「……」
私には悩んでいることがある。
どこかの唐傘みたいに人間を驚かす方法とか、そんなちっぽけな悩みじゃない。
いやまぁ、向こうからしたらわりと生命が関わるからちっぽけではないかも知れないけど。
とにかく、私には悩みがある。
ずっと前から悩んでいたけど、それが最近になってさらに大きくなって。
しかもどんな手段をこなしても一向に解決する気配が無い。
私がこんなに悩み始めたきっかけは、早苗の一言。
「貧乳な子ってかわいいと思いますよ、ぬえ?」
「……なに、突然。しかも何でそれを私に向かって言うのかな?」
「いいえ、なんでもありませんよ。ただ、ぬえがかわいいなぁって」
「……っ!!」
照れてない。照れてはない。えぇ、断じて。
一見、普通にかわいいって言ってるだけかもしれないけど。
でもよく考えたら、
「……つまり、私が貧乳って言いたいわけ!?」
「かわいいですよ、ぬえ」
「こら!私の質問に答えろ!早苗!?」
全く、誰が貧乳だ誰が。
ちょっと早苗に背中を見せて、いろいろやって、
「ほら早苗、私、貧乳じゃないじゃん!」
私の胸にぶらさがる、立派な果実を見せ付ける。
ほら、ちょっと動いてみればぷるんぷるん。元気に揺れる。
どうだ、これを見て誰が私を貧乳と呼べるか。
呼べないだろう。だって、誰がどうみても立派な巨乳なんだから。
そんな私の様子に、早苗はじーっと私の胸を見て。
そうか、私の巨乳に驚きを隠せないのか、どうだはっはっは。
「えいっ」
「ひゃん!?」
ぷにって、私の胸に手を突っ込む。
「そーれ、そーれ」
「あっ、さ、早苗、んぁ、や、やめっ」
早苗に胸をいじくりまわされてつい変な声がでちゃう。
っていうかやめて!今すぐやめよう早苗!
私の貞操が危ない気もするけど、なによりもやばいから!色んな意味で!子供見ちゃいけなくなるから!
「み・つ・け・た」
「―――っ!?」
早苗が何かを見つけ、そしてそれをつまんだかと思えば一気に引き抜く。
その瞬間、私はまさに子供が見ちゃいけないような痙攣を起こしてぐったり倒れる。
頭が覚醒してきて体を起こすと、さっきまでとは違う違和感が。
そう、あの胸の重みが無くなって。よく見ればぺったんこな状態になってて。
「……え、あ、あれ!?」
「正体不明の種でごまかそうとしたって無駄ですよ、ぬえ」
早苗のほうを見れば、そこには誇らしげに正体不明の種を二個つまんでる姿が。
「……このっ、返せっ!!」
「はいはい、返しますよ。それとぬえ」
「……何?」
「やっぱりぬえは貧乳のほうがかわいいですよ」
「うっさい黙れ!!!」
こういうことだ。
別に、確かに悩んでいたけど、そこまでは気にしてなかった。
でも、こんなこと言われたら悔しいじゃない。
別に、あいつみたいな巨乳になりたいとか、そういうわけじゃないけど。
でも、せめて人並みには大きくなりたい、あいつを見返してやりたい。
そんな思いが出てきて。
こうして、私の普乳化計画が始まったのだ。
……が、一向に大きくなる気配は無く。
巨乳なやつ、一体どうやったらあんなにでかくなるんだよ。
どう考えても不自然だ!おかしい!
早苗なんて、あいつ生まれてまだまだ十数年だろ!?
私なんて、軽く4桁はいってるのに、おかしい!不平等だ!
絶対どこかで闇取引的なことしただろ!
例えばあいつなら神に頼んで巨乳にしてもらっただろ!
絶対そうだろ!そうとしか思えない!このっ!せこいぞ!
