Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

愛はあっても、勇気も大切なのです

2011/05/19 21:52:29
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「………」

本日、見事に快晴。里の中も明るく、元気に走り回る子供達で溢れてる。
そして命蓮寺、ここも本日も平和に明るく、平常運転。
平和に。そう、平和。
特にボケッとしてるだけでも許せそうなぐらいの、いい気分。
いつまでもこの平和が続くことを私は願う。
……だから、混沌の渦に巻き込もうとしてるやつは退治しなければならない。

「………」

退治、しなければならない。
今日一日、何事も起こらずに平和でいるには。

つまり、何が言いたいかというとさ、


―――早苗、ちょっとこっち来てよ
―――はい、なんでしょ……きゃっ!?
―――あはは、やーい、引っ掛かった引っ掛かったー


……あそこにいるバカップル達、紅魔館の湖に沈めちゃっても、文句は無いよね?
だって、あいつら絶対に敵だと思うんだ。理由は特に無い。勘。

……いや、ぬえは許す。なんでと言われても、許すのだから許す。
あの緑巫女、あいつは許さん。絶対許さない。許早苗とかじゃなく、許さない。
あとから現れて、横からぬえを掻っ攫っていきやがって。
私のほうが旧知の仲なんだぞ。なんで後から現れたあいつに私のぬえを取られなければいけないんだ。

……っと、なんだか邪悪なオーラを身に纏ってる気もするけど、別にそんなことない。嫉妬でもなんでもない。
これはそう、正当防衛。何が正当かはわからないけど、とにかくそうだ。
でも、まずは穏便に、話し合いといこう。
そうだ、私はすぐに手を出す暴力的な女だと思われてはいけない。キャプテンの名にかけて。
そうだそうだ、というわけで……


―――全く、やりましたねこのぬえっ!
―――ふにゃ!?な、なにすんの早苗!?
―――うふふ、私を罠にはめたお仕置きです!
―――こ、のぉ!抱き着くな!頭わしゃわしゃするなぁ!
―――あら、ぬえはこういうの、嫌いですか?
―――う、いや、別に嫌いじゃないけどていうか早苗がやるのは好きだけどじゃなくて!
―――うふふ、でもお仕置きなんですから拒否権は無いですからね
―――うにゃあぁぁぁ!!


……無言で柄杓をギリギリ思いっ切り握ってるけど、これは嫉妬とかじゃない。
なんか柄杓がミシミシいってて折れそうだけど、私はいつも通り。
別にイライラしてない。ほら、顔が笑顔じゃん。キャプテンスマイル。口元がひくついてるとか言うな。
……でも、これはもう話し合いで済ませる雰囲気では無くなってることは明らか。
だからここはもう海岸で拳の語り合いといくしかない。海無いけど。
うん、そうだ、そうに決まってる。
頭の中の天使にはちょっと黙ってもらって、今すぐ巫女退治といこう。
言い訳は後で考える。
よし、というわけで先手必勝背後からぶん殴って……」
「……?」
「あれ、なんだかさっきから私の考えてることが聞こえるような……?」

気のせいじゃない。どう考えても私の考えてることがリピートされてる。
こんなことできるやつ、一人しか知らない。
後ろを振り向けば、

「さ、さとりさん!?」
「こんにちは、ムラサ」

悪戯な笑みを浮かべている、あまり顔を見たくないさとり妖怪がやっぱりそこにいた。
……って、あ、いや、ごめんなさい、睨まないでくださいさとりさん素敵ですほんとごめんなさい。

……それより、

「あー、……さとりさん、その登場の仕方は冗談抜きに成仏しそうなので、やめてほしいのですが」
「性分なもので、どうにもできないですね」
「………」
「あ、今めんどくさいやつだと思いましたね。泣きますよ」

……でもめんどくさいものはめんどくさい。
こいつの相手をして疲れないやつはいないと思う。
前回に会ったときも、どれだけいじられたことか。
……できればあまり思い出したくない。

「まぁそれはひとまず置いといて、さとりさん、何時からいました?」
「『本日快晴』の辺りですね」
「最初からじゃないですか!?」
「もちろん、ずっと朗読してましたので」
「もちろんじゃないですよ!」

周りにあいつら以外に人がいなくてよかった!本当に!
キャプテンの名を汚さずにいてよかった!

