Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

揺ら揺ら流れ

2011/07/23 14:35:42
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夏になりきらぬ夜。
暑さは夏のそれより幾分かマシと言った程度だが
梅雨も明けた筈なのだが晴れきらぬ湿気た空気が
日差しの下の気持ちの良い暑さとは正反対の不快な暑さを
醸し出している。
しかし川辺へと場所を移せば川の流れに暑さは留まれず
同じ湿気と持った空気でも
ジメジメとした嫌な物から、ひんやりとした肌に心地よい物へと
顔を変える。
妖怪の山のほぼ麓部分。
この辺りでは山から流れる川は幾つかの滝を経て
急流から穏やかな流れへ移り川の音も静かで
子守唄の代わりになりそうである。
その川の上にチルノと雛は居た。

夜の川の川中。
二畳程の大きさの正方形の白い和紙を四角く4つ折りにし
開いたような形で折り目は全て中心に向かっている。
その大きな紙の上に雛は正座し、その膝の上に
チルノを座らせ、前に手を回し包むように
抱き込んでいる。
川に浮かぶ紙は水に触れる部分が淡く緑色に光っていて
濡れる事なく川を下り続ける。
穏やかな流れに乗って、緩やかに回転しながら川を下っていく。
雛とチルノの座る大きな紙の周りには
同じ形をした紙に乗せられたこれまた紙で作られた人形が乗っていた。
こちらの紙の大きさは半紙の1.5枚分程で
乗っている人形は奴凧に似た形をし
紙で作られているにしては厚く丈夫な作りをしていた。
それが3つ、大きな紙を周りを付かず離れずの距離を保ちながら流れている。
小さな虫の声と川の静かな流れの音の中。
チルノも雛も互いに無言で流れるままに下っていく。
流されるままにしばらくいると、喧騒のような音が
僅かに聞こえ少しづつ大きくなってきた。
チルノが音の方へ目をやると、川沿いの遠くに
赤い堤燈の灯が見えてきた。
「あれ。みすちーのお店だよ。」
仰け反るように顔を上げて雛に言う。
「ええ。夜雀さんの屋台ね。」
チルノの髪を梳くように頭を撫でながら雛は答える。
「あたい、ちょっとおなかへったかも。」
空腹具合を確かめるように自分のお腹に手を当て
こするように動かしながらチルノは言う。
「終わったらあの屋台で食事しましょうか。」
「うん。しよう。」
少しづつ近づく堤燈に向かってチルノは大きな声で呼びかける。
「みすちー!みすちー!」
声に気付いた客の数人が川に目を向ける。
少しして屋台の裏からミスティアが顔を出す。
「おや、チルノ?新しい遊びそれ?」
「あたい、このまま湖までながれていくんだ。
 おわったらみすちーのお店にごはん食べにくるよ。」
「りょーかい。先に焼いておくよ。チルノは冷めた方がいいでしょ?」
「うん。おねがいー。」
チルノと話し終えたミスティアは雛の方を向く。
「お客さんとしては何度か見た顔だけど
 チルノの知り合い同士としては初めてだね。
 知ってるかもだけど私はミスティア・ローレライ。」
「鍵山雛よ。常連ではないけどあなたの屋台、美味しいから名前は知ってるわ。
 私もこの子と食べに来るから、そうね…30分くらいみて焼いておいてくれると
 嬉しいかしら。因みに私の分は焼き立てで御願いね。」
ミスティアは「はいよー。」と返事をしながら接客に戻る。
手を振るチルノに焼台と暖簾越しに振り返すミスティア。
堤燈の灯が蛍の光程の小ささに見えるようになるまでチルノは手を振り続けた。

下り続けること数分。
川の流れが湖まで差し掛かる所で雛はチルノを抱きかかえ浮かびあがり
岸へと降り立つ。
チルノを下ろすと自身は浮いたままで眼を閉じ
今まで自分の乗っていた紙と周りの人形へと手を広げる。
淡い緑色の光が消え、雛達を乗せていた紙は解けるように水へ消えていった。
続くように人形を乗せていた紙も同じように消える。
残った3体の人形は水に沈まずに
先程まで紙の船がまとっていた物と同じような光に包まれ
宙へゆっくりと浮かびあがり雛の手元へ揺ら揺らと引き寄せられる。
人形は雛の手の中に納まると光がゆっくりと消えていく。
「はい。おしまい。」
雛は3体の人形をチルノに手渡す。
人形はそれぞれ細かい部分と色が違っており
それぞれが誰かを模したような作りをしていた。
「今度は誰に上げるのかしら?」
「さとりとおくうとおりん!地面の下の方の友達なのよ。」
チルノは新しい知り合いや友達が出来ると雛の元へと訪れ
紙の人形、厄除けのお守りの作成を御願いする。
雛の祀られている妖怪の山の鬱蒼とした森の奥にある祠。
その祠の近くにある小さな池。
普段、雛はそこに集めた厄を沈めておき、不定期的に溜まった厄を
人形へと篭めて川へ流す。
水の流れに流される内に厄は浄化され、湖へと流れ着く間には
霧散している。
そうして浄化された人形は厄避けとなり
持ち主に降りかかる厄をその身に溜め、少しづつ散らしていく。
「今度遊びにいく時に渡すんだ。」
受け取った人形を両手に持ち「うにゅうにゅ!」や「にゃんにゃん!」など
本人達の真似であろう言葉を口にしつつ人形を振りながらチルノは言う。
「それじゃあご飯食べにいきましょうか。」
「うん!」
差し出された雛の手を取り2人でミスティアの屋台へと歩を進めていった。
「さとさと!」
「会ったことは無いけれどそれは言わないんじゃないかしら?」

コメントの中にリクエストがあったので短いですが雛とチルノの話です。

前作においては不快な思いをさせてしまったからが多かったようで
改めて申し訳ありませんでした。
キャラを弄ると貶めるの匙加減が自分なりに把握出来てから
再度挑戦させて頂きたいと思います。
湯葱
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
神秘的でよかったです
チルノいい子だね
2.名前が無い程度の能力削除
ありがとう、ありがとう。
本当にチル雛をやってくれるなんて感謝感謝。
次は地霊殿を……冗談です、湯葱さんの好きな話を書いてください。