「……はぁ」
なんて、他人の胸にイチャモンをつけても、私の豊胸には繋がらないわけで。
一体、どうしたら大きくできるのだろうか。
永遠亭、だっけ?そこの薬師にでも頼めば大きくなるのだろうか。
いやでもそれは許さない。何が許さないかって、私のプライドが。
こう見えても大妖怪。絶対そんなことはしたくはない。
……にしても、どうするべきか。
「うらめしぐふぅ!?」
そんな思考をしていたら、急に唐傘が目の前に現れたのでとりあえず吹っ飛ばしておく。
あいつなら大丈夫だろう、頑丈だし。
そう結論を決めてまた思考を始めようとしたら、
「急に何をするのさ!?」
涙目になりながらギャーギャー騒ぎ始めて。
あぁ、面倒だなぁ、と思いながら相手をすることにする。
「いや、何って、急に目の前にきたから吹っ飛ばしただけだけど?」
「そんな何当たり前のこと聞いてんの?みたいな顔しないで!ひどいよぬえ!驚かそうとしただけなのに!!」
「はいはい、ごめんごめん。これでいいでしょ、さぁ、どっか行った行った」
「だーかーらー!あぁもう!!」
「……うるさいなぁ、私は今悩み事があるんだからあんたに構ってる暇は無いの。悪戯はまた今度」
「……どうしたの?悩みがあるなら聞いてあげるけど?」
さっさと追っ払おう、そう思っていたら、急にこんなこと。
いやまぁ、確かに、自分じゃどうしようもない悩みだけど、でもこいつに解決できるのか。
だって、こんな貧乳相手に……貧乳、相手に……ひん、にゅう…………って!?
「こ、こ、こっ、ここここここここがさささささささ!?」
「うわっ、ちょっ何!?ぬ、ぬえ!?」
えっ、待って、何この顔や性格に似合わないないすばでー。
確かに早苗には劣るかもしれないけれど、でも一般の人たちよりかは普通に大きい、なにこれ。
こんな童顔のくせに、その胸には立派に実った果実が二つ。
「なに、お腹の中と頭の中は空っぽのかわりに別のところはいっぱいつまってる的な?」
「え、だから意味がわからないんだけど、どうしたのぬえ?しかも頭の中は空っぽってそれは失礼じゃないの?」
抗議を申し込もうとしてるのを適当にあしらって。
果たしてどうやってこいつはこんなに大きくなったのだろうか。
絶対何か秘訣があるはずだ。
そうに決まってる。ていうかそうであって。じゃないとおかしい。
「……ねぇ、小傘」
「どうしたの、ぬえ?」
「……胸」
「胸?」
あぁ、こんなやつに聞くなんて。なんか微妙に恥ずかしい。ちくしょう。
でも、聞かなければ私の豊胸計画がまた0からだ。
せっかく掴んだこのチャンス、無駄にするわけにはいかない。
そうだ、秘訣とかが何も無かったらまたぶっ飛ばせばいいたけだ。記憶が無くなる程度に。そうしよう。
絶対、こいつも昔は貧乳で悩んでた。うん。だからこそ今の巨乳があるんだ、こいつには。
うん。そうであって。お願いだから。こいつのために。
「その胸、どうやったらそんなに大きくなったのさ?」
「へっ、あ、あぅ、逆に聞きたいんだけどさ」
「……何?」
「どうやったらそんなに胸を小さくできるの?」
「……はぁ?」
なに、いってんの?こいつ。
「いやさぁ、なんというか、色々不便なんだよね、驚かすときのこの胸。たまに手が動かしにくくて邪魔になるときがあるんだよ。隠れるときとかも」
「……え、何か特別なことして大きくなったんじゃないの?」
「ううん、なんか自然と、気づいたらこんなになってへぶっ!?」
さよなら、小傘。胸に関しては君とは一生分かり合えないようだ。
にゃぁぁぁぁぁぁ!?なんて悲鳴を上げながら飛んでいく小傘を後に、私は歩く。
……神様、なんでこうも不平等な胸になったのでしょうか。
とりあえず一人で考えてても仕方ない、ということで帰宅する。
小傘はあのあとどうなったかは知らない。
きっと大丈夫だろう、小傘だし。
無駄にしぶとい小傘のことだし。
「あ、ぬえさん!お帰りなさい!」
「ん、ただいま、響子」
玄関の前で必死に掃除をしてる元気な山彦に適当な会話をしてさっさと家の中に入る。
ふと、相談しようかと思ったが、巨乳、というほど大きく無かったから却下。
ていうか私と大して変わらない気もする。
それに、こいつに相談したらつい誰かに言っちゃいそうだし。
……その、やっぱり色んなやつらに伝わるのは恥ずかしい。
これでも大妖怪。そこのプライドはあるのだ。
さて、誰が相談相手にいいだろうか。
まずムラサ。
気の置けない友人、としては相談相手にはいいかもしれない。
あいつなら秘密は守りそうだし。
一応、これでもあいつのことは信頼してる。
前からよく愚痴とかも聞いてもらってるし。
ただ早苗の愚痴を言うとなんかいつも惚れ気だのなんだの言われてるが、そんなことは無い。断じて違う。
あいつの頭の中が春になってるだけだろう。
早苗がいつも無理矢理ひざ枕しようとするのをどうやめさせるべきか相談したときなんて、
「あのさ、いつも思うんだけど自慢なの?自分は恋人といつもこんなにイチャイチャしてるんだぜ的な自虐風自慢なの、それ?もう、最近はコーヒーに砂糖を入れないで飲むくらいになんだけど」
なんて、甘いものをいっぱい食べてお腹いっぱいです的な雰囲気を醸し出してて。
どこをどう考えれば自慢になるんだ、確かにひざ枕されるのは嫌じゃないけど、好きだけど、でもそんな頻繁に、しかも縁側でされて恥ずかしいからやめさせようとしてるだけなのに。
それに、たまには私だってひざ枕してあげたいんだぞ。
いつもいつもあいつばっかり、ずるい。
大体早苗はさ、なんで人目の付きそうなところでそういうことをするんだ!
