霊夢……お前に負けるわけにはいかないんだ。
霧雨魔理沙としての、存亡にかかわるからな。
だから私は絶対に勝つ。
このじゃんけんという舞台でな!
空気が張り詰めた博麗神社で、私と霊夢は向き合っていた。
その間には一枚のせんべいがある。とはいっても、これが勝負の原因ではない。理由なんて忘れた、そんなものは犬に食わせておけ。
互いに一歩も引かない状況……いや、私だけが引かない状況なのか? 霊夢はいつも通りのんびりと寝転がっているし。
畜生、私は絶対にこのじゃんけんで負けられないってのに。霊夢はいつもこうだ。
弾幕ごっこのときだって、ふわふわしてて弾が当たらない。私は見苦しく避けてるというのに。霊夢の目には滑稽な物として映ってるんだろう。
それに、霊夢が本気を出してるようにも見えない。こいつは天才……私なんて所詮本気を出さずとも勝てるということだろう。
運よく私が勝っても、悔しそうな表情をみせたこともないし。悔しいのは私だけなのかなぁ。
あー、でもこれ今の勝負には関係ないよな、うん。じゃんけんなんて大体運だし。
勘が良くても意味ないはずだ。だって運だもの。そう考えないとやってけないよ。
……このじゃんけんで勝ったからって私が何か変わるわけじゃない。そうだよ。運でしかないし、勝負に含んでいいのかもわからない。
でも、なぜかこの勝負に負けてはいけない気がする。なぜか。理由はわからないけど。
そうだな……なにかでっち上げよう。そうだ、この勝負に負けたらアリスが次の宴会で全裸で踊らなきゃいけないなんてどうだ。いや、それはどうでもいいな。
……この勝負に負けたら、魔法の森一帯が跡形もなく爆散する。アリスの家と香霖堂含めて。これで行こう。これはやばい、燃えてきた。
「アリスの貞操はどうでもいい!」
「いきなり何よ」
「だが、魔法の森が消えるわけにはいかないんだ! 私が生きていけなくなる!」
「だからいったい何?」
自分を高め、そして手を考える作業に入る。
一般的には最初はグーを出す人が多いとか聞いたことがある。飽くまで伝聞だが。でも、これにが正しいなら最初にだす可能性が高いのはグーらしい。
いや、しかし。それを霊夢が見越すとしたらパーを出してくるのか。ならチョキ……いやいや、霊夢が素直な奴だということを考えると負けてしまうかもしれない。
安全なのは……パーか。いや、そこまで考えて霊夢がチョキを出す可能性は十分にある。駄目だ、このままじゃ……仕方ない、心理戦に出るしかない。
「霊夢」
「なによ、じゃんけんする気ないの? 付き合ってあげてるんだから――」
「私はパーを出すぜ!」
ふっふっふ、選択の幅を増やしたぜ。
霊夢は私が小癪な奴だってことを知っているはず。否定はできない。だから、それを裏手にとって私は本当にパーを出そう。
私がパーを出さないと思いこんだ霊夢ならきっとグーをだす。絶対にあいこ以上になる手を使ってくるはずだ。
勝ったな。よし、私の勝ちだ。霊夢、お前は負けても何とも思わないかもしれないが魔理沙さんは結構嬉しいぜ!
「ふっふっふ……霊夢に勝ち目はないぜ」
「なんでもいいけど早く終わらせるわよ」
「さぁ、勝負だ」
向き合い、霊夢の目を睨むように見つめる。
片腕を体の前に出して呼吸を合わせ、掛け声に合わせて腕の先に「手」を出した。
……パー。霊夢もパーだ。あいこである。あいこでしかない。勝負がつかなかった。
「う、うごぉおおおおおおお!」
「なによ一体!?」
なんだこいつは。私の予想を超越したというのか。どういうことなんだ。畜生、まさかこんなことになるとは。
私はどうすればいいんだ。きっと長引くごとにアリスの家の人形が一体ずつ爆発していくに違いない。負けた瞬間ゴリアテが爆発して魔法の森が炎に包まれてしまうはずだ。そんなことは絶対にさせない。
「な、何故だ……」
「意外ね、パーを出すっていうから出さないと踏んだのに」
「じゃあ普通グーを出すだろ!」
「私は終わらせたいのよ、早く。もう貴女の勝ちでもいいのよ?」
こいつはわかっていない、勝負を勝ちとる喜びという奴を。
考えろ霊夢、お前は異変の首謀者があっただけで平謝りを始めて存分にもてなされたら欲求不満になるだろ?
……いや、こいつなら「そっちの方が面倒がなくていい」っていいそうだ。畜生、通じないぜ。勝負はここらの葛藤が一番楽しいってのに。
「つ、次私は――」
「私はグーを出すわ」
「……そう言うの言うのはどうかと思うぜ」
「最初に言ったのは魔理沙じゃない……」
しかし、霊夢ならグーを出す。絶対グーを出す。ほら、霊夢柏餅好きだし。
……いやいや、よく考えろ私。ああ見えて霊夢は黒いところがあるから別のものを出してくる可能性は十二分にある。
なら、可能性としては……ええと、そうだな。あいこを狙ってパーか。パーっぽいぜ。だから私は賭けてみようと思うんだ、パーを出してくる可能性に。
柏餅も葉っぱはパーっぽいしな。博打? 知らんぜ。世知辛いこの世の中、人生は冒険だ。
だから私はチョキを出す。決まった。今度こそ勝ったな。これで、私は霊夢に勝てるんだ。
私、このじゃんけんが終わったらアリスに結婚詐欺吹っ掛けるんだ――。
霧雨魔理沙としての、存亡にかかわるからな。
だから私は絶対に勝つ。
このじゃんけんという舞台でな!
