霊能者というのは、得てして軽視されがちだ。
占い師のように隠れた人狼を見つけ出したり、狐を呪い殺せるわけでもない。狩人のように人狼の襲撃から村人を助けてくれるわけでもない。
村人たちが吊りあげたものが、人狼であったか否か。それが分かるという、極めて受動的な能力者。だから軽視される。
だが村人たちは得てして、失ってから気づくのだ。
霊能者という指針を奪われた村は、霧の深い森の中にいざなわれ、やがては正しい道を見誤るということを。
霊能結果を楽しみにしていた村人たちの顔が、硬直する。
占い師が出した●を吊ったはいいが、それが本当に●だったのかどうか。それが分からなければ、どの占い師を信じれば良いのか。村人たちからすれば、推理の生命線を断ち切られた思いだろう。
そう、霊能者は推理の命綱。だから占い師と霊能者の繋がりのことを、ラインと呼ぶのだ。
私と衣玖は胸をなでおろし、心の中でだけ口元を歪ませた。
紫 :「占いCO、こいしさんは●だった。初日の得票が少ない中から、意見の薄いところを占ったわ。見事に引き当てました」
衣玖 :「占いCOです。幽々子さんは○でした。理由はここが●なら初日に投票した4人がかなり白くなるから。一気に占い先が減るので占いました、が……」
神奈子 :「占いCO、にとり○。初日に吊られた○である椛への投票者、そして内訳に関する視点が見えすぎている印象だったから占った」
ふむ。ここで狂人が●出しか。
霊能の死体を見て、とっさに●にしたのか? まぁ、なんにせよ良い判断だ。
こいしが、共有でなければ……だが。
こいし :「あらら、霊能が噛まれてしまったの? そして紫さんが偽者ね~」
ナズーリン :「ここで霊夢を噛んでくるとは、意外だったな。ということは神奈子は偽か……? 神奈子が人狼の騙りというのも考えられるかな」
天子 :「なんでナズーリンは神奈子-霊夢の真-真ラインを考えないの? 人外臭い発言ね~」
映姫 :「霊能が……。はっきりと白黒をつけたかったのですけどね。しかし、人狼も良く噛んできたものです。狩人の護衛が怖くなかったのでしょうか」
ナズーリン :「天子への返答だが。真と霊能のラインがつながるのを恐れるのなら、占いの方を噛めば良いからだ」
にとり :「つまり前日の護衛が、占い師護衛による成功だったって事じゃないかな? そうなれば人狼は狩人が占いを護衛すると思うはず。だから霊能を噛んだ……。真占いは護衛されている恐れが強くて噛めなかった……」
幽々子 :「うーん。占いから○をもらった途端、その占いへの擁護をするのって」
さとり :「にとりさん。その理論でいくと、神奈子さんが真ということですか?」
魔理沙 :「そうとは限らんさ。他の占いを護衛されて、騙りである神奈子を守る為に霊能を抜いたのかもしれん」
ナズーリン :「魔理沙の意見だと、霊能が噛める保証がない中での●出しは、やはり狂人。そうなると紫偽で衣玖真になる」
紫 :「ふーん。昨日の幽香といい、ナズーリン、魔理沙といい……私を偽にしたいようね。このあたりに人外がいるのかしら?」
にとり :「いやいや、幽香は神奈子の●で吊ったじゃん。対抗の●が人外臭いって、どういうこと?」
紫 :「つまり幽香が狐だったって事よ。つい●出しで吊りにいったが、霊能結果のことを考えていなく、一か八かで噛んだ……。そんなところかしらね?」
映姫 :「忘れがちですが、紫さん視点は衣玖さん狂人ですからね。紫さん視点で神奈子さんは人狼よ」
天子 :「……神奈子が人狼でない限り、昨日の●で人狼視点の占い真偽はついたはず。狩人が神奈子以外の占いを護衛していたのなら、霊能結果は狩人も知りたいはずよね。そこで護衛を外すっていうのは……」
神奈子 :「……初日狩人、なんてこともあるかもしれないわ」
大妖精 :「それを人狼が知っていたら、噛みにいくんでしょうけど。実際噛めたことよりも、噛みにいった理由の方が問題ですよ」
