同作品集の「涼しさ運ぶ ガラス玉」の続きっぽいけど内容は薄いので読んで無い人は「アリスが山の神社に来るようになった」という事だけ覚えてもらえればいいです。
さなアリはやれ。
最近アリスは山の神社に入り浸っているそうだ。
本人曰く「山の上は涼しいから」だそうで。
そんなこんなでいつものようにアリスは山の上を飛んでいた。
「あややや、アリスさんじゃないですか。」
「あら、文々屋じゃない。」
突風と共に現れたのは射命丸であった。
因みに本人はアリスのスカートの中身が目的だったのだがそんな瑣末事はどうでも良い。
更に因みに射命丸の友人である姫海棠ほたてならぬはたての苦手な相手である上司の大天狗のライバルであるその同僚の飲み仲間である香霖堂店主、森近霖之助の店によく強奪をしに行く霧雨魔理沙のそのまた友人でこちらもライバルの博麗霊夢によくお賽銭をやりに行く八雲藍の主催する「幻想郷獣耳同盟」にエルフ耳であるので入れないという理由で日々パルパルしている橋姫、水橋パルスィの貞操を日々狙っている地霊殿の主と言う名の駄目妖怪の代名詞、古明地さとりの妹にして餡蜜が大好物な古明地こいしによるとアリスのスカートの中身は白のレースらしい、真偽の程は幻想郷少女下着審議委員により白熱議論中とのこと。
そんな夏の暑さがヒートアップしそうな背景はひとまずおいておいて。射命丸は営業スマイルでアリスに詰め寄った。
営業用スマイルとはいつもは笑顔で夜になると豹変する人がするものだとはたてが言っていた。
「アリスさん、また神社に行くんですか?」
「え?うん、そうだけどなにか?」
「いやいやいや、別に攻めてるつもりはないんですよ。」
射命丸は大げさに腕を顔の前で振る。
「ただアリスさん、早苗さんの事をどう思ってるんですか?」
「どうって?」
「いや、何か気になったりしてないかな~なんて。」
アリスは指を顎に当てて暫く考え込んでいたが結論が出たらしく笑顔で答えた。
「いい風祝よね、自分の神様の事をよく考えているし優しいし丁寧だし物覚えが良いわ、弟子にしたいぐらい、素材も良いわね、磨けばもっと良くなるわよ、きっと。早苗と結婚する人は幸せ者ね、あの神様達が許さないかもしれないけど。」
それを聞いた文はしばらく驚愕の表情で沈黙していた。
その間「やばいっすよ・・・まじ鈍感にも程があるっすよ・・・」など大きく開かれた口からぶつぶつ呟いていた。
「あの・・・射命丸さん?」
「あわわわわ!あ、はい!取材終わりです!ありがとうございました!」
そういうと射命丸はまた嵐の様にどこかに飛んで行ってしまった。
「・・・なんだったのかしら。」
後には髪の毛と服装をセットし直すアリスだけが残された。
「あ、そうだ。今日は早苗からわざわざ招待状をもらってるんだった。」
今日アリスの家に吹き込んだ朝一番の風と共に手紙が舞い込んできていた。
これは早苗が良くやる伝達手段で「奇跡に不可能はないんです!」だそうだ。
内容は簡単な物で「大玉のスイカが収穫されたのでぜひ食べに来てください」だそうだ。
スイカ 西瓜、魔界に居た頃は魔界西瓜と言う凶暴な西瓜が居たなと思い出す。
魔界西瓜
全長17m 重量約2300t 身が程よく詰まっていて甘く、大変美味
巨体に似合わないフットワークの軽さと体重を利用した押しつぶし攻撃が得意。
西瓜畑ならばどこでも育つが倒せるものが少ない為市場にはほとんど出回らない希少果物。
食べたいならば自分の手で狩猟しなければならないが毎年負傷者が後を絶たない。
その為現在は魔界西瓜専門のハンター、通称「西瓜農家」が活躍している。
