたからそうでもないですよ。萃香さんなんか、お前は正直に顔に出る下衆だから好きだって」
「それ絶対褒められてません」
「それほどでもないって返しておいたんです」
「だから妹が家出すんですよ!」
「明日こいしも来るって」
「会話を成立する努力をしてくださいませんかさとり様」
「」
「あたいは心読めないんですけど」
さとり様の相手をすると物凄く疲れるので勘弁してほしい。
そう思ってるとさとり様は部屋に帰っていった。できればもう出てこないで欲しい。
それにしても、明日の晩か。正直、今も行くかどうか悩んでるけれども。
結局仕事を早引けして、さとり様と一緒に地上へと向かうことになった。旧都も心なしか、出歩いている者が少なかったように思える。
橋を渡るときに、橋守の水橋にも嫉妬の目線を向けられた。あたいが思っていた以上に、みんなが花火大会に期待しているのか。
歩いているうちに、同じ目的地へと向かうだろう妖怪たちが増えてきて、知らない者から見れば不気味な集団へと膨れ上がっていた。
途中出会ったヤマメに聞くに、守矢神社が地上と地底の交流と題して花火大会を企画し、中有の道からテキヤも呼んだ結構本格的な物になっているんだとか。
「命蓮寺の連中も信徒を増やすべく出店してるみたいだけどね。え、博……麗……?」
おつかれいむ。
近づくにつれて、段々と騒がしくなってきた。妖怪たちばかりかと思ったけれども、思った以上に人間が多かった。
「今の人間は地底の妖怪たちをよく知らないんでしょう。特別忌避しているわけでもなさそうですから」
さとり様の言うとおり、プリズムリバーのライブにジャンプしている人間たちなんかは、そのまま地底に住んでも順応できそうだった。
交流を閉ざしている間に移り変わっていたのでしょう、なんて呟いているけれど、その日暮らしだったあたいみたいな妖獣にはそういう事情はあまり関係がなかった。
おくうもそう。あいつは地底生まれで灼熱地獄を遊び場にしていた生粋の地獄烏だけど、妖怪たちの事情なんて関係がなかった。
結局ある程度力があるとか、そういう妖怪でもなければ関係のない話。
比較的若いさとり様が今、地霊殿を仕切っているのも禍根に囚われすぎないという理由があったりする。
面識のある守矢の巫女(風祝です、なんて言うけど大して差もない)から、関係者席へと案内された。
一般客が立ち見をしているから、ござとはいえ、座れる場所へと通されると少しばかし尻込みしてしまう。
「お茶ください」
さとり様はそうでもないみたいだった。
忙しく給仕してまわっている巫女に対して、あーだこーだと注文をしている。
ここまで厚かましく生きていられると、楽しそうだな、なんて思う。
「嫌われ者は卑屈に生きるか、開き直って図々しく振舞うものです。どちらが本人にとって生きやすいかという違いしかありませんがね」
憎まれっ子世に憚る、なんてものはそういう行き方しか出来なかっただけだ、とさとり様は言って、首を回して関節をコキコキと鳴らしていた。
恥ずかしいからやめてほしいと言っているのに、この人は本当に。
「それよりあの子はどこですか? 招待状を送った主は」
「ああそういえば」
そういえば、あの子が何の役職で花火大会を手伝っているのかを知らないままでここへ来てしまった。
「まぁ、ここに居ればいずれ来るでしょう。お腹空いたので何か買ってきてくれませんか」
「パシリですか」
「ペットだけに」
「いいですけど、そうやって傍若無人な振る舞いばかりしているとペットの信頼も失いますよ」
「これでも控えているほうなんですけどね」
そうですか。
金魚掬いだの、ヨーヨー掬いだの、射的だの。
商魂逞しい人間は、ときに妖怪よりも妖怪らしく見える。
こういう奴らがのたれ死ぬと金を生んだりするんだろうけど。
辟易しながら林檎飴とチョコバナナ(さとり様は甘党である)とを買って戻ろうとしていると、博麗のほうの巫女の後ろ姿が見えた。
「よっ!」
「ん? ああ。あんたか」
それ、くれるの? ってチョコバナナをじっと眺められても。
「さとり様の分なので」
「私もあんたのご主人みたいなもんじゃない」