こいし :「神奈子真、平和は神奈子護衛。霊能を噛んで、さっそく村人の私に●出し。○連打の衣玖は狂人……いや、共有を踏むのを避けた人狼かな。私に言えるのは、こんなところかしらね?」
紫 :「ねぇねぇ、せっかく●引いたんだけど、どうするのよ。吊ってもらわないと困るんだけど」
小町 :「うーん、紫さんはあんまり信用してないんだがねぇ。こいし●かぁ」
天子 :「霊能を噛んでの●出し、どうも臭いわね。衣玖の占い先は囲い臭いし、神奈子も発言が微妙だし、正直、三人とも真に見えないんだけど」
幽々子 :「●を出されて必死の抵抗って、どうにも怪しくないかしら?」
衣玖 :「うーん、もしかして囲われているのでしょうか。なかなか引けないですね」
映姫 :「霊能がいなくなった以上、バランス吊りで様子見をしましょうか?」
魔理沙 :「そうだな。これで衣玖が真でない限り、人狼は一匹確実に吊れることになる」
ここまでCOなし。こいしは共有ではない……か。
霊能の真偽をつける為、ラインがつながる翌朝までCOせずに共有者が黙って吊られることもある。が、肝心の霊能が噛まれているんだからそれはありえない。
よってこいしは共有者にあらず。
こいし :「え~、紫さんを信じちゃうの? 霊能噛みでの●出しなんて、明らかに騙りっぽいじゃない。神奈子さんが真で決まりよ」
さとり :「……今日のところは、こいしを吊るしかないですかね。この場面で一人の占いを真認定する発言は、ノイズに聞こえますから……。こいしは村人には見えない部分もある」
天子 :「そうかしらね。こいしの反応は●を出された村人そのものじゃない? だって霊能がいなくなって、後は信用勝負になるんだから。怪しいところは突付いていくべきよ」
大妖精 :「えーっと。これでグレーは魔理沙さん・映姫さん・天子さんの3人ですね。共有者はまだ出なくても大丈夫でしょうか?」
衣玖 :「次こそは●を引きたいですね。まだ共有がグレーにいるならCOして欲しいところです」
神奈子 :「ふふ、焦っているのかしら? 早く●を出したくても共有がいるかもしれない。その恐怖で出せないだろうからね」
ナズーリン :「共有潜伏による●抑制は、あまり期待していないよ。むしろこう、スムーズに●を引かれる方が怪しく感じるね」
小町 :「占いの中に人狼が混じってるんだろ? それなのに、3人ぽっちの占い候補(グレー)の中に仲間を残しておくかねぇ? もう、とっくに囲われてるんじゃないのかい?」
天子 :「本当に共有者はCOしなくていいのかしらね。まさか全滅してるなんてことはないでしょう? ……あとは狐も怖いかしらね」
魔理沙 :「狐は……朝に死体が二つ並ぶのを待つしかないな。まだ占い候補は全員生きてるし」
神奈子 :「この場面で狐を警戒するっていうのは、狐臭いわねぇ。占いが生きているのだから、村人は呪殺が起きるまで待っていれば良いこと」
魔理沙 :「……そうおっしゃる神奈子も真の発言とは思えんな。そう思うのならば、黙って天子を占えば良いだけだ。真占いならばな」
真実を知っているものからすれば、ただの言葉尻を捕まえた、たちの悪い揚げ足とりに見えるだろう。
だがこうやって地道に不信感を溜めるのも、信用勝負では重要だ。
……無論、神奈子を攻撃することにより、私が占われるというリスクもあるのだが。
さとり :「……やはり噛みを見ると、3日目の平和は占い護衛だったように思いますね。それで人狼は霊能を噛んで、信用勝負に持ち込んできたと……。つまりは、やはり神奈子さんが真に近いですかね」
映姫 :「うーん。衣玖さんの真はないと見たい。ここで幽々子さんを占うというのは、狂人アピールにも見えるわ」
魔理沙 :「しかし衣玖がもしも騙りだったら、幽々子を占うなんていう信頼が落ちるようなことをわざわざするかね。真ゆえの占い先という感じもするぜ」
大妖精 :「私も衣玖さんの真は捨てていません。ただ狂人臭いというのは同意です。その場合には、紫さんが真に近いですかね……」
衣玖 :「うぅ、こんなに信用がないとは思いませんでした……。これはいけません」
