「あ゙ー、お賽銭が欲しい」
そんなわけで今日もこの堕落巫女は、さんさんと降り注ぐお日様の光の下お賽銭箱の上でふて寝してるのでした、まる
「ちょっと文!」
「はーいなんでしょう霊夢さん」
「冒頭からさらりとなにを手帳に書いてるのよ!」
「なにって新聞のネタですが」
「ねつ造よくない」
博麗神社の和室。
霊夢がのんびり昼飯のそうめんをすすっていると、いきなりやってきた鴉天狗が、ありもしないことを堂々と手帳に書き始めたのであった。
「霊夢さんがネタにもならない振る舞いをしているので、どうにもネタがないんですよね」
「私しかネタ元がいないのか」
「まぁ我が文々。新聞の名は、博麗霊夢専属新聞として世にとどろいていますから」
「何そのとどろき方!?本人未承認のままそんな名称をとどろかせないでよ!」
「というわけで我が博麗霊夢専属新聞は、霊夢さんが何かしでかさないと売るどころか発行すらできないのです、うるうる」
「うるうるするな」
「うるうる」
「今日はなにもしないし、しでかしもしないわよ」
「じゃあやらかしてください」
「やらかしもしない!」
いつもいつもこの天狗は……。
あぁ、のんびりそうめんを食べることのできる夏のお昼がほしい。
「じゃあ仕方ないですね……」
ぽつんと文がつぶやいた。
う……とてつもなく嫌な予感がする。
…………。
……あれ?冷や汗をかきながらそうめん食べてたけど、いつの間にか文がいない。
仕方ないって、あきらめたってこと?まさか……
「はーい!文々。はろーわーく、でっす!」
そんなわけはなかった。
「……はぁ、今度は何を……ってぇ!?」
ため息をつきながら文の方を見上げると、なんと文の服装が変わっていた。
なにやら黒い服、ズボンを身にまとっている。
「あんたそれ……」
「ふふん、驚きました?これぞ天狗の第53番目の秘術、早着替えの」
「暑くないの?黒は熱こもるわよ?」
「がく。そっちですか……。大丈夫ですよ、熱がこもった黒にはなれてますから、羽で……」
「ああ、そういえば鴉だったわね、文」
「そういえばってなんですか!?」
アピールするかのように黒羽をパタパタさせてツッコんでくる文。
正直文が鴉だろうと鳩だろうとペリカンだろうと、私にとってはどうでもいい話なんだけど。
「それで?今度は何をしでかすっていうの?」
「やだなぁ、しでかすのは私じゃなくて霊夢さんの役目ですよ」
「しでかさないって言ってるでしょうに」
「まぁまぁ落ち着いてください」
「なんで宥められてるの私……」
「それで何かと言いますとですね、お賽銭を稼ぐいい方法を」
本能が何かを叫んだ。
「……ま、まーた、そんな適当なこと言って」
「霊夢さん霊夢さん、そんなに左手をぴくぴくさせたらそうめんつゆがこぼれちゃいますよ」
くっ、利き手じゃない左手までも完全に理性で抑え込むのは不可能だったか……
「ぐぅ、まぁいいわ、話してみなさいよ」
「まぁ、何かと言いますと、単なる提案です」
「……はぁ」
「霊夢さんはこれを採用してもしなくてもいい」
「はぁ」
「人里警備を行うとかどうでしょう?」
「はぁ」
「ほら、この神社って人里じゃあ妖怪神社だなんだと有名じゃないですか」
「はぁ」
