「あー!また負けたー!」
そんな悲痛な声が聞こえる聖輦船の昼。
それはとある一室で行われていた。
「君は自分の能力に反してこういうことは苦手なんだな……」
「意外と言えば意外……ですね。」
「確かに、今まで知らなかったなぁ。」
人は4人、ナズーリンと星とぬえとムラサ。
やっていることは何の変哲もないトランプのゲームである大富豪である。
ルールなどは割合させてもらうが。
そして現状を簡単に言うと、ムラサ、ナズーリン、星はトントンであるが、ぬえだけ負け越している状態である。
「な~んで勝てないのかなぁ……」
む~っ、と唸りながら体を大の字にパタンと倒す。ただし頭はムラサの膝の上に。
聖輦船では見慣れた、いつものよくある光景。ムラサがぬえに膝枕して頭を撫でて、二人とも頬を緩ませる。
ただ今回少し違うのは、ぬえがむくれていることである。
それでも頭は撫でられ、時たま猫のように喉を鳴らしているところはやはり気持ち良いのであろう。
「そうだね……一つ言わせてもらうなら癖があるんじゃないかな。」
「あはは、ナズの言う通りかもしれませんね。」
「え、何それずるい!ムラサー、私って何か癖あるの?」
「ん~?そうだね、あるかもしれないよ。」
「うー……教えてよ!」
「やだね。」「ごめんなさい。」「うん、ごめんね。」
「ばかー!」
脚をバタバタさせながら怒って、ムラサに撫でられて、起きあがって。
その後も何回かゲームは続けられたが、案の定ぬえが負けることが多いことになった。
その度にむくれて同じことを繰り返す。
「ぬぇー……また負けたー……次やろ!次は負けない!」
今の結果は、1位からムラサ、ナズーリン、星、ぬえだった。
勝つときはすごく満足そうにするのだが、負けた時は負けず嫌いかプライドのせいか、負けっぱなしで終わるのが嫌というように次を催促する。
ただし時間は有限である。日が沈んでくるとまたお腹もすく。つまり夕飯の時間なのだ。
「すまないが、今日の食事の当番は私とご主人が担当しているから、そろそろいかないといけないんだが……」
「そのようですね……時間を遅らせて皆さんを困らせてもダメですし。」
「あー、そっかもうそんな時間なんだ……じゃぁ続きはまた後日……で、ぬえも良いかな?」
「うー……じゃぁ最後にもう一回!一番が何か一つ好きなことを命令できる罰ゲーム付きで!」
「ん~、まぁ君がそれで良いなら良いが……」
「勝ったー!へっへーん、どうだ!」
その結果、ぬえが途中で革命を起こし弱い手札からの逆転に成功した。そうしたことにより必然的に都落ちでムラサがビリとなり、その流れで二番に星、三番にナズーリンとなった。
「あちゃー、あこで革命は無しでしょー」
「まさか本当に最後であがられるとはね……で、何が望みだい?」
まぁ言わなくても大体分かるが、というのは胸の中に。
「それじゃぁ……とりあえずナズと星は料理に行っていいよ、というか部屋から出ていって欲しいかな?」
「だと思ったよ、それじゃ行こうとしようかご主人。」
「えぇ、そうですね。あ、晩御飯にはまた呼びにきますね。」
ほどほどにね、では。
そう言い残し部屋から二人は出ていった。廊下からは何を作ろうかという声が聞こえ、遠ざかっていくことがわかる。
「ほどほどに……って言われちゃったね、ぬえ。」
「……水蜜は我慢できる?」
「したくないね……んっ。」
そのまま唇を押しつけるように水蜜を押し倒す。手を背に回し、隙間の無いように強く抱きつく。
「ちょっと、ぬえ……あっ……ちゅ、っ……んー、いきなり激しすぎない?」
「時間が、ちゅぅ、くちゅ……もったいないでしょ?ご飯までなんだよ……はむっ。」
「んんっ……ふぁ、ばかぁ……」
息継ぎのように離したと思ったらまたくっ付いて。息が苦しくなるほどに舌を絡めあい、お互いがお互いの唾液を混ぜ合い、味わう。二人にしかわからない、脳を溶かしかねない甘い甘い蜜。
口内から溢れたそれは、こぼれる前にぺロリと舐め取られた。
「美味しい、水蜜の……もっと頂戴?」
「いいよ……ちゅ、く……ぬえにならなんだってあげるから、ふぁ……ちゅっ、あむっ……」
畳の上で、二人が重なる。夕暮れ時、日が沈むのを背景にその影はより濃くなっていく。
「ねぇ水蜜……晩御飯までどれくらいだろうね?」
それまで離さないと言わんばかりに、返事を待たないでまたキスをする。
くちゅくちゅと外にまで漏れてしまっているのではないかというくらいの音でお互いを舐り、味わい、犯していく。
ぷはっ、と唇を離したときにできたお互いを結ぶ銀色の液は、ぷつりと途切れ畳に消えた。
「――ぷぁ、そこまでもっといっぱいして欲しい……な?」
「もちろんだよ、私の水蜜。愛してる!」
「うん、私も愛してる、大好きだよ、ぬえ。」
熱帯魚なら死んでる温度差
>時間を送らせて
→遅らせて?
あと「むらさ」と「ムラサ」の揺らぎが…
羽とかの、身体から生えてるものが感情で動いちゃうのは、想像するとやっぱ可愛いなぁw