Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

明日になったらわかるかもしれない

2011/08/25 01:07:56
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「歴史の味って、一体どんな味なの?」





突然家に入ってきた彼女が、突然放った一言。
丁度その「歴史」を食べている間だったのもあり、
私、上白沢慧音は、思わず目を大きくして、
こちらをニコニコと見ている彼女…藤原妹紅の顔を、じっと見るしかなかった。

「そんなに変な質問だったかなぁ」

私の反応が予想外だったのか、
彼女は不思議そうに、さらに私の顔を見つめた。
一先ず、口の中の歴史をごくんと飲み込んで、
段々と近くなっていた、私と妹紅の顔の距離を、
自らが引くという形で離す事に成功させる。

「変ではありませんね。たまに聞かれますから」
「そっか。で、どんな味なの?」
「どんな味と言われても…しいていうなら、「人間にはわからない味」です」

―味、か。
私が歴史を食べるのは、「歴史を食べる妖怪」だからである。
半分人間の血が流れているため、人間と同じ食事でも構わない。
だが満月の日はもちろん、たまに歴史が食べたくなるのだ。

しかし、「歴史の味」というものは、考えた事もなかった。
だからたまに聞かれた時は、「人間にはわからない味」と答えるようにした。
実際、歴史を食べる事なんて事は、人間には到底不可能だから、嘘はついてない。

妹紅は、人間と同じような食事はしているが、
すでに人ではなくなっている。だからこそ、長年の友でもあるのだ。
そして、長年の友であるからこそ、こちらの意思も読み取ったのか、
怪訝そうに目を細めて、私の顔をじっと見つめる。

「はぐらかしちゃって。美味しいから、
 今みたいに角が生えてなくても、そうやって食べてるのよね」

一瞬胸が激しく動く。思わず歯を食いしばって顎を引いてしまう。
…図星である。

そんな小さな動作さえ、彼女は気づいていたらしく、クスクスと笑う。

「慧音もやっぱり妖怪なのね。ねぇ、それ私も味わえるかな」

食べたいな、そういって私の手を掴む

「…あなたはもう普通の人ではない。しかし人と同じ生活をしている。
 そして白沢ではないのです。歴史を味わう事は残念ながら、できないでしょう」

急に恥ずかしくなった。何故だろう。


歴史の味。やはり私にはわからない。
半分人間だからだろうか。いいや違う。
先ほどの通り、考えた事がなかったからだ。

しかし、時折食べたくなるのは、本能か、中毒か。
やっぱり、味はあるのかもしれない。


「ねぇ、それより花火しようよ」

妹紅はそう言うと、私の手を引っ張った。
突然家に入ってきた理由は、もしかしたらこれだったのかもしれない。
そして、歴史の味について、懸命に考えていたため、
彼女をほったらかしにしそうだったのに、今ふと気づいた。
それに感づいたのだろうか。そう考えると、急に申し訳なくなってしまう。

「いいでしょう。今水桶とろうそくを持ってきます」


家から出ると、星空が輝いていた。
妹紅が持ってきた花火を手に持ち、
ろうそくの火を使い、花火に火をつける。

―しゅう

花火は鮮やかな色を出しながら、
明るく燃え始める。

「火もーらいっ」

私の花火の火に、妹紅は、まだ火のつけていない花火を近づけ、
点火をさせた。一瞬だけだが、妹紅の花火と、私の花火は罰点を作り、
綺麗な色を混じらせ合った。

一瞬だけだから、気のせいかもしれないけれど。

「綺麗ね」
「はい。…あっ」

彼女の言うとおり、綺麗だ。
もう夏の終わり頃だが、花火はやはり、いいものである。
…なんて考えていると、自分の花火の火は消えてしまった。
少しだけ、寂しくなった。

