Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

文「キシャー」

2011/05/11 23:46:02
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ある昼下がりのこと。

「……あー」

タイプライターと向き合い格闘する鴉天狗の少女が一人。
わしゃわしゃと頭を掻いて困ったような表情を浮かべている。
噛みあわせた歯の隙間からは溜息ともつかない息が漏れ。
少女に纏わりつく倦怠的雰囲気が少女の疲れを鬱々と語っていた。

「ネタがないっ……!」

少女、心の叫びである。
こんなはずじゃないっ……!
ばかな……!ばかな……!
と頭を抱えてタイプライターに顔面ダイブを決行した少女は、むぐむぐと口を動かして沈黙した。
暫し。
少女の肩が揺れ動く。
がばりと身を起こすと、少々色の濃い瞳で明後日を睨め付けて、ならば、と呟いた。
いや、呟くというよりは吐き捨てるの方が近いかもしれない。

「ネタを提供してくれる巫女のもとへ…!」

言うが早いか、少女の姿が掻き消え、部屋の中を暴風が襲った……。


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博麗神社境内。陽気な巫女は縁側に座り、暢気にお茶を啜っていた。
その隣には霧雨魔理沙もといドロボーが鎮座していて、茶を啜りつつ隣の巫女にあれやこれやと
話を振っていた。
対して巫女は、「へー」「あ、そ」「良い天気ねえ」「何を盗んだのかしら」と取り付く島も無い。
巫女の気を必死になって引こうとしているドロボーの姿は、包帯で腕を吊っていることも
相まって、少しいやかなり可哀相であった。あー、いたたまれないなー。

「そ、そいでな?見てくれ霊夢。この腕、美鈴にさ」
「うん?美鈴が何よ」

うおお!やっとまともに返事してくれた!!と若干涙目の魔理沙。
追撃とばかりに口を開こうとして、瞬間、暴風が吹き荒れた。何かが飛来したのである。

「こーんにーちわっ!毎度おなじみ文々まりゅっ……新聞でーす。えへえへ」

噛みながらも挨拶を言い切りごまかしに笑いを零す少女は、言わずもがな鴉天狗の射命丸文その人だ。

「なんの用よ」

とは巫女の言。

「お前を蝋人形にしてやろうか!!!!」

とは半狂乱になった魔理沙の言だ。
魔理沙の剣幕を受け流しつつ、頭の後ろをぽりぽりと掻きながら、文はへにゃりと笑った。

「いやあ、何かないかなーと、思いましてですねぇ」
「何か、ね。何か……」

お?脈あり?と文は目を開いた。常ならば二言三言どころかジェスチャーであしらわれるというのに、
今日に限って何か逡巡しはじめたのだ。
眉を八の字にしてうんうんうなる巫女の隣で、おい、と魔理沙が声をあげた。
何ですか?と文。

「いーいネタがあるぜ。紅魔館に行ってみな、凄まじいものが見れる」

はあ、紅魔館…ですか?と言葉面では然程興味を示してない風に言う文だったが、
彼女の心には台風の如き野次馬魂が渦巻いていた。
凄まじいもの?何ですかそれ!ひょっとしてひょっとするものですか!?大スクープですか!!?
なんて思いが脳を駆け巡る。
映し出される映像はグラマーな吸血鬼姉妹から紅魔館爆散の悲劇、それから魔女筋肉達磨化など様々。
のっぴきらないテンションは最高潮を迎えようとしていた。

「門番がな」

と魔理沙が口にするのを、閻魔様張りに耳を良くして一言残さず聞き通してやると意気込む文に、
ずいと魔理沙を押し退けて見せた巫女があったわ、一つ。と声をかけた。
ふむ、とひとまず巫女の言葉を聞くことにした文。巫女はお茶を一啜りして唇を湿らせてから、

