Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

お嬢様はトマトがお嫌い?

2011/07/05 16:49:24
最終更新
サイズ
5KB
ページ数
1

分類タグ

赤い。
赤い果実。
赤い野菜。
四つにその身を切られ、緑黄色のベッドの上に
瑞々しい断面を見せて横たわる、栄養の結晶。
忌々しい太陽の光をいっぱいにたくわえて、甘く、酸っぱく、味を変える、この野菜。

「お嬢様、トマトもちゃんと食べなきゃ駄目ですよ」

フォークを握りつぶしつつ頭を抱えていると、いつのまにか咲夜が背後に現れ、私の頭越しにお皿を覗きこんで、そう言った。
トマト。
この、これ、この野菜……ああ、なんといえばいいのか、とにかくこれを食べろというのか。
顔いっぱいに不安を広げて咲夜を振り仰げば、にこりと微笑んで姿を消した。
しかし、咲夜のことだ、私がこれを捨てようとすればすぐに姿を現すに違いない。
しかめっ面をして、お皿に目をやる。
このサラダが、スパゲティなんかに変身したら、私はあっというまに平らげるというのに。
そうならないからこそ、こうして一人、寂しく食卓についているのだけれど。
はやくこれをやっつけて、夜風に当たりながら紅茶でも飲みたいのだが、この赤いのがそうさせてくれない。
ああ、忌々しい。
赤いくせに、私に仇をなす。

テーブルにほお杖をつきながら、フォークの先でつんつくとトマトをつっつく。

トマトよ、何故お前はそんなにおいしくないのだ。

トマトに問いかけても、無残に身体を割られた果実は、沈黙して返事をしない。
息を吐いて、天井を見上げる。

トマトは、本当に嫌い。

だって、おいしくない。

この、ゼリー状の緑のところと、種なんか、口に入れたときに最初に舌について、
悶えたくなるくらい気味の悪い酸味を伝えてくる。
それが、ほっぺをきゅうっと収縮させて、痛いし、おぞましい。
身を噛み潰す感触はまるで虫を噛み潰しているみたいで、頭が真っ白になる。
皮なんか、噛み切ったそばから歯やほおの内側にくっつくし、表裏のざらざらとつるつるが、それこそ虫を思い起こさせる。
種を噛んだ時の嫌悪感といったら、ない。
口内に広がる汁は、何もかもを溶かしてしまいそうで、正直怖い。
喉越しなんて最悪だ。
いつまでも粘ついて残る後味が、食後の紅茶の味までもを最低に変えてしまう。

なんで、こんなものが食卓にあがるのだろうか。

なんでパチェは、これをおいしいといって食べるのだろうか。

気持ち悪い。
本当に、気持ち悪い。

ぐいぐいとフォークの先でトマトを押しやり、レタスに矛先を向ける。
三枚ほどを一気に串刺して口に運び、咀嚼する。
これは、おいしい。
ほのかに甘いし、トマトとは違う。

「お前とレタスのおいしさとは、天と地ほどの差があるのだ」

レタスにフォークを突き立てながら、トマトを嘲笑う。
レタスはおいしい。
トマトはおいしくない。
それは、いうなればこの世の摂理。
しかし。
しかし、だ。
これを食べなければ、紅茶が飲めない。
それはまずい。
それは嫌だ。
何とかして食べなければならないが、できれば口に入れたくない。
そんなときこそ私の能力。
自らの運命を見て、トマトを食べずにすむ道を模索する。
もしくは、この手で作り出す!

そう意気込んだはいいものの、何度運命を見てみても、トマトと私の縁が見えない。
これじゃあ運命の弄りようが無い。
どうすればいいというのだ。
私に地獄を味わえば良いとでも思っているのか、咲夜は。
いや、地獄以上の恐怖だ。
今こうして前にしているだけでも、私は恐ろしい思いをしている。
悪魔と呼ばれる私が、だ。笑ってしまう。
けれど、事実。
こんなもの、食べたくない。
目に入れたくない。
あとついでに、赤色でいて欲しくない。
青色にでもならないかしら、これ。

カツン、と音がして、フォークがお皿の底とキスをした。
もうない。
ターレス…じゃなかった、レタスがもうない。
これじゃあ、誤魔化しようもない。
どうしよう。
どうすればいい。

……はっ!
そうだ、ディスティニーカード!

いそいそと懐に手を伸ばして、お手製のデスティニーカードを取り出し、手の内に広げる。
四枚のカードには、それぞれ私が辿る運命が短く書かれていた。


・トマトを食べる

・サラダを完食する

・トマトを胃に収める


ごん、とテーブルに額をぶつけた。
なにこれ。
もしかして馬鹿にしてるのかしら。
作ったの私だけど。
いやまて、まだ四枚目がある。
薄目でちらっと、頼りの四枚目を見る。
頼む、運命よ、私に微笑んでくれ…!


・トマトイーターレミリア


「格好いい……」

じゃなくて!
ああ、運命に見放されるとは、能力が泣くわ……いや、私が泣くわ。
ていうかもう泣いてるわ。

これはひどい、とうなる。
どうにもならない。
どうにもできない。
これを、食べるしか道はないのか。

……それしか、方法はないようね…。

ならば…!