「私の花火が消えない内に、新しい花火出しなよ」

妹紅の言葉を背に、彼女の持ってきた花火セットを漁る。
少ししかないようだ。まぁ、2人だから、当たり前か。

「はーやーくー」

彼女に急かされ、急いで花火を点火させると、
どうやら暗くて見えなかったが、先ほどとは違うタイプのものであり、
バチバチと電気のような光を出した。

「おっと、ろうそくの火は消しておこう」
「これ、花火が点かなくなってしまいますよ」

私の言葉を気かずに、妹紅は火を消した。
それとほぼ同時に、彼女の花火も消えて、
また新たに彼女は花火を持って、私の花火を利用して点火した。

「ろうそくがいるのは、最初だけ。
 あとは、誰かの力を借りて、火を点けるものよ」

歴史も、同じじゃないの。

彼女の言葉が、少しチクリと胸に刺さる。
何故だろうか。別に悪い事を言われてはいないのだが。

―しゅう。

また私の花火が消えた。
妹紅が目で急かす。それにはいはい、と私は答えた。
何故か、楽しくなってきた。
ろうそくは消えてしまったから、急がなくちゃ。
その「焦り」は、子供の遊びに近いと思う。






その後は無言で、
いつの間にか、花火の残りはなくなっていた。






「…ん?線香花火はないのですか」
「あぁ、あれ?慧音には似合わないから、抜いてきたよ」

手持ち花火の醍醐味。あれで締めるものではないだろうか。
ルールというわけではないけれど、いつの間にか、
私の中ではそうなっていたのだ。

「そうなのですか」
「そうなの」

勝手に私の家に戻り、
私の家の明かりを点ける。といっても、彼女のその、
ずけずけとした態度は、もう慣れたので、
何も気にせず、水桶の処理を始める事にした。
水に浸かった、力尽きた花火は、少し寂しい雰囲気を出している。

チラリと、彼女を見ると、視線はこっちではなく、
私が先ほど食べていた、書物に向けられていた。

「花火って儚いね」

私が食べたせいで、文章がばらついてしまっている書物を、
妹紅は肘を机について読んでいる。
構わず、花火の処理を続けたが、急に話題を降られたので、
顔を彼女の方に向けて、また処理の手を止めた。

「明るく輝いて、最後は萎れてポイだよ。」
「それもそうですが…」
「まるで人間みたいだね。懸命に明るく輝くあたりとか特に」

まぁ、私は今の生活も好きだけどね、と、
巻物を指でなぞる彼女に、返す言葉が見つからなかった。
まるで私が、彼女に言葉を食べられたような感覚だ。

「でも、協力して、一緒に明るく輝けるの、いいと思わない。
 自分達の力で、輝けるの。統一感のイマイチない人外にゃできないよ
 あぁ、天狗は別ね。あれは線香花火だ。
 輝いちゃいるけど、攻撃的な火を出しやがって。人に火をくれない。
 ちょっとでも揺らすと、逃げるように消える。面白くない」

自分で言ってて、自分で苛立ってきたのか。
何か最近天狗に恨みでもあったのだろう。
あのツインテール、男と勘違いしやがって!と立ち上がった。

彼女が私に線香花火が似合わない理由は、これだったらしい。
私としては、「儚い人間」の代名詞だった線香花火。
しかし妹紅の話を聞いて、なるほどと納得をした。
そういう考え方もあったのか。興味深い。

「ねぇ、慧音。歴史の味、わかったよ」
「…はい?」

さっきまで、怒っていたはずの彼女は、
いつの間にか笑っていた。
つかみ所がないというか、感情豊かというか。
いつもいつも、翻弄されてしまう。
だけれど、今日は、特に翻弄されてしまっていた。