「紅魔館に行ってみなさい。凄まじいものが見れるわ。門番がねえ、凄いのよ」

と言った。
え、ちょっと、それ今私がなどと言う魔理沙の声を遮って、

「マジですか!!よーし文ちゃん張り切って見に行っちゃうぞー!!!」

と口早に捲くし立て飛び立とうとして、ぐいと服の端を引っ張られて文は止まった。
魔理沙だ。

「何ですか」

早く行きたいのにとほおを膨らませて言う文に、あー、なんだ、その。これ、ついでに返しにいってくれ、
と魔理沙は本を渡した。
ぴんくの厚い表紙には、可愛らしい書体で『レミィのおいしいレストラン』と書かれていた。
お安い御用です!!と叫んでから、今度こそ文は風になった……。


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紅魔館門前。
異様な雰囲気が辺りに漂っていた。
静か。妖精の声どころか生き物の声が聞こえない。
その原因はどうやら、門前に立つ一人の女性にあるようだった。
目鼻立ちが整った、すらり長身の女性。張りのある白い肌に、チャイナドレスから覗く魅惑の太もも。
流れる髪は鮮やかな紅。帽子には星、龍の文字。
直立にして不動、ただ腕を組み眼光鋭く前方を見ているだけだというのに、いざ前にしてみれば
失禁してしまいそうなオーラがあった。
と同時に、豊満な、そう、豊満なその肢体に……その…興奮してしまいましてですねえへえへ。
いや、違う。
百戦錬磨もかくやというその地球全体を震わせるかのような錯覚を覚える程強大な『気』に
身震い及び戦慄を禁じえない。
背筋が凍る思いとは、まさにこのことだった。
ただそこにいる。それだけのことで、これ程までに他に影響を与える存在がこの幻想の地にいるものか。
結構いる。
しかし、その『結構いる』者たちが、彼女を前にしてなお尻餅をつかずにいられるか。
妖怪の大賢者ならば、外の世界のスーパーコンピュータを凌駕する頭脳で一つの答えを導き出すだろう。

「降参します」

どんなに頭が回ろうと、彼女の力を前にしては所詮小賢しいだけにすぎなかった。
瞬きをする間に遥か辺境の星に降り立ち、あくびをしながら銀河を滅ぼす。
その力たるや、実に三千百万。さらに彼女は自らの気を解放しパワーを増させる技を持っていた。
最高峰の力、二十一億七千万。インフレもいいとこであるが、事実である。
そして今。
彼女はその力の一端を解放していた。
くい、と彼女が顔をあげる。それだけで、幻想郷が竦みあがったような気がした。大規模なアクションが起こらないのは
ひとえに彼女が全力を出していないからである。
暴風が吹き荒れる。
無謀にもその地に降り立ったのは、我らが清く正しい射命丸文だということは言うまでもなかった。
広がる砂埃の中心に片手でスカートを抑えつつ軽やかに降り立つ。
それから、門番を見た。膝をついたひれ伏した。
得も知れぬ感情が、彼女をそうさせていた。
はっと、彼女は気付く。
駄目だ、これではいけない。
メディアが力に屈してはいけないのだ。
顔をあげる。
すらりとした足と、緑の布地が目の前にあった。
もちょっと顔をあげる。
桃源郷があった。もとい、胸。
限界まで顔をあげる。
青い瞳と目が合った。
上下社会を歩む彼女だからこそ、脊椎反射的に一つの考えが浮かんだ。
逆らってはならぬと。
本能が警鐘を鳴らしていた。
気に触ってはならぬと。
しかし、彼女はそのまま立ち上がった。射命丸文、自他共に認める、清く正しい幻想の文やである。
負けるわけにはいかない。

「何の用だ」

文は、胸を貫かれた。
いや、違う。そんな気がしただけだ。
どっと全身に汗が吹き出て、心臓が激しく鼓動しだす。
はは、屈しちゃおうかなあ。
目じりに涙を浮かべながら、彼女は思った。それこそ本心であった。
否。否否、断じて否。
出し抜け。
スピードには自信があるはずだ。
何せ幻想郷一!!
「音速が遅い」とは、何を隠そう彼女の言葉だったのだ。
さあ今こそがそのスピードを見せる時だ。
文は動く。それこそ、一瞬で。
常人には到底追えぬ素早さで腰の後ろにくくりつけた小さな鞄に手を伸ばし、逆転の最終兵器を取り出す。
そして、それを勢いよく門番へと突き出した!!