「私がじきじきに…相手をしてあげるわ!」

勝負よ。
これは、真剣勝負。
トマトと私との。
あ、そんな風に言うと格好良いかも。

でも、そうなってくると必要なのは、名前。
トマトの名前。
だってトマトじゃあ格好がつかないし。

腕を組んで、考える。
何かいい名前は…

トーマ、でいいか。

「じゃあ、トーマ。勝負よ」
「よしこい、吸血鬼よ」

フリーズ。

………。

……。

…。

「喋ったぁあああああああああ!!?」

椅子をひっくり返す勢いで後ろへと跳び退けば、トマトは四つの切り身をくっつけて、丸くなった。
にょいーんと、嫌に高い鼻が突き出て、二つの目が開き、口ができる。

「HAHAHA!トーマ様のおでましだ!」

私は無言でグングニルを投げつけた。
テーブルもろともトマトは消滅し、お皿も消滅し、壁も消滅した。

肩で息をして、膝に両手を当て、目をつぶる。

何あれ。
ひょっとして何か喚んじゃったのかしら。
いや、でも、もういい。
もういいのよ、レミリア。
あれは消えた。
私が消した。

つまり……

「つまり、私の完全勝利というわけね…!」
「おめでとうございます、お嬢様」

息が詰まる。
油の切れたロボットのようにゆっくりと後ろを向けば……。


鬼が、いた。



第二ラウンドの始まりだった。
トーマ君二十個追加でーす
中華妖精
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
トマトイーターレミリア△っす!
2.名前が無い程度の能力削除
流石は幻想郷
トーマのほかにはピーマやキャロルとかかな
3.削除
トマトの何が不味いのかはよく分からないな
本当に美味しいトマトは塩ふるだけで結構美味いんだけどなぁ……おぜうにはそれがわからないのか
多分このおぜうはセロリとかも駄目なんだろうなぁ
4.名前が無い程度の能力削除
好きとか嫌いとかはいい。
トマトを食べるんだ
5.名前が無い程度の能力削除
お嬢様の気持ちは良く分かるよ
トマトは中身のうじゅうじゅしたところと皮を取って身だけにすればなんとか食べれるレベル
ピーマン、セロリ、アスパラ、ゴーヤーとかはおいしいのにトマトはなんでああなんだろう?
でもトマトジュースは好き
6.名前が無い程度の能力削除
そんなーおぜうさまに
つミネストローネ
7.名前が無い程度の能力削除
美味いか不味いか論ずるつもりはない……苦手なものは苦手なんじゃいorz
私もトーマさん相手には黒星ばかりです
8.過剰削除
好き嫌いは無くすものじゃない。耐えるものだッ……!

>格好いい……!

なにがだよどこがだよwww
9.名前が無い程度の能力削除
野菜人は戦闘種族だ!嘗めるなよ!
10.名前が無い程度の能力削除
トーマさん好物なんだよなー。
モッツァレラチーズにはさんでバジルを乗っけて食べるとうまい。
11.名前が無い程度の能力削除
それ、俺の名前……。
12.名前が無い程度の能力削除
トマト食えない…
キャベツはいけるがレタスも無理
だからレタス食えるおぜうを尊敬
あとなんかサイヤ人がいるw
13.名前が無い程度の能力削除
ち、違うの咲夜聞いて!
が目に浮かびました。
14.アサトモ削除
非常に共感できてしまいました…。
自分自身トマトが大っ嫌いなので、レミリアには食べずに頑張ってもらいたいです。
15.名前が無い程度の能力削除
そもそも主がそこまで苦手な生トマトを出すなよ、せめて食べやすいように料理してやれよ・・・
とかいうか嫌がるの判ってやってるんだろーな、この冥土長
16.名前が無い程度の能力削除
トーマの墓をたててやる
17.名前が無い程度の能力削除
これを書いた作者さんは本気でトマト嫌いなんだろうな
18.名前が無い程度の能力削除
>>5
奇遇だな、私は逆にトマトジュースは嫌いだ。あんなものにトマトを材料にしたなどとは言わせん。

トマトが嫌いだなんて……!やっぱりレミリアは悪魔なのか……!?
19.名前が無い程度の能力削除
給食食えなくて居残りでくわされたの思い出して、全力で感情移入したぜ
20.名前が無い程度の能力削除
トマトが嫌いなだけなのにこんな大袈裟な話にしちゃうなんて
さすがお嬢様ww
21.名前が無い程度の能力削除
多分 吸血鬼がニンニク嫌いなのも、こんな理由なんだろうなぁ。
真祖がニンニク嫌いで、それを吸血鬼の血のせいにしてごまかしたのが始まり……みたいな。多分当時はニンジンとパセリとピーマンもそうだったに違いない。
22.名前が無い程度の能力削除
トマトイーターレミリアが格好いい……ふむ、さすがはお嬢様だ(笑)
あ、ちょ、メイド長、そんなに睨まなアーーーッ
23.名前が無い程度の能力削除
トマトの嫌いなお嬢様……カリスマ(笑)
……おや誰か来たようだ
24.名前が無い程度の能力削除
地球まるごととはまた懐かしいネタをはさみますね
やってみなくっちゃわかんねえとは正にこのこと