Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

姉妹の恋路を邪魔する奴は

2011/06/26 18:29:36
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 フランドールはちょっぴり手を握りしめたくなったのだ。


 気の向くままに屋敷を徘徊していると思いもよらない発見があったりする。調理場の棚には咲夜がつまむためのお菓子をストックしていたり、二階の広間の暖炉、それが隠し部屋になっていてメイド妖精がさぼっていたりする。地下室から紅魔館内へ、行動範囲が少し増えただけだったけれど思った以上におもしろいことがあった。こうなると必然的にもっと広い外の世界にも興味が湧いてくる。屋敷の中でもまだまだ不思議なことは転がっていると思う。でも、窓の向こう側にも食指が動いたのだ。
 だから今、フランドールはレミリアを探していた。出かけてもいいかというお願いをきいてもらうために。

 廊下の角を曲がると蝙蝠の羽、その先っぽが向こうに見えた。レミリアだ。あんなに羽をぱたぱたさせて、何か嬉しいことでもあったのだろうか。フランドールはそんな疑問を抱いてもう一人の少女を見つけた。
 真っ黒な髪に真っ黒な服、三対の左右で異なる羽がゆらゆらしている。赤と青のそれを見て、自分のことは棚に上げ、フランドールは変な羽だと思った。
 何やら、良さげな雰囲気で話をしている。特にレミリアなんて羽の動き様とあの顔。嬉しさを隠そうとして強張っているあの顔。あんな表情、私に見せたことがあったっけ。フランドールはどうにも思い出せなかった。
 黒い方はうつむきがちで受け答えに困っているように見える。その姿を見てレミリアは楽しそうにしていた。
 気付くと二人の目、握りしめてしまえば二人が壊れてしまう目を両の掌まで引き寄せていた。そんなに自分は気に入らなかったんだろうか。あいつが見知らぬ誰かと親しげにしていること。いや、紅魔館の主が誰だかわからない奴に気を許しているのが癇に障ったのだ。フランドールはそう結論づけた。そもそもここで隠れるように立ち止まっているのが可笑しい。堂々と出て行ってひやかしの一つでも掛けてくればいいのだ。機嫌も良さそうだし、お願いも聞いてくれるだろう。
 そう決めたときにレミリアはそっと少女の額に口付けをした。
 フランドールは両手を握りしめた。
 
 二人は爆発した。

















 封獣ぬえ、それが少女の名前だった。フランとぬえは片やベッドに腰掛け、片や床に座らされている。

「で、なんであいつと仲良さげにしてたのさ」

 フランは黒こげになっていた塊のうち、誰だかわからない方を自分の部屋まで引きずってきた。ご丁寧に空を飛ばず廊下や階段に打ち付けながらである。
 そして今、フランの部屋で行われているのは命を握った尋問である。

「なんでそんなことあんたに言わなくちゃいけないのよ」

 ぬえは吐き捨てるように言った。わかってないな。妖怪の格はけっこうあるみたいだから強気なんだろう。折ってあげないと。フランはそう思って片手を挙げる。ゆっくりと指を折りたたむと、ばちんと音をたてて枕が破裂した。ふわふわと中の羽毛が舞う。

「私が手を握るとね、枕も貴方も何だろうとああなっちゃうの。今は貴方がここの手のなかにあるわ」

 そうして掌を見せる。

「だから私がうっかりして手をきゅってしたりすると。怖いわね」
「ぐう、大したことじゃないから話してあげるよ」

 ぬえは忌々しそうに言った。能力が不公平だなんだとも愚痴っている。

「私はさ、物の認識を見る奴ごとに変えることができるのよ。とりあえず自分に使って、目についたこの紅い建物で悪戯しようと思ったわけ」
「妖精みたいなことするのね」
「別にいいじゃないの。ここには妖精がいっぱいいたからそれに紛れようと思ってたのにあの吸血鬼が『フラン―』なんて寄ってくるから」
「ちょっと待って。貴方は好きな姿に自分を見せられるんじゃないの」
「いや、相手に依存しているのよ。相手がそこにあっても不思議に思わないものと置き換わるわけ」

