Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

満月アリスと月光霊夢

2011/09/13 03:08:04
最終更新
サイズ
8.24KB
ページ数
1

分類タグ


「満月アリスと月光霊夢」

※この小説は「夕立アリスと夕焼け霊夢」の続編に当たるものです。
 前作を読んでいなくても十分に楽しめますが、もしよろしければ前作からお読みください。
 また、前作の雰囲気を壊したくない方は回れ右を。















 唐突にデートに誘ってきたのアリスの方からだった。
 博麗神社に彼女がよく訪れるようになり、それこそ毎日の様に姿を見かける。
 それは、私が会いに行くようになったという事と、彼女自身2~3日に1度は必ず神社に遊びに来るようになったからだった。

☆★☆

 綺麗な秋空が広がり、涼しげな風が吹き始めた9月の半ば。
 今日も一人境内の掃除をしながらアリスの事を考える。
(今日辺りは彼女のほうが来るかしらね……)
 最近気がつけばアリスの事ばかりを考えてる。
 夏の1件があったからとはいえ、ずいぶん親しくなったと自分でも思う程だ。

 少し前のことを懐かしみつつ箒で枯葉を集めていく。
 日も短くなり、夜が長くなる。
 最近はずいぶんと涼しく、すっかり過ごし易くなったがお陰で落ち葉が増えるのが悩みの種だ。

「こんにちは霊夢」
「こんにちは、アリス。丁度来る頃だと思っていたわ」
 箒を杖にするように体重を預け、体を傾けるようにして声の方を向く。
 そこには自慢の上海人形を肩に乗せたアリスが地面に降り立つところだった。

 風が吹き、彼女のケープを揺らす。
 集めた枯葉がすこし散ってしまったが、さして問題はない。
 どうせ参拝者がろくに来ないのだ。
「ちょっと待っててちょうだい、今お茶を準備するわ」
 私は箒を投げ出すと、いつもの様にお茶をお準備しようと神社の方へと向かおうとする。
「ちょっと待って霊夢」
 と、いつもなら後ろをついてくるはずのアリスが急に私を止めた。

 不思議に思い、振り返ると。若干顔を赤くさせたアリスがまっすぐにこちらを見つめている。
 何かを言いたそうな、必死に搾り出すような。
 そんな苦しさすら感じる表情で私を上目遣いに見上げる。
 緊張感が漂い、なぜだか私まで緊張に手を握り締めてしまう。
 無言に耐え切れなくなり、思わず声を出そうと口を開きかけたところで、意を決したようにアリスが話し出した。

「今晩。暇、かしら……」
 声が震え、俯き。
 語尾は消え入りそうなほどに小さい。
 だが、なぜか私はその言葉をハッキリと聞き取ることができ、無意識のうちに
「え、ええ」
 返事をしていた。

「な、なら私とデートに行かない?」
 顔を真っ赤にさせながら、アリスはそう小さく強く言った。

☆★☆

 あの後。
「そ、それじゃあ7時に紅魔館の前でっ!」
 アリスはそれだけ言い残すと早々に飛び去ってしまったため、結局どこに行くのかも知る事無しにデートの約束は決まってしまった。
 まぁ、どこに行くのだとしても余程のことがない限り断ることは無いだろうが。

 そんな訳で私は紅魔館の前に来たのだが。
 なんというかまぁ、話には聞いていたが門番は見事に爆睡していた。
器用に立ちながら眠り、隣に降り立ったというのに目を覚ますことなく見事に寝入っている。
 少し無駄話でもと思い早めに到着したのだが……
 これは魔理沙が中に忍び込むのも簡単なわけだ。

 ふと頭上を見上げれば満天の星空が広がり、辺りからは秋虫たちの鳴き声が反響し広がるように聞こえてくる。
 うるさいレベルに響き渡り拡大されるそれらは、それでも決して嫌悪感を抱かせない不思議な音色を持ち。
 まるで魔法の様だとすら思わせる。

 門に背中を預けそんな不思議な音色に耳を傾けていると、傍らに誰かが降り立つ気配がする。
 アリスだ。
 確信を持ちながらそちらを向くと、アリスが苦しそうな顔で門の塀に片手を付きこちらを向いていた。
「ご、ごめんなさい。遅くなって」
 急いだのだろう、肩で息をしている。
 苦しげに歪んだ顔を見ると、別に急がなくてもいいのにと思えてしまうが。
 もし自分だったら間違いなく急ぐだろうと思い結局それは言わずに心の奥にしまっておくことにした。

