Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

のんけ~ね♪

2011/05/27 00:42:24
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のんけ~ね♪




真夏の強い日差しが指す何時かの事。
空は綺麗な青空が広がり、入道雲が大きく盛り上がるように一つ二つと浮かんでいた。

そんな綺麗に晴れたある日。里にある寺小屋の縁側に二つの人影が付かず離れずの微妙な距離を保ったまま座っていた。

その一つは、青色のメッシュの入った長い銀髪とスタイルの良い体系が特徴的な上白沢慧音。
寺子屋の創設者であり、そこで歴史の授業を行っている。いわゆる先生だ。
もうひとつは藤原妹紅。
慧音と並ぶ長さの白髪、頭には白地に赤の入った大きなリボン。毛先にはそれと同じデザインの小さなリボンを幾つもつけている。
その体系は幼さを残し、身長も慧音より一回り小さい。
が、それを助長させるような彼女の猫背もそう思わせる原因の一つだろう。

これは、そんな二人のちょっとした甘いお話。



「妹紅が寺子屋に来るのは久しぶりだな」
「あ、ああ。そうだな……」
太陽が頭上で黄金の光を放つ、丁度お昼を少し過ぎた頃。
寺子屋はお昼休みの時間だ。
庭先で子供達が楽しそうに遊ぶ中、それを眺めるようにして寺子屋の縁側に妹紅と慧音が座っていた。

二人は膝下で日の光を浴びながら上半身を日陰に沈め、時折吹く夏特有の湿気をはらんだ風をその身で浴びていた。
慧音は風が吹く度に揺れる髪を片手で押え、妹紅は暴れる髪をそのままに涼しげな顔でその風を楽しんでいる。

「こらこら、あんまりはしゃいで転ぶんじゃないぞ~」
「はーいせんせー!」
子供達が心配なのか、思わず声をあげる慧音。
あたしはそんな慧音を横目で見上げつつ、今日言おうと思っている事を言おうとして、やめた。

「そう言えば、チルノはどうしているんだ?」
そして挙句の果てには全く関係ない事をつい口走ってしまう。
あぁ、後これを何度繰り返せば自分は気が済むのだろうか……

「チルノか? あの子なら寺子屋の奥で水に氷を入れたプールに浸かって居るよ、流石にこの暑さでバテているようだったからな」
チルノと言うのは冷気の妖精で、この寺子屋に通う生徒の一人だ。
元気がとりえ、と言うより元気の塊という言葉が一番しっくりくるような子なのだが、元気が有り余っているのか良く悪戯をしては慧音に怒られている。

「まぁ何時もあれだけ元気でも夏の暑さには勝てないのだろうな」
「そうか……」
元々話そうとしていた会話で無い事もあり、あたしの返事は素っ気ないものだ。

(だ、だめだ! こんなんじゃダメだろ妹紅!! 今日お前は何のために慧音会いに来たんだ!!)
俯くと、心の中でそう自分に活を入れる。

2度3度深呼吸をして息を整え、あたしは意を決して口を開いた。
「け、慧音!」
「な、なんだ? 急に大声をあげたりして」

顔をあげて声をかけると、緊張のせいか思わず怒鳴るような勢いになってしまった。
「あ、いや、すまない」
「……? 別に何でも無いなら構わないのだが」
「い、いや、何でも無い訳じゃないんだ!」

それでも引く訳にはいかない、このタイミングを逃したら絶対に言えなくなってしまう!
直感的にそう感じて、あたしは会話を続けようと言葉を絞り出していく。
「そ、その、き、今日だな、今日の夏祭りなんだが……その、い、一緒に行かないか? 浴衣を貰ったんだ、だから――」
恥ずかしさから慧音を直視する事が出来ず、その顔を窺うように上目使いで見上げるようにしてあたしは言う。

しかし、それでも最後まで言いきる事が出来ず、口の中で空気をかみ砕くだけだった。
(ああっ! 肝心な一緒に行こうって事を言えてないじゃないかっ!! あたしは馬鹿か!?)

