Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ヤマビコゲーム

2011/05/14 23:30:55
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 寺で過ごす私の一日はとても早い。なんたって太陽が出るよりも、私が布団から出るほうが早いくらいだ。
 欠伸をしながら歯を磨き、絡まった羽をまぁまぁと宥め、ジャングルみたいな寝癖をせっせと手直し、今日も清々しい朝だ、とインチキ臭い台詞を吐きながら外を見る。

「ぬっふっふ、あいつはまだ起きていないようだな」

 あいつとは、この命蓮寺の新人である響子のことである。そして私はあいつの所為で、こんな早起きをしなくてはならなくなった。
 響子の朝も早い。なんたってニワトリが鳴きだすよりも、あいつが鳴きだすほうが早いくらいだ。オマケにあいつは声が大きい。百km離れた奴と会話しているんじゃないかってくらい大きい。早苗の奴曰く、イライラしているときの選挙カーよりも五月蝿く感じる、とのことだ。しかもあいつはありがたいことに、ぐっすりと寝ている奴を起こしにくる。朝だよーおはよーって大声で。ほんと、涙が出るくらい親切な奴だよね。寝起きでまだ意識が朦朧としている奴にも、大声での挨拶を強いるんだよ。あのときはあいつのモサモサした耳の中に、 私の羽を全部を突っ込みたくなったね。
しかしやられっぱなしのままではぬえの名が廃る。いつかあいつに寝起きドッキリを仕掛けてやろう、と意気込んだ私は今日も朝早く起きる。あいつより遅く起きたら意味無いからね。
徹夜すればいいじゃん、って思う奴もいるかもしれないけどわかってないぬぇ。あいつよりも朝早く起きてイタズラをするのが楽しいんだよ。
 だけどそう簡単にもいかない。あいつは私が頑張って早起きしても、いつのまにか庭で掃除をしていて私に挨拶をしてくるんだ。最近だと頑張りすぎて聖に、ぬえも響子も早起きで偉いですねー、って頭をなでなでされちゃったよ。響子の奴は嬉しそうに耳を振ってたけど、私は嬉しくなかったね。この大妖怪の私が、褒められたくらいで羽を揺らすわけないじゃん。いや本当だよ? この私がそんな事で喜ぶわけないでしょ? ちょっとそこなに笑ってるの――。

 閑話休題。

 そろそろ早起きするのも辛くなった私は、ある作戦を立てることにした。名づけてこいし作戦だ。昨日、響子をこいしのいる地霊殿へと遊びに行かせることにした。動物好きなあいつのことだ。たっぷりと響子の奴を可愛がってくれたことだろう。そして心身ともに疲れ切ったあいつは、今頃部屋でぐーすかと鼾を掻いているに違いない。なんて私は頭がいいんだと、自分で自分を褒めてやりたい。さすがは京の民を震え上がらせた大妖怪である。
 響子の寝室に入ってみると、あいつはすぅすぅと可愛らしい吐息を吐きながら布団に入っていた。あまりにも作戦が上手く行ったもんで、私は思わすこの場で笑いたくなる衝動に駆られたけどここは我慢だ。
 とりあえず、あいつの額にイタズラ書きをしてやろうかと響子に馬乗りになる。響子のお腹に乗ったとき、あいつの顔が歪んだから起きちゃったかとひやひやしたけど、よほど疲れが溜まっているらしく目覚める気配は無かった。
 さて、どんなことを書いてやろうかとペンを響子に近づける。私の作戦がいよいよを持って完遂する。
 それなのに、このタイミングであいつは起きてしまった。ここからが本番だったのにガッカリだよ。このまま強引に襲ってやろうかとも考えたけどやめた。でも力づくってのは私の趣味じゃ無いんだよ。野蛮だもんね、そういうのって。
作戦も失敗したから、憂さ晴らしにこのままフランの奴を叩き起こして朝から不機嫌にさせちゃおうかなと溜息を吐く。あいつは低血圧だから、特別朝には弱いんだ。お昼に起こしたのに、いま何時だと思っているのよっ、なんて虚ろな目をしながら二度寝をしちゃう奴なんだよ。
 まぁその前に、響子に朝の挨拶だね。

