Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

恋の悩みは魔理沙におまかせ

2011/06/29 03:29:34
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※オリキャラが出てきます。苦手な方はご注意ください。



白蓮は寺を建ててからというものの、妖怪だけでなく人間にも人気が出るようになった。
風変わりな尼に閉鎖的な村人達が興味を示すのは当然で、パンダを見る人のように連日人が押し寄せた。
白蓮は嫌な顔一つせず来るもの拒まずの精神で来た人間、妖怪みんなの話相手になったり説法を説いたりしている。
しかしそれを快く思わない人間がいるのも確かだった。

「むう」
命蓮寺が賑わうのを眉間にシワを寄せて考え込んでいるのは白黒の魔法使い霧雨魔理沙。
「これじゃなんでも屋としての私の立場が益々なくなるじゃないか」
あまり知られていないが魔理沙はなんでも屋なのだ。
しかし魔理沙がなんでも屋という事を知っている里の人間がほとんどいないという事を魔理沙は知らない。
元々霊夢という何でも解決屋のライバルがいるのに最近は守矢とかいう変なのまで増えて、ここでまた何か解決しようとする奴が増えては困る、
しかも相手は同業者だ。

魔理沙は焦っていた。

聞けば白蓮は説法の他に悩み相談なんかもしているらしい。
人柄の良い白蓮を慕って小さい悩みからお金の貸し借りの問題まで色んな悩みを解決してるとか。
魔理沙はそれ位なら自分にもできると思い、
行動派の彼女は自慢のスピードで命蓮寺の前に並ぶ白蓮にお悩み相談をしにきた人間をとっつかまえて連れ去った。
一応、連れ去る際に「悩み相談なら私の方が得意だぜ!」と断ったものの、
首根っこ掴まれて爆走する空飛ぶ箒に乗せられた人間に聞こえてるとは思えなかった。

無理やり魔理沙の家に連れてこられた村人、農業を営む38歳男性妻子有りは今の今まで命蓮寺の前にいたのに、
なんだか小汚い家にいる自分が信じられないといった具合で呆然としている。
「なんだよなんだよ、お悩み相談なら私にしろよ水くせーぞ」
なんてジャイアンみたいな事をぬかしながらお茶を沸かす10代前半の小娘が何を言っているのかもよく理解できない様子だ。
しかしよくよく見れば幻想郷に住む人間なら一度はその姿を目にした事がある。
白黒の魔女、というよりも、
「霧雨店の娘!」
「違う!」
男は思い出したように指を指すが当の魔理沙は顔を真っ赤にして否定した。
魔理沙はある程度歳を重ねた里の大人達からは霧雨店の娘として認識されている。
「私は魔法使いなんだ、命蓮寺の尼魔女なんかより頼りになるぜ」
トン、とお茶を机の上に置き、ドサっと座ると隣に積んである本がグラグラ揺れて危ない。
自信満々に張るほどない胸を張る魔理沙を前に男は眉間に皺を寄せ顎に手を当てて考え込む。
無理もなかったが魔理沙はむっと口をへの字を曲げた。
「なんだよ、私は優秀だぞ?」
「そうは言ってもなあ・・・」
「口は堅いぞ!」
嘘である。
「・・・これは最重要機密事項だぞ、本当に守れるか?」
急に息を殺したように小声になり、真剣な顔つきになった男に少々戸惑ったが怯む魔理沙ではない。
それに機密事項を白蓮に話せて自分に話せないのは許せない。
「いいぜ、何でも言ってくれ」
魔理沙が胸を叩くと男の顔が更に真剣になる、迫真と言って良い。
魔理沙も息を呑んだ。
「実は・・・」
男は魔理沙の耳に顔を近づけてぼそぼそ、と小さな声で悩みを告げた。

しばらく部屋は沈黙に包まれた。
男は暗い顔をし、魔理沙も同じように顔を曇らせている。
「・・・どうしたらいいと思う?」
男が頭を抱えて魔理沙に聞く。
思っていたよりも難しい質問だったようだ、魔理沙は手を口に当てて考え込んでいる。
「・・・や、この質問は中々ハードだ」
「そうだろ!?」
「ああ、だから解決するのに時間がかかる、一日待ってくれ!」
「い、一日で良いのか?」
「ああ!一日あれば解決できる!」
「本当か!やあ助かった!」
男は魔理沙の手をとってぶんぶん振る。
魔理沙の方は笑顔なものの、汗が一筋頬をつたっていた。