心臓の鼓動が早まり顔が熱を持っていく。
緊迫した空気の中、慧音の顔を再び見上げると、丁度彼女がその唇を動かし――

「ああ、良いぞ?」
と、言った。
「ほ、本当か!?」
思わず嬉しさから立ち上がりそうになる。

「ああ、皆で一緒に行こう」
「え? 皆?」
が、その言葉にあたしの動きは止まった。

「ああ。寺子屋の子供達と皆で行こう、皆も妹紅が来てくれると知ればきっと喜ぶぞ!」
その言葉を聞いて、あたしは足元が崩れて行くような錯覚を覚えた。
「ああ、そうだな……そうだよな」

だが子供達の事が大好きな慧音に二人きりで行こうとは何とも言いづらい。
「あぁ……」
(こうやってあたしは流されて行くんだろうな)
そう、改めて実感して何とも悲しくなったのだった。


                        ……………


太陽が沈み、里の中に涼しげな風が吹き始めたころ。
寺子屋に向かって妹紅は一人歩いていた。
辺りには出店が所狭しに立ち並び、あちこちにぶら下がった提灯がオレンジ色の光でそれを染め上げている。

(へぇ、祭りってこんな感じなのか……)
小気味良いお囃子に耳を傾けながら、妹紅は普段見慣れない里の姿に目まぐるしく視線を巡らせていた。
「おーい! 妹紅こっちだ」

きょろきょろと子犬のように左右を見ていると、そこに慧音の声が響いた。
どうやらいつの間にか寺子屋についていたらしい。
「す、すまない。遅くなった」
「なに。気にする事は無い、祭りは始まったばかりだ」

「慧音せんせーはやく行こうよー!」
と、そこに妹紅を待ちわびていただろう少女が慧音の足元に駆け寄って来た。
「そうだな、それじゃあ行くとしようか」

慧音は手を伸ばして少女の頭を撫でてやると、少女は満足そうに目を細め離れて行った。
「皆はぐれない様に固まって歩くんだぞ?」
「は~い!」

慧音の言葉に子供達が元気に声をあげる。
「よし、それじゃあ行こうか」
そう言うと、あたし達は皆で歩き出した。

「皆よほど楽しみだったようだな」
子供達は皆落ち着かない様子で先へ先へと早歩きに進んでいく。
あたしと慧音はそれに置いて行かれないように後ろから着いて行くように歩いている。

「それにしても、その浴衣似合っているな」
何気なく慧音は片目を瞑ると、こちらを見定めるよう足先から頭まで見つめてきた。
その顔には若干の喜びが含まれた笑みが浮かんでいる。

「あ、あんまり見ないでくれ。その、は、恥ずかしい」
「ふふふ、照れるな、てれるな。私は妹紅がそういう可愛い恰好をしてくれてうれしいぞ」
あたしは今、白地に薄桃色の金魚が描かれた浴衣を着ている。
金魚の周りには青と紫色の小さな花が対になって添えられており、お淑やかさと可愛らしさを強調したようなデザインだ。

「そう言う慧音だってその…綺麗……だぞ?」
「ああ、これか?」

慧音は袖を持ち上げて小さく横に広げると、背中側をあたしに見せるように体を小さくひねった。
「妹紅が浴衣を着てくると言っていたのを思いだしてな、本当は着て来ないつもりだったんだが着て来たんだ」

慧音は藍地に朝顔の描かれた浴衣を着て来ていた。
明るい青と紫色の朝顔が対になっており、その周りに主張しすぎない緑のラインが慧音の大人っぽさ醸し出している。
いつもは腰まで垂れ下がっている髪も、今日ばかしは束ねられて持ち上げられており、項と白い首筋を外に曝け出している。

「それにしても褒められると言うのは純粋に嬉しいものだな」
少し顔を朱色に染めて慧音ははにかんだ。

(可愛いなぁ慧音は)
思わずその姿の見とれてそんな事を考えてしまう。
ハッとそれに気付いてカァァッと自分も赤くなった。

「ん? どうかしたのか妹紅?」
「い、いやなんでもない」
「そうか。ところで妹紅」
と、恥ずかしさにうちふるえていると、スッと慧音が近づいてきて耳元に顔を寄せてきた。