天子 :「うーん。まぁ、誰かを選べっていうなら、神奈子が真寄りで見たくはなるんだけど……」
こいし :「……紫が人狼だとしたら、私がグレランで投票した魔理沙も怪しいかな……。発言も衣玖真寄りで神奈子真から外そうとしてるし」
魔理沙 :「おいおい、そんな誘導を掛けられると●に思えてくるぜ」
小町 :「まだまだ吊り回数には、余裕があるよねぇ。ここは●を吊るか。判断材料ってのが、ないしねぇ」
幽々子 :「じゃあ、今日はこいしちゃんに投票ね」
ナズーリン :「ふむ。最悪、幽香とこいしの両方が村人だったとしても、詰みの段階には程遠いさ」
神奈子 :「こいしは信用できる村人だと思っていたんだけど。ちょっと投票するのは憚られるよ」
案の定。霊能者がいなくなった事により村は、混乱の兆しを見せている。
今、人狼を何人吊り上げたのか? それが分からないだけでも、村人は不安に苛まれるのだ。
まだ13人という状況であるから良い。これがもっと少なくなれば「この吊りを失敗すれば負けるかもしれない」という危機感が常に付きまとう。
それは正常な判断を狂わせ、人外に付け入る隙を与えるのだ。
今回の話し合いは静かに幕を閉じ、結果の分かりきった単調な投票が開始される。
◇ ◇ ◇
紅魔館村 4日目投票結果
魔理沙 (0票)→こいし | 幽々子 (0票)→こいし | ナズーリン (0票)→こいし | 大妖精 (0票)→こいし |
小町 (0票)→こいし | さとり (0票)→こいし | こいし (10票)→紫 | |
天子 (0票)→こいし | 衣玖 (1票)→紫 | にとり (0票)→こいし | |
紫 (2票)→こいし | 映姫 (0票)→こいし | 神奈子 (0票)→衣玖 |
◇ ◇ ◇
「さぁて。まずは無駄吊り出来たな」
「ええ。この流れなら私の●も吊ってもらえそうですね」
「そうだな……。問題は私が占われるか、否か、か……。考えても仕方が無いけどな」
「●出し。どうしますか? 間違っても共有者には出したくありません。出来るなら狩人……いや、CCOされる恐れがあるから素村に当てたいですね」
「バランス吊りという名目で確実に吊ってもらえそうな“カード”だ。出来るなら神奈子真寄りの奴にブチ当てたいな」
「じっくりと考えたいところですね。あとは……狐ケアをしている余裕はありませんが、おろそかにはしたくありません」
―――――――――――――――――――――
村人視点メモ 4日目
村人13>11>9>7>5>3>
奇数進行6吊り
【占い】
紫 :衣玖◯→大妖精◯→こいし●
衣玖 :さとり◯→小町◯→幽々子○
神奈子:ナズーリン○→幽香●→にとり○
【霊能】
霊夢 :椛○
【共有】
【吊り】
椛→幽香→こいし
【噛み】
初日→平和→霊夢
【グレー】
魔理沙・天子・映姫(3人)
―――――――――――――――――――――
「グレーに3人。……うーん。かなり厳しいな」
「天子さんか、映姫さん。どちらかに●を当てるということですが……ここに共有が潜んでいると思いますか?」
「いや……流石にここにいたらCOしているだろう……。真占いに無駄占いさせてしまう確立が高すぎる」
「二人とも、かなり共有臭くはあったんですけどね。さとりさん・ナズーリンさんあたりですかね」
「案外と幽々子、小町が共有ってこともある。ここら辺にホイホイと●を出すと怖い」
「上手い具合、小町さんと幽々子さんが共有だったりすると、不思議と私に信頼がくるかもしれないんですけどねぇ~」
「神奈子寄りの奴は……。天子の方かな……。映姫も衣玖真はないと見ているから、あまり生かしたくはないんだが」
「うーん。ならば天子さんに私が●を出して、噛みは映姫さんにしますか?」
「そうすると、今日は神奈子に占われなくてもグレーに私一人だけが残ることになるぜ? 流石にそれは……」
「しかし、3人のグレーでも既に囲われていることを警戒するのです。たった一人のグレーが人狼という可能性、占いとしても考えづらくありませんか?」
