……ここは。
ここは、森。外の世界の、森だ。間違いない。
……あのとき、博麗神社で霊夢さんと共にいた私は。
衝撃で結界の外まで吹き飛ばされてしまったのだ。
……妖怪は、外では存在を保てない。
幻想は幻想郷にしか生きられないのだ。
……幻想郷は、壊されてしまった。完膚なきまでに、壊されてしまった。
しかし、それでも、帰らなくては。生きなくては。
私、射命丸文は、まだ生きなければならない。
戻りたい、そのためには、
霊夢さん、霊夢さんを探さないと……!
……ここは。
ここは、森。
……私は。
私は──誰?
──思い出せない。
ここはどこわたしはだれなぜここにいる?
──思い出せない。
でも……会いたい。
会いたい者がいる。
彼女は妖怪で、私は人間だ。
普通に考えて、会うのは危険すぎる。
他にはなにも思い出せないが、でも、会いたいという感情が在る。
会いたい、会いたい。
彼女はきっと近くにいる。
──探そう。
とある森の中。
故郷を壊された少女と、
記憶を壊された少女が、
お互いを求め、探し始める。
壊された少女達
文は空を飛ぶ。
森、森、延々と森である。
霊夢の姿は、まだ見えない。
……おかしい。
こういう状況におかれて、彼女が森の中でぼーっとしているわけがない。
それこそ、空を飛ぶなどして現状確認程度はするはずだ。
……さっきから四方を飛び回っているが、いっこうに姿が見えない。
何故だ、何故出てこない?
……怪我でもして、飛べないのだろうか。
──それとも、
ソ モ ソ モ コ コ ニ ハ イ ナ イ?
──っ……
考えるな。そんなことは考えるな!
きっと、絶対、何らかの理由で飛べなくなっているだけだ。
上からじゃ見えない。降りて走って探そう。
早く、早く見つけないと。
嫌な考えは、涙と共に森の養分になってしまえ……
文は、降下を始めた。
人間の少女は森を走る。
道なき道を掻き分け、走る。
足に草が刺さり、手に枝が当たって、顔には蜘蛛の巣がかかり、
──あぁ、こんなとき、あの妖怪の彼女みたいに、
空を飛べたらいいのに……。
──でも、私は人間だから。
走って会いにいかなくちゃ……。
少女は再び走り始めた──
そして、少女は巡り会う。
少女は森を抜け、ぽっかりと開けたところにでた。
向こうの森からも誰かがでてきた。
……あれは──
「……あ、あや……」
覚えていないはずの名前が、自然に口をついて、出た。
「文ぁっ!!」
文は森を抜け、ぽっかりと開けたところにでた。
──そして一言、つぶやいた。
「……ここまで、ですか──」
「文!文ぁ!!」
少女は彼女に抱きついた。
「……霊夢」
文は一言、呟いた。
「よかった、よかった……会えた、また、会えたよぉ……」
霊夢は抱きついたまま泣きじゃくった。
「……もう、貴女は……どこに行っていたの?」
……文は、優しく声をかけた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、よかった、よかった……」
霊夢は泣き続ける。
「……ふふ。さぁ、帰りましょう?霊夢?」
……文、は、そう、提案する。
「……帰る?」
霊夢は泣き止み、きょとんとして尋ねる。
「ええ──」
文は答える。
「──私たちの家に」
鬱蒼と茂る森の中、開けた場所が一つあった。
そこには黒い羽が一枚。
その持ち主は、もう、いない……。
鬱蒼と茂る森の中、開けた場所が一つあった。
そこには黒い羽が一枚。
その持ち主は、いま、幸せに……。
これは二つの物語。
故郷をこわされた少女の話と、
記憶をこわされた少女の話。
彼女らは決して交わらず、決して関わらない。
たとえ一生懸命になっても、報われない時がある。
しかし一生懸命になったから、報われる時もある。
未来は誰にも分からない。
人事を尽くし天命を待て。
それがあなたにできる唯一つの意思主張なのだから。
ここは、森。外の世界の、森だ。間違いない。
……あのとき、博麗神社で霊夢さんと共にいた私は。
衝撃で結界の外まで吹き飛ばされてしまったのだ。
……妖怪は、外では存在を保てない。
幻想は幻想郷にしか生きられないのだ。
……幻想郷は、壊されてしまった。完膚なきまでに、壊されてしまった。
しかし、それでも、帰らなくては。生きなくては。
私、射命丸文は、まだ生きなければならない。
戻りたい、そのためには、
霊夢さん、霊夢さんを探さないと……!