「おはよう響子。今日も良い朝だよ」

 そしたらあいつは、自分より先に挨拶されたのが嬉しかったのか悔しかったのか、息を思いきり吸ってこう大声を出したんだ。

「おはようぬえっ。セックスしよっ!」
 



 



 
 
 地霊殿の朝は遅い。というよりもこいしの朝が特別に遅い。朝からお仕事のある子はもちろん早いが、寝ぼすけなこいしは目が覚めた後も布団から出るのに数十分は掛かってしまう。ワインを持ったさとりが声をかけても、むぅとかうぅとかにゅぅとかにゃぁ、など意味の無い言語を漏らし喉チンコが見えるまで欠伸をする。なぜさとりが自分のベッドにいるのか、なんて考える余裕も無い。
 昨日は命蓮寺の響子と夜遅くまで遊んでいたから、なおさら起きるのが辛い。彼女はぬえの後輩とは思えないほど、素直で純粋な子だった。こいしが言ったことをなんでも、本当になんでも返してくれるから、こっちまで楽しくなってしまう。もちろん会話にはならなかったけど、挨拶の出来る子はみんな良い子だ。

「こいしさまー、大変ですー」

 お燐がとつぜん、鉄砲玉のように部屋へ入ってきた。挨拶はもっと丁寧にやるべきだよぅ、とこいしは苦言を漏らす。

「お昼ようございますこいしさま。あっ、さとりさまもいらっしゃってたんですか。い、いえ、そんな事よりも大変なんです。侵入者です」
「んー、魔理沙じゃないの?」彼女は玄関から入ってこないので、時折勘違いをされる「魔理沙だったら入れちゃってもいいのに」
「いえ違います、ミイラです。包帯ぐるぐる撒きのミイラが大暴れしながら、こいしを出せーあのバカチンを出せー、って叫んでるんです。もう私なんて怖くて怖くて」

 ミイラを怖がるのは火焔猫としてどうかと思うが。

「ミイラでもショッカーでも、私のお客さんなら案内しちゃっていいよー。ミイラさんとお友達になったら、当時のアレコレが聞けて面白そうもん♪」
「でもあいつの生前はヤクザかなんかですよ……」

 誰がヤクザだっ、とドアを蹴りながら噂のミイラは侵入してきた。いったいどんな人なのかと期待に胸を躍らせたこいしだが、すぐに首を傾げることになる。ミイラの正体が、ただ包帯をグルグル撒きにしたぬえだったからだ。
 
「どうしたのぬえっ。大怪我でもしたならちゃんと休んで無いと駄目だよっ」

 彼女の身体を心配したこいしだが、ぬえは元気一杯にどしどし地面を蹴りながらこちらに向かってきた。

「誰の所為だと思っているんだよ。響子に変な事教えたのこいしだろ」
「むぅ、別に私は変なことなんて教えて無いよー」

 響子と遊んだ事と言えば、食事をしたりトランプしたり、楽器で演奏したりしたくらいだ。

「嘘……、は言わないもんなこいしは。じゃあ無意識? 余計にタチが悪い」
「もしかしてぬえのパンツが真っ黒だって言っちゃったこと? ごめんねぬえ。今日は真っ白だから、もしかして気にしちゃったの? 大丈夫だよっ。ぬえの黒いパンツちゃーんと似合ってるから!」
「違うわ、パンツ返せ。あとそれは別件で怒ります」

 こいしとぬえで押し問答をしていると、不意にさとりが口を開いた。

「ふむ、響子さんがセックスなことを口走ってしまったのですか」

 そうそうそれだよ、とぬえが怒気を含ませながら鼻息を荒げる。

「ぬえさん、女の子にそういう事をするのはどうかと思いますよ」

 さとりが一歩体を引いた。

「だから違うって。聖にも勘違いされて南無三されるし、響子は誰彼構わずセックス言うし。このままだと大変なことになるんだよ」
「大変な事ってもしかして……、所謂薄い本的な展開ですか……?」

 さとりがぐいっとぬえに迫った。

「全然違う。大変になるのは私だよ。あいつが変なこと言うたびに、私が教えたと勘違いして聖に南無三されるんだからね。勘弁して欲しいよまったく」
「ではあっち方面の展開などは?」
「無い無い。むしろみんなの引き攣った作り笑顔が、なんとも言え無い空気を作り出しちゃってるよ」
「家族でドラマを見ていたら、突然キスシーンに突入しちゃったような感じだねー」