せめて誰にも見えないような、例えば自分の部屋とかでやってほしい。
そうすれば私だってここまで言わないさ、素直に甘えるさ!
と、話が段々それてきた。
とにかく、ムラサは確かに相談するにはうってつけの相手。
でも、悔しいけど確かに私よりかは大きいかもだけど、そこまでってわけじゃない。
相談したところであまり効果の高そうな豊胸術は教えてもらえないだろう。却下。
次、ナズーリン。
相談相手としては最高かもしれないが、ぶっちゃけお世辞にも大きいとは言えない。
それにあいつはそういうことは全く気にしなさそうだし、却下。
とすれば、やっぱり胸の大きい聖に寅丸、それと一輪か。
というわけで寅丸。
あいつ、確かに胸はでかい。早苗と並ぶか、もしくはちょっとだけ小さいか、それくらいの大きさ。
でも、あいつ、間違えて別の方法を教えそうだし。
なんというか、怖いから却下。
聖。
言うまでもなく巨乳。普通に早苗よりも大きい。一体何を食べたらそんなに大きくなるんだ。
絶対、食べ物まで何か秘訣があるだろう。そうに決まってる。
でも、なんというか、堅苦しそう。
質素な食事に、正座でお経。
そんな方法を取られそう。
特に後者はいつも適当に済ませたりしてるから、効果は無いのに変な理屈で無理矢理されそう。却下。
というわけで、
「やっぱり、一輪がいいかな……」
あいつなら、胸も大きいし。早苗ぐらいな大きさ、だと思う。
それに、何か手っ取り早そうな方法を知ってそうだ。
それこそ、一週間から一ヶ月ぐらいでないすばでーになれる方法を。
それにこういう相談は以外と他人には口出ししなさそうだし。
まさに今の私の相談相手にピッタリすぎる。
なにあいつ、救世主か、いや、メシアか。
そこ、意味が同じとか言わない。
とにかく、これは行くしかない。突撃するしかない。
今すぐに、さぁ行こう!
「というわけで一輪」
「いや、何がというわけでよ」
「んー、いやだからさ……」
改めて相談するとなると、やっぱり少し、恥ずかしい。内容が内容なだけに。
でも、ここは腹をくくるしかない。
私の体のために。未来のために。
一時の恥ぐらい、どうしたもんだ。
「だから早く言いなさいって」
「……絶対に誰にも言わないで」
「はいはい、わかってるわ」
「私にもプライドってやつがあるんだからね」
「わかってるわよって、小さい大妖怪さん」
「……っ!」
っく、このっ!
小さいとか言うな!
背の高さなら小傘よりかは大きいし!
全くもう!
「……胸」
「胸?」
「だ、だから、その……」
「ちゃんと言わなきゃわかんないわよ」
「……胸、一輪、大きい、私、小さい、不公平、何故」
「なにその片言」
「うっさい!いいから胸が大きくなる秘訣をとっとと教えなさい!」
「……胸、ねぇ」
少し考え始める一輪。
つい叫んじゃったけど、誰にも聞こえてないよね?一輪以外には聞こえてないよね?