「気にしないで、それよりアリスこそ大丈夫?」
「わ、私は平気よ。それじゃあ、いきましょう?」
 すこし落ち着いてきたのか、はたまた平静を装っているのか定かではないが。
 アリスが先頭で歩きだしたので、私もその後ろをつくようにして歩き出した。

 紅魔館の前を横切り森の中へと入って行く。
 しばらく無言で歩いていると、やがて霧の湖へと出る。
 物静かでそこまで大きな湖ではないが、妖精達が好んで集まる場所だ。
「霧の湖?」
「あれ、言ってなかったかしら?」

 湖を見るとその水面には夜空が写り込み、幻想的な風景を醸し出している。
 水平線に伸びる湖。
 大きくないとわかってはいるが、暗いためその先は無限に広がっているようにすら思わせ。
 その果ては夜空へとつながりまるで立体になった絵を見ているような錯覚を感じさせる。
 確かにデートにはもってこいな場所なのかも知れない。
 だがしかし……

「何で霧が晴れているの?」
 普段なら霧が立ち込め、水面なんてほとんど見えないはずだが。
 それがなぜ今日に限ってこんな綺麗に晴れているのだろうか。
「妖精達に頼んだのよ」
 アリス曰く。
 何でも、妖精達に人形劇を披露する機会があり。
 それが妖精達の間でとても評判になったらしい。
 そこで、今晩だけ霧をなくせないかと交渉したところ、何とかしてくれると言う事になり今に至るそうだ。

「だから、急だったけど今日貴女と。霊夢と行きたかったのよ」
「そうだったの」
 なるほど。
 要するに今日だけ特別ということだ。
 それにしても妖精もあながち馬鹿にできない力を持っているんだなぁ。とあらためて感じたわけだが。

 そんなことを話しながら湖の周りをゆっくりと歩き出す。
 水辺という事もあり肌寒い風が時折吹くが、動いて火照った体を程よく冷やしてくれ丁度よい。
 1時間もあれば回れてしまう程度の大きさだが、二人で話しながらのんびりと歩いているのできっともう少しかかるだろう。

 二人の歩みに合わせて星空も動き、ふとした拍子に見る湖は何時も違う夜空が写りこんでいる。
 どこかで見た事のある星座が写り。
 名も無い星達の固まりが水面で光る。
 それがまた不思議と綺麗で、思わず二人して歩みを止めて眺めてしまうくらいだ。

 歩き始めて30~40分たった頃。
 歩き出した場所から丁度反対側の岸に差し掛かり。ふと、ほぼ同時に二人で湖を見る。
 と、丁度湖の真ん中に月の光が差込み、ぽっかりと穴が開いたように光のステージが出来上がっていた。
 キラキラと。まるで小さな光の集合体のように水面が光を反射し、差し込む光と混ざり合い神秘的な光を放っている。
 それは、言葉では表せない美しさを持ち、見るものを魅了してしまう。

「……綺麗ね」
「そうね」
 思わず見とれ、言葉が漏れる。
 アリスも同じようで、それ以上お互い何も言うことなくただその光を眺め続けた。

「前にアリスが私をまるで夕日みたいだといったわよね?」
「え? ええ、そうね」
「私が夕日ならアリスはあの月の光ね」
 綺麗で幻想的で……
 俯き、言葉を続けようとすると唐突にアリスが声を上げた。

「あ……」
 指差す先を見ると綺麗に差し込んでいた光の輪が消えてしまっている。
 気づけば静寂と闇に包まれ、聞こえていたはずの鈴虫たちの声もいつの間にか聞こえない。
 突然訪れた不自然すぎる静けさに思わず異変かと辺りをを見回してしまう。
 そんな私達の元にぽつり、またぽつりと小さな水滴が降り出した。

「あめ……?」
 アリスが手の平を頭上に向ける。
 すると、それを合図にしたように急に雨脚が早まり辺りをぬらしてゆく。
 慌てて二人で近くにあった大きめの木に駆け寄り雨をしのぎ、湖を見る。
 水面には無数の波紋ができ、頭上では木の葉が雨を受け止め静かな音楽を奏でるが、私たちをあざ笑っているかのようだ。

「せっかくのデートが台無しね」
「……」
 体についた水を払いながら隣にいるアリスに声をかけるが返事が無い。
 見ると、俯きただ静かに地面を見つめている。
 ショックだったのだろうか。
 雨は弱まることも強くなることも無くただ静かに振り続け、やがて再び霧が湖を覆ってしまった。