……ここは。
ここは、森。
……私は。
私は──誰?
──思い出せない。
ここはどこわたしはだれなぜここにいる?
──思い出せない。
でも……会いたい。
会いたい者がいる。
彼女は妖怪で、私は人間だ。
普通に考えて、会うのは危険すぎる。
他にはなにも思い出せないが、でも、会いたいという感情が在る。
会いたい、会いたい。
彼女はきっと近くにいる。
──探そう。
とある森の中。
故郷を壊された少女と、
記憶を壊された少女が、
お互いを求め、探し始める。
壊された少女達
文は空を飛ぶ。
森、森、延々と森である。
霊夢の姿は、まだ見えない。
……おかしい。
こういう状況におかれて、彼女が森の中でぼーっとしているわけがない。
それこそ、空を飛ぶなどして現状確認程度はするはずだ。
……さっきから四方を飛び回っているが、いっこうに姿が見えない。
何故だ、何故出てこない?
……怪我でもして、飛べないのだろうか。
──それとも、
ソ モ ソ モ コ コ ニ ハ イ ナ イ?
──っ……
考えるな。そんなことは考えるな!
きっと、絶対、何らかの理由で飛べなくなっているだけだ。
上からじゃ見えない。降りて走って探そう。
早く、早く見つけないと。
嫌な考えは、涙と共に森の養分になってしまえ……
文は、降下を始めた。
人間の少女は森を走る。
道なき道を掻き分け、走る。
足に草が刺さり、手に枝が当たって、顔には蜘蛛の巣がかかり、
──あぁ、こんなとき、あの妖怪の彼女みたいに、
空を飛べたらいいのに……。
──でも、私は人間だから。
走って会いにいかなくちゃ……。
少女は再び走り始めた──
そして、少女は巡り会う。
少女は森を抜け、ぽっかりと開けたところにでた。
向こうの森からも誰かがでてきた。
……あれは──
「……あ、あや……」
覚えていないはずの名前が、自然に口をついて、出た。
「文ぁっ!!」
文は森を抜け、ぽっかりと開けたところにでた。
──そして一言、つぶやいた。
「……ここまで、ですか──」
「文!文ぁ!!」
少女は彼女に抱きついた。
「……霊夢」
文は一言、呟いた。
「よかった、よかった……会えた、また、会えたよぉ……」
霊夢は抱きついたまま泣きじゃくった。
「……もう、貴女は……どこに行っていたの?」
……文は、優しく声をかけた。
「ごめんなさい、ごめんなさい、よかった、よかった……」
霊夢は泣き続ける。
「……ふふ。さぁ、帰りましょう?霊夢?」
……文、は、そう、提案する。
「……帰る?」
霊夢は泣き止み、きょとんとして尋ねる。
「ええ──」
文は答える。
「──私たちの家に」
鬱蒼と茂る森の中、開けた場所が一つあった。
そこには黒い羽が一枚。
その持ち主は、もう、いない……。
鬱蒼と茂る森の中、開けた場所が一つあった。
そこには黒い羽が一枚。
その持ち主は、いま、幸せに……。
これは二つの物語。
故郷をこわされた少女の話と、
記憶をこわされた少女の話。
彼女らは決して交わらず、決して関わらない。
たとえ一生懸命になっても、報われない時がある。
しかし一生懸命になったから、報われる時もある。
未来は誰にも分からない。
人事を尽くし天命を待て。
それがあなたにできる唯一つの意思主張なのだから。
あと作者の脳内保管が多いぜよ。
続くなら期待しています。