「んで、何の用ですか……?」
「そうですね……暇つぶし、ということで」
「ということで、って……」
「強いて言えば、貴女の顔を見たかったから、ですかね」

……何言ってんだこいつ。いよいよ頭がおかしくなったのか。いつも地下にいる
からかこの日差しに頭がやられたのか。そういうことだろう。

「それ以上はやめなさい、ムラサ。明らかに引きながらそんなこと言われると割と本気で傷付くのよ」
「じゃあ変なこと言わないでくださいよ……」
「真面目ですよ?」
「はいはい、わかりましたよ」

こいつの言うことは適当に聞き流すのが一番だ。一々真に受けてたらキリがない。
会うのが久しぶりすぎてそんなことすっかり忘れてた。

……と、忘れてたといえば、


―――ぬえ
―――な、なによさな……んむ!?
―――んっ……いただき、です
―――こ、この……!いきなり、キ、キスなんかすんな!
―――うふふ、ぬえの反応がかわいかったのでつい
―――か、かわっ!?そ、れに、『つい』でこんなことすんな!

……気付けばさらにヒートアップしてるあいつらにキャプテンの制裁を加えるのを忘れてた。
ここをどこだと思ってるんだあいつら。神聖な寺なんだぞ!他所でやれ他所で!
あ、でもぬえは置いてけ!緑巫女だけどっかいけ!

……あ、今の海賊みたいでカッコイイかも。
有り金全て置いてけ!的な。ぬえは置いてけ!

「カッコイイかも知れませんが、あなたには似合いませんよ、ムラサ」
「さとりさんは黙っててください!」

こいつ、せっかく私がカッコイイ私を見せ付けようと思ってたのに。根本から崩すな。
誰に見せ付けるかは知らないけど。

……まぁ、とにかく、

「少し用事があったのを思い出しましたのでこれで」
「やめなさい、ムラサ」
「大丈夫です、さとりさん。そんなにひどいことはしませんから。ちょっとぬえのことについて語り合いするだけですから」
「やめなさい。拳の語り合いはやめなさい」
「では、別の方法で」
「縄でふん縛って椅子に固定して……ってもはやそれは別の目的になってる気がしますよ、ムラサ」
「いえ、前にさとりさんからやられた記憶があるので、同じことをしてやろうかなぁ、と」
「記憶の捏造はよくありませんよ、ムラサ」

記憶の捏造じゃねーよこんちくしょー。
できれば忘れたいけど忘れもしない地底に閉じ込められて間もないころ。
暇つぶしって理由で私に闇討ちして意識が失ってる最中にさらわれて、気が付いたらあの状態だったなんて。
しかもそれが初対面の相手だなんて、生まれて初めての出来事だった。死んでるけど。
……今思えば、なんて最悪な初対面だったんだろう、さとりさんとの出会い。
普通に考えれば好感度0どころかマイナスもいいことだ。
そんな相手に構ってあげてるだなんて、私ってばなんて寛大な心の持ち主なんだろう。さすがキャプテンは伊達じゃない。

「まぁ、そんなどうでもいいことは置いときましょう」
「どうでもよくないですよ!?」

こいつ、せっかく私がいい人アピールしてたというのに。誰にアピールしてるかは知らないけど。

「それよりムラサ」
「……なんですか?」

じと目でさとりさんを睨む。
そんなに見ないでください、照れます。なんて言葉が飛んできたときは割と本気で殴ってやろうかと思った。
次、変なこと言ったら絶対殴る。うん、そうしよう。そうするべきだ。世の中のためにも。
そんな決心を丸聞こえだろうけど心の中で固めていたら、