「そこで、霊夢さんがパトロールを行うことによってですね」
「はぁ」
「霊夢さんさっきからはぁしか言ってないじゃないですか」
「はぁ」
「こらっ」
「ばれたか」
むぅ、怒られた。
紫め……なにが『こういう相手には「はぁ」さえ言っとけばいい』よ。
やってみたけど全然ダメじゃないの。
にゅっ
「あら、私は嘘は言ってないわよ?」
「ちょうわっ、紫さん!?」
「そのかわり本当のことも言わないでしょ」
いきなりテーブルから首だけ出す紫。
相変わらずのホラー演出だが、慣れてしまえばただの曲芸である。
ていうか口にしてもいない言葉に普通に返答しないでほしい。
「な、何しに来たんですか?」
文……あんた何年幻想郷にいるのよ……いい加減慣れなさいっての。
「いえー?あなたがうちの霊夢をたぶらかしてるらしいから様子を見に来たのよ」
「私は八雲家所属じゃないわよ」
「たぶらかしちゃいませんよ。篭絡しているだけです」
「おい」
たぶらかすのと何が違うというんだ。いや微妙に違うけどさ。
「あぁ、篭絡するだけならいいわ」
「いいの!?」
「では、遠慮なく」
「当事者完全無視で進むのね……」
「じゃ、霊夢、頑張って篭絡されてね~(にゅっ」
「篭絡って頑張ってされるものじゃないでしょうに」
紫はあっさりと帰って行った。
一体何をしに来たんだろう……
「それじゃあまぁ親御さんの許しも出たことですし」
「誰が親御か」
「さっそく今夜からパトロールしましょうよ」
何でここまで執拗に勧めてくるのか……
「……それで私に何のメリットがあるって言うのよ」
「あやや?気が乗りませんか?」
「それでお賽銭が入るって確証もないでしょうに」
「そうですか?半年も続ければ、来年の正月にはわりとお賽銭も入ると思うんですけど」
「そもそもここまで来ないでしょう、里の人間は」
「うーん、そうですかねぇ」
「そうよ。あんたが人里からここまでの道を安全にしてくれるって言うなら来るかもしれないけど」
「やですよ、そんなめんどくさい」
こいつは……。
結局、単にネタがほしいだけなのはわかっているから、そう簡単に篭絡されはしない!
「じゃあこうしましょう」
「今度は何よ」
「ほら、あの山の巫女がやったように、博麗も人里に分社を設置して……」
「分社ならあるわよ」
「え?」
「だから、人里にもう分社はあるって言ってるの」
「ええ!?そうだったんですか!?」
こいつ、本当に何年幻想郷にいるんだろう。
しかもブン屋がそれでいいのか?
「はー。そんな話は聞いたこともありませんでした」
「そんなわけはないでしょうに。けっこう目立つところにあるはずよ」
「そんなはずは……どこにあるんです?」
「えーとどこだっけ、ちょっと待って……」
戸棚の奥から古書を引っ張り出す。
「なんですか?それ」
「うちの歴史書みたいなもん?」
「あぁ、ありましたね、そんなものも」
「これは知ってるのね」
「そりゃあここにきて長いですから」
「だからなんでそれで分社を知らないのよ……ほら、あった」
「どれどれ……?」
ちゃんとここに、人里のど真ん中に分社建立的なことが書いてある。
「あぁ……この分社ですか」
「なんだ、知ってるんじゃない」
「これ、今の人里にはありませんよ」
なん……だと……?