「……それで占いは回避できるかもしれん。が、○進行だった場合にはとりあえずでグレーに残った私が吊られる可能性もあるが……」
「その時には、私が●を連続で出してしまいましょう」
「……2個●を出せば、あとは用済みになる。衣玖が吊られてしまうんじゃないか?」
「呪殺が起きるまでは、なんとか生かしてもらえないでしょうか?」
「……どうかな」
……そうだ。呪殺という現象。これも考えなければならないんだった。
もしもグレーに狐がおり、明日の朝に死体が二つ並ぶ可能性。まぁ、これは衣玖が落ち着いてCOすれば問題ない。
だがもし、セオリーとは違うが……神奈子が衣玖や紫の○を占い、そこが狐だった場合。衣玖と紫は占い先を噛み先に変えなければならない。
ふむ、具体的に言おう。
私たちが映姫を噛み、神奈子は小町を占ったとする。そして小町が狐だった場合、朝には映姫と小町の死体が並ぶ。
衣玖はもう小町を占ったのだから、衣玖が真だというなら呪殺発生は映姫以外にはありえない。だから衣玖はとっさに「映姫○」にCOを変えて対応する。
最悪なのが、映姫が共有だった場合。相方の共有COにより、映姫が狐の可能性はなくなり、衣玖の呪殺は破綻して偽確定してしまう。
……映姫の共有はないと思うのだが、それでも万が一がある。
神奈子もグレーにいる3人の誰かを占うだろうし、まだ心配する必要はないと思うのだが……。
そうだ。囲い占いによる破綻。ここは考えないようにしよう。
神奈子はグレーを占う。それも私以外の、出来れば噛む予定である映姫あたりを。
そう決め付けるべきだ。
「神奈子の占い先、ここを予想して決め打っていこうか? まぁ、私は占われないと仮定して……」
……いや、ホントに。それは願うしかないんだが。
「神奈子が映姫に○出しで、噛みも映姫を狙う。真占いの○が一つ減る上に、噛み合わせのようにも見えるかも。あとは神奈子が天子に○で、噛みは映姫、そして衣玖が天子●のパターン。●のバランス吊りになれば、真占いの○を消せる。……ここで神奈子真に決め打たれたら負けだが」
「うーん。でも、やっぱり……ここでの●はあざと過ぎるかもしれないですね。魔理沙さんを囲って、グレー噛みというのは……」
「だが、しかし。共有は●を出されるまで意地でもCOしないのかもしれない。○連打し過ぎると、あとあと破綻するかもしれんぞ」
「私の人狼候補は、ナズーリン・大妖精・にとり・映姫・天子、対抗占いに1ですよね。ここに共有が2も残っているとなると、確かに怖いですが……」
「……何が怖いってさ、衣玖の○の中で呪殺が起きた時に、共有を噛んじゃってる事なんだよな」
「うー。そうですねぇ。そういった破綻を防ぐためには……早めに共有者を噛んで、相方もあぶりだしておいた方が良いのでは?」
「んー。そうだなぁ。ナズーリン……さとり、あたりか?」
確かに共有者の位置が分からないのは、実際のところプレッシャーになっている。
しかし他の占い候補が共有潜伏下で●を出したからこそ、同じ条件のうちに衣玖にも●を出してもらいたい……。
ここからは心証勝負。そういった細かいところでもポイントを稼いでいきたいのだが……。
夜が明けてあと5吊り……。どうやって凌ぐ……。
……待てよ。
信用勝負なのだから、もう神奈子は噛めない。
そうなると自然、いつかは私も占われるに決まっている。
その時になって衣玖が真だと思われていなければ、その時が私たちの敗北なんだ。
5吊りということは、占い師全員の●2個を待ち、占いローラーをすれば勝ちという状況は来ない。吊りが間に合わない。
共有者や村人たちの判断次第ではあるが……全員の●を1個ずつ吊って、占いローラー。最終日のグレラン勝負か、もしくは明後日……下手すれば明日にも真占い師を決め打っての勝負になるのだろう。
ならば今は、やがてくるかもしれない破綻ばかり目を取られていてはならない。
早急に神奈子から“信頼”を奪い取るのが先決じゃないのか?
