雨、私の主にとっては忌々しいものこの上ないと言った天候だ。
「……あぁ~、雨なんか死ねばいいのに、貴方もそう思わない?美鈴」
「はしたないですよ、お嬢様」
しかしこの雨に私は感謝せねば為るまい主の可愛らしい姿を堪能できるのだから。
今日は月に一度の非番、門番服に身を包まずに私服で愛しい友人の隣に居る事のできる日。
「でも嫌なものは嫌なの、曇りだったら良いのになんで雨まで降るのよ」
「天気次第ですから」
私よりも若干、どころでは無い小さい彼女の頭を撫でながら、私は茶を飲む。
「いやぁ、咲夜さんの選別眼には驚かされますねぇ、このお茶最高ですよ」
「そりゃあ咲夜だもの、良いものしか選ばないわよ」
確かに、あの完璧主義の少女は何でもかんでも一流を目指す。まぁそれが行き過ぎて過労で倒れやしないかと部署違いながらも肝を冷やした。
しかし、この小さな主の下で働いているのだからそれはないだろう、案外この我儘に見えて実際我儘な吸血鬼は自分の配下の者を良く労わる。
「お嬢様、少し窓開けません?蒸してきました」
「良いわよ、頼もうと思った所だから」
立ちあがり、窓を開け放つとあるものが目に付く。
雨だと言うのに、主の最も忌み嫌うものの内の一つなのに、“それ”が目に付いた瞬間、私は彼女にある提案をした。
「お嬢様、外に出ませんか」
「はぁ?嫌に決まってるじゃない美鈴」
「違いますよ、少し散歩でもしません?」
そう言っても動きそうにないので私は意地でも外に出て貰おうと彼女を抱きかかえる。
「ちょ、めいりん、離しなさい」
「いーやーでーすー」
暫し口論し合うこと数分。
「部屋の中より外の方が涼しいとは妙な話ね」
結局外に出る事にしたお嬢様が私の後ろで傘を差しながら呟いた。
「そうですね」
梅雨の雨と言うのは一般的にジメジメして、鬱陶しいものだと言われるが、山が多いこの幻想郷では結構涼しく、暑く長い夏のうち最も過ごしやすい時期だと私は思っている。
「で、貴方の見せたいものって何かしら、美鈴」
「あぁその事です」
私は館内の花畑へ彼女を連れてゆき、雨に濡れ一際美しさを放っている花の元へ駆け寄った。
「これですよお嬢様……ってあれ?」
「走るんじゃないわよ、もう、こんな天気なのに貴方は本当に元気の塊みたいな妖怪ね」
こりゃしくじった、てっきり私に付いて来てくれるものだとばっかり思ってたわ。
「で、見せたいものって、これ?」
「えぇ、さっき窓から見たらものすごくきれいだったもんで」
言って見せるは雨に濡れるアジサイの花。
これまでも育てて来たが、今日ほどきれいと思った事はなかった。
「綺麗ね、雨に濡れて」
「これで雨が上がって陽が出れば雨粒がきらきら光って更に綺麗なんですが」
言って空を見上げるが、どうにも止む気配はない。
引き返しましょうか、そう言っても彼女は動く気配を見せなかった。
「晴れるまで待つわよ」
「は?」
何と言ったこの吸血鬼は。嫌いな雨の中に留まるって言った気がしたけど。
「お嬢様?」
「ん?」
「本当ですか」
「当り前よ」
さっきまで雨は嫌いだの何だの言っていたのに。なんて移り気なお方だ、連れ出したのは私だけど。
取り敢えず、私もお嬢様の隣に一緒にしゃがみ込む。
「全く、お嬢様はアジサイの様なお方ですね」
「それ、貴方の方が当て嵌まる気がするんだけど」
それを言った後お嬢様は、雨も好きになれるかもしれない、と静かに呟いた。
「……あぁ~、雨なんか死ねばいいのに、貴方もそう思わない?美鈴」
「はしたないですよ、お嬢様」