「え、ちょっと文さん、どういうこと?」
「今の人里って1000年前から今の位置にあったわけじゃないんでね」
「じゃ、じゃあこの分社の位置は今でいうどこ?」
「大結界の外側ですね」
「まじで!?」
なんということでしょう。
うちの分社は大結界によって見事に幻想郷から隔離されたようです。
「ここが大結界の外側になったのにはいろいろ理由があるんですけど、あんまり詳しくは覚えてないです」
「後で紫でも問い詰めれば喋ってくれるかしら」
「はぐらかされて終わりでしょうね」
「むぅ……じゃあなに?新しく人里に分社を作るってこと?」
「まぁ、あくまで提案ですが」
「メリットは何よ」
「損得でしか動けないんですかあなたは」
「面倒って言うデメリットが大きすぎるもの」
「もう、これだから霊夢は。いいですか、先代巫女の頃は……あぁ、似たようなものでした」
博麗の伝統はそう簡単に途絶えないらしい。
存続していい伝統なのかは知らないが。
「じゃあメリットを言いましょう。まず人里の人間がここまで来ずとも参拝できるようになります」
「はい」
「その分社に賽銭箱を設置してみます」
「はい」
「お賽銭が入るじゃないですか!」
「よし、建てましょう」
「決断はやっ!?躊躇とかないんですか!?」
「なによ、篭絡してきたのはあんたじゃない」
「いやそうですけど!」
何でここでツッコんでくるんだろう。
文は相変わらず態度がはっきりしない。
篭絡したいのかしたくないのか……。
「じゃ、建立の方、よろしくね」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「え?」
「何で私が建てることになってるんですか!」
「そりゃあ篭絡してきたのがあんただからよ」
「理由になってない!」
「なってるなってる」
「ここは霊夢さんが建てる流れでしょう!巫女だし!」
「巫女は土木作業なんてしませんしできません」
そりゃあお賽銭は欲しいけど、そもそも建てれないんじゃしょうがないわよね。
はいはい、この話は終わりっと。
……ん?
「……ねぇ文」
「なんでしょう?」
「分社を建てることとパトロールに何の関係があるの?」
「あぁ、お賽銭の回収がてらパトロールをと思っていたんですが……」
「それパトロールやる必要なくない?」
「いやいや、パトロールをすることによって、人里の人間たちが霊夢さんに感謝するわけですよ」
「……そう?」
「もちろん!で、お賽銭も増えると」
「そう簡単にいくものかしらねぇ」
「……まぁ、分社が建てれないんじゃあ、結局意味もないですがね」
まぁ、そうよね。
萃香でも雇えばさっさと建つんでしょうけど、人里でそれやったらますます妖怪神社だし。
あーあ、せっかくお賽銭が増えそうな話だったのになー
にゅっ
「霊夢ー?建ててきたわよ~♪」
……このスキマは……
「私の許可なしで勝手に建てるなって!」
「あいたっ!」
「まったくもう……」
「霊夢のためを思ってせっかく建ててきてあげたのに、この扱いはひどいと思うわ」
「だーかーらー、妖怪のあんたが建てちゃあ結局うちは妖怪神社でしょうが!」
「あらあら、霊夢が妖怪神社扱いを嫌ってるなんて意外ね」
「うちの賽銭が少ないのは妖怪神社扱いされてるからでしょうが。お賽銭が少なくなる要因はみんな嫌いよ」
「うふふ、じゃあここの妖怪みんな退治してみる?」
「えっ私もですか!?」
「出来たらやってるわよ、まったく……」
ああもう、どうしてこう厄介な奴らばかり寄ってくるのだろうか……泣きたい。
とはいえできてしまったものを放置するわけにもいかないので、人里の分社を見に行くことにした。
「で、これがその分社というわけですか……」