 木に寄り掛かり、すこしだけアリスに近づく。
 寄った気配に気づいたのか、アリスがようやく顔を上げるとその表情は思ったより明るいものだった。
「ごめんなさい、何だかこの間のことを思い出していたの」
 力なく微笑み、静かに湖のほうへと視線を向ける。
 そんなアリスの横顔を葉の隙間を抜けた雨粒が濡らし、一筋の道を作り上げた。

 まるで涙のように流れるそれを、片手を伸ばしそっと拭い取る。
 いきなり触れられたアリスは驚き、こちらを向くと恥ずかしそうに身じろぎ1歩離れてしまう。
「もう、雨が降ってるんだからキリが無いわよ?」
「そうかもしれないわね」
 暗くてよく見えないが照れているのか若干顔が赤いように見えて、何だか嬉しい。

「気づけば何時も貴女がいるわ」
「え?」
「この間までは一人だったのに、気が付けばこうやって。雨が降り出す時でも貴女が隣にいるのよ」
 照れるアリスを見つめていた筈なのに、いつの間にか彼女が真っ直ぐこちらを見つめていた。
 真っ青な瞳。その力強さに視線をはずすことができず、ただ引き込まれるように見つめ返してしまう。

「何を恥ずかしがって躊躇っていたんでしょうね、貴女が毎日傍に居てくれる事を思えば些細なことよ」
「アリス?」
「そうよ、言葉なんて、今の事を思えば必要ないわ。だって霊夢、貴女はいつでも私の傍にいてくれる」

 雨音だけの静かな空間に二人の息遣いだけがハッキリと聞き取れる。
 どちらがあげたのか。生唾を飲む音が聞こえ、アリスが息を呑んだ。

「だから霊夢、私と一緒に暮らさない……?」

 魔法のように。幻想のように。
 雨が降る中。
 木々の隙間から月明かりが差し込み、光の帯が細長く私たちに差し込んだ。
週1SS第9弾。
那津芽絶賛調節中。

またもや遅れましたすいません。
最近バイトを始めました、楽しいのだけれど時間が。
そして帰ってくるとすぐ寝ちゃう。だらしないね。

-----

ぎりぎり~~~セウトー!!
ああ、満月の日に投稿したかった・・・ガクシッ
そんな那津芽です。
まぁ一応満月の夜ではあるし・・・セーフって事でいいよね・・・?

さて、今回はじめて連作?物に挑戦してみました。
投稿しないのであれば長作を書くのがすきなのですが、読むの大変になっちゃうし、どうしてもオリキャラ出したくなる病が発作を起こすのでいまんとこ短編を投稿していたのですが。
この際またレイアリ書くなら前作の関係引き継いでもよくね?
とか言い出した俺が主な原因です。
蛇足にならないかすごく不安なのですが、いかがでしたでしょうか?
メールなりツイッタのDMなりで「クソカス乙」とでも言っていただければ今後は控えます。たぶん。

余談
小説を書き途中で確認してもらったり感想下さる友人の一人が
「寝てる美鈴を前って、駅前の時計の下で待ち合わせね! みたいなノリだよね!!」と超絶笑顔で言われてしまいました。なんて返事すりゃいいんだ。
那津芽
[email protected]
http://twitter.com/#!/seihixyounatume
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
なんというレイアリ。
これは続きを期待せざるを得ない
2.奇声を発する(ry in レイアリLOVE!削除
ジェネリック開いた瞬間思わずキター!と叫んでしまいましたw
続きに超期待してます
3.名前が無い程度の能力削除
友人が素晴らしい発想すぎる
レイアリってやっぱいいですよね!
続編期待しています
4.名前が無い程度の能力削除
綺麗な作品だ…
5.那津芽削除
>>1さん
超絶レイアリです。
もう前回のレイアリの雰囲気出すのに必死でした。
続きは季節が変わり次第かな・・・?
コメントありがとうでした!

>>奇声さん
本当に毎回コメントありがとうございます。
コメントいつも支えになっております。

前回のときもすごい好評でしたからねw
今回も前回と同じよう、良きレイアリを目指しました。
続きは冬になったらですかね。

>>3さん
友人に伝えたところ「流石良くわかってるその人」
との事で、喜んでおられましたww

東方カプはいろいろアリだと思いますが、レイアリは東方を知り始めて少しした頃に知ったのでやはり思い入れがありますね。
個人的にも書く頻度は多い気がします。
続きは以下略
コメントありがとうございます!

>>4さん
ありがとうございます。
前回が雨、今回は星空ですね。
綺麗さや静けさ、ですがそこには不思議といやな雰囲気ではなく、暖かな信頼がお互いを支えている。
そんな作品(笑)です。
綺麗だといっていただけて大変至極恐悦ですね。

コメントありがとうございました!