「少なくとも、慧音と一緒の味、とっても好きだよ」
「え、あ、ありがとうございます?」
「畏まらないでよ。こっちまで堅苦しくなっちゃうでございですますよ~」

私の真似でか、暢気で適当な口調で喋る彼女。
しかし彼女は年上だ。友人とも言えども、
ちゃんと年上には、敬語を使わなくては。

しかし、今の言葉が嬉しくない、と言われたら嘘になる。
心が暖かくなる感覚がした。顔も少し熱くなるのがわかる。

「慧音は、わかった?味」
「……ええと」
「まだわからないんだね。ヒントあげるよ」

はぁ、と呆れ、彼女はこっちに近づいてくる。
すると、水桶の花火を一つ掴んだ。

「私と一緒にいて、どうだった?」
「一緒にいて…楽しいですが」
「そうそう。どう感じた?」
「どうって…、楽しいって事でしょう?」
「こんの石頭め」

指で頭をぐいと、推されると、
全くもう、とコツンと額と額をくっつけられた。

「歴史の味は、人間にだってわかるよ。
 いいや、森羅万象全部がわかるの。心があるから」

心があるから、わかる。
なるほど、人間も心があるから――

「まぁた、私の言葉をそのまま考えたでしょう?
 本当に石頭ね。感受性って奴持ちなさいよ」
「はぁ」

ぐりぐりと額をさらに押し付けられる。
どうやら私は本当に石頭らしい。全然痛くない。

「慧音はさ、歴史を食べるのが好きなのって、
 そういう妖怪だけじゃない、あなたが好きな味…感情があるからでしょ?」
「まぁ、悲しい感情は、ちょっと」

そうそう、といつの間にか持ち出していたのか。
彼女の手には、私の巻物があり、
額を離されたと思ったら、今度は目の前に、巻物を突き出された。

「どんな文があったか知らないけど、
 これ、暖かい話でしょう?暖かい感情を食べてるじゃない」
「あぁ、これは、確かに」

よく見ているものだ。これは確か、
若者が、妖怪に襲われそうな老人を助け、
人里まで送ってあげた話だ。食べた感情は確か、
老人の感謝の気持ちだったか。

「本当にどんな味かは知らないけど、
 私だったら、この感情は、「辛いんだけど、ほんのり甘みがある」
 う~ん、お菓子にすると、醤油せんべいというか…」

妹紅が私のためにか、簡単な例えを考え出したようだ。
何故だか、先ほどまで額が近かったのか、
一緒にいて、甘い味がした、という言葉から、敏感になっているのだろう。
少し嬉しくて、また心がほわん、と温かくなった。

暖かさは、少し甘い感じで、ずっと感じていたいと思った。


…ん、甘い?


「あーでも、辛いというか、そのー」
「妹紅妹紅、もしかしてなのですが」

わかった気がする。
急に、心に緊張のような痛みのような感覚が走った。
早く伝えたい。子供のような気持ちが、私を包み込む。

「今、感じているこの気持ち。これが、歴史の味ですか」
「そうそう!よくわかったね!偉い!」

よしよし、と頭を撫でられた。

「や、やめんか!何歳だと思っている!」
「あ。素がでた。やったね。やっとだよ」
「!?……し、しまった…!すいませんでした、今の不敬な言動…」

しまった。今のは衝動的だといえども、
あまりに失礼すぎた。目上の人に敬語ではない所か、怒りを露に…

「いいよいいよ、むしろ嬉しかった」

妹紅は少し顔を赤くしていた。何故だろう。
考えたら、私達は少し狭い所にいた。
そりゃそうだ。台所の端っこだもの。
今花火の処理をしようとしていたからだ。
そんな所に2人もいたら、その場の気温は嫌でも上がるもの。

それなのに、妹紅は、汗で湿った手を、
桶を掴んだままだった、同じく湿った私の手に重ねた。

「妹紅?」
「一緒に片付けしよう。その方が、楽しいよね」

思わず、私の顔も熱くなった。何故だろう?
心も、とくとくと、元気になる。嬉しさが甘く甘く、私の心を包む。


明日、歴史になっているだろうこの味は、とても甘くて仕方がなかった。
だけど、これは書に記さず、心にしまっておこう。



少しお久しぶりです。
夏も終わりになってきて、ふと、色々考えたところ、
歴史ってどんな味なんだろうなぁと。
きっと人情を記したようなのものなんだし、じゃあ
人の心を食べるようなものだよね慧音って。という発想から始まった話です。

妹紅の口調と性格ですが、
クールで男口調も好きですが、
暢気なんだけど、やっぱりぶっきらぼうな女口調の彼女が一番好きです。
それと慧音さんは、もうちょっと自分の気持ちに素直になるべき。

深夜のテンションでもりもり書くの楽しいです。

それでは。
糸麦くん
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
いいですなぁ実にいい
2.miyamo削除
いいなぁ、こころが暖かくなった
3.名前がない程度の能力削除
この気持ち、まさしく愛だ!
4.奇声を発する程度の能力削除
素晴らしい!!
5.名前が無い程度の能力削除
こちらの口の中もほんのり甘くなりました。
慧音可愛いなあ。
線香花火が天狗?って思ったけど、妹紅の説明読んで納得。
そういう解釈も面白いですね。
6.名前が無い程度の能力削除
いいね
7.名前が無い程度の能力削除
顔が赤くなった理由が分からない慧音かわいい