Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

涼しさ運ぶ ガラス玉

2011/07/10 16:01:03
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「あ~~~…あっつ~~い」
「…女の子なんだから格好は気を付けていた方が良いと思うわよ。」
「あ、アリスさん、いらっしゃい。」
「お邪魔するわよ」

守矢神社にアリスが訪れたのは炎天下の昼の事だった。
その日は茹るような蒸し暑さで魔法の森の中はまさに地獄絵図と言ったありさまだった
生い茂る木々によって日光は遮られるが温度と湿度は遮られる筈も無い。
アリスは「都会派はいかなる事情であろうと動じない」と我慢していたが
魔理沙が「アツクテ ヒニソウ コウマカンニ イマス」とウナ電をアリスの家に残していった為アリスも山の上で涼みに行くことにしたのだ。


山の上にある守矢神社は幾分か涼しい
勿論冷涼とまではいかないが森の中に比べると格段に快適であった。
境内に降り立ち、大きく伸びをしたアリスを室内で大の字になってぐだっている早苗がお出迎えした。
これは流石にまずいだろう、この構図はまずいだろうと思わずつっこみたくなるアリスであったが流石は都会派、軽い注意に留めるだけにした。

「アリスさん、今日はどんな御用で。」
「涼みに来たのよ、この程度で暑いとか言ってると下に降りた時茹っちゃうわよ。」
「茹で早苗、ですか。」

茹で早苗
アリスは思わず鍋に入っている大量のミニ早苗を頭に浮かべたが余計暑くなりそうな気がしたのですぐに頭の隅に追いやった。
アリスは相変わらず寝そべった体勢の早苗の背中に向かってため息を吐く。
「暑いからってその体勢は無いんじゃないかしら。」
「げんそうきょうではぁ~~~じょうしきにぃ~~~とらわれてはぁ~~~いけませぇ~~ん」
「…常識知らずと恥知らずは違うと思うわ。」

「とにかく中に入れてもらえないかしら。暑いのよ、外。」
「あ、はい。どうぞアリスさん。」
アリスは神社の中に入ると神奈子と諏訪子が居ないことに気が付いた。
「早苗、神社の二柱はどこに居るの?」
「あ、今朝から人里の命蓮寺に偵察と言う名目で観光しに行ってますよ。今頃は遊覧船に乗っているんじゃないでしょうか。」
「あの二柱がやりそうなことね。」
「今日は忙しいと言っていました、朝から市場の朝市に出向いて市場調査、その後遊覧船に乗り込み命蓮寺勢の偵察及び幻想郷を上空から視察、その後甘味屋で菓子を食って甘味分補給をして帰るそうです。」
「完全に観光気分ね、間違いないわ。」
「あのお二人の事ですからね、楽しみに行っていると見て間違いはないでしょう。」
視察とか偵察とか格好つけて言いたがるのに限って観光気分なのはどこの世界でも変わらない。



その頃その二柱はやはり命蓮寺の遊覧船で空中クルーズを満喫していた。

「…御主人」
「…はい」
「また、無くしたそうだね」
「……はい」

「うわー神奈子見て!あの山脈!」
「おおお、見事な風景だな!」

「一応原因を聞いてみようか」
「…すみません」
「私は原因を聞いているんだよ、謝罪を聞いているわけじゃないんだ。」
「…はい」

「む?あの歪みは何だ?」
「ああ――あれはこの間こっちと法界を繋いだ時にだいぶ無理にやっちゃったんでできた歪みです。」
「へえぇ、あんなに大きな歪みができて大丈夫なのかい?」
「そこは妖怪の賢者様に今修復してもらっているんで心配無いです。」

「驚けぇ!驚けぇ!」
「にやにや」
「驚けっ…驚けっ…」
「にやにや」
「お、驚けっ…」
「にやにや」
「…おどろいて…おどろいてください…」
「…にやにや」
「うわああああん!もうやだああああ!」
「…しゃああ!」
「文はサドです、間違いありません、文はサドです、サデズムです。」
「ん?どうしました?はたて。」
「私も昨日泣かされたばかりです、文はサドで間違いありません。」

