「此処…何処よ…」
チラリと右を確認、竹
チラリと左を確認、竹
思い切って後ろを確認、竹
「何処も彼処も竹、竹、竹…」
青々と茂る竹林の中でブツブツとボヤク彼女──水橋パルスィ──はウンザリしていた。
「ったく…何で私が薬を取ってこなきゃならないのよ…」
パルスィが竹林に居るのには理由があった…
──昨日、地霊殿にて──
「パルスィ、お薬を貰ってきてはくれませんか?」
「は?」
桃色の髪が印象的な少女──古明地さとり──の言葉に対してパルスィは疑問符を浮かべた。
「薬?アンタ…は元気そうだから必要じゃなさそうね」
「えぇ…、薬が必要なのはこの子なんです」
そう言いさとりはパルスィが来た時からソファで蹲っていた猫を一撫でする。
「その猫?」
「はい…彼、最近調子が悪いそうなんですよ…」
「ふ~ん…」
さとりは「心を読める」という能力を持っている為、動物達の言葉が分かる
その為、地霊殿に住む動物達の体調管理は彼女が主に行っている。
「ま、アンタが言うのなら間違いないんでしょうね」
「はい、れっきとした真実ですよ」
「で、何で私に頼む訳?」
「それは…」
「それは?」
さとりは少し間を空けてから
「パルスィが一番暇そうだからです」
そう言い放った。
「さとり?歯、食いしばりなさい?」
そう言いながら、左手を握り拳に変えつつパルスィは、さとりをぶつ体勢に入る。
「え、笑顔が怖いですよ?パルスィ?」
「あら、笑顔は威嚇の類って地上の奴から聞いたんだけど」
「い、言い方が悪かったのは謝りますから拳を、拳をしまって下さい!」
「全く…」
さとりの言葉に応じてパルスィはぶつ体勢をやめる。
「こほん…言い方を変えれば、パルスィしか頼める方が居ないんです」
「私以外にも居るでしょうが…」
呆れながら言ったパルスィだが
「勇儀さんは最近の地底の宴会で潰れてますし、ヤマメは蜘蛛の巣を作る事に没頭、
キスメは…会話は出来ませんでしたが、心の中で『無理、絶対無理!』と言っていました」
頼りになりそうな連中が無理と聞き、ダメもとでパルスィは聞いてみた。
「アンタの身内は?」
「お燐とお空には今日は仕事をさせてしまってますし、こいしは『パルスィ好き好きチュッチュッチュ~☆』
とか言ってからここ最近見ていません」
「はぁ…」
私の知っている連中全てが潰れた。
この際こいしの事は無視だ無視、ガン無視だ。
そう思わざるを得ないパルスィであった。
「アンタは…動けそうにないわね…」
「えぇ…この子を放っておく訳にもいきませんし…」
そう言ってさとりは猫を一撫でする。
そんな中、チラリとパルスィは猫を見て
"私は心なんか読めないけど、どことなく苦しそうにも見えるわね…"
そう思った。
「はぁ、仕方ないわね…」
「では…」
「その子の為に薬、貰ってきてあげるわよ」
そう言ったパルスィに
「ありがとうございます…」
さとりは、笑顔でお礼を言った。
そしてふとパルスィは一つの疑問をさとりに投げかけた。
「そういえば、薬って何処で貰ってくればいいの?人里かしら?」
その疑問にさとりは軽く答えた。
「いえ、人里ではなく…」
──今現在、竹林の中にて──
「『迷いの竹林』の奥地にある『永遠亭』って言ってたけど…」
そう言って周りを見回し、
「何処が奥地なのか分からないわよ!」
不満をぶちまけたパルスィであった。
「ったく、何が『運が良ければ案内人に出会ってすぐに付きますよ』だか…こんな所に人なんて居るわけないでしょうが…!」
そう言いながらも、ゆっくりではあるが歩みを止めないパルスィ。
ブツブツ言いながらも、頭には苦しそうに見える猫の姿が写る。
あの猫の姿を思い出すたびに、止まりそうな足を止めずに動かしている、そう言っても過言ではななく
"絶対に、助けてみせる…!"