彼らの戦いは見物自由で毎夏の風物詩となっているが怪我は自己責任である。
魔界直庁文献局出版「魔界植物全書 第録拾弐巻」より抜粋
「懐かしいなあ」
アリスは飛びながら回想にふける
神綺の腹心にして腕利きの西瓜農家、夢子。
夏になるとよく西瓜を狩ってきて食卓に並んだものだ。
―――アリス、神綺様の仰せとあらばあんな緑と黒の縞々なんて十分足らずでで葬りらなければならないのよ。
夢子は幼き日のアリスの質問に鼻血を流しながらそう答えた。
ああ、あの美味な西瓜を今年も食べているのだろうか、いいなあ、久しぶりに帰省しようかなあ、でも西瓜が食べたいだけなんてなんだか恥ずかしいなあ。
そんな事を考えながら飛んで行くアリスの顔は大変嬉しそうだった。
しかし神社の裏側ではどう見ても尋常でない雰囲気が漂っていた。
場に居るのは神社の二柱、神奈子と諏訪子、それに先程の射命丸だった。
「んで、その回答は本当かね。」
神奈子が深刻そうに射命丸に尋ねる。
隣の諏訪子の帽子も心なしか深刻そうな目をしている。
「ええ、本人は何にも分かっていません、鈍感にも程があります。」
「確かに、これは想像以上に困った事態だぞ、諏訪子。」
「う~ん『両方が遠慮し合っている』とか『早苗に百合耐性が無い』とかの状況はシミュレートしてたんだけどね・・・。」
「『超が三つ付くほど鈍感な奴だった』っていうのはちょっとねぇ・・・。」
「流石にあそこまで鈍感だとは思っていなかった。」
アリスが神社に入り浸るようになってからすでに一か月が経過した。
それほど一緒に居れば何かしら進展があってもいいはずなのだが驚くべき事に何も進展しない。
これもひとえにアリスの天性にして尋常ではない鈍感さがあるからだろう。
「あやや、失礼な話ですがお二方は早苗さんとアリスさんは付き合った方が良いと?」
「うむ、とうぜん。早苗は随分とあの人形遣いにいれこんでいるようだし、早苗にはそこは自由に選ばせてやりたい。」
「そこは・・・と言うとやはり。」
「うむ、子孫繁栄だ。」
「早苗もまだ人間だからねー。後継者は居なくちゃ駄目なのよ。」
「幸いアリスの方もなかなか高スペックを持っているからこちらとすれば是非とも歓迎なんだがなあ。早めに早苗をくっつけねばならんのだが・・・。」
「苦労しそうだね。」
「その方が燃えるがね。」
その時文は「これは娘を早く結婚させようとするおふくろのポジションなのでは」と思ったが口には出さないでおいた。
そのとき誰かが玉石の上に降り立ち歩いてくる音がした
「お、きたきた。」
件の人、アリスが石畳をこちらに向かって歩いてきていた。
アリスが神社に到着した時、中には誰も居なかった。
「あれ?早苗は?」
アリスがあちこちを捜索すると机の上に一枚の手紙が置いてあった
ウラノ カワニ オリマス
神社の裏には渓流が流れる川がある、木陰にある為暑苦しい日中でも涼しく過ごせるので。妖精やらなんやらが日ごろからわらわらしている場所だ。
確かにあそこならば神社で待っているよりも涼しく過ごせるだろう、もしかするとスイカもそこで冷やしているかもしれない。
川からあがったばかりのスイカを食べる、暑さの関係の無い身となってもこれは美味しそうだ。早速渓流に行こうとアリスは歩を速めた。
はたして早苗はそこに居た、岩に座って足をぶらぶらさせながらスイカを冷やしていた。
上半身水着で
その水着はアリスが早苗にプレゼントとして作った一品であった、髪色が緑色とのことなので暖色系の色に寒色系の色を乗せていくつもりだったがアイディアが思いつかず青、赤、白に星をあしらったデザインになった、それを受け取った早苗と神奈子、諏訪子は驚愕するやら恥ずかしがるやらしていたが。