人里のはずれ、田んぼの隅っこに小ぢんまりと、命蓮寺ほどの大きさの分社が建っていた。
「って!全然小ぢんまりしてないじゃないの!」
「いやぁ、大きくないと人里の人間にも注目してもらえないじゃない?第一印象って大事よ?」
「第一印象ゴツすぎるでしょうが!」
「あいたっ!」
「まぁまぁ、でも注目はされているみたいですよ?」
「これで注目されなかったらそれこそおかしいでしょうが……」
やはりというか、そのでっかい分社の前にはがやがやと人が集まっている。
「ていうか、なんでわざわざ里のはずれに造ったのよ。人里ど真ん中じゃだめだったの?」
「こんなの建てれる土地がないわよ」
「ですよね」
「いや、そもそもこのサイズにする必要なかったでしょうに!」
「ところで紫さん、あの屋上にある設備はなんですか?プリズムリバーのライブステージにも似ているように見えますが……」
「あぁ、あそこで霊夢に舞でも踊ってもらえばお賽銭も増えるんじゃないかなぁと」
「『夢想封印』!!!!」
分社は10分の1スケールに小さくなりましたとさ。
そんなわけで今日もこの堕落巫女は、さんさんと降り注ぐお日様の光の下お賽銭箱の上でふて寝してるのでした、まる
「ちょっと文!」
「はーいなんでしょう霊夢さん」
「冒頭からさらりとなにを手帳に書いてるのよ!」
「なにって新聞のネタですが」
「ねつ造よくない」
博麗神社の和室。
霊夢がのんびり昼飯のそうめんをすすっていると、いきなりやってきた鴉天狗が、ありもしないことを堂々と手帳に書き始めたのであった。
「霊夢さんがネタにもならない振る舞いをしているので、どうにもネタがないんですよね」
「私しかネタ元がいないのか」
「まぁ我が文々。新聞の名は、博麗霊夢専属新聞として世にとどろいていますから」
「何そのとどろき方!?本人未承認のままそんな名称をとどろかせないでよ!」
「というわけで我が博麗霊夢専属新聞は、霊夢さんが何かしでかさないと売るどころか発行すらできないのです、うるうる」
「うるうるするな」
「うるうる」
「今日はなにもしないし、しでかしもしないわよ」
「じゃあやらかしてください」
「やらかしもしない!」
いつもいつもこの天狗は……。
あぁ、のんびりそうめんを食べることのできる夏のお昼がほしい。
「じゃあ仕方ないですね……」
ぽつんと文がつぶやいた。
う……とてつもなく嫌な予感がする。
…………。
……あれ?冷や汗をかきながらそうめん食べてたけど、いつの間にか文がいない。
仕方ないって、あきらめたってこと?まさか……
「はーい!文々。はろーわーく、でっす!」
そんなわけはなかった。
「……はぁ、今度は何を……ってぇ!?」
ため息をつきながら文の方を見上げると、なんと文の服装が変わっていた。
なにやら黒い服、ズボンを身にまとっている。
「あんたそれ……」
「ふふん、驚きました?これぞ天狗の第53番目の秘術、早着替えの」
「暑くないの?黒は熱こもるわよ?」
「がく。そっちですか……。大丈夫ですよ、熱がこもった黒にはなれてますから、羽で……」
「ああ、そういえば鴉だったわね、文」
「そういえばってなんですか!?」
アピールするかのように黒羽をパタパタさせてツッコんでくる文。
正直文が鴉だろうと鳩だろうとペリカンだろうと、私にとってはどうでもいい話なんだけど。
「それで?今度は何をしでかすっていうの?」
「やだなぁ、しでかすのは私じゃなくて霊夢さんの役目ですよ」
「しでかさないって言ってるでしょうに」
「まぁまぁ落ち着いてください」
「なんで宥められてるの私……」
「それで何かと言いますとですね、お賽銭を稼ぐいい方法を」
本能が何かを叫んだ。
「……ま、まーた、そんな適当なこと言って」