そうだ。悠長に構えているヒマはない。
「どうすれば……神奈子を偽と思わせられるんだ?」
私は思わず呟いた。
前日には「私に任せろ」などと言ってみたが、正直な話、私にもどうすれば勝てるのか分からない。
だから尋ねた。すると、答えが返ってきた。
「神奈子さん人狼、しかないでしょうね。幽香さんは狐、神奈子さんは告発での●出し。あせっての霊能噛み……というシナリオ。――その為には呪殺を起こさせない、噛み合わせに見える状況を作る。これらではないでしょうか」
「……いけるのか。衣玖真、紫狂、神奈子狼」
「……いいえ。紫真でいきましょう」
そこから衣玖が描いたプランは、上手くいくとは思えないような、しかし、確かに勝機は見えるものであった。
村人たちの発言に対応し、村人に化けた私が上手く誘導する。その為に私たちが選んだのは……。
徹底した有能潰し。
◇ ◇ ◇
死体一つ、よし。
衣玖 :「占いCOです。天子さんは●でした。誰の発言にも攻撃しているのが気になりました。かといって自分の意見は中庸ですし、グレランに強そうなところなので」
ここは予定通り。問題は……。
紫 :「占いCO、魔理沙さんは○だった。対抗を真視している中で、人狼であるこいしが名前を挙げたところが逆に気になったので、占ったわ。初日グレランでこいしから一票だけもらってるっていうのも、身内投票に見えた……」
よし! ここでの囲いは嬉しいぞ。
誤爆の可能性がなくなったのは安心できる。
そして、問題は、ここだ……!
神奈子 :「占いCO、小町○。……既に囲われていると予想して、狙っていった。囲われていなければ、グレランならば確実に吊られているであろうところなので。……しかし、違ったようね」
……!?
こ、これは……!
よし! これはやってくれたぜ!
ここでの対抗○占いは、美味しい!
さとり :「共有者CO。相方は映姫さんでした。……引っかかりませんでしたね。まあ、占われなかっただけでも良しとしますか」
うぇえ!?
映姫が共有だったのかよ!
しかも神奈子が対抗○を占ってきたということは、小町が狐だったとしたら衣玖が破綻しているところだった……! 危ない……。
いや、だが実際には小町は村人。
そして神奈子の占い先、これは垂涎のミスだ。
何も対抗○を占うのが悪いことではない。
だが村人心理、まだグレーは3人いる。囲いを占いにいくにしては、直感というのは信用に欠ける。
まぁ、真ゆえの自信。それが囲い占いに向かわせたのだろうが、それに気付ける村人がいるかどうか……。
いや、思わせる前に焚きつける。
火傷なんぞ恐れずに、火種を素手で叩き込んでやる。
魔理沙 :「ようやく○をもらったぜ。っと、神奈子は対抗の○占いかぁ?」
にとり :「ふーん。ここで対抗の○ねぇ。あと共有はずいぶんと粘っていたのね」
さとり :「……グレー噛みですか。やはり人狼は既に囲われていると思われます。神奈子さんの判断は間違っていないと思いますね」
小町 :「あらら、二人から○もらっちゃって。これで後は紫が占ってくれれば、あたいは確定○ってヤツだね」
衣玖 :「ようやく引けました。これで吊ってもらえれば、あとは囲いの中に一人ですね」
紫 :「……ふむ。痺れを切らして狂人も●を出してきたわね。……まだバランス吊りをするつもり? そろそろ決め打って欲しいわね、私の真を」
天子 :「はい、衣玖が偽。分かりきってたけどね。……神奈子の占い先も説得力に欠けるし……紫も発言がねぇ。これは占い初日の狐混じりを考えた方がいいかもしれないわ」
神奈子 :「うーん? ここで占い初日を持ち出す? 天子の狐、あるかもしれないわねぇ~」
大妖精 :「……正直、神奈子さんの真って線があまり見えなくなったような気も。でも狂人だとしたら人狼が護衛を恐れずに霊能を噛んだのが……。そこまでして狂人を守るのかどうか……」
幽々子 :「え~、誰が本物なのよ? みんな怪しいわ」