「妖怪の賢者って言うと…八雲かい?」
「ええ、九尾が付いている賢者様です。」
「相変わらず紫はさぼっているのか…。」
「でも藍さんは『働くのが楽しい☆』って言ってました。」
「典型的ワーカーホリックだな。」
「星までつけちゃって…。」

「雲山、暑いからって髭を剃るのはやめてくれない?」
「…………」
「うん駄目、若干気持ち悪い。後、でか過ぎるから少し縮んでくれない?」
「………」シューン
「あ、そこまで小さくならなくていい。」

「ところで…」
「はい?何でしょう?」
「何故そんな卑猥な格好をしているんだ?」
「…へっ?」
「いや、その格好どう見ても(自主規制)」
「……」
「ん?どうした?」
「……あの馬鹿またやってくれたな…」
「ん?」
「覚悟しろやっ!!この意味不明がぁっ!」
「意味不明じゃなっくって正体不明だって…速い!?」
「逃げんなぁ!」
「やだやだ!逃げなきゃ殺られる!ってげぇっ!?聖!」
「今です聖!パワーを打撃に!」
「いいですとも!いざ、南無三!」
ドガアァン
「ぬえぇぇぇぇぇん…」

鼠が寅を叱り
唐傘お化けがサデズムを前に逃走し
雲山が手乗りサイズまで縮み
正体不明が絶叫をあげながら地上に落ちてゆく

いつも通りの平和な命蓮寺の面々と空中クルーズを満喫していた。



場所は再び守矢神社
アリスは手に持っていたバスケットを早苗の前に掲げた。
「ああ、アイスを持ってきたわよ。」
「アイス!」
アイスの一言を聞くなり早苗は寝そべった体勢から立ち上がり、一気にアリスの近くまで駆け寄る。
「…よっぽど暑かったのね。」
「アイス、アイスはどこですか。」
「そんな近寄らない、暑いわよ。」
ふと気付くと早苗とアリスの距離およそ20cm、互いがよく見える距離。

汗でしっとりと湿った首筋
張り付いた衣服
そして少し火照って紅潮した顔

「…………っつ!」
早苗はアリスから飛びのいた
「……?どうしたの?」
「いえいえなんでもありませんなんでもありませんアリスさんがあまりにも何と言うか官能的と言うかなんというかそのエロい格好をしていたのでつい見惚れてしまったとかそんな事は無いと言うか何と言うかええありませんともありませんとも。」
「…どうしたの?」
「うわわわわ!とにかく何でもありませんったら!」
あたふたとする早苗の頬はさっきよりも紅潮している様だったがアリスはその理由に気が付かなかった。

「…?まあいいわ、食べましょ。」
「わーい、ありがとうございます。」
アリスが取り出したのは真っ白なアイスキャンデーだった。
「わあ、アイスキャンデーなんて久しぶりです。」
「こう暑いとね、研究に集中できないからパチュリーに冷気を操る方法を教わってたのよ。」
「その副産物ってわけですか。」
「ん、そうよ。はい」
「ありがとうございます。」

アイスキャンデーを受け取った早苗はそれを口に咥え――――
「紛らわしい描写は無いわよ」
食べ終わった。


「ふいーっ、体が冷えて気持ちいーっ。」
「食べてすぐ寝ると牛になるわよ。」
「奇跡の力で大丈夫です。」
「せこい使い方ね。」
食後、二人は畳の上で休んでいた。
「幻想郷には扇風機もエアコンも冷蔵庫も無いので夏を乗り切るのは辛いですね。」
「そういうものなら時々香霖堂に置いてあるけど…電気が無いからしょうがないわね。」
「河童の力でも借りますか。」
「止めた方が良いんじゃないかしら。」
アリスはくっと外に顔を向けた。
夏のうだるような暑さで陽炎が石畳に浮かび上がっている。
「夏の暑さを感じるのも良い事なんじゃないかしら。」