「霊夢さん霊夢さん、そんなに左手をぴくぴくさせたらそうめんつゆがこぼれちゃいますよ」
くっ、利き手じゃない左手までも完全に理性で抑え込むのは不可能だったか……
「ぐぅ、まぁいいわ、話してみなさいよ」
「まぁ、何かと言いますと、単なる提案です」
「……はぁ」
「霊夢さんはこれを採用してもしなくてもいい」
「はぁ」
「人里警備を行うとかどうでしょう?」
「はぁ」
「ほら、この神社って人里じゃあ妖怪神社だなんだと有名じゃないですか」
「はぁ」
「そこで、霊夢さんがパトロールを行うことによってですね」
「はぁ」
「霊夢さんさっきからはぁしか言ってないじゃないですか」
「はぁ」
「こらっ」
「ばれたか」
むぅ、怒られた。
紫め……なにが『こういう相手には「はぁ」さえ言っとけばいい』よ。
やってみたけど全然ダメじゃないの。
にゅっ
「あら、私は嘘は言ってないわよ?」
「ちょうわっ、紫さん!?」
「そのかわり本当のことも言わないでしょ」
いきなりテーブルから首だけ出す紫。
相変わらずのホラー演出だが、慣れてしまえばただの曲芸である。
ていうか口にしてもいない言葉に普通に返答しないでほしい。
「な、何しに来たんですか?」
文……あんた何年幻想郷にいるのよ……いい加減慣れなさいっての。
「いえー?あなたがうちの霊夢をたぶらかしてるらしいから様子を見に来たのよ」
「私は八雲家所属じゃないわよ」
「たぶらかしちゃいませんよ。篭絡しているだけです」
「おい」
たぶらかすのと何が違うというんだ。いや微妙に違うけどさ。
「あぁ、篭絡するだけならいいわ」
「いいの!?」
「では、遠慮なく」
「当事者完全無視で進むのね……」
「じゃ、霊夢、頑張って篭絡されてね~(にゅっ」
「篭絡って頑張ってされるものじゃないでしょうに」
紫はあっさりと帰って行った。
一体何をしに来たんだろう……
「それじゃあまぁ親御さんの許しも出たことですし」
「誰が親御か」
「さっそく今夜からパトロールしましょうよ」
何でここまで執拗に勧めてくるのか……
「……それで私に何のメリットがあるって言うのよ」
「あやや?気が乗りませんか?」
「それでお賽銭が入るって確証もないでしょうに」
「そうですか?半年も続ければ、来年の正月にはわりとお賽銭も入ると思うんですけど」
「そもそもここまで来ないでしょう、里の人間は」
「うーん、そうですかねぇ」
「そうよ。あんたが人里からここまでの道を安全にしてくれるって言うなら来るかもしれないけど」
「やですよ、そんなめんどくさい」
こいつは……。
結局、単にネタがほしいだけなのはわかっているから、そう簡単に篭絡されはしない!
「じゃあこうしましょう」
「今度は何よ」
「ほら、あの山の巫女がやったように、博麗も人里に分社を設置して……」
「分社ならあるわよ」
「え?」
「だから、人里にもう分社はあるって言ってるの」
「ええ!?そうだったんですか!?」
こいつ、本当に何年幻想郷にいるんだろう。
しかもブン屋がそれでいいのか?
「はー。そんな話は聞いたこともありませんでした」
「そんなわけはないでしょうに。けっこう目立つところにあるはずよ」
「そんなはずは……どこにあるんです?」
「えーとどこだっけ、ちょっと待って……」
戸棚の奥から古書を引っ張り出す。
「なんですか?それ」
「うちの歴史書みたいなもん?」
「あぁ、ありましたね、そんなものも」
「これは知ってるのね」
「そりゃあここにきて長いですから」
「だからなんでそれで分社を知らないのよ……ほら、あった」
「どれどれ……?」
ちゃんとここに、人里のど真ん中に分社建立的なことが書いてある。
「あぁ……この分社ですか」
「なんだ、知ってるんじゃない」
「これ、今の人里にはありませんよ」
なん……だと……?
