※百合、二次設定などにご注意ください。
「はい、終わり」
まるで活を入れるように、ぺしりと。
皺寄ることなく丁寧に張り付けた絆創膏ごと、傷口を叩いてやれば。
「いつつ……ありがとうございます」
情けない声を上げつつも、彼女はいつもどおりの礼を言う。
「妖怪なのに、何ですぐ治らないのかしら」
「これでも人間よりは早いはずなんですが……」
「ほんのちょっとだけじゃない」
へらへらと痛みなど気にしない素振りで笑い続けている門番の、絆創膏や湿布だらけの背中を眺めながら、今更な疑問をぶつけてみる。
本当、どうしてこの子は治りも遅いくせに無茶ばかりするのか。
いつも門番業務は昼寝してさぼっているくせに、いざ侵入者との弾幕戦になると、傷を負うほどまで本気になるのか。
いくら心配してもきりがない。
だからこっちだって、素直に心配するのも馬鹿らしくてなってしまうのよ。
そんな言い訳がましい責任転嫁は、心の中だけで呟いた。
傷だらけで薬品臭い彼女の背中は、昔と変わらずに広く逞しい。
まるで、追いつけないのは身長だけではないと言われているみたい。
それを眺めているうちに、ふと懐かしい思い出が甦ってきた。
「ねえ、美鈴」
「はい」
「私が小さい頃よく二人でやった遊び、覚えてる?」
「え?」
「背中に指で文字を書いて、何を書いたか当てるやつ」
「ああ、やりましたね。懐かしい」
「ちょっと一回だけやってみない?」
「いいですね、ぜひ」
そう言うと思ったわ。
わずかに振り向いた彼女の顔には、楽しさに染まった見慣れた笑みが輝いていた。
中途半端に空いていた絆創膏同士の隙間に、静かに指を滑らせる。
幼い時から幾度となく感じた優しいぬくもりを残す肌に。
昔と違って今では素直に口から出せなくなった言葉を、そっと綴った。
遊び半分だけど、もう半分は本気の気持ちで。
「――はい、手当はこれでおしまい」
「え……あ、待ってください!」
やってしまってから急に恥ずかしくなって、椅子から立ち上がって逃げるように扉に急いだ。
けれど耳に届いた声に思わず、私は扉に伸ばす手を止めた。
「咲夜さん」
「何よ」
「私も、大好きです」
ああ、やっぱり。
こんな分かりづらい伝え方でも、彼女はちゃんと気づいてくれるのだ。
だからこそ余計に、こっちは素直に言えなくなってしまうというのに。
そんな愚かな責任転嫁さえ、もしかしたらもう見透かされてしまっているかもしれないけれど。
「……ストレートすぎるわよ」
素直に気持ちを伝えられなくなった私の代わりに、彼女はいつだって欲しい言葉をくれる。
でも、いつまでもされてばかりでは不公平で、何だか悔しい。
だから今度はこちらからも、あんな背中越しじゃなくて。
もっとまっすぐに、積極的な方法で伝えてみたい。
くるりと振り返って、椅子から立ち上がっていた彼女に一歩二歩と近づく。
距離が縮まっていくのに合わせ、心臓の鼓動も速くなる。
ぴたりと寄り添い、ほんの少しだけ背伸びをすれば、以前よりも近くなった彼女の口元。
そこにゆっくりと、言葉には出来ない想いを込めた唇で触れた。
本当、昔から変わってないわね。
離れて向かい合った彼女の顔には、見慣れた照れ笑いが浮かんでいた。
「はい、終わり」
まるで活を入れるように、ぺしりと。
皺寄ることなく丁寧に張り付けた絆創膏ごと、傷口を叩いてやれば。
「いつつ……ありがとうございます」
情けない声を上げつつも、彼女はいつもどおりの礼を言う。
「妖怪なのに、何ですぐ治らないのかしら」
「これでも人間よりは早いはずなんですが……」
「ほんのちょっとだけじゃない」
へらへらと痛みなど気にしない素振りで笑い続けている門番の、絆創膏や湿布だらけの背中を眺めながら、今更な疑問をぶつけてみる。
本当、どうしてこの子は治りも遅いくせに無茶ばかりするのか。
いつも門番業務は昼寝してさぼっているくせに、いざ侵入者との弾幕戦になると、傷を負うほどまで本気になるのか。
いくら心配してもきりがない。
だからこっちだって、素直に心配するのも馬鹿らしくてなってしまうのよ。
そんな言い訳がましい責任転嫁は、心の中だけで呟いた。
傷だらけで薬品臭い彼女の背中は、昔と変わらずに広く逞しい。
まるで、追いつけないのは身長だけではないと言われているみたい。
それを眺めているうちに、ふと懐かしい思い出が甦ってきた。
「ねえ、美鈴」
「はい」
「私が小さい頃よく二人でやった遊び、覚えてる?」
「え?」
「背中に指で文字を書いて、何を書いたか当てるやつ」
「ああ、やりましたね。懐かしい」
「ちょっと一回だけやってみない?」
「いいですね、ぜひ」
そう言うと思ったわ。
わずかに振り向いた彼女の顔には、楽しさに染まった見慣れた笑みが輝いていた。
中途半端に空いていた絆創膏同士の隙間に、静かに指を滑らせる。
幼い時から幾度となく感じた優しいぬくもりを残す肌に。
昔と違って今では素直に口から出せなくなった言葉を、そっと綴った。
遊び半分だけど、もう半分は本気の気持ちで。
「――はい、手当はこれでおしまい」
「え……あ、待ってください!」
やってしまってから急に恥ずかしくなって、椅子から立ち上がって逃げるように扉に急いだ。
けれど耳に届いた声に思わず、私は扉に伸ばす手を止めた。
「咲夜さん」
「何よ」
「私も、大好きです」
ああ、やっぱり。
こんな分かりづらい伝え方でも、彼女はちゃんと気づいてくれるのだ。
だからこそ余計に、こっちは素直に言えなくなってしまうというのに。
そんな愚かな責任転嫁さえ、もしかしたらもう見透かされてしまっているかもしれないけれど。
「……ストレートすぎるわよ」
素直に気持ちを伝えられなくなった私の代わりに、彼女はいつだって欲しい言葉をくれる。
でも、いつまでもされてばかりでは不公平で、何だか悔しい。
だから今度はこちらからも、あんな背中越しじゃなくて。
もっとまっすぐに、積極的な方法で伝えてみたい。
くるりと振り返って、椅子から立ち上がっていた彼女に一歩二歩と近づく。
距離が縮まっていくのに合わせ、心臓の鼓動も速くなる。
ぴたりと寄り添い、ほんの少しだけ背伸びをすれば、以前よりも近くなった彼女の口元。
そこにゆっくりと、言葉には出来ない想いを込めた唇で触れた。
本当、昔から変わってないわね。
離れて向かい合った彼女の顔には、見慣れた照れ笑いが浮かんでいた。
満足するお話がここにある!!
糖分補給できました!あまーい!!!