「困った・・・」
男を一度家に帰らせると、魔理沙は箒に乗って幻想郷の上空を飛んでいた。
飛ぶ、というよりも上空でホバリングし頭を抱えている。
悩み相談なんて簡単、白蓮にできるなら私にもできて当然、なんて甘い考えを持っていたがいざやってみると難しい。
「まさか質問の意味がわからないなんて・・・」
魔理沙は心底悔しそうな顔をする。
わからないなら素直に聞けばいいのだが、それができないのがひねくれ者の魔理沙だ。
しかし勢いでできると言ってしまった事は後悔していない、やると言ったらやる。
まず言葉の意味を調べなくては、そう思った魔理沙は紅魔館に急行した。

今まで借りた本にそんな言葉は載ってなかったが、
魔理沙の家にある本の倍の倍は置いてある紅魔館の図書館ならきっとその言葉について書いてある本はあるはず。
しかしこんなにたくさんある本の中からどういう意味なのかもわからない言葉一つ調べるのは難しい。
そこで、動かない大図書館様のお力を借りることにした。

「パチュリー、せっくすれすって知ってるか?」
急に来た泥棒に魔法の一つでも食らわしてやろうかと思っていたパチュリーはすべての力が抜けて床に突っ伏した。
「な、なんだパチュリー、そんなに不吉な言葉なのか!?」
パチュリーはむっくり起き上がり、床に着いた服を払うとゴホンと一つ咳払い。
「・・・で、それがどうかしたの?」
「わ、私はその意味を知らないわけじゃないぞ!えーと、お前が知ってるか試したんだ」
「・・・誰にからかわれたの?」
「誰にもからかわれてなんかない!」
パチュリーはなんだか魔理沙が不憫に思えてきてまともに直視できず顔を本で隠した。
「あ、パチュリーだって本当は知らないんじゃないか?良いんだぞ正直に言って!」
「・・・・・」
パチュリーは笑いを堪えるのに必死だった。
「わ、私より咲夜の方が詳しいわよ、きっと」
「えー、咲夜か・・・別に聞かなくても良いんだよ、せっくすれすについての本だけ貸してくれりゃ」
もうパチュリーは顔を背けてブルブル肩を震わすしかなかった。
「いや本より咲夜の方が詳しいから、ね、呼んであげるから、待ってなさい」
パチュリーは魔理沙を椅子に座らせるとよろよろと飛んで咲夜を呼びに行った。
そのあまりに不自然な姿に魔理沙はふふんと得意げに笑う。
「なあんだ、あいつも知らないな、しかしあいつが知らないとなると咲夜が知ってるとは思えんしなあ」
なんて言いながら少しほっとしたように腕を頭の後ろに回し足を組んでブラブラさせ、次に聞く相手を考え始める魔理沙だった。

「魔理沙が聞きたい事があるって」とだけ聞かされた咲夜は、目を合わせずに肩を震わせて笑うパチュリーに違和感を覚えながらも
行かないわけにはいかず、図書館へ足を急がせた。
「何かしら、私に聞きたい事って」
「おーわりーな、たぶんお前も知らない事だと思うんだけどー、せっくすれすって知ってっかー?」
まだ歩いている途中だった咲夜は足を止めて固まる。
それからすぐに隣で笑いを堪えるパチュリーを睨んだ。
「知らなかったら良いんだぞ、パチュリーも知らないみたいだしー」
「・・・それで、それがどうかしたの?」
「え?ああ意味を聞きたいんだ、あ、私は知らないわけじゃないぞ、ほんとだぞ」
むっとしていた咲夜だがちょっと慌てたように言う魔理沙を見て状況がつかめてきたらしく、口元を緩ませた。
「そうねえ、ごめんなさい、私には検討もつかないわ」
「あーやっぱりな、まあ良いんだぜ、パチュリーだって知らなかったんだから」
答えを聞いて満足そうにニコニコ笑う魔理沙の姿に耐えられず咲夜も思わず下を向いて肩を震わせた。
「れ、霊夢ならご存知なんじゃなくて?」
「霊夢は駄目だ」
「どうして?」
「え?いや、あいつはきっと知らない!」
魔理沙は自分が知らない言葉を霊夢が知っているのは癪だと思っているらしい。
「そうだな~パチュリーが知らないとなると・・・あいつかな」
魔理沙は椅子から下りて箒に飛び乗り、図書館の天井近くまで浮遊する。
「じゃあな、邪魔したぜ!」
そう言うと窓からびゅんと飛び出していった。
それを確認すると、パチュリーと魔理沙は顔を見合わせ、もう一度お互い顔を背けてブルブル震えた。
「あれって知らないんですよね?」
「知らない知らない」
「教えてあげればいいのに、意地悪なんですね」
「あんたもじゃない・・・」
二人ともどこかで魔理沙に対し同情するような気持ちもあるのか、声を出さないように笑っていたが
とうとうパチュリーが咳き込み咲夜は慌てて水を取ってくるはめになった。