アリスはそこまで言ってふっと溜息に似た笑みを漏らした
「夏の暑さを知らなければ冬の寒さも知らない、四季を楽しむことを忘れたら損な事よ。」

二人は初夏の日差しを見つめながらしばらくじっとしていた。
まだ夏といかないまでも夏の足音を感じさせる音、空気、香り。
外に居た時は味わえなかった濃密な夏の気配を早苗は感じた気がした。
「確かに…そうかもしれませんね。」
「でしょ?」
「暑くないとアイスキャンディーがおいしく食べられません。」
「食い意地張ってるわね。」
「色気より食い気ですよ」
「ふうん。」

若干不満げに呟いたアリスは早苗の髪を手に取った。
「ちょ、ちょっとアリスさん?」
「早苗は髪も綺麗な緑髪だし可愛いからもてると思うんだけどね。」
「…えぇ!?可愛い!?」
「え?自分の素質に気が付いていない?勿体ないわね、今度私の家に来なさい、メイクしてあげるわ。」
「…アリスさんの家にですか?」
「何?不満?」
「いえいえ、そんな事は微塵も無くて寧ろ嬉しいくらいなんですけどその…誤解しちゃうっていうか何で言うかゴニョゴニョ…」
もじもじと指をくねらせて顔を更に紅潮させる早苗
「…?まあいいわ、準備しておくから。」
しかしアリスはやはり何も気が付かない風だった。


アリスが卓上に置かれたガラス玉に気が付いたのはそれから一刻後、茹だるような午後の暑さもようやく治まってきた時間帯だった。
「あら?あれってガラス玉?」
「ああ、ビー玉ですね。」
「ビー玉、ね。」
それはビー玉だった、青いビー玉一つが机の上に転がっていた。
「なんでそんなものが机の上に転がっていたのかしら?」
「ああ、ビー玉で遊んでいたんですよ、あまりにも暇でしたから。その時に仕舞い忘れたんでしょう。」

早苗はビー玉を掲げて光にかざした。
キラキラとビー玉の中を光が反射して光っている。
それはまるでアリスの美しい蒼瞳を思わせる光だった。
「…綺麗ね。」
「綺麗でしょう。昔、よく夕日にかざしていたんですよ。」
田んぼの畦道でビー玉を掲げ、夕日をガラス玉の中に切り取っていた記憶を思い出す。
「懐かしいですね。」

そこでふと、早苗はビー玉の違う使い道を思い出した。
「あ、そうだ。ビー玉って夏によく重宝したんですよ。」
「え?このガラス玉が?」
「こうやって使うんです。」

そういうと早苗はビー玉を口に含んだ。
口の中で転がすところころと軽い音がする。
「こうすると何でか涼しくなったような気がするんですよね。親には汚いから止めなさいって言われるんですけど。」
ガラス玉のひんやりとした感触が心地よいらしく早苗は目を閉じて暫くビー玉を堪能していた。

「ん、こんなもんでしょう。」
早苗はしばらくすると口の中の清涼感が無くなったからかビー玉を口の中から取り出した。
アリスはその間その様子を興味津々といった風でじっと見つめていた。
早苗が口の中からビー玉を取り出すとアリスはふんふんとビー玉を見つめた後
「興味があるわね。」
そう言っておもむろに早苗の手からビー玉を取り上げ


口の中に放りいれた


ころころとビー玉を口の中で転がすアリス
当然そのビー玉は先程まで早苗が舐めていたもので
と言う事はつまり…。


「…えぇぇぇえ!?アリスさん!?」
自体を把握した早苗が顔をこれ以上ないほど真っ赤に染めて叫ぶ。
先程までの楽しげな様子から一変、あわあわと言いながらアリスを止めに入る。
「ななな、何してるんですか!?」
「ん?いや、早苗がビー玉舐めて涼しげにしていたからどんなのかなって疑問に思っただけ。」
「あわわわわ!今すぐ吐き出してください!」
「え?何で?そんな慌ててどうしたのよ?」
「だってそれ、さっきまで私が舐めていたものですよ!?」
「え?何か問題でも?」
アリスにとって「さっきまで誰かが舐めていた」というのは至極どうでもいいらしく平然としていた。
しかし早苗はそうもいかない、手をバタバタと動かし、アリスを説得して何とかビー玉を取り出そうとしている。
「問題大有りですよ!汚いです!」
「え?さっきまで舐めていたじゃない。」
「いえいえ、そういう事じゃなくて!」