「いや、それはちょっとねぇ……あたいの裁量じゃどうにもならないっていうか」
「ちょっとそこでジャンプしてみなさいよ」
「お金はあるけど……そんなに困窮してるのかい?」
「んー。あんたの暗い顔の相談料ってことで」
「会話になってない会話になってない」
「だってあんた物凄い顔してるんだもん。その気持ちが晴れるかもしれないってのにちょこばなな一本だったら安いもんじゃない?」
「そんなに?」
「うんにゃ、適当にカマかけただけだけど案の定ってとこかしらね」
「はぁ、お姉さんには敵わないなぁ」
「そうやってキャラを無理やり作ってるときは、あんたが無理してるっていう証拠なのよね」
癖が見抜かれるほど長い付き合いだったっけ、とまじまじと顔を見てしまうと、今も表情に出てると返されてしまった。
ハッタリだけで生きているんじゃなかろうか。この巫女は。
「まぁ私からのアドバイスはこれでおしまい」
「何も聞いてないじゃん?」
「こういう楽しい場所でそんな不貞腐れたような顔をしてたって、しょうがないってことぐらい。ほい、じゃあちょこばなな一本」
「そんなにがめついと地獄行きじゃ済まなくなるかも」
「難しいことは死んでから考えるからいいの」
お金を所望されるかと思っていたら、手に持っていたほうを持っていってそのまま人込みへと紛れていってしまった。
誰かとぶつからずに歩くのも難しいこの場所で、どうしてああもすいすいと進んでいけるのか。
博麗の巫女も不思議なもんだねぇとぼんやりと思いながら、チョコバナナを買いなおす。
たしかに、こういう食べ物は地底じゃ滅多に手に入らないけどねぇ。
こういうものから風情を感じないのが、あたいの生まれもった気質みたいなものなのかもしれない。
さとり様が冷えた焼きそばに対してあれこれ薀蓄を垂れ流す頃になっても、おくうは一向に姿を現さなかった。
もうすぐ花火が上がるということで、周りも思い思いの場所へ座って、いまかいまかと待ち遠しそうにしているというのに。
仕様もないので、守矢のほうの巫女へと声をかける。
「ちょっと、もし」
「あ、お茶のお代わりですか?」
「うんにゃ、そうじゃなくって、おくうは何をしてるのかなって思って。あいつも手伝ってるんだろ?」
「あれ? 聞いてなかったんですか?」
「何を?」
ひどい行き違いを感じる。
さとり様が喉に焼きそばを詰まらせてお茶を取りに戻ったので、そこで一度中断。
一息ついたさとり様は、わた菓子が鼻についたことに憤慨していた。
恥ずかしいからやめてください。
「おくうちゃんは今日の主役なんですよ」
「主役? あいつが?」
「ええ、この花火大会って言っても、河童たちにこれを作って! って頼んでもロクな結果になりませんからね。なぜか人工衛星を飛ばす話に発展していきましたし。あ、人工衛星って知ってます?」
「話がずれてるよ」
「ああすみませんすみません。それで花火代わりに弾幕を打ち上げればいいじゃないかっていう話になって。そこで手を挙げたんですよ。打ち上げる模様から何まで全部、一生懸命考えてたんですよ」
「へぇー……」
話の区切りがついたところで、また別の人に呼ばれていってしまった。
なんとまぁ。
あいつのことはあたいは何でも知っているつもりだったけれど、そうでもなかったみたいだ。
「そんなもんですよ」
「そんなもんですか?」
「近しい者ほど、知っているつもりで知らないものです」
「さとり様が言うと説得力ありますね」
「私はなんでも知ってますよ。こいしがそこに居ることも」
「あ、バレた」
さとり様がドヤ顔をしていらっしゃるけど、半分ぐらいの確率で外していることもあたいは知っている。
適当でしょ、絶対に。
「目の前でお菓子が減っていってれば誰でもわかりますよ」
なるほどね。
打ち上げ花火が始まった。
光が生まれる場所に、おくうは居るんだろう。
打ちあがる火が弾けて、一瞬あたいたちの顔を照らして、また薄暗くなった。
白黒魔法使いもどこからか聞きつけてきたのか、上空を物凄いスピードで旋回してから、星の魔法で空を埋め尽くしてそのままどこかへと飛んでいってしまった。
目立ちたがり屋のくせに、変なところで弁えた奴だ。