なんて、少し心配。
まぁ、聞こえてたら聞こえてたでそいつを軽くぶちのめして記憶無くせばいいだけだけど。
……ごめん、聖だけは無理。お願い、聞いてないで。
「牛乳でも飲んだらいいんじゃない?一ヶ月ぐらい」
「は?牛乳?なんで」
「いっぱい飲めば大きくなるってよく言うじゃない」
「そうなの?」
ふむ、牛乳。
確かに、私は今まであまり飲んだことは無い。
大体は水で適当に済ませてるし、もしかしたらそれが原因なのかも。
「それに背も高くなるとか言うし」
「へー……って背は関係無いでしょ!?」
「うるさい。とにかく胸と背で一石二鳥なんだから牛乳飲みなさい牛乳。健康にもいいから一石三鳥かしら?」
でも、そう考えたら確かに魅力的かもしれない。
「ん、ありがと一輪」
「どういたしまして。ぶっちゃけ一ヶ月じゃ変わらないと思うけど」
「ん、なんか言った?」
「いえ、別に」
「……?まぁいいや、ちょっとでかけてくるね」
「はいはい、いってらっしゃい」
とりあえず牛乳を買い溜めするために里に行くことにする。
胸と背、両方をでかくして早苗を見返してやるんだから。
絶対、誰から見てもナイスバディーな新生ぬえ様に生まれ変わってやるんだから!
待ってなさいよ、早苗!!
「ねぇ一輪」
「なにかしら、ぬえ?」
なんだかんだで一ヶ月。
あれから毎日三食欠かさず牛乳を飲みつづけた。
最初は周りから珍しいものを見るような目で見られてたけど、それも無くなった辺り。
私の体に変化があったかと言えば。
「私、大きくなった?」
ぶっちゃけ変わってないわけで。
変わったと言えば、私のお財布が危なくなったことぐらい。
何が一ヶ月で魅惑のボディーだ。
貧相ぼでーのままじゃないか。
「大きくなった?なにがかしら?」
「だから、胸とか背とか。あれからずっと牛乳飲んでたんだけど、これっぽっちも変わってない気がして」
「あぁ、そのことね。やっぱり一ヶ月程度じゃ何も変わらないわね」
「はぁ!?」
こいつ、嘘付きやがった!?
せっかく私が恥を忍んで相談したってのに!?
「まぁ、妖怪だからってこともあるかもしれないわね」
「……どういうこと?」
「妖怪って人間ほど早くは成長しないじゃない?だから、牛乳いっぱい飲んでもあまり成長しないんじゃないかって」
「む……」
確かに、そうかもしれない。
妖怪は、十数年ぐらいじゃ外見はほとんど変化しないのが普通だし。
ちくしょう、こんなところで人間がうらやましいなんて思うとか。
さらに言えば、妖怪のくせに胸がでかいやつがうらやましい。
爆発しろ。早苗以外の胸がでかいやつ爆発しろ。手始めに目の前のちちりん爆発しろ。『乳輪』ってかくとなんか危ない。
……っていうか、
「じゃあなんで牛乳なんて勧めたのよ!?」
「特にこれといって方法も無かったからねぇ。じゃあなんとなく適当に言ってみただけ」
「適当に言うな!私は深刻なのよ!?」
「そんなこと言われてもね……なにかある、ムラサ?」
「は、ムラサ?」
一輪が急に私の後ろに目線を向けて問い掛ける。
バッと振り向いて見れば、そこにはいかにも何か面白そうな話してるねって思ってそうな船幽霊の顔が。
「え、な、なんであんたがここにいるのよ!?」
「いやぁ、暇だったから誰か話し相手でもいないかなぁ、って思って。そしたら一輪とぬえの声がしてね、なんか面白そうだし」
「私は今とっても重大な相談をしてるの、だからさっさとどっか行け」
「そんなこと言わないで、私もちゃんと考えるから」
「……変なこと言ったらぶっ飛ばすから」
あぁもう、こいつにも知られるなんて。
まぁでも、こいつでよかったかもしれない。一応、頼りになるし。
「というわけで、何か胸が大きくなる方法知ってるかしら、ムラサ?」
「大きくなる方法、ね……」
ちょっと考えて、すぐに思い付いたような顔をして。
でもなんだろう、すごく嫌な予感がする。
真面目な顔、というより悪戯を思い付いたような顔をしてるし。
「揉めば大きくなるんじゃない?」
「……は?」
「とりあえずちょっと揉んでみようよ、私が揉んであげゲフゥ」
馬鹿なことをしようとした船幽霊にしっかりと、丁寧に鵺式ハイキックを決める。
スカートの中は正体不明にしてるから大丈夫、見えない。
前にムラサに使ったら「し、白……」とかいう悲鳴が聞こえてすぐに正体不明にするという方法で対処した。