「っ!?」
「この後何か予定はないか?」
小さな声で耳打ちされると、全身にくすぐったいような不思議な感じが広がって行く。

「な、ない…けど……?」
「なら後で寺子屋に来てくれ」
そう言い残すと慧音は何事も無かったかのように離れていき、子供達の輪へと混ざって行った。
あたしはそんな慧音の背中を見つめながら、体から力が抜けそうになって行くのを堪えるのに必死になっているのだった。


                        ……………


皆と夏祭りを回った後。
慧音と二人で寺子屋へと戻ってきていた。

「わざわざこんな時間に呼びだしてすまないな」
「だ、大丈夫だ」
あたしはこれから何が起こるのかを想像して、緊張で言葉すらまともに話せずにいる。
「皆に知られては困るからな……あ、縁側に座っていてくれ、準備をしてくるから」

そう言うと、慧音は一人寺子屋の奥へと上がって行ってしまう。
残されたあたしは昼間座っていた縁側に一人腰をかける。
お囃子も何時しか聞こえなくなっており、祭りの後の静けさが残るだけだ。
そこに丁度涼しげな風が吹き、寺子屋の天井から吊るされてある風鈴が綺麗な音を鳴らした。
昼間は子供達の声でかき消されてしまうそれは、今の静けさに寂しさの尾を引いたような。そんな錯覚させた。

「待たせたな」
ふと、声がして振り向くと、暗がりから慧音がゆっくりとした動作でこちらに向かって来ていた。
月の光が足元までしか届いておらず、慧音の上半身は隠れたままだ。

「け、慧音……」
思わずごくりと喉が鳴る。
「ん? なんだ? 妹紅」

対して慧音はいたって普通。いつも通りである。
やがて、月明かりが慧音の全身を照らし出す。

「慧音、それ、スイカか?」
「ああ、そうだが?」

あたしの隣に慧音は座ると、胸元で持ち上げていた、スイカが載ったお皿をを二人の間に下ろした。

「お得意さんだからと貰ったんだが……寺子屋の皆で食べるには少し量が足りなくてな、と言って一人で食べるには多いからと困っていたんだよ」

そう言うと慧音は綺麗に切り分けられたスイカを一つ取ってあたしに向けて差し出した。
反射的にそれを受け取る。
瑞々しいそれは、綺麗な赤色で僅かに甘い匂いを漂わせている。

「遠慮せずに食べてくれ、二人で食べるにも少し多いかもしれないが……」

そう言われ、スイカを一口齧る。すると口の中に甘い汁が溢れた。
隣では慧音が同じようにスイカを齧っている。

「ふふふ、妹紅と私だけの秘密だぞ」
そう言う慧音はとても幸せそうで。
(まぁ、これでも良いか)

と、あたしはいつものように思ってしまうのだった。
のんけ~ねって既出じゃね……?
一応検索してみて当たらなかったから出しちゃったけど、既出だったらごめんなさいorz

目標「週1本東方SSを書く」1回目。
それにしても書く日によって腕が全然違うのをどうにかせねば。
あ、gdgdでサーセン(´・ω・`)

制作期間5~6日
文字数「3,985」
那津芽
[email protected]
http://twitter.com/#!/seihixyounatume
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
程よい甘さのお話でした
2.名前が無い程度の能力削除
  先生! 妹紅たんは肝心の「一緒に行こう」は言えてると思います!

\___ _______________________
      V
     ∧_∧∩あと、冒頭で身長差を話題にしてたから
    ( ´∀`)/ 本文中でキスネタが炸裂するかと思ったらしなかった
 _ / /   /   なにを言ってるか判らねーと思うが俺にも判らねー
\⊂ノ ̄ ̄ ̄ ̄\
 ||\        \ 週一東方SS頑張ってください
 ||\|| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
 ||  || ̄ ̄ ̄ ̄ ̄||
3.那津芽削除
>>奇声を発する程度の能力
コメントありがとうございます!

気に入っていただけましたでしょうか?
へたくそなりに努力して作り上げているので、楽しんでいただけると幸いです。

>>2
コメントありがとうございます!

妹紅は恥ずかしがり屋だからな。
でもきっと妹紅はこんな感じだと信じている!

キスネタ…だと……?
思ってもいなかったな(ぁ

1週間に1本頑張って行きますよ!
これからもよろしくお願いします!