そういった覚悟がパルスィを動かしている様でもあった。
──暫く歩いて…──
「本当に…何処にあんのよ…永遠亭って場所は…」
歩きっぱなしだったパルスィは少し腰を下ろした。
「案内人にも結局会わないし…運が無いのかしら、私…」
一瞬だけ諦めかけたが
「何を諦めそうになっているのかしら私は…あの猫を助けるって決めたんでしょうが…!」
両の頬を軽く叩き、自分に渇を入れる。
そうでもしないと気が滅入ってしまいそうであったからだ。
「よし、休憩終わり!さて探すわ…よ…?」
そう言って、立ち上がり歩き出そうとした瞬間
「何…?この臭い…?」
明らかに鼻に付くような臭いがした。
「向こうの方…?」
パルスィは臭いのする方向へ向かって行った。
──数十分歩いて…──
「臭いが強くなってきたわね…」
臭いを辿って行くと
「な、何これ…」
まるで其処だけ穴が開いたかの様にポッカリと空間が出来ていた。
よく見ると、空間の周りの竹や草が少しではあるが焦げているのが分かった。
そして、少しではあるが妖気の様なモノも感じ取れた。
「弾幕でもやってたのかしら…でも、それにしては被害が大きいわね…」
周りを隈なく見回そうとしたしたパルスィだったが
「…!? 大丈夫あなた!?」
空間の隅の方に倒れていた少女を見つけた事によってその行動を取り止め、その少女の安否を確認しに近寄った。
「返事は無い…でも心臓は動いてる…」
少女の安否を素早く確認しつつ、何処か安静にできる場所はないかと見回すと
「あ、あそこに家があるじゃない…」
安静できる場所を見つけたパルスィはその家に向かって少女を背負いつつ向かって行った。
"あれ…ここ私の家…?"
"何で私の家に…確か…"
"輝夜に…アイツに負けて…!"
勢いよく少女は起き上がり
「痛ッ…ってあれ?」
少女は自分の腕が包帯で治療されている事に疑問を抱いた、が…
「あら、起きたの?」
居間の方から顔を出した少女を見た事によって疑問は解消された。
「お前、誰だ…?」
「私は水橋パルスィよ、貴女は?」
「私は、藤原妹紅だ」
「そう、よろしくね妹紅」
「あ、あぁよろしくな…」
呑気に自己紹介をしていて、ふと気付く
「そ、そういえば!」
「あら、なにかしら?」
「パルスィがあたしを治療してくれたのかしら?」
「えぇ、そうよ」
「あ、そうなのか…ありがとう」
「えぇ、どういたしまして」
お礼を言い終わった二人の間に微妙な空気が流れる
「あ、そういえば」
「な、何だ?」
「妹紅、ここの竹林の案内人って知っている?」
「あ、ソレあたしの事だけど…」
「あ、そうなの?良かった…」
「あたしを探してるって事は、永遠亭に行くのかい?」
「えぇ、そうだけど…」
少し妹紅の雰囲気が暗くなった様な気がしたパルスィ
「悪いけど、あそこには連れては行けn」
「連れて行かないなんて言わせないわよ」
「なっ…」
妹紅は少し言葉に詰った。
「アナタの機嫌が悪いのかもしれないけれど、連れて行ってもらうわ」
「何でそこまでして永遠亭に行きたいんだよ…」
妹紅が理由を聞くと
「助けたい子が居るのよ」
妹紅から目を逸らさずに堂々と言い切った。
「別に自分に何か関わりがある訳でもない、でもね、私は助けるって決めたの」
言葉を紡いでいくパルスィ。
「悪いけど、私の為に連れて行ってもらうわよ…永遠亭ってトコにね」
そんな事を言い切ったパルスィの目が自分とは違っている
自分の、憎い相手を射殺す様な目とは違う
ただ純粋に、その存在を助けたいと思っている
自然と見入ってしまうような目だ…妹紅はそう思った。
「…ったくそんな目で見られるとな…」
「え?何?」
妹紅の呟きはパルスィの耳には届かなかった様である。
「分かった、連れて行ってやるよ」
「そう、ありがとう」
「っ…」
お礼を言われた時のパルスィの笑顔に妹紅は顔を赤くし、顔を逸らしてしまった。
「あら、どうしたの?」
「べ、別に何でもないよ!」
「顔も赤いけど…」
「な、何でもないって!大丈夫!」
「そう、ならいいんだけど…」
"何で顔赤くしてんだ、あたし!"
何故か顔を赤くしたのか訳が分からない妹紅にパルスィは普通に
「そろそろ、永遠亭に行きたいんだけど…」
と妹紅に言った。
「あ、あぁ分かった行こうか」
「えぇ、行きましょう」
そういって妹紅の家を二人で出て、永遠亭に向かって行った。
──永遠亭に向かう道のりで…──
"結構考えさせられたな…"
"あんな目…久しぶりに見たな…"
"輝夜とも話合ってみるか…な…"
"それに、パルスィとももう少し話してみようか…"
妹紅は笑顔を浮かべながら、そう決心したのであった。
もこパルリクしたものです! もう終始ニヤニヤニヨニヨ私の顔が気持ち悪い感じに…ありがとうございました!
そしてやっぱりパルスィはイケメン、こいしは変態なんですねww
妹紅可愛かったです。
永遠亭に行ったら、輝夜にもフラグ立ててしまうパルスィが容易に想像できますな。ヒュー!