さとり様も、こいし様も、一緒になって空を眺めている。
打ち上がっては、弾けて、消えていく。
蔑まれた妖怪たちの住む地底で生まれた、屍肉を漁って飢えをしのいでいた妖獣が。
大勢の妖怪と、人間たちの心を動かしている。
おくうがこれだけ大きなことを成し遂げているのに、あたいには何ができるんだろう。
実際のところ、あたいはおくうの世話をしてやっているつもりになっていただけで、何もできちゃいかなかったんじゃないか。
前に立って歩いているつもりなだけで、本当に手を引かれていたのは、あたいのほうだったんだ。
「おりん?」
「ちょっと、前のほうで見てきます」
「そう」
さとり様は深く問うつもりもないようだったから、あたいは関係者席を出て、人ごみにまぎれて時間を潰した。
上を見上げる勇気は、湧いてこなかった。
潮を引くようにして人が居なくなった後で、開かれていた出店も次々と引き上げていく。
ほんの数時間前まではあれほど騒がしかったこの場所も、人っ子一人見当たらない。
これが普段のこの場所の姿なんだろうけど、ずっとここに居ると、寂しさやらなんやらでどうにかなりそうだった。
さとり様とこいし様は二人で早々に引き上げて、あたいは用事もないのにぽつんと一人。
地霊殿も、いつのまにか閑散としてしまったように思える。
こいし様が滅多に帰らなくなってから。
あたいやおくうが自分のやるべきことを見出して、日中は仕事に出るようになってから。
火の消えたようになった地霊殿で、さとり様は何を思って過ごしていたのだろうか。
それを伺い知るすべはないのだけど、きっと色んな感情が渦巻いて、整理がつけられなかったときもあったんじゃないかって思う。
「帰ろうかね」
何を期待していたわけでもないけれど、ため息を吐いて歩き出そうとすると、不意に空が明るくなって真昼のようになった。
驚いて身を竦めたけれど、すぐに誰がそうしているのかわかった。
おくうの奴が、したり顔で一発、どでかいのを打ち上げてこっちを見ていた。
「驚いた? びっくりした?」
「そりゃ、突然空がこんなに明るくなったらね」
「おりんが居たのが見えたから驚かせようと思って」
おくうは嘘をつくとき、鼻の頭を撫でる癖がある。
そもそも、鳥目のおくうが夜にあたいを見つけられるわけがないのだから。
「ねね、花火見てくれた?」
「あぁ、見たよ」
「さとり様もこいし様も?」
「凄かったって言ってた」
「おりんはどう思ったの?」
「敵わないなって、そう思った」
「そうなんだ。良かった」
屈託ない笑みを見ていると、素直に祝福できないあたいが惨めに思えて、おなかがキリキリ締め付けられるような痛みが走った。
「最近ずっと、おりん元気がなさそうだったから。元気付けてあげたくって」
腰に手を当てて胸を張るおくう。
そんなしょっぱい理由で、これだけたくさんの人を巻き込んでたなんて、馬鹿な奴。
本当に、馬鹿な奴だ。
馬鹿すぎて、眩しいよ、馬鹿おくう。
「それでね、それでね。これ貰ってきたんだ。線香花火っていう、こーんなちっちゃいのなんだけど、大事な相手とするといいよって一束貰っちゃった」
差し出された線香花火は、懐に入れていたせいでくしゃくしゃに萎びていたけれど、夜空に咲いた大輪の花よりもずっと、暖かくて、優しい火だった。
ほんの数十秒だけ控えめに燃えて、ぽとりと落ちて消えてしまう。
手元と足元をほんの少しだけ照らし出す、小さな光。
ちょうど今、あたいが欲しがっていたものがこれだったように思えるよ。
「もう大丈夫かな?」
「べっつに、あたいは最近ずっとおなかが痛かっただけだよ」
「そうなの?」
「そうなの」
なら良かったって、疑いもせずに笑っているおくう。
こいつが鳥目で本当に良かった。
あたいのみっともなくなっている顔を、見られずに済むから。
今回もとても面白かったです。
あとさとり様はフリーダム過ぎだろwwwwww
おくうかわいい
そんな気持ちを思い出してしまった
さとりの深爪とかホントどうでもいいw
身体には気をつけてくださいね
ともあれ、良かったです。
おりんくうはちょっとお燐が捻くれてるというか、後ろ暗いのが好みなのです。故にありがとうございました。