「……あなたはまだあの妖怪に捕われてるの?」
「……はい?」

急に、さとりさんの雰囲気が変わったように感じられた。
あの妖怪、捕われている、……どういうことかは、わかるけれど、

「……どういう、意味でしょうか」
「わかっているんでしょう?あなたは、まだあの子……ぬえに捕われているの、と聞いてるのです」

周りが一気に静かになる。
さっきまでうるさかったあの二人の声が聞こえない。
この世界に、私とさとりさんしかいない、そんな錯覚に陥る。

「……意味がわかりません」

意味は、もちろんわかってる。
けど、認めたくない。まだ、

「……あなたも強情ですね。ですが、……現実をもう少し見なさい」

ぬえは、もう既にあなたのものではない。あなたのものにはならない。

さとりさんが、そう言い切る前に、気付いたら私はさとりさんを殴っていた。無意識のうちに。

「……あなたなんかに何がわかるというのですか。あいつなんかにッ!あとから現れた人間なんかに私の大切な人を取られた私の気持ちをッ!!」

つい、感情的になってしまう。抑えきれない。
抑えたいのに、今まで溜まってたものを吐き出してしまう。

「……ムラサ」
「なんですか?」

イライラを隠さずに、いや、隠せずに。返答する。

「あなたとぬえが出会ったのは……そうですね、数百年前、地底に封印されて少ししてからですね」

……え?

「最初の出会いは、ぬえが偶然 聖輦船を見つけ、興味本位で見て回っていたところであなたを見つけ、悪戯された、と」

……その通り、だけど。

「それから、ぬえは度々忍び込み、あなたや一輪を悪戯しているうちに気付いたら友達になった」

何故、それを今言うのだろうか。

「それからは、ぬえがあなた達を誘って色んなところへ連れ回していた。……確かそのころに私と出会ったのですよね。あのあとすぐにぬえが助けに来た」

何故、このタイミングで。

「そのうちに、あなたをいろんなところへ連れていってくれるぬえに対して特別な感情を抱きはじめた。しかし、それを態度には全く出さずに、いつも通りにぬえがどこかに誘って、というのを繰り返していた。
ぬえは正体不明を自負しているのだから、心の奥深くまで踏み込むのはよしたほうがいいだろう、と言い聞かせて」

……まさか、

「そして、間欠泉の事件のとき、一度地上に出たあなたは地底に戻ってぬえを連れてくることも考えた。しかし、ほとんど無関係なぬえを巻き込むわけにはいかない、とぬえを置いていってしまった」

待って、それ以上言わないで、

「そして、しばらくしてぬえと再開した。その少し前に、ぬえは東風谷さんと知り合ってから。そして、その二人の関係は急速に発展していった。おそらく、ぬえが東風谷さんを気に入る決定的な理由があったのですね」

お願いだから。

「あなたは考えたことがありますか?ぬえが東風谷さんのことを気に入った理由。それは―――」

気付いていた。とっくのとうに。

「ぬえは、寂しかったのですよ。自分のことを理解してほしい、理解してくれる、そんな相手が欲しかった。ですから、東風谷さんに惹かれるのは、時間の問題だった。
……ここまで言えばわかりますよね、東風谷さんにあって、あなたに無かったもの、それは―――」

ぬえは、正体不明を自負していたけれど、その実、自分のことをわかってほしかった。心の奥深くまで。
そんなこと、気が付いていた。とっくのとうに。
でも、できなかった。そう、私と、東風谷さんの決定的な違い。それは―――


「東風谷さんには勇気があって、あなたにはそれが無かった。ただそれだけのことです」


そう、私と東風谷さんの違い。
それは真っ正面から、ぬえの正体不明を解き明かそうとした東風谷さんと、
触れないでおこう、正体不明のままにさせておこう、と踏み込まずにいた私。