しかしこの雨に私は感謝せねば為るまい主の可愛らしい姿を堪能できるのだから。
今日は月に一度の非番、門番服に身を包まずに私服で愛しい友人の隣に居る事のできる日。
「でも嫌なものは嫌なの、曇りだったら良いのになんで雨まで降るのよ」
「天気次第ですから」
私よりも若干、どころでは無い小さい彼女の頭を撫でながら、私は茶を飲む。
「いやぁ、咲夜さんの選別眼には驚かされますねぇ、このお茶最高ですよ」
「そりゃあ咲夜だもの、良いものしか選ばないわよ」
確かに、あの完璧主義の少女は何でもかんでも一流を目指す。まぁそれが行き過ぎて過労で倒れやしないかと部署違いながらも肝を冷やした。
しかし、この小さな主の下で働いているのだからそれはないだろう、案外この我儘に見えて実際我儘な吸血鬼は自分の配下の者を良く労わる。
「お嬢様、少し窓開けません?蒸してきました」
「良いわよ、頼もうと思った所だから」
立ちあがり、窓を開け放つとあるものが目に付く。
雨だと言うのに、主の最も忌み嫌うものの内の一つなのに、“それ”が目に付いた瞬間、私は彼女にある提案をした。
「お嬢様、外に出ませんか」
「はぁ?嫌に決まってるじゃない美鈴」
「違いますよ、少し散歩でもしません?」
そう言っても動きそうにないので私は意地でも外に出て貰おうと彼女を抱きかかえる。
「ちょ、めいりん、離しなさい」
「いーやーでーすー」
暫し口論し合うこと数分。
「部屋の中より外の方が涼しいとは妙な話ね」
結局外に出る事にしたお嬢様が私の後ろで傘を差しながら呟いた。
「そうですね」
梅雨の雨と言うのは一般的にジメジメして、鬱陶しいものだと言われるが、山が多いこの幻想郷では結構涼しく、暑く長い夏のうち最も過ごしやすい時期だと私は思っている。
「で、貴方の見せたいものって何かしら、美鈴」
「あぁその事です」
私は館内の花畑へ彼女を連れてゆき、雨に濡れ一際美しさを放っている花の元へ駆け寄った。
「これですよお嬢様……ってあれ?」
「走るんじゃないわよ、もう、こんな天気なのに貴方は本当に元気の塊みたいな妖怪ね」
こりゃしくじった、てっきり私に付いて来てくれるものだとばっかり思ってたわ。
「で、見せたいものって、これ?」
「えぇ、さっき窓から見たらものすごくきれいだったもんで」
言って見せるは雨に濡れるアジサイの花。
これまでも育てて来たが、今日ほどきれいと思った事はなかった。
「綺麗ね、雨に濡れて」
「これで雨が上がって陽が出れば雨粒がきらきら光って更に綺麗なんですが」
言って空を見上げるが、どうにも止む気配はない。
引き返しましょうか、そう言っても彼女は動く気配を見せなかった。
「晴れるまで待つわよ」
「は?」
何と言ったこの吸血鬼は。嫌いな雨の中に留まるって言った気がしたけど。
「お嬢様?」
「ん?」
「本当ですか」
「当り前よ」
さっきまで雨は嫌いだの何だの言っていたのに。なんて移り気なお方だ、連れ出したのは私だけど。
取り敢えず、私もお嬢様の隣に一緒にしゃがみ込む。
「全く、お嬢様はアジサイの様なお方ですね」
「それ、貴方の方が当て嵌まる気がするんだけど」
それを言った後お嬢様は、雨も好きになれるかもしれない、と静かに呟いた。
ともあれ仲良さげな二人でよかった
移り気
浮気
冷酷
無情
等の花言葉ががががが……。
日本の某団体が皆に親しみやすいようにと、悪いイメージの花言葉を排除して広めているそうです。
空気読めない自分は美鈴の胸で窒息死してきます。
まあ待てよ、俺も付き合ってやるから