「食べちゃいたいくらいチルノが好き」
片手に箸、片手にお椀を持った状態で言われて、
『ああこいつマジなんだな』としみじみ妖精は思った。
「あたいを食べても美味しくないわよ!」
「大丈夫、醤油かけるから」
「せめてシロップ系にしてほしいわね!!」
一歩妖怪が踏み込む度、一歩妖精は後退り。
だって宵闇の中で光る赤目が猟奇的なんだもの。
恐れを知らない妖精であっても流石に本能的に恐怖を覚える。
「チルノ!私の中で一つになろう!!」
両手を広げてルーミアが叫んだ。
勿論胃袋の中で的な意味である。
対してチルノも、息をたくさん吸い込んでから叫んだ。
「断る!」
夜の湖全体に、高い声が響く。
と同時に、チルノの直ぐ横を何か早いモノが通りすぎた。
少ししてからツウ、と右の頬に切り傷が生まれ、血が染み出した。
まるで赤い直線を鉛筆で描いたような、そんな風だった。
チルノはゆっくりと背後を振り返る。
大木の幹に、何かが一本突き刺さっていた。
彼女の目が悪くなければ、それは先程までルーミアが持っていた箸の片方。
「あれえ?おかしいなあ。ちょっとずれちゃった」
チルノは脱兎の如く、振り返らずにその場を去った。
じわりと切れた頬が痛みだす。
これだから妖怪は嫌なんだ。チルノは心の中で悪態をついて、憎たらしそうに原因を睨む。
それはルーミアに向けられたものではなく、その背後。
白い光を降り注ぐ巨大な月。妖怪が狂う満月。
妖怪でない彼女にしてみたらとんだとばっちりである。
取り敢えず湖畔の森に飛び込み、息を潜めた。
耳が痛くなるほどの静寂。
普段鬱陶しい位に居る筈の妖精達が居ないのは、あの宵闇を恐れたからか、単に満月で浮かれて何処かで遊び呆けてるだけなのか。
毎日がハピネスな妖精に満月も何もないが。
「…ルーミアったら、最強のあたいに挑むなんてとんだチャレンジャーだわ…ふふ、でも勝つのはあたいよ。あの頭、冷や」
「チルノおお?どこ行っちゃったのお?」
「ひいいっー!!」
狂気染みた声に思わずチルノは悲鳴をあげてしまった。
慌てて口を押さえるも、時既に遅し。叫んだ時間は戻らない。
「………そこね?今行くよ!待ってて私の晩御飯!!!」
最早食糧にしか思われてなかった事に、妖精は少しだけ悲しくなった。
しかしそれどころではない。氷の羽を羽ばたかせ、身体を急降下させる。
湖に飛び出して水面ギリギリまで近づくとそのまま真っ直ぐ飛行する。
全力のスピードで飛んでいるため、湖の水が彼女が走った後に巻き上がった。
飛び散った雫は、チルノの冷気で固まっては湖に沈んでいく。
「このまま逃げ切るわよ!」
敵前逃亡?これは名誉ある撤退である。
いくら死なないからと言って友人の食糧になるのは断固拒否なのだ。
しかし何処へ逃げればいいのか。
紅魔館の居眠り門番に助けてもらうか。寝てたら意味がない。
はたまた博麗神社?無理だ、あの巫女を叩き起こしたらそちらに殺される。
チルノはふと水面に映る月光を見た。
自分の影が一つ。
「………………あ」
黒い球体の影が、一つ。
「みいつけた」
宵闇の中に、白く光る歯だけが見えた。
片手に箸、片手にお椀を持った状態で言われて、
『ああこいつマジなんだな』としみじみ妖精は思った。
「あたいを食べても美味しくないわよ!」
「大丈夫、醤油かけるから」
「せめてシロップ系にしてほしいわね!!」
一歩妖怪が踏み込む度、一歩妖精は後退り。
だって宵闇の中で光る赤目が猟奇的なんだもの。
恐れを知らない妖精であっても流石に本能的に恐怖を覚える。
「チルノ!私の中で一つになろう!!」
両手を広げてルーミアが叫んだ。
勿論胃袋の中で的な意味である。
対してチルノも、息をたくさん吸い込んでから叫んだ。
「断る!」
夜の湖全体に、高い声が響く。
と同時に、チルノの直ぐ横を何か早いモノが通りすぎた。
少ししてからツウ、と右の頬に切り傷が生まれ、血が染み出した。
まるで赤い直線を鉛筆で描いたような、そんな風だった。
チルノはゆっくりと背後を振り返る。
大木の幹に、何かが一本突き刺さっていた。
彼女の目が悪くなければ、それは先程までルーミアが持っていた箸の片方。
「あれえ?おかしいなあ。ちょっとずれちゃった」
チルノは脱兎の如く、振り返らずにその場を去った。
じわりと切れた頬が痛みだす。
これだから妖怪は嫌なんだ。チルノは心の中で悪態をついて、憎たらしそうに原因を睨む。
それはルーミアに向けられたものではなく、その背後。
白い光を降り注ぐ巨大な月。妖怪が狂う満月。
妖怪でない彼女にしてみたらとんだとばっちりである。
取り敢えず湖畔の森に飛び込み、息を潜めた。
耳が痛くなるほどの静寂。
普段鬱陶しい位に居る筈の妖精達が居ないのは、あの宵闇を恐れたからか、単に満月で浮かれて何処かで遊び呆けてるだけなのか。
毎日がハピネスな妖精に満月も何もないが。
「…ルーミアったら、最強のあたいに挑むなんてとんだチャレンジャーだわ…ふふ、でも勝つのはあたいよ。あの頭、冷や」
「チルノおお?どこ行っちゃったのお?」
「ひいいっー!!」
狂気染みた声に思わずチルノは悲鳴をあげてしまった。
慌てて口を押さえるも、時既に遅し。叫んだ時間は戻らない。
「………そこね?今行くよ!待ってて私の晩御飯!!!」
最早食糧にしか思われてなかった事に、妖精は少しだけ悲しくなった。
しかしそれどころではない。氷の羽を羽ばたかせ、身体を急降下させる。
湖に飛び出して水面ギリギリまで近づくとそのまま真っ直ぐ飛行する。
全力のスピードで飛んでいるため、湖の水が彼女が走った後に巻き上がった。
飛び散った雫は、チルノの冷気で固まっては湖に沈んでいく。
「このまま逃げ切るわよ!」
敵前逃亡?これは名誉ある撤退である。
いくら死なないからと言って友人の食糧になるのは断固拒否なのだ。
しかし何処へ逃げればいいのか。
紅魔館の居眠り門番に助けてもらうか。寝てたら意味がない。
はたまた博麗神社?無理だ、あの巫女を叩き起こしたらそちらに殺される。
チルノはふと水面に映る月光を見た。
自分の影が一つ。
「………………あ」
黒い球体の影が、一つ。
「みいつけた」
宵闇の中に、白く光る歯だけが見えた。
結局ルーミアはチルノを食べてしまったのか…。
ルミチルは俺のムーンライトアイシクルフォール(シャキーン
結局チルノはどうなってしまったのかもいい
ただ
冷気で固まった水飛沫が なんで湖にしずんでいくんだ
それだけが気になって仕方がない