結局アリスが「なんだか思っていたより冷たいって感じはしないわね。」と言ってビー玉を取り出すまで早苗の奮闘は続く事となった。


「お邪魔したわね。」
「いえいえ、こちらこそアイスキャンディーご馳走になりました。」
「そう言ってもらえると嬉しいわ。」
暫く経って辺りがすっかり涼しくなったのでアリスは家に帰る事にした。

「また来てくれると嬉しいです。」
「暑くなったら来るわ。」
「じゃあこれから毎日ですね。」
「そうかもしれないわね、次はアイスケーキに挑戦してみようかしら。」
「うわ、楽しみです。」
「後、秋になったら私の家に来なさいよ。メイクしてあげるわ。」
「楽しみが一つ増えましたね。」
「うん、じゃあさよなら。」
「おやすみなさい、アリスさん」

早苗は飛び立ってゆくアリスを見送った後、この後帰って来る神様の事と明日の予定について考え始めた。

きっとアリスは来るだろう、その時は川で冷やした麦茶を渡そう、青いビー玉も用意しておこうか。
そう考える早苗の顔はやはりうっすらと紅くなっていた。
さなアリ分が足りない!書かなくては!とやって来ました。

乙女アリスもいいけど鈍感アリスも良いよね!と思ったので代わりに早苗さんに乙女になってもらいましたよ。

次のジェネ投稿はレイアリを書くかパルスィを書くか思案中です、もしや藍様か。

作者は誤字脱字並びに要望兼コメント、アドバイス等お待ちしております。

コメ返しです
>>1さん
2828して頂けましたか。パルパルは…現在少し長いのを書いております。
>>2さん
そのタイトルの発想はなかった…
>>3さん
作者も鈍感アリスさんは良いと思います!
>>4さん
おお、そこに気が付いて頂けましたか。
『人間』早苗と『妖怪』アリスの区別をつけたつもりです。
>>5さん
何故作者の考えが読めた…あなたがエスパーか
>>6さん
ちゅっちゅですね、ちゅっちゅだぁ!
>>7さん
こんなさなアリもありですよね
>>奇声を発する程度の能力さん
次はもっとにやけさせてみせると意気込む作者なのであった

>>9さん
また私です
懲りずにやって来ます
ただ今最小限の絡みで最大のにやけを引き出す方法を研究中。
芒野探険隊
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
いい!思わず2828しました。 個人的には次はパルスィを所望ですwww
2.名前が無い程度の能力削除
アリスの暑中お宅訪問…
3.名前が無い程度の能力削除
これですよ、これこれ。さなアリは天然なアリスに振り回される早苗さんがいい。
2828させてもらいました。
4.名前が無い程度の能力削除
これはいいアリサナ。
続きがあれば見てみたいですね。

>>夏の暑さを知らなければ冬の寒さも知らない、四季を楽しむことを忘れたら損な事よ

そういえばアリスってもうそれがないんでしたっけ。
言われなければ分からないとかなんとか。
5.名前が無い程度の能力削除
萃夢想のエンディングで、暑さを感じないから暑がる霊夢を見て季節を感じる、てありましたね。

今度はアリス邸でイチャイチャするんですね、分かります。
アリスがしれっと「あなたに興味があるの」とか言って早苗さんを赤面させる、て言う昔買ったアリサナ同人を思いだしそうな内容にwktk
6.名前が無い程度の能力削除
ディープちゅっちゅ
7.名前が無い程度の能力削除
これはいいさなアリ。
鈍いアリスっていいなぁ。それに振り回される早苗さんも。
8.奇声を発する程度の能力削除
ニヤケまくったw
9.名前が無い程度の能力削除
誰かと思ったらまたあなたか

前回に引き続き良いものを読ませていただいた