ナズーリン :「……天子を吊ると、人狼は確実に1匹吊れたことになる。……天子のいうように、占い初日でなければね」
さとり :「占い初日だとしたら、人狼が今の今まで占いを噛まない理由がありません。私は占い護衛が成功して、噛めなくなったのではないかと思います。初日で人狼視点の占い真偽が付いていた可能性が高いと思われます。そうでなければ護衛された占いが真か狂人かは分かりません。次の日の霊能抜きを見ても、人狼は真占いが誰か分かっている」
魔理沙 :「さとりが共有だったんだから、初日に衣玖の占い結果で真偽が分かった、って事は消えたな……」
にとり :「衣玖人狼だとしたら、紫が狂人、神奈子が真と人狼視点で判明。衣玖真か狂人だとしたら、ナズ人狼でない限り真偽つかず。って感じだね」
天子 :「私吊りはあり得ない。なぜ、映姫を噛んだのか? それはグレーの中から共有・狩人らしきところを選んだ結果でしょ。グレーを減らしたということは、囲いに人狼はいるはず」
天子が抵抗を始めた。
……ここで彼女が吊れなければ。村人と決めうちされれば……私たちの負けだ。
天子 :「私が人狼だとしたら、なぜグレーに残した? そしてグレーの映姫を噛んだ? 衣玖が私に●を出さないとしても、明日にはグレーが魔理沙と私だけになる。そんな危険を犯す訳がない」
魔理沙 :「……うーん。言われてみれば、それもそうか。もう人狼は囲い終わってると考えた方が、自然ではあるよな」
ナズーリン :「いや、そこを逆手に取るということも考えられる。真に●を引かれないようにする為、あえてグレーに人狼を残し、囲いに見せかけた○を占わせるということも……」
天子 :「今日に●を出された者はバランス吊りで吊られる可能性が高い……。つまり私と映姫は人狼にとって邪魔だったのよ」
衣玖 :「……私を人狼だと?」
天子 :「そう! そして紫が狂人、神奈子が真……だと思いたい。私と映姫に共通しているのは、衣玖を真視していなかったという事。つまり信用勝負で邪魔になる二人ということよ」
にとり :「……あとはグレランで幽々子に投票しているのも、映姫と天子の共有点だね。その幽々子は衣玖に○をつけられている……つじつまが合うけど……」
小町 :「んー。確かにグレランで幽々子さんに投票した人、もう死んでたり●出されてるんだよねぇ」
幽々子 :「私を人狼だって言いたいわけなの? 初日しか投票してないんだから、今は状況が変わったと見るべきなんじゃないかしら」
魔理沙 :「にとりの言うとおり、つじつまは合うんだけどな。これで天子が人狼で衣玖が真だったら……天子を吊らない時点で負けは決定するようなもんだぜ」
大妖精 :「……つまりは、真占いを誰で決め打つのか……。今日、決めた方が良いのですかね」
衣玖 :「私を吊るのは認められませんよ。まだ狐もいるのかもしれないのです。吊られる訳にはいきません」
さとり :「占い師のみなさん、残り内訳は?」
神奈子 :「私は、幽香。魔理沙・幽々子・大妖精・天子の中に一人、占い対抗に1」
衣玖 :「天子さん。魔理沙さん・ナズーリンさん・大妖精さん・にとりさんの中に1人、神奈子さんか紫さんで1。狐は吊られているか、囲われているか。狂人誤爆なんて可能性も考えています」
紫 :「こいし。神奈子。幽々子・ナズーリン・小町・にとり・誤爆の可能性で天子……の中に1。で3匹ね。狂人は衣玖で確定」
よどみなく、占い3人の答えが返ってくる。
大丈夫だ。このくらいの揺さぶりでミスるような衣玖じゃない。
今日はまだ、決定的なミスを犯す訳にはいかないんだ。
大妖精 :「共有さん。今日は、どうしますか?」
さとり :「……そうですね。夜の会話で、相方の映姫さんは……神奈子さんを真と見ていました。とだけお伝えして……」
さとりは閉じられた瞳の下、尖がった顎に手を当てて、少しの間だけ思案した。
さとり :「今日は、各々の好きなように投票してください」
……!?