ちなみにその時は追い討ちかけて成仏寸前まで追い込んだところで聖にストップかけられた。
「あの馬鹿は放っておいて何かやっぱり無い?」
「そうねぇ……牛乳の代わりにミルクとか?」
「それはもう騙されないから」
「あの緑巫女のところに行けば?」
復活して戻ってきたムラサが提案を出す。
でも、あいつのところに行くって、
「あいつに聞けってこと?嫌だ、あいつには内緒にこっそりやって見返してやりたいし」
「いや、そうじゃなくて」
「……じゃあどういうこと?」
「あの緑巫女って、年齢のわりに胸すごく大きいじゃん?」
「確かに、星並か、それ以上にはあるわよね」
「だから、なんか秘策でもあるんじゃない?ほら、元は外の世界の人だし、こっちに持ち込んできた本とかにあるかもよ?」
「そういえばナズーリンが宝塔を手に入れに立ち寄った店にそういう本があったわね。外の世界からの流れ物だって行ってたわよ」
……なるほど。
確かに、あるかもしれない。
あいつ、明らかに何かやっただろっていうぐらいに胸、でかいし。
外の世界の何か特別な方法を使ったに違いない。
「つまり、こっそりあいつの部屋に潜入して方法を見つけ出せってことね」
「そういうこと。あるかどうかはわからないけどね」
「何もしないよりかはマシよ、ありがとう、ムラサ、一輪」
「まともな意見は出せなかったけど、どういたしまして」
「大きくなったら真っ先に私に揉ませグフゥ」
また馬鹿なことを言い出したムラサに次はボディブロー。
黙らせるにはこれが一番、ゆっくりと崩れ落ちる船幽霊を横に守矢神社に飛び立つ。
「来たはいいもの、ね……」
さて、どうやって侵入しようか。
早苗にバレないように、いないタイミングでこっそり入ればいいんだけど。
でも、中の様子がうまく見えなくて、いるのかどうかわからない。
とりあえず、玄関をちょっと開けてこっそり中の様子を伺ってみよう。
そう思って開けようと引き戸に手にかけた瞬間、ガララッて勝手に開いて。
えっ、えっ!?
って混乱して、前を見てみたら、
「……あら?」
「う、うわっ、さ、早苗!?」
早苗が現れた!どうする?
「どうしたのですか、ぬえ?」
「え、えと……あぅ……」
ぬえは混乱して動けない!
「……まぁ、私、今から買い物に出掛けなくちゃいけないのですが」
「あ、そ、そうなの?」
これはチャンスかもしれない。
「神奈子様は河童達のところへ行ってますし、諏訪子様は……そこら辺をうろちょろしてるのじゃないでしょうか」
おぉ。
家に誰もいないとは。
まさに絶好のチャンスじゃないか。これを逃さずにどうする。
「そうです、どうせなら一緒に行きませんか、ぬえ?」
「ん?あ、うーん……遠慮するわ」
早苗と買い物。
なにそれ、すっごい魅力的なんだけど。
行きたい。行きたい、けど。
でも、今は我慢しないといけない。
早苗を見返すためにも、ここは我慢しないと。
「そうですか……残念です」
「ま、まぁ、また今度、ね」
「ですね、今度、一緒に買い物に行きましょう」
「うん、それじゃ、またね」
「はい、また、です」
とりあえず早苗とさよならして守矢神社から飛び立つ。
買い物、一緒に行きたかったなぁ、なんてガラにもないこと思いながら。
「さて、早苗も行ったし」
少しだけ離れた位置に着地して、早苗が里に出掛けたのを確認してからまた神社の玄関前に降り立つ。
別れた後観察してたら、早苗は何か考えて、その後すぐに家の中にまた入っていって、数分後に出掛けた。
何か忘れ物でもしたのだろうか。
とにかく、中には誰もいないことを確認した。
これで大丈夫だ。
引き戸に手を掛けると、ガラガラと、あっさり開く。
前に早苗が、この神社は外の世界からきたものだから鍵とかいうやつがついてて、その神社の人以外は入れないようにできるって言っていた。
でも、この幻想郷に来てからはもう一度も使って無くて、常に開いしるままにしているらしい。
「全く、無用心なものよね。誰かが盗みにでも来たらどうするのよ」
まぁ、妖怪の山の山頂にまで盗みにくるようなやつは玄関に鍵とか掛けても無理矢理ぶっ壊して入りそうだけど。
とりあえず早苗の部屋に向かう。
前に無理矢理連れて来られたりがあったから場所は覚えている。
場所は二階にあって、ドアには可愛らしい文字で「早苗」なんていう看板が掛けてある。