魔理沙の言うあいつ、とは竹林の奥に住む月の賢者だった。
永琳ならなんでも知ってるし、教えてもらうのも大して悔しくない。
「あら珍しい」
元気の塊がきた、と永琳は少々驚いたような顔をしたが机の前に正座し、薬を作ったまま手を止めない。
「で、何かあったの?」
「ちょっと聞きたい事があるんだけど、私が聞きに来た事は誰にも言わないでくれよ!」
「いいわよ、それで何?」
「せっくすれすについて教えてくれ」
「え?何?」
永琳は薬をつくる手を止めて耳に手をかけて聞き返した。
「だからー、せっくすれすについて教えてくれよ」
「もう一回言って」
「せっくすれすだよー」
「ごめんなさいもう一回」
「せっ!く!す!れ!す!」
魔理沙はしつこく聞き返してくる永琳に業を煮やし大きな声で叫んだ。
それは永遠亭の兎達にはもちろん盆栽の世話をしている姫君の耳にも届いた。
「もー、何回言わせるんだよ、歳取って耳が遠くなったのか?」
「あらそんな事ないわよ、ごめんなさいね、聞きなれない言葉だったものだから、つい」
永琳は優しい微笑みを魔理沙に向ける。
しかし魔理沙はちょっと慌てた。
「え、永琳でも知らないのか!?」
「そうねえ知らないわねえ、誰から聞いたの?」
「里の人間から」
「ふうん、そうなの、じゃあ里で流行ってる遊びとか食べ物の事かもしれないわね、私そういうのには疎いのよ」
「そ、そうか、なるほど、難しい言葉じゃないかもしれないもんな、うん」
難しい専門用語だと思っていた魔理沙は新しい解釈を得てほっとした。
それにそれなら自分が知らなくても恥ずかしくない。
「ごめんなさいね、力になれなくて」
「いや、それなら永琳も知らなくて当然だ、私だって知らなかったし」
「村の事なら慧音に聞いたらどう?あの子もなかなか物知りよ」
「おおなるほど、恩に着るぜ永琳!」
「どういたしまして」
にっこり微笑む永琳はバタバタ走って出て行く魔理沙の後姿に手を振る。
しばらくすると輝夜がひょっこり顔を覗かせた。
「魔理沙が来てたの?あの子何か変な事叫んでなかった?」
「そういうお年頃なんでしょう」
永琳はそれ以上は何も言わず、薬作りを続けた。

村で教師をしている慧音なら知っているに違いない。
タイムリミットは一日、まず言葉の意味を知り、その後解決しなければいけないのだ、魔理沙は箒を急がせる。
「ややっ!」
眼下に見えた人物に箒を急停止させる。
寺子屋まで行こうとしたが、村のハズレに目的の人物がいた。
「慧音!」
「ん?」
慧音は頭上から降って来た声に顔をあげる。
「やあ魔理沙」
「ちょっと聞きたい事があってー」
「お前が?珍しいな」
魔理沙は地上に降りスカートを払い慧音の目を見る。
「せっくすれすって何だ?」
「きゅ、急に何だ?」
慧音はまるで明日の天気でも聞くかのようにあっけからんとした態度の魔理沙の口から出た言葉にたじろいだ。
「村で流行ってるのか?」
からかってるのかと思ったが、魔理沙のあまりにも無垢な表情がそうではないと告げている。
慧音は回答に困りつつも少しだけ考えて口を開いた。
「・・・別に流行ってない、お前は誰に聞いたんだ」
「お!知ってるのか!ちょっと困った事があってな、意味だけ教えてくれ」
当初の目的である他人の悩みを相談されるというよりも魔理沙が相談する側に回っているという事を魔理沙自信は気付いていない。
慧音は痛む頭に手を当ててうな垂れる。
「どうした?具合悪いのか?」
「いやあのな・・・とりあえずどこでそういう言葉を聞いてきたのかだけ教えてくれ、厳重注意しとくから」
「いや駄目だ、信頼に関わる」
「・・・・・・」
慧音の頭は益々痛んだ。
「・・・そ、そんなにヤバイ言葉なのか・・・!?」
魔理沙は黙り込む慧音に不安をおぼえた。
「・・・まあそうだな」
「そ、そういえば最重要機密だって言ってたし・・・む、村で何かあったのか?まさか異変か!?」
「・・・・・・」
「せっくすれす異変・・・一体どんな異変なんだ!?妖怪の名前か!?」
心配して慌てる魔理沙の顔を見て耐えられなくなった慧音の心は折れ、ここは教育指導者として教えてやらねばならないと、色々覚悟した。
「あのな魔理沙、セックスレスというのはな・・・」
慧音も大きな声で言えず、ここが村の中心でも寺子屋の中でも子供達の前でもなくて良かったと心の底から思った。