そうくるか。
この手は一見、悪手に見える。
やはり確定○である共有には、ビシッと決めて欲しいのが村人心情でもある。
だが、これは良い。
いや、私たちにとってはウザい。
当然、人狼である私と、衣玖は●出しした天子に投票したい。
だが他の村人がどう動くのか、それは分からない。
既に衣玖の真を捨て、もしくは天子を村人と決め打っているものは、共有の言うとおりに好きなように……具体的にいえば、衣玖に投票してくるかもしれない。
もしも、私と衣玖だけが天子に投票していたりしたら……。
それは嫌でも目立ってしまう。
霊能がいなくなり、●吊りを繰り返してきた村。
この村には決定的に、推理材料が不足している。
ここでのランダム投票指定は、その材料を少しでも作り出そうとする妙案。
村は11人。最大でも人狼陣営は4人。組織票の効果が発揮されるかどうかの瀬戸際、デッドラインだ。
意見を出さずに、こういう策を打ってくる共有者。……厄介である。
にとり :「えぇ。指定なし?」
大妖精 :「そうですか……。いいかもしれないですね」
衣玖 :「困りますねぇ。天子さんを吊ってもらわないと……」
天子 :「とりあえず衣玖吊りで問題ないわ」
ナズーリン :「……最終日までにLW0F(人狼1、狐0)前提で5吊り……か。まだ無駄吊りも許されるが……」
魔理沙 :「そういう方針なら、今日はあまり多くは語らないぜ?」
小町 :「あー。そういうことかい」
幽々子 :「……どういうこと?」
紫 :「……あなたが怪しいと思う人物に投票すれば、良いのよ」
いや、大丈夫。
村人だって、誰が真と決め打っているのだろうが、それは100%ではないはずだ。
占いの三人が三人とも、真のように見える要素と、偽に見える要素が含まれているはず。
ならば今日は、とりあえずの日。
最悪の事態を避け、確実に人狼が一匹は吊れたという安心感を得たい日のはず。
……そうだろう?
私は緊張の面持ちで、投票用紙を箱へと入れた。
ここからは一日一票一言一瞬が勝負だ。
◇ ◇ ◇
紅魔館村 5日目投票結果
魔理沙 (0票)→天子 | 幽々子 (0票)→にとり | ナズーリン (0票)→紫 | 大妖精 (0票)→衣玖 |
小町 (0票)→天子 | さとり (0票)→天子 | 紫 (2票)→神奈子 | 神奈子 (1票)→紫 |
天子 (5票)→衣玖 | 衣玖 (2票)→天子 | にとり (1票)→天子 |
◇ ◇ ◇
悪くない。バランス吊りの流れ。
……占いの中で神奈子にだけ得票がないのは、少し残念ではあるが……。
問題は、明日だ。
●を吊った横一線。
明日、神奈子が私を占うのか。紫はどこに何を出すのか。衣玖はどうすれば良いか。
「って、おっと」
そんなことを考えながら廊下を歩いていると、思わず自分の部屋を通り過ぎてしまいそうになる。
あわてて2、3歩下がると、ドアを開いた。
さて、今宵も企もうじゃないか。
衣玖と二人で、あと4回の吊りから逃れる方法を。
―――――――――――――――――――――
村人視点メモ 5日目
村人11>9>7>5>3>
奇数進行5吊り
【占い】
紫 :衣玖◯→大妖精◯→こいし●→魔理沙○
衣玖 :さとり◯→小町◯→幽々子○→天子●
神奈子:ナズーリン○→幽香●→にとり○→小町○
【霊能】
霊夢 :椛○
【共有】
映姫・さとり
【吊り】
椛→幽香→こいし→天子
【噛み】
初日→平和→霊夢→映姫
【グレー(各視点)】
紫 :幽々子・ナズーリン・小町・にとり(4人)
衣玖 :魔理沙・ナズーリン・大妖精・にとり(4人)
神奈子:魔理沙・幽々子・大妖精(3人)
―――――――――――――――――――――
四季さまとさとりさまが共有だったのか。
幽々子さまは初心者ってことでしたっけ。
なぜか上手く発言されていると思うのは、幽々子さまだからなのかね。
続きも期待しています。
続きを全裸待機してます。