カチャって開ければ、女の子らしい、かわいらしくデザインされた部屋。
綺麗に整頓されてるところは早苗らしい。
外の世界の生き物なのだろうか、黄色くてギザギザした尻尾のネズミ?、青い楕円に頭がちょっと尖んがってて丸に点というシンプルな目に横に大きく開いた口をした生き物、赤い帽子に立派な鼻と髭のあるおっさん、目や耳が垂れてる犬?のようなもの、などの色んなぬいぐるみもある。
やっぱり、こういうところを見るとなんだかんだで女の子なんだなぁ、と思う。
世紀末、核の炎に包まれた頃に出てきそうな灰銀色の肩まであるロングヘアに口や顎に髭のあるいかつい男のポスターは見なかったことにしよう。
まぁ、そんな、女の子らしいようなでも一部ズレてるような部屋。
でも、一番思うのは、
「……早苗の匂いがする」
あの、抱きしめられたときにいつもするような心地好い香り。
そんな香りが、部屋に入った瞬間からする。
ふと見ると、ベッドが置いてあって。
誘われるがままにぽすって倒れれば、その香りがより一層強くなったような気がして。
まるで、早苗に包まれたかのように、すごく心地好い。
このまま寝てしまうのもいいかも。
そう思って、ゆっくり目を閉じたところで―――
「いやいやいやいや待て待て待て!!!!」
ガバッて一気に覚醒する。
全く、危ない。
危うくぐっすり眠って早苗に見つかるところだった。
まさかこんな罠が待ち受けていたとは、早苗、恐るべし。
しかし、そこは大妖怪のぬえ様。
そんな罠に陥れるなんて早い早い、ちょっと危なかったけどこの程度、どうということはない。
ちょっともったないないかなぁなんて思ってない。決して。断じて。
でも、今度こっそり眠ってみるのもいいかも、なんてことは思う。
大妖怪にも休息は必要なのだ。仕方ないことさ。
横を見てみると、木造の入れ物、いわばタンスが置いてあって。
じーっ、と見る。
「……いや、さすがにまずいから」
そう、まずい。
ここでタンスを漁ったりなんか、さすがにやばい。
私、変態じゃないから。
そんな、人の着るようなものを漁るほど堕ちてないから。ムラサじゃないんだし。
……あいつ、たまにだけど私の下着を盗もうとしてくるのなんとかならないかな。
何度撃退しても懲りずにやってくるし。
いっそのこと成仏させるべきか。
いやでも聖達から大目玉喰らうだろうし。
なにこれ、私詰んでね?
いやそれは置いといて。
「……」
気付いたら誘われるようにタンスの前にいたけど。
……うん、やめようか。
第一、私は早苗の巨乳の秘密を調べにきただけだから。
だから、このタンスは関係ないんだから。
そんなブラジャーとか……ブラジャー?
「……調べる、だけ、だから」
そうさ、うん、調べるだけ。
これは早苗の巨乳の秘密を調べるだけだから。
やましいことは考えてない、一切、決して。
そうさ、そのとおり。これは正義のため。なんの正義かはわからないけど。私は私の正義を貫くだけ。
ほら、早苗の持ってるげーむってやつで、数々の悪行をしてる人を橋の上で斬って川に落としたり、砂漠で流砂に流されるのをゴミを見るような目で見殺しにしたりっていう場面があったじゃないか。
正義には色んな正義があるんだ。
ガララッ
「……ってなんだ、服じゃないのよ」
よかった、私はまだ変態への道には入っていない。
人のタンスを開けたぐらいじゃ大丈夫、うん。服ならセーフ。
……それにしても、いつもの巫女服が多いけれど、なんだかオシャレな服も多くて。
そこはさすが、外の世界の人間なんだなぁ、と改めて思う。
……私がこんな明るい色でフリフリの服を着たら早苗、どう思うんだろうなぁ、なんて思う。
かわいい、とか言ってくれるかな。いやでも、普段の私とは全然イメージが違うし、似合わないとか言われるだろうか。確かに、私にはガラじゃない色だし。
……一つだけ取り出してみる。そして、恐らく自分の身嗜みを整えるために立て掛けてあるだろう、縦長の鏡を使ってちょっとだけ私に合わせてみる。
とはいっても、早苗とは全然身長が違うし、合うわけが……
「ってあれ?」
すっごいピッタリそう。
まだ実際には着てないからわからないけれど、でも私の身長にピッタリのこの服。
え、あれ、私、早苗とは頭一つぶんぐらいの身長差があるよ、おかしいよ。
「……まさか」
これ、もしかして、私のために早苗が用意したやつ?