「本の返却に参りましたぁあああああああ!!!」

必死。まさに必死。そして決死。
異様な沈黙が辺りを包み込む。
極度の緊張で文が自身の顔の筋肉がどうなっているのかが分からなくなり始めた頃に、門番が口を開いた。

「なるほど」

勝った!!
文はそう確信した。彼女の心の中では花が咲き乱れファンファーレが鳴り響いていた。
勝った!!
喜色満面。激しい戦闘に辛くも勝利したかのような心地のよい疲労感と満足感に、文は顔いっぱいで
喜びを表したのだ。
門番が、ゆっくりと瞬きする。

「なるほど。パチュリー様の本を盗んだのはお前だったか」

死んだーはい死んだー。もう駄目お終いというかよく考えてみればこれ魔理沙さんのですよね
つーことは嵌められたんかあのやろうくそああ神様仏様天魔様お助けくだしいいいいいぃぃ……
思考は崩壊の一途を辿っていたが、彼女の体は生への執着心だけで勝手に動いていた。
風を操る程度の能力をフル回転させ、暴風を巻き起こし門番にぶつけながら、
その風に乗って弾丸のように反対側へと飛び出してゆく。
だが、ピシュン!という不可思議な音を聞いた直後に、彼女の意識は落ちていた。


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何か細かい糸状のものが喉に張り付くのに大きく咳き込んで、文は目を覚ました。
薄らぼんやりとした頭で起き上がろうとして―――起き上がれなかった。
何故。どうして。
混乱し、やけに多く散っている埃に咽ていると、ぺたぺたと足音が近づいてきた。
顔だけをそちらに向ける。
なにやら紫色っぽいのが陰鬱とした表情で立っていた。

「お目覚めのようね」

小声で早口。ぼそぼそと動いた口を注視しながら、文はそれが誰なのかを知った。
パチュリー・ノーレッジ。知識と日陰の少女。紅魔館の魔女。
パチュリーはのそのそと近づいてきて……文のお腹をさすった。
ひゃあ!と声をあげる文。抗議しようと起き上がろうとして、またもや失敗する。
見れば、手は光る何かで台に固定されていた。恐らくは文が寝かせられている台。
ああ、だからパチュリーさんの足が見えないのか、などど暢気に考えて、はた、と気付く。
何故寝かせられてるんでしょーか。首も凄く痛いし。
ひたすら首をかしげる文に、パチュリーが語りかけた。
曰く、『天狗の中はどうなってるん?』
たまらず文は悲鳴をあげる。全力で暴れようとするが、手足が痛むだけでちっとも動けない。

「大丈夫よ、すぐに楽になるから」
「大丈夫じゃないじゃないですかーやだー!!中に誰もいませんってば!!」

よくわからないことを口走りながら、なおも文は抵抗を続ける。が、駄目。
パチュリーの手が光を帯びて徐々に近づいて来る恐怖に文はとうとう耐え切れなくなって、
恥も外見も捨てて助けてと叫んだ。
文の大声を、さらに大きな声が遮る。パチュリーの笑い声だった。

「こんな地下に、誰も助けになんか来やしないわ」

いよいよ文の顔が青ざめた。もう悲鳴をあげることも出来なくなって、小刻みに震え始める。
とその時。

「いるぜ!ここに一人な!!」

重量を持ったものが大量に落ちる音とともに、その声は響き渡った。
爆音。壁が吹き飛び本がマシンガンの様に散らばって、眩い光が差した。
文は、そちらに顔を向ける。
光の中に人影があるのが、辛うじて見えた。