 フランは思う。あれ、私がお姉さまと話す頻度はそんなに高くないのに。

「普段見慣れないものになったりは」
「んー、よっぽど相手がそれを見たいと思ってない限りないんじゃないの」

 ということはレミリアはフランをよっぽど見たい、会いたいというわけだ。そういえばいつもは自分からレミリアを避けがちだったけれど。でも、そんなに渇望しているなら他人と妹を間違えるなよと思う。フランはそれにいらつきながらも何故かそれほど腹は立っていなかった。むしろ少しこそばゆく感じていた。

「そういえばその吸血鬼、『妖気の感じまで変えて、私を驚かそうとしてたのかしら。可愛いところもあるのね』なんて言ってきて対処に困ったよ」

 肩をすくめて言うぬえの呟きはフランの耳には入っていなかった。彼女は妄想の真っ最中であった。
 まさか、私に会いたいあまり盲目的になって気付かなかったとか。それは大妖怪的に情けない話ではあるけれど、嬉しかったり。いやお姉さまに思われて嬉しいとかはありえないし。むしろ気持ち悪いというか。だいだいお姉さまじゃなくてあいつだし。便宜的にそう呼んでやっているだけであいつで十分だし。というか、もし誰かが私に扮してなんか悪いことしようとしてたらどうすんのよ。今回は悪戯だったから良かったもののお姉さまに何かあったら……。いやこれは心配じゃないし、お姉さまに何かあったら私にも仕事が回ってきて面倒と思っただけで。あー、またお姉さまって思ってる。だからあいつでも相当譲歩してるんだって。本来ならレプリカとかちっこいのとかが呼び名としてぴったりなんだよ。……、これは言い過ぎかな。そう言えば珍しく私と会うときあんなに嬉しそうにして、まさか全部わかって見せつけてたなんてことないよね。そんなだったら百回壊しても許してやらないもん。あれ、でもお姉さまと話すときは気恥ずかしくて――いや、顔を合わせてあげるまでもなくてろくに向かい合ってないっけ? だとしたらお姉さまはいつも私と会うときあんな風だったのかな。それは見てなくて損をしたというか。尊大なお姉さまが私にでれでれなんて立つ瀬がなくて馬鹿みたいってだけでそれ以上の意味は多分なくて。喜んでるお姉さまを見れて嬉しいと同時に、ほんとはそれを私に向けてほしかったというか、いや別に、全然そんなことは――。
 巡る思いの中でフランは真っ赤になっていっぱいいっぱいであった。

「ねえ、どうしたのさ」

 そこへぬえが肩を叩いたので、フランは思わず手を握りしめた。
 
 ぬえは爆発した。
正体不明の種を拡大解釈しつつレミフラ。
ぬえちゃん好きな人には申し訳ないです。
一択
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
ぬえェ…
2.奇声を発する程度の能力削除
顔真っ赤にして色々考えるフランちゃん可愛いよ
後、ぬえどんまいw
3.名前が無い程度の能力削除
てっきりレミぬえかとおもったらレミフラだった
いい流れでした
4.名前が無い程度の能力削除
お嬢様もフランも可愛いなあ。
しかし、ぬえが不憫すぎるw
5.名前が無い程度の能力削除
素直になれないフランちゃん可愛すぎる
6.名前が無い程度の能力削除
フランちゃんツンデレかわいいよ
7.名前が無い程度の能力削除
もっと続きがみたいぞー!
レミフラー!
8.名前が無い程度の能力削除
ぬえぇぇぇぇん!?
9.名前が無い程度の能力削除
ぬえが踏んだり蹴ったり過ぎるww
10.名前が無い程度の能力削除
フランちゃんはかわいい。
かわいいは正義。
フランちゃんは正しい。
11.名前が無い程度の能力削除
いたずらの代償は爆破2回か、なんてハイリスクな遊び