そうとしか考えられない。
だって、早苗が昔着てた服だとしたら、こんなタンスなんかに入れないでどこか他の場所に保存するか捨てるかだろう。
それが、こんなに丁寧に、しかも同じところに収納されてる他の服も見てみたら、どれも私にピッタリな服ばかりで。
さらに、なにやら早苗の手作りそうな服まで出てきて。
ていうか早苗裁縫うまい。これ、着てみたら私にピッタリすぎるんだけど。
スリーサイズとかどこで調べた。まさかあのベタベタ触ってくるあれで知ったのか。恐るべし、奇跡の手。
「………」
ピシャッ
見なかったことにして丁寧に閉まった。
別の場所を開けてみたら、次はまた何着かある巫女服にオシャレな服。
ちょっと合わせてみたら、うん、今度のは大きい。早苗用のものだ。
こっちはこっちで、早苗に似合いそうな服がいっぱいあって。
……見て、みたいなぁ、こんな服を着た早苗。
お願いしてみれば、見せてくれるかなぁ、いやでもそれはいやでも。
とりあえず今度考えるということで閉める。
……そして次。
さっきまでとは小さい。明らかに下着類を入れるだろうな場所。
……いや、やっぱり服だけでいいや、十分堪能した。
でもやっぱり興味はあって。いや無い。断じて無い。そんな興味。私はムラサじゃない。ムラサとは違うんです。
……そうさ、早苗の胸の大きさを間接的に確認するため。ただそれだけだ。
うん、そう、さっき言った正義を貫き通すだけだ。
君は手を汚す道を選ぶというのか。
選ぶんじゃねぇ、もう選んだんだよ。
そう、そのとおりだ。行くしかない。選んだのなら。
もう後には引けない。
ガララッ
……そこには丁寧に畳まれた、下着。
上に付けるものも、下に付けるものも、綺麗に揃ってる。
一つ、上のほうを手に取る、そして開いてみる。
「……大きいなぁ」
私に合わせてみたら、そこには大きい隙間が開いていて。
ちくしょう、早苗はこれがピッタリなのか、妬ましい、ちくしょう。
でも、早苗のをこうして自分に付けてたら、なんだか変な感じに……
「いやなってない、なってないから」
私は万年発情期じゃない、ムラサとは違う。
急いで畳む。
そして元の置いた場所に置いて、目に映るもうひとつの下着のほう。
「………」
取っちゃいなよ!もう、自分の欲望に素直になれよ!
いえ、いけません!自我を保って、丁寧に取るべきです!
なんて、脳内で天使と悪魔が口論をしているように感じる。
っていうかあれ?こいつら同じこと言ってね?
「………」
一つだけ、一つだけ手に取ってみる。
ちょっと薄い緑色のかかったもの。
触ってみると、手触りがいいすべすべして。
早苗、いつもこんなの履いてるんだなぁ、なんて思って、ちょっとだけ内側の前に接してるところの匂いを嗅ごうとしたところで我に返ってすぐさま閉まう。
私は一体何を考えてるんだ、と頭をブンブン振るう。
掃え、煩悩を掃え、忘れろ、今やったことは全て忘れろ。そうさ、悪い怨霊が乗り移っただけで私は悪くない。決して悪くない。
……とりあえず、早苗の下着は基本的に薄い色中心、特に薄い緑色が多いということを把握。
他の色はピンクや青などなど。中には大人っぽい黒や赤もあった。以上。
とにかく、一旦落ち着いて。
そして周りを見渡してみれば、目に止まるものが。
それは、机よりも上、少し高い位置の壁に大事そうに立て掛けてある写真。
近付いて見てみれば、それは最初に出会ったときに無理矢理連れて来られて撮られた写真。
私に思いっ切り腕を回して満面の笑みでピースしてる早苗と、対称的に無理矢理な愛想笑いで頬がピクピクひくついてそうな私。
私にとってはあまり良いとは思えない、でも私にとっても大切な写真。
それがこう大事そうに保管されてたら、なんだか嬉しくなってくる。
それにしても、あの時は本当に大変だったなぁ、と思う。
私がエイリアンじゃない、と説得するのにどれだけ時間がかかったことか。
幸いにも諏訪子が鵺を知っていて、早苗に説明したおかげでなんとか誤解は解けたけど。
そしたらそしたらで次は大昔の妖怪、ということで昔の頃の話を無理矢理話させられたり。