 その場面を想像してこいしは苦笑を漏らす。
たとえばお正月、たまに集まる親族一同でわいわいガヤガヤしてる中、親戚の子が突然セックスセックス言い出したらどうなるか考えて見ると良い。ひどいからねあれ。

「とにかく、響子をなんとかしてくれこいし。このままじゃ命蓮寺の包帯無くなっちゃうから」
「でもぬえだって年がら年中種を撒いてるから大丈夫じゃない? この前だって私に種をつけたよね」
「私の能力はそんな風に言うのやめてっ」
「でも私は何もしてないんだけどなー。お姉ちゃんは何か心当たり無い」
「どうですかね。私もそんな卑猥な言葉に心当たりは――あっ」
 
 もしかしてあれかもしれませんね、とさとりが顔の前で手を叩いた。

「おお、さすがはさとりだよ。さぁ、こいしの悪行をどんどんバラしちゃってね」
「仕方ないですね。可愛い妹とはいえ、悪いことは悪いですからね」
「んーそんなに私悪い事したのかなぁ」
「ほら、昨日のことですよ。響子さんと一緒にサックス演奏したじゃないですか」
「何度も何度も私が、これはサックスだよっサックスッ、って言っても、お姉ちゃんがセックス演奏ですかセックス、ってしつこかった奴だね。もー、あれ恥かしかったんだからね私。響子ちゃんもセックスセックス言い出しちゃうし」
「そうですあれですよ。たぶんあれの所為で響子さんがセックスなんて言葉を覚えちゃったんです。さぁこいし、ぬえさんに謝罪しなさい」
「むぅ、ごめんねぬえ」
「いや、さとりが私に土下座しろよ」

 なんでっ、とさとりがワザとらしく驚いた表情を見せる。いやいや百万歩譲ってもさとりの所為でしょとぬえが溜息をつく。

「なにセクハラ親父みたいなこと妹にしてるの?」
「こいしが顔を赤らめるのが見たくてつい」
「ついじゃぬぇよ。おかげで私はミイラだよ。なんとかしてよねっ」
「じゃあ私に任せてよ♪」とこいしが大声を出した。「私が響子ちゃんの深層をちょちょいと維持って、卑猥な言葉を普通の言葉に直しちゃうよ」
「こいしは頼もしいね。さすが私の親友」とぬえが顔を緩ませた。「どこかの変態姉とは大違いだぬぇ」
「お役にたてなくて申し訳有りません。お詫びにぬえさんのトラウマでもイジって……」
「やめてっ」
「もー、お姉ちゃんいい加減にしないと怒るよ。大丈夫だよぬえ、私がちゃーんと響子ちゃんをなんとかしてあげるからね。オマケも付けてあげるよ♪」







 
 
 
 寺で過ごす私の一日はとても早い。なんたって太陽が出るよりも、私が布団から出るほうが早いのだから。欠伸をしながら歯を磨き、絡まった羽をまぁまぁと宥め、ジャングルみたいな寝癖をせっせと手直し、今日も清々しい朝だ、とインチキ臭い台詞を吐きながら外を見る。
庭ではすでに響子が箒で掃除をしていた。でも残念なんて私は思わないよ。この日は普通に挨拶するって決めたんだからね。

「おはよう響子。今日も良い朝だよ」

 そしたらあいつは、自分より先に挨拶されたのが嬉しかったのか悔しかったのか、息を思いきり吸ってこう大声を出したんだ。

「おはようぬえっ。シックスナインしよっ!」
こいしちゃんの日に何か書こうー。と思ったらぬえちゃんネタに変わっていました。無意識怖いです
ムラサキ
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
>家族でドラマを見ていたら、突然キスシーンに突入しちゃったような感じだねー
あの微妙な空気を打開する方法が未だに分からない…
さとり様自重しろww
2.名前が無い程度の能力削除
何故かツボに入った。このさとり様をもっと!
3.名前が無い程度の能力削除
このさとりんからはドSの匂いがする
4.名前が無い程度の能力削除
みんな可愛い中でさとり様だけ突っ込みどころが多すぎるww
5.oblivion削除
さとりん、しれっとなんてこと言いやがる
6.ニュースキャスター削除
レッドセック・・・失礼しましたを思い出した