レミリア・スカーレットは金髪の女性を見た。
そこは紅魔館の庭で、レミリアは二階の窓からそれを見下ろしていた。
「紫?」
レミリアが声を掛けると女性は顔を上げた。その顔はレミリアが知る者ではない。
人里で見かける和の服装ではなく、どちらかといえば自分に似ていた。
「誰?」
「そちらこそ」
「私は貴女が不法に侵入しているお庭の管理者よ」
「手入れが行き届いているのね」
「私の手足がよく出来るの」
「それは立派だわ」
「で、誰?」
「私は多分、未来人よ」
「多分?」
「そう、多分」
曖昧だったが確信めいていた。
「未来人が何の用?」
「帰り道が分かる迷子」
「親と喧嘩した子どもね」
「喧嘩したのは親友とだけど」
女性の声はとても深い慈愛が含まれていた。そして悲しみはきっと、望まないから生まれたようであった。
「本当に未来人だったら、面白いし、部屋に招きたいところだけど」
「けど?」
「未来人っぽいことしてくれればお呼びするわ」
「そうねぇ」
女性は少しだけ考え込むと、「明日は雨が降るわ」と答えた。
「明日になれば分かるわね」
「ええ」
「いつまで此処に?」
「今日まで」
「じゃあダメね」
「残念だわ」
二人は目を合わせてひとしきり笑うと、レミリアがそのまま綻んだ顔で告げる。
「そろそろ侵入者として成敗したいのだけど」
「困るわね」
「お別れの時間だわ」
「残念ね」
「私の手足も体裁を守りたいらしい」
「間に合うの?」
「手遅れだけど、私は優しいんだ」
「でも仕方ないわよ。私は此処に現れたんだから」
「目より先に気づくのが手足の役目さ」
「相手が炎天下のボンネットか、ドライアイスならね」
レミリアにとってその言葉は非常に未来を感じさせたが、やはり時間切れである。
女性が手を振ってきたので、レミリアもそうやって返した。
「じゃあ失礼するわ」
「ええ。仲直り出来るといいわね」
「お土産は何個か手に入ったし、きっと言いくるめるわ」
「そう」
「じゃあ、さよなら」
「さよなら」
レミリアが女性から一瞬だけ目を離した。ただの瞬きだったが、一度暗転した世界にはもう、女性の姿はなかった。
「雨が降るのは嫌ね。今日は沢山お散歩しましょう。咲夜。咲夜ー? 紅茶が飲みたいわー!」
レミリアは窓を閉めて、咲夜を探しに部屋を出た。
その晩はいつもより2時間ほど長く外を散歩した。
翌日の幻想郷は、綺麗に晴れ渡った。
それ一番言われてるから
うちさぁ、鉄板あんだけど…焼き土下座してかない?
(誰か作品を)評価して差し上げろ(切実)