久しぶりに帰ってきたこいしの右の目尻には、一輪の花が刺さっていた。
眼窩と眼球との間にあるわずかな隙間。
そこに、花は一輪挿しのように刺さっていた。
そういった化粧なのだと言われれば納得してしまいそうになりそうなほど、こいしの目尻に花は似合った。
痛くないのだろうか、と考えたが目の前のこいしは終始いつも通りににこにこ笑っている。
これだけ可愛らしく笑っていられるのだから、対して痛くないのだろうと、一人でに自己完結した。
「こいし、何をどうしたら目尻に花が刺さるの?」
「んっとね、摘んだお花持ってちょっと走ったら転んじゃったの。お姉ちゃんのために摘んだのに、こいしのおめめのになっちゃった。」
「痛くないの?」
「引っ張った方が痛かったよ。」
わかったことは、目尻の花は私のために摘まれたものだということと、引っ張ったら痛いということだ。
きっと、花を私に早く見せたい一心で、足下が疎かになったんだろう。
まだまだ自分の妹が子供だということを再認識した。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。」
「なぁに、こいし。」
「このお花、私に似合ってる?」
「ええ、似合ってますよ。どちらもすごく可愛いと思うわ。」
「そっか、似合ってるんだ。ねぇ、お姉ちゃん。」
「どうしたの?」
不安げでどこか悲しそうな表情をこいしは覗かせる。
「このお花、すぐ枯れちゃうよ。お姉ちゃん、こいしも一緒に枯れちゃったらどうする?」
私は何も言えなくなった。
急に目尻の花の赤色が、薄気味悪いものに感じた。
先程までは、あんなに可憐に思えていたのに。
細く赤い花弁はこいしの睫毛に少し重なり、睫毛の繊細なものとは別の影をこいしに落としている。
「ねぇお姉ちゃん、どうするの?」
泣き笑う妹。
目頭から下睫毛を伝い、目尻に涙が溜まる。
ふるり、その花が涙を啜った気がした。
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眼窩と眼球との間にあるわずかな隙間。
そこに、花は一輪挿しのように刺さっていた。
そういった化粧なのだと言われれば納得してしまいそうになりそうなほど、こいしの目尻に花は似合った。
痛くないのだろうか、と考えたが目の前のこいしは終始いつも通りににこにこ笑っている。
これだけ可愛らしく笑っていられるのだから、対して痛くないのだろうと、一人でに自己完結した。
「こいし、何をどうしたら目尻に花が刺さるの?」
「んっとね、摘んだお花持ってちょっと走ったら転んじゃったの。お姉ちゃんのために摘んだのに、こいしのおめめのになっちゃった。」
「痛くないの?」
「引っ張った方が痛かったよ。」
わかったことは、目尻の花は私のために摘まれたものだということと、引っ張ったら痛いということだ。
きっと、花を私に早く見せたい一心で、足下が疎かになったんだろう。
まだまだ自分の妹が子供だということを再認識した。
「ねぇねぇ、お姉ちゃん。」
「なぁに、こいし。」
「このお花、私に似合ってる?」
「ええ、似合ってますよ。どちらもすごく可愛いと思うわ。」
「そっか、似合ってるんだ。ねぇ、お姉ちゃん。」
「どうしたの?」
不安げでどこか悲しそうな表情をこいしは覗かせる。
「このお花、すぐ枯れちゃうよ。お姉ちゃん、こいしも一緒に枯れちゃったらどうする?」
私は何も言えなくなった。
急に目尻の花の赤色が、薄気味悪いものに感じた。
先程までは、あんなに可憐に思えていたのに。
細く赤い花弁はこいしの睫毛に少し重なり、睫毛の繊細なものとは別の影をこいしに落としている。
「ねぇお姉ちゃん、どうするの?」
泣き笑う妹。
目頭から下睫毛を伝い、目尻に涙が溜まる。
ふるり、その花が涙を啜った気がした。
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