あの時の、私が話す度に輝く目は見てて面白かったなぁ、なんて思う。
そりゃ、外から来た人にはまず聞けない、大昔の生の実体験の話なんだし。
そして次は正体不明に興味を示してきて。
好奇心旺盛な早苗はなんでもかんでも楽しそうなら食いつくようで。
私が適当に流そうていたら、いつかあなたの正体不明を全て明かして見せます!!なんて宣言してきて。
そこからだったかな、早苗がよく私に纏わり付いてきたのは。
あの時、私は勝手にすれば、なんて。そんな簡単に私の正体不明を明かされてたまるか、なんて溜め息つきながら返したけど。
でも、私の正体不明を真っ正面から説き明かそうとする、そんな純粋な気持ちに、私は内心では嬉しかった。
この私を、忌み嫌われて地底に封じ込められた私を、こうして友達らしく付き合ってくれたところが。今では友達という枠を大きく超えてるけど。
私の中で、自分でも気付かなかった寂しさが、一気に掃われたような感じがして。
そしてなんだかんだで、今、こうしていて。
あの時は、外側からだけを見たら確かにあまり良い思い出、とは言えないだろうけど。
でも、あの出来事があったから、内側ではすごく大きなことが起こったから、今、こうしていられるわけで。
早苗のおかげで幻想郷の知り合いも増えたところもあるし。
なんだかんだで、あの時に早苗と知り合ってよかった、そう、心から思える。
ガララッ
なんて音が下から聞こえる。
思い出に浸ってるうちに早苗が帰ってきたようで。
急いで写真を元に戻して、窓から外に出る。
大丈夫、バレては無い、きっと大丈夫。
結局、本題には入れなかったけれど。
でも、胸のこととか、なんだかもうどうでもいい。そんな気持ちになった。
早苗とずっと楽しんでいられるなら別にいっか、なんて。
あぁでもやっぱり、少し勿体なかったかな。
まぁ、また今度、また侵入して、そのときに探せばいっか。
そのときはついでに何か悪戯を仕掛けて驚かすのもいいかも、ね。
結局大きくする方法はどうでもよくなったのかな。まあ自分になくても早苗さんの胸を自由にできるんだからいいじゃない。
今度は色々な服に着せ替えられるぬえちゃんが見られるんですね!
早苗さんは実は可愛い服を着たいのに胸が大きくて似合わないからぬえちゃんにコンプレックスがあるとか思ってみたり。
あと小傘ちゃん意外とナイスなボディなのか……
ナイスおっぱい枕。
願わくばぬえちゃんに、お寺のみんなで乳枕してあげんことを
なんかしっくりこないなーと思っていましたが、あとがきで十分にまとめられておりましたが
私的にはあとがきの文のビデオ撮影のシーンを本文に入れてほしかったです
あと最後の鵺の回想シーンがもう少し改行していただくと読みやすい気がします。
しかしながら内容はさなぬえが妬ましいほどちゅちゅしており貧乳になやむ鵺がかわいかったです。
しかし好きな人の部屋に入ったらそりゃ誘惑だらけだよね~
胸枕やってほしい いや膝枕でもやってくれる彼女がほしい!
やはり本文に入れたほうがよかったですか……!
本文に入れようか後書きに入れようか悩んだのですが、個人的に本文だとなんだかスッキリしないなぁと思いまして後書きにしたのですが……はい、すみませんでした!
冷静に見れば確かに本文に入れたほうがいいような気がしてきました……!
そして改行、確かに一纏まりが長いですね……!なんとか修正します!
>>1様
早苗さんの胸をいじれるのならぬえちゃん満足ですよね!そしてその代償に着せ替えぬえちゃん。
そして着せてるうちにそのコンプレックスが大きくなって胸をいじり始めたらいいと思います!
小傘ちゃんはないすばでー。異論は少しは認める。
>>2様
その場面を見た早苗さんがぬえちゃんにさらにすごいことを(ry
>>3様
さなぬえはいつもこんな感じにちゅっちゅしてたらいいと思います。
きっとある意味地獄ですよね!好きな人の部屋は!でも早苗さんがぬえちゃんの部屋に入ったら堂々と漁ってぬえちゃん全力で止めたらいいと思います。
もちろん早苗さんは好きな人の部屋に入った混乱で漁ってます。
もっと長くても良かった。