空気が張り詰めた博麗神社で、私と霊夢は向き合っていた。
その間には一枚のせんべいがある。とはいっても、これが勝負の原因ではない。理由なんて忘れた、そんなものは犬に食わせておけ。
互いに一歩も引かない状況……いや、私だけが引かない状況なのか? 霊夢はいつも通りのんびりと寝転がっているし。
畜生、私は絶対にこのじゃんけんで負けられないってのに。霊夢はいつもこうだ。
弾幕ごっこのときだって、ふわふわしてて弾が当たらない。私は見苦しく避けてるというのに。霊夢の目には滑稽な物として映ってるんだろう。
それに、霊夢が本気を出してるようにも見えない。こいつは天才……私なんて所詮本気を出さずとも勝てるということだろう。
運よく私が勝っても、悔しそうな表情をみせたこともないし。悔しいのは私だけなのかなぁ。
あー、でもこれ今の勝負には関係ないよな、うん。じゃんけんなんて大体運だし。
勘が良くても意味ないはずだ。だって運だもの。そう考えないとやってけないよ。
……このじゃんけんで勝ったからって私が何か変わるわけじゃない。そうだよ。運でしかないし、勝負に含んでいいのかもわからない。
でも、なぜかこの勝負に負けてはいけない気がする。なぜか。理由はわからないけど。
そうだな……なにかでっち上げよう。そうだ、この勝負に負けたらアリスが次の宴会で全裸で踊らなきゃいけないなんてどうだ。いや、それはどうでもいいな。
……この勝負に負けたら、魔法の森一帯が跡形もなく爆散する。アリスの家と香霖堂含めて。これで行こう。これはやばい、燃えてきた。
「アリスの貞操はどうでもいい!」
「いきなり何よ」
「だが、魔法の森が消えるわけにはいかないんだ! 私が生きていけなくなる!」
「だからいったい何?」
自分を高め、そして手を考える作業に入る。
一般的には最初はグーを出す人が多いとか聞いたことがある。飽くまで伝聞だが。でも、これにが正しいなら最初にだす可能性が高いのはグーらしい。
いや、しかし。それを霊夢が見越すとしたらパーを出してくるのか。ならチョキ……いやいや、霊夢が素直な奴だということを考えると負けてしまうかもしれない。
安全なのは……パーか。いや、そこまで考えて霊夢がチョキを出す可能性は十分にある。駄目だ、このままじゃ……仕方ない、心理戦に出るしかない。
「霊夢」
「なによ、じゃんけんする気ないの? 付き合ってあげてるんだから――」
「私はパーを出すぜ!」
ふっふっふ、選択の幅を増やしたぜ。
霊夢は私が小癪な奴だってことを知っているはず。否定はできない。だから、それを裏手にとって私は本当にパーを出そう。
私がパーを出さないと思いこんだ霊夢ならきっとグーをだす。絶対にあいこ以上になる手を使ってくるはずだ。
勝ったな。よし、私の勝ちだ。霊夢、お前は負けても何とも思わないかもしれないが魔理沙さんは結構嬉しいぜ!
「ふっふっふ……霊夢に勝ち目はないぜ」
「なんでもいいけど早く終わらせるわよ」
「さぁ、勝負だ」
向き合い、霊夢の目を睨むように見つめる。
片腕を体の前に出して呼吸を合わせ、掛け声に合わせて腕の先に「手」を出した。
……パー。霊夢もパーだ。あいこである。あいこでしかない。勝負がつかなかった。
「う、うごぉおおおおおおお!」
「なによ一体!?」
なんだこいつは。私の予想を超越したというのか。どういうことなんだ。畜生、まさかこんなことになるとは。
私はどうすればいいんだ。きっと長引くごとにアリスの家の人形が一体ずつ爆発していくに違いない。負けた瞬間ゴリアテが爆発して魔法の森が炎に包まれてしまうはずだ。そんなことは絶対にさせない。
「な、何故だ……」
「意外ね、パーを出すっていうから出さないと踏んだのに」
「じゃあ普通グーを出すだろ!」
「私は終わらせたいのよ、早く。もう貴女の勝ちでもいいのよ?」
こいつはわかっていない、勝負を勝ちとる喜びという奴を。
考えろ霊夢、お前は異変の首謀者があっただけで平謝りを始めて存分にもてなされたら欲求不満になるだろ?
……いや、こいつなら「そっちの方が面倒がなくていい」っていいそうだ。畜生、通じないぜ。勝負はここらの葛藤が一番楽しいってのに。
「つ、次私は――」
「私はグーを出すわ」
「……そう言うの言うのはどうかと思うぜ」
「最初に言ったのは魔理沙じゃない……」
しかし、霊夢ならグーを出す。絶対グーを出す。ほら、霊夢柏餅好きだし。
……いやいや、よく考えろ私。ああ見えて霊夢は黒いところがあるから別のものを出してくる可能性は十二分にある。
なら、可能性としては……ええと、そうだな。あいこを狙ってパーか。パーっぽいぜ。だから私は賭けてみようと思うんだ、パーを出してくる可能性に。
柏餅も葉っぱはパーっぽいしな。博打? 知らんぜ。世知辛いこの世の中、人生は冒険だ。
だから私はチョキを出す。決まった。今度こそ勝ったな。これで、私は霊夢に勝てるんだ。
私、このじゃんけんが終わったらアリスに結婚詐欺吹っ掛けるんだ――。
ちなみに自信がない人は次も同じ手を出しやすいそうです