いや、これはただ単に私を正当化しているだけだ。
……実際は、私には勇気が無くて、踏み込まずにいたほうがいい、そう言い聞かせていただけ。

「自分からはほとんど行動できずにいた。だというのに、『私の』だの『取られた』だのなんだのは、おかしいと思いませんか?」
「……その、通り、です」

私に、ぬえのことについてとやかく言える権限はない。
さとりさんは、私にそう言いたかったのであろう。

「……ありがとうございます、さとりさん」

さっきまであの二人に対してモヤモヤとした黒い気持ち。それが、綺麗サッパリ洗い流された気分だ。

私の心を読んださとりさんは、どういたしまして、と返す。
さっきまでのまさに地底の主のような顔とは違って、まるで少女のような、女神のような微笑みで。


今なら認めれる、あの二人の関係。
……でも、

「ですがさとりさん」
「……はい?」
「私は、まだまだ諦めませんから、ぬえのこと!」

キャプテンの名にかけて、ね。
気分良く、清々しい顔で言い放つ。
向こうで、楽しそうに会話している二人に顔を向けながら。
往生際が悪い、と言われればそうかもしれない。
でも、私は欲しいと思ったものは奪い取ってでも欲しくなる主義なのだ。
だから、いつか、そのうち東風谷さんから奪い取ってみせる。
東風谷さんの、ぬえを。

「……ここに、こんなにもあなたのことを思っている人がいるというのに」

私がカッコよく心の中で宣言していたら、さとりさんが顔を反らしながら何かを言って。
私が「?」と首を傾げていたら、「なんでもないです」と、知らん顔で返す。

……よくわからないけど、とりあえずここは触れないでおこう。
それよりも、

「さとりさん、お腹空いていませんか?」
「はい?えぇ、少々……ってムラサ!?」
「はい、何かご馳走しようかと思いまして」

いつも、なんだかんだでお世話になっているさとりさん。
たまには、恩返ししないと、ね。

「い、いえ、ムラサ、私は結構で」
「いえ、もう私がご馳走したくてしょうがないので!拒否権は無いです!」
「ム、ムラサ!?」
「それによく考えたら久しぶりに会うのですから、今はさとりさんと居たい気分なのです」
「う、えと、あぅ……」
「というわけで、何が食べたいですか、さとりさん?」

向こうで楽しそうな二人に、楽しんで、と心の中で語りかける。
そして、さとりさんを引っ張って台所へ向かう。
今は、さとりさんとの時間を大切にしよう、と思った。
私の、とても頼りになる、かけがえのない素敵な友達との時間を。
愛と勇気、両方が大切なのです。片方じゃダメなのです。さすがア○パ○マ○。みんなのヒーロー。

というのは置いといて。
ムラさと……のつもりが、さとり→ムラ→ぬえさなになってしまったムラさと。
今度はしっかりとしたムラさとを書きたいなぁ……!と思います!はい!
さなぬえは、うん、もうね、どうしてもやっちゃうのさ!(

追記:某氏へ、誤字訂正ありがとうございますです!尺八……?
追記2:>>2様へ、誤字訂正ありがとうございます!度々すみませんです……!
自由人サキ
http://twitter.com/#!/sn_rikoriko
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
これは思わずその後を想像してしまいますね
2.名前が無い程度の能力削除
さとりの台詞
>「……ここに、こんなにもあなたのことを思っている人がいるというのに」
の前後で、さとりの見方が180度変わった気がする



>温便に
→「穏便」?

>星れん船
→「星蓮船」

>ぬえは東風谷さんは知り合ってから
→主語「~は」の連続

>東風谷さんの、ぬえを。
ぬえが早苗さんのものって認めちゃってるよ!
3.自由人サキ削除
>>2様へ
さとりさんの台詞:さとりさんはムラサのことが好きで、でもムラサは他人にとられたはずのぬえに未練がまだ残ってるから届かなくて、ならその未練を解くかーって感じであの話をしたのです

「穏便」、「星蓮船」、主語の連続:はわわ、誤字指定ありがとうございます!
ですが、星蓮船は 「聖輦船」だったような……!漢字をド忘れして、後で調べるかーって放置したままでした!何故推敲のとき気付かなかった……!

ぬえが早苗さんのものと認めてる:今は、早苗さんのもの、と認める。だけど、後で私のものにしてみせる!ってムラサは意気込んでるのです!のつもりです、はい!


まだまだ私も修行不足ですね……!
これからもガンバっていきたいと思います!ありがとうございました!
4.2削除
聖蓮船→作品名
聖輦船→船の名前
でした。
誤解させてしまい申し訳ありません。
5.ぴよこ削除
ムラさと。いいですね。