「だ、誰っ!?」

同じように光を見たパチュリーが、細い声をあげる。
影は僅かに動いて、

「当ててみな。冥界にご招待するぜ」

黄色の極光が、影から放たれてパチュリーに激突した。

「…は?」

そして、そのままパチュリーの後ろにいた文までもを飲み込んだ………。


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「いやー、ちょっと間違えちゃったぜ」

ははは、と軽快に笑って見せる魔理沙に、ちょっとじゃないですよ、と文は膨れる。
文は、紅魔館の一室に包帯でぐるぐる巻きになって寝かされていた。
当主曰く、親友が迷惑をかけた。珍しく酒を飲みすぎて悪酔いしてたんだ、許してやって欲しい
だそうだ。
お酒ならばしょうがない、と文はすぐに許した。後腐れなんて残したくなかったのだ。
それにしても、と文は魔理沙の顔をみやる。
包帯で吊った自分の腕の具合を確かめていた魔理沙は視線に気付いて、ん?と聞く。
それに文は首を振って返し、顔を背けた。
腕を怪我してるのに、私のピンチに駆けつけてくれるなんて……。
文は自分のほほが上気するのを感じていた。同時に、鼓動がうるさくなってくるのも。
1000近く生きて、初恋だった。しかし、その気持ちに彼女が気付くのは、まだまだ先の話である。
具体的にいうと六分くらい。
そして、魔理沙は文を助けに来たのではなく、門番が文を担ぎこむのに乗じて潜入し本を漁りに来ただけ
ということを知るのも、まだまだ先のこと。
具体的には六分と三十秒後くらい。
とにもかくにも、紅魔館に数少ない窓の外では夕日が沈んでいき、急転直下、文の一日は終わろうとしていた。
ノックの後に入ってきた門番の姿を見て漏らしそうになったのは秘密。
そして、その門番が平謝りしだしたのに呆然としたのは……魔理沙とだけの秘密であった。
門番さけ飲まされ悪酔い、何故か怖いお人に。
それが事の真相である。
その事実は、悪魔の妹の口から文と魔理沙に伝えられた。
ちなみにパチュリーや門番に酒を飲ませたのは彼女だった。


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第百二十五季 神無月の五

『楽園を覆った あの雰囲気の正体』

先日静かに起こったあの出来事はすでに周知の事実であろうが、
その渦中にいて多大な情報を得られた者として、これは伝えなければと使命に燃え
筆を取った次第である。

○月○日明朝、幻想郷は静けさに包まれた。爽やかな朝の鳥の声は無く、元気の有り余る妖精の
声さえしない。
不気味な雰囲気が霧の様に渦を巻き、意思を持つ何かの様に私たちを取り巻いていた。
これはただ事ではないと察した私は、さっそく巫女の元へと飛びたった。朝露の滴る、まだ空も白い時間のことであった。

………………

紙面から

5 夏の暑さ長引く 夜雀の屋台盛況?

8 秋の名月 月見大会開かれる

16 霧の湖上空の轟音 正体は氷精と宵闇の妖怪

21 これは異変? 秋にリリーホワイト現る。連れ立った妖精が原因?

29 中華妖精仕事しろ!里の守護者、怒りの頭突き

34 珍種の絶品きのこを求め、魔法の森に入る人間が続出

…………

「まいどー、まいどなじみ文々。新聞でーす」

数日後、文は元気に幻想郷中を飛びまわっていた。
めでたし。
open your eyes next faiz

気がついたらなんか書いてた
美鈴が強いのはガチ。異論は認めません。
美鈴様は宇宙一お強いのです! by中華妖精(門番隊)


Φ誤字報告感謝 あんなに執拗に名前確認したのに間違えるなんて妖精でもないだろうに
射命丸射命丸
中華妖精
コメント



1.名前が無い程度の能力削除
まあ誤字なんて大したことじゃないが

写命丸→射命丸
文々゜新聞→文々。新聞

せめて名前くらいはな
2.名前が無い程度の能力削除
豊満な肢体って、胸板的な意味ですか? 常に白目を剥いていて、歩くとギュピギュピ音がするんですか?
3.名前が無い程度の能力削除
>>当ててみな。冥界にご招待するぜ
 ヒュー!吹いたwwww
4.名前が無い程度の能力削除
本は借りようよ。