ちなみにその水着は星条旗水着と呼ばれている代物だがアリスは幻想郷に居るのでそんな事は知るよしも無いのはご愛嬌である。
ともかく早苗は背後からアリスに近寄られている事にも気が付かずにぼーっとしていた。
「早苗、スイカある?」
「駄目ですよチルノちゃん、それはアリスさんと神奈子様と諏訪子様の分なんですから。」
「だったら私はそれを食べる権利があるわね。」
「へっ?」
早苗はゆっくりと、実に恐る恐る振り向いた
「うっひゃあぁ!?アリスさん?どうしてここに。」
「早苗に呼ばれたからよ。」
早苗は大層仰天していた。
元々アリスはいつもゆっくりと神社に来るのでもっと時間がかかるとふんでいたのだ。
まさかアリスの脳内で武装派冥土ならぬメイドが西瓜を殲滅していたとは当然知るよしも無い。
水着もアリスに見せるつもりはさらさらなく、「暑いから川に言って涼もう、上を脱ぎたいから上半身水着に着替えよう」程度にしか考えていなかった、しかもこの水着はアリスプロデュースの水着、なんとなく恥ずかしい。
そんなこんなで全く予想外の事が起こったので早苗は大層動転していたがその原因たるアリス本人は早苗の上から下までを舐めまわす様に見ていた。
「アアア、アリスさん?何でしょう私をそんなに見つめて。」
「うん、似合ってるわね。」
アリスは早苗に戸惑う早苗に向かって断定するように言った。
笑顔で
一切の邪気が無いぽわぽわした笑み
アリスの笑顔が可愛い事は確定的に明らかだがそれが目の前にあるのだ。
早苗の足がおぼつかなくなるのは仕方無い事だろう。
その結果として早苗は後ろの川の方に倒れていった。
「うわわわわわ!」
「ちょっ、早苗!?」
アリスが早苗を助けようと手を伸ばし
早苗が条件反射的にアリスの手を掴み
しかし当然アリスが咄嗟に支えきれる訳も無く
結果として二人は仲良く川に転落した。
幸い川は深かった為早苗もアリスも怪我はしなかったが派手な水柱と共に川に落ちてしまった為二人はびしょ濡れだった。
「うわっ、ぐしょぐしょだ・・・、アリスさん大丈夫ですか。」
「うーびしょびしょ、気持ち悪い、でも久しぶりの水、気持ち良い。」
アリスと早苗は川から這い出ると体をぶるぶると震わせた、きらきらと雫が舞う。
「タオル持ってくればよかってですね・・・アリス・・・さ・・・。」
アリスの方を向いた早苗はそう言うと沈黙してしまった。
濡れた肌にペタリと張り付く服
水滴を滴らせる顔
冷たい水に入った所為でうっすらと赤の差す頬
エロス、ここに極まれり
「おおぅ・・・」
「ん?」
早苗は絶句して黙り込んでいる。
アリスは早くスイカが食べたい。
食欲と色欲、見事なほどのすれ違いがここに。
「早苗、早くスイカが食べたいんだけど。」
とうとう痺れを切らしたアリスがきり出した。
「あ、はいはいスイカ!あ、そうです。えーっと確かあそこに・・・ここです!」
早苗は川からざばっと言う音と共に大ぶりなスイカを取り上げた。
アリスはスイカが牙を剥いたり飛びかかって来ない事が多少不満げそうだったがそれでも水を湛えた球の様なスイカは旨そうだと思った。
「あ、包丁持って来るの忘れてました。」
「心配いらないわ。」
手を叩くとあら不思議、スイカが二つ、四つに斬れる。
アリスの従僕である二体の人形がワイヤーの両端を持っていた。
ちなみにこの人形は当然上海と蓬莱であるのでウォルターだのいう名前はつかないしバーホーテンのココアにミルクと砂糖ましましで入れて来る筈も無い。