「え、ちょっと文さん、どういうこと?」
「今の人里って1000年前から今の位置にあったわけじゃないんでね」
「じゃ、じゃあこの分社の位置は今でいうどこ?」
「大結界の外側ですね」
「まじで!?」
なんということでしょう。
うちの分社は大結界によって見事に幻想郷から隔離されたようです。
「ここが大結界の外側になったのにはいろいろ理由があるんですけど、あんまり詳しくは覚えてないです」
「後で紫でも問い詰めれば喋ってくれるかしら」
「はぐらかされて終わりでしょうね」
「むぅ……じゃあなに?新しく人里に分社を作るってこと?」
「まぁ、あくまで提案ですが」
「メリットは何よ」
「損得でしか動けないんですかあなたは」
「面倒って言うデメリットが大きすぎるもの」
「もう、これだから霊夢は。いいですか、先代巫女の頃は……あぁ、似たようなものでした」
博麗の伝統はそう簡単に途絶えないらしい。
存続していい伝統なのかは知らないが。
「じゃあメリットを言いましょう。まず人里の人間がここまで来ずとも参拝できるようになります」
「はい」
「その分社に賽銭箱を設置してみます」
「はい」
「お賽銭が入るじゃないですか!」
「よし、建てましょう」
「決断はやっ!?躊躇とかないんですか!?」
「なによ、篭絡してきたのはあんたじゃない」
「いやそうですけど!」
何でここでツッコんでくるんだろう。
文は相変わらず態度がはっきりしない。
篭絡したいのかしたくないのか……。
「じゃ、建立の方、よろしくね」
「ちょ、ちょっと待ってください!」
「え?」
「何で私が建てることになってるんですか!」
「そりゃあ篭絡してきたのがあんただからよ」
「理由になってない!」
「なってるなってる」
「ここは霊夢さんが建てる流れでしょう!巫女だし!」
「巫女は土木作業なんてしませんしできません」
そりゃあお賽銭は欲しいけど、そもそも建てれないんじゃしょうがないわよね。
はいはい、この話は終わりっと。
……ん?
「……ねぇ文」
「なんでしょう?」
「分社を建てることとパトロールに何の関係があるの?」
「あぁ、お賽銭の回収がてらパトロールをと思っていたんですが……」
「それパトロールやる必要なくない?」
「いやいや、パトロールをすることによって、人里の人間たちが霊夢さんに感謝するわけですよ」
「……そう?」
「もちろん!で、お賽銭も増えると」
「そう簡単にいくものかしらねぇ」
「……まぁ、分社が建てれないんじゃあ、結局意味もないですがね」
まぁ、そうよね。
萃香でも雇えばさっさと建つんでしょうけど、人里でそれやったらますます妖怪神社だし。
あーあ、せっかくお賽銭が増えそうな話だったのになー
にゅっ
「霊夢ー?建ててきたわよ~♪」
……このスキマは……
「私の許可なしで勝手に建てるなって!」
「あいたっ!」
「まったくもう……」
「霊夢のためを思ってせっかく建ててきてあげたのに、この扱いはひどいと思うわ」
「だーかーらー、妖怪のあんたが建てちゃあ結局うちは妖怪神社でしょうが!」
「あらあら、霊夢が妖怪神社扱いを嫌ってるなんて意外ね」
「うちの賽銭が少ないのは妖怪神社扱いされてるからでしょうが。お賽銭が少なくなる要因はみんな嫌いよ」
「うふふ、じゃあここの妖怪みんな退治してみる?」
「えっ私もですか!?」
「出来たらやってるわよ、まったく……」
ああもう、どうしてこう厄介な奴らばかり寄ってくるのだろうか……泣きたい。
とはいえできてしまったものを放置するわけにもいかないので、人里の分社を見に行くことにした。
「で、これがその分社というわけですか……」
人里のはずれ、田んぼの隅っこに小ぢんまりと、命蓮寺ほどの大きさの分社が建っていた。
「って!全然小ぢんまりしてないじゃないの!」
「いやぁ、大きくないと人里の人間にも注目してもらえないじゃない?第一印象って大事よ?」
「第一印象ゴツすぎるでしょうが!」
「あいたっ!」
「まぁまぁ、でも注目はされているみたいですよ?」
「これで注目されなかったらそれこそおかしいでしょうが……」
やはりというか、そのでっかい分社の前にはがやがやと人が集まっている。
「ていうか、なんでわざわざ里のはずれに造ったのよ。人里ど真ん中じゃだめだったの?」
「こんなの建てれる土地がないわよ」
「ですよね」
「いや、そもそもこのサイズにする必要なかったでしょうに!」
「ところで紫さん、あの屋上にある設備はなんですか?プリズムリバーのライブステージにも似ているように見えますが……」
「あぁ、あそこで霊夢に舞でも踊ってもらえばお賽銭も増えるんじゃないかなぁと」
「『夢想封印』!!!!」
分社は10分の1スケールに小さくなりましたとさ。