セックスレスの意味を慧音にまるっと教えてもらった魔理沙の顔は熱した鉄のように真っ赤だった。
パチュリーや咲夜や永琳の反応や今までの自分の言動が走馬灯のように蘇る。
「・・・だからあんまりそういう言葉を安易に口にするものではないぞ」
口をぽかんと開ける魔理沙の顔を見て教えた慧音の方も恥ずかしくなってきてしまう。
「えぅ・・・そ、それを解消するにはどうしたら良いんだ・・・?」
魔理沙はわなわな肩を震わし目に涙を溜めながらもなんとか我を保とうと慧音に訪ねる。
「知らん!そういうものは本人がどうにかするべき問題だ!」
流石の慧音もそこまで面倒見切れず、どこか魔理沙を不憫に思いながらもスタスタと歩いて行ってしまった。
「ど、どうすれば良いんだ・・・」
一人残された魔理沙の頭の中には鐘が鳴るように何度もセックスレスの意味が繰り返されていた。

相談内容は「女房とセックスレスなんだがどうしたらいい?」だった。
思春期の女の子に聞く内容ではない。
セックスレス、もといセックスについての知識を得た魔理沙は一人、家で頭を抱えていた。
「何で私にそんな事聞くんだ・・・」
尤もだが自分から無理やり聞いたくせに勝手な事まで言い出す始末、そもそも当初は白蓮の客を横取りした事からはじまったので完全に自業自得である。
「・・・白蓮はこんな悩みも解決してるのか・・・」
ふと、魔理沙の頭の中に色んな顔が浮かぶ。
「馬鹿ね、そんな事もできないの?」という霊夢、「私が代わりに解決しましょうか♪」と早苗、
そして何も言わずに腕を組んで笑う咲夜を思い浮かべた所で魔理沙は顔を赤くして帽子をぎゅーっと両手で掴んで深く被った。
とにかく今は咲夜やパチュリーの事は思い出したくないらしい。


一晩考え込んだ魔理沙は目に隈を作って男の家へ出向き、女房の前で「あんたの旦那がセックスレスで悩んでるからお願いだから相手をしてやってくれ」と真っ赤になりながら頼み込んだが男の女房は「こんな小さい子に何言ってるのよ」とカンカンになって怒り、果ては夫婦同士の殴り合いの喧嘩にまで発展(ほぼ女房の一方的な暴力)、仕舞いには女房が泣きながら子供を連れて家を出て行くという展開で幕を閉じた。

「なんでだー!」
と叫ぶ今にも泣きそうな魔理沙だったがこれ以降悩み相談は一切受ける事はなく、魔法の修行に専念したと言う。

女房に出て行かれた男こそ「なんでだー!」と叫びたい気持ちで一杯だった。
その後その事を霧雨店の親父に愚痴りに行くと親父は黙り込んで複雑そうな顔をしていたらしい。
あまりにありふれたネタなので被ってそうで怖いです。
幻想郷には「セックスレス」っていう言葉自体なさそう。
慧音に聞いたら「なんだそれは」って返って来るのが正解かも。
nini
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
相談者が悪い。
これ結論。

しかし、そんな悩みをなむさんに打ち明けてどうす……そうか、男の狙いはエロゲ展開だな。
よし、死ぬがよい。
2.名前が無い程度の能力削除
うん、これは相談者が悪いな。
僧で妖怪でさらに女性の白蓮に対して相談する内容じゃないぞw

・・・十代前半の魔理沙にまで言うとは余程切羽詰まっていたのかもしれんが。
3.奇声を発する程度の能力削除
何で相談したんだよww
4.名前が無い程度の能力削除
相談者災難すぎるwww