「さ、食べましょう、はい。」
「ありがとうございます、では早速。」
アリスからスイカを渡された早苗は早速シャクシャクと食べ始めた。
甘くて冷たい果実の感触が口の中いっぱいに広がる。
「ん~美味しい!」
「あら、甘くて美味しい。」
魔界西瓜と比べても遜色ないその糖度の濃さにアリスは顔を綻ばせた。
しゃくしゃくしゃくしゃく
しゃくしゃくしゃくしゃく
無言でスイカを食べる音が静寂とした森に木霊する。
やがてスイカを食べ終えて二人は足を川につけて休憩していた。
「うむむ、美味しかったです。」
スイカを食べ終えて満足げにしていた早苗の顔をアリスが捉えた。
「あ・・・」
そのまま早苗の顔を見続けるアリス
戸惑う早苗
じーっと見るアリス
だんだん顔が赤くなる早苗
見続けるアリス
もう限界な早苗
「アリスさん・・・なんでしょう?」
「それ」
アリスが指差したのは早苗の頬に留まっている赤い雫だった。
「あれ、スイカの汁が飛び散っちゃいました。」
早苗は安堵半分がっかり半分と言った面持ちで汁を拭き取ろうとした。
「駄目よ、服で拭いちゃ。その汚れ落とすの大変なのよ?」
「じゃあ川で手と顔を洗って来ますよ、どうせべとべとですし。」
そう言って川に向かおうとした早苗の腕をアリスが掴んだ。
「早苗」
「へっ?」
そう言うとアリスは早苗の顔の自分の顔を近づけて――――
ペロッ
早苗は今起こったことが理解できなかった
頭の中では銀髪モヒカンで銀の戦車を使いこなしそうなフランス人が「あ・・・ありのまま今起こったことを話すぜ!」とか言っていた。
「え?え?」
アリスは笑顔で笑っている
早苗は混乱している
「アリスさん、何を・・・?」
「ん?舐めただけだけど?」
「私の頬を?」
「うん」
「・・・きゅ~・・」
「ちょっ!?早苗!?」
早苗は再び川に倒れこみ
本日二度目のど派手な水柱をあげる事となった。
その後早苗は何故か呆れ顔の神奈子と諏訪子によって救出される事となったのだがそれは瑣末事である。
末期?もっと悪化してもいいのよ?
サナアリはもっと流行るべき
早く付き合っちゃえよー
というより軽っ
仮に真球体だとすると
半径850cm、πを3.14として、約25億7100万立方cm強。
水重量にして2571t
西瓜は水分が80~90%とすると重量は約2300t以上になる…はず。
逆に53kgにするなら大体直径約50cmくらいかな?
というか50kg以上の西瓜は実在する件
まあ、そんな常識に囚われちゃいけませんよね!
まあそんな事より可愛いよアリス。早苗さんも可愛いよ。
もしくは、緑と黒のストライプを穿いて、青い袴の陰からちらちらチラリズムしても良いんじゃね!?
以下、気になったところ2点
>>全長17m 重量53㎏
大きさの割りに軽いな! こっちのスイカと違って90%が水分ってわけじゃないのか
いや、アリスが驚く様子が無い事から察するにこっちのスイカくらいの球体に手足が生えたようなものなのか?
>>救出される事になったのだがそれは顛末事である。
瑣末事(さまつごと)、かな?
ところで、タイトルに果物と書いてあるけど、西瓜はキュウリとかと同じウリ科の植物だから基本的には野菜扱いですよ
ところで、魔界の実家に早苗さんを紹介するのはまだですか?
因みにポルポル君は銀髪ですのぜ
もう、新たな扉が開きそうです。
誤字報告ですが、博霊霊夢になってる部分がありました。
あっちで正座して詳しい描写を待ってますぞ
2人とも可愛い
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