Coolier - 新生・東方創想話ジェネリック

ぱるっ

2011/05/09 21:49:19
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 親離れとは寂しいものです。
 昔は毎日のようにじゃれついてきていたお燐やお空も、自由に飛び回るようになってからは私の家にいることが少なくなってしまいました。いいえ、もちろん戻ってきた時には無駄に元気な笑顔を見せてくれるのですが。
 妹は放浪娘ですし。時々帰ってくる以外ではまぁ、一人でいることが割と多くなっていたりしていまして。
 そこで私は一つの妙案を考え、実行に移したのです。




 その結果がこちら。




「おいでませ地霊殿」
「ちょっと。話が違うわよ!」

 私の隣できゃんきゃん吠えているのは、今日から新しくペットとして飼うことにしました、橋姫族の水橋パルスィといいます。
 前述の通り私は一人身でありまして、寂しさを紛らわせてくれる新しいペットが欲しいと考え、いないならば捕獲してくればいいじゃないというナイスな策を考え付きました。そういうわけで冒険を決意したわけです。
 できればお供として火を吹くトカゲとか、水を吐く亀とか、4足歩行の植物などが欲しかったのですが、いないものは仕方ありません。単身地霊殿を出発して旧都を抜け、野生モンスターが出没するエリアへと足を運びました。すると、縦穴で暇をしていた野生の橋姫などを発見したので即座にこれを捕まえた次第でございます。
 パルスィゲットだぜ、と、そこまでは順調だったのですが。

「とりあえずこれを外しなさい」

 自分の首を、そこについたものを指差してペットが吠え立てます。しかしその注文は聞けませんね。
 困ったことにこの子、人見知りなのかなかなか私に懐いてくれません。飼い主として威厳を見せねばなりませんから、彼女が身に着けていたスカーフっぽい何かに代えて首輪にしまして、今に至ります。やんちゃが過ぎて周りに迷惑をかけてはいけませんからね。あぁ、紐はつけていませんよ。
 しかし首輪姿も中々かわいい。猫耳などがついていれば100点満点なのですが。

「私の記憶が正常なら、さとりとは旧都巡りをする予定だったんだけれど。一体何でこういうことになったのかしら」

 不機嫌そうに私を見つめるペットさん。それはまぁ、ほら、言葉のあやというやつでして。
 おとなしくついてきてくれた割には野生値が高いようです。今はお茶で機嫌を取ろうとしているのですが、しもふり肉で餌付けしないとだめでしょうか。

「では昼食でも一緒に食べましょう」
「ではの意味が分からない」

 そういうわけで私が腕を振るって料理することにしました。
 とはいえ小腹がすいている程度ですし、捕まえたてのモンスターですからあまり待たせて逃げられては困ります。朝の残りを流用して手早く済ませてしまいましょう。
 ブレッド・チーズとレタスでサンドイッチなどを作り、居間へと運びます。

「おまたせパルりん」
「‥‥‥え、それが愛称?」
「鳴き声は『ぱるっ』でお願いしますね」
「どういうことなの!?」

 う~ん、掴みに失敗。ペットは眉を引くつかせています。
 心を読んでみましても本心で嫌がっているようです。どうやら彼女と私の感性は違うようで。これはなかなか苦労しそうな予感。

「ご不満でしたか。まぁ鳴き声はこの際横に置いておくとして、他にも考えたものがあるのでお好みの名前を選んでいいですよ。パルパル、スーちゃん、パルるん」
「帰るわよ?」
「初期設定のパルスィではあまりに味気ないのですが」
「それで何が悪い。というか初期設定言うなし」

 ペットがゴキゲンナナメになっています。はなはだ不本意ですが、ここはペットの意志を尊重してあげましょう。
 さてそんなスキンシップなどを取りつつ、二人で簡単な食事をしながら互いの近況なども話しました。
 渡る者の絶えた橋とはよく言ったもの。縦穴の方は特に異常なく平凡な日々だという事で、うちで橋姫を飼育しても何の問題もないことがわかりました。空き部屋はいくつかあるので、あとで片付けておきましょう。
 次は何をしましょうか。
 実のところパルスィと特別何かをしたくて捕縛してきたわけではないので、そこまで深く考えていませんでした。かといってこのまま放置プレイでは、それはそれで私は楽しめるのですがパルスィが退屈してしまいます。
 そういえば、黄色のネズミを飼育する場合、一緒に散歩をすれば親密度が上がるという話を聞いているのですが。あいにくうちの子は黄色い髪の鬼さんなので、このまま適用してよいか悩みどころですね。二人並んで旧都で買い物巡りというのもやってみたい気がしますが、今は夕方タイムセールとかする時間ですし。
 悩んでいるうちにひとつ思い至ります。そうです、あれがありました。

「パルスィ、いらっしゃい」

 ソファに腰かけた私は、自分の膝をぽんぽんと叩き彼女を招きました。
 橋姫はこれまた機嫌を悪くします。緑眼が抗議の色を見せてこちらを睨んでくるのですが、そのような要素はどこにもないはず。う~ん。

「なぜ私をそこへ誘導する」
「毛づくろいを、と」
「真顔で言うな」
「ダメですよパルスィ。そこはうれしそうに尻尾を振りながらぱるっと鳴いてください」
「あぁそう、うん、泣けばいいかしらね‥‥‥ぱるぅ~~~~!」

 何かが吹っ切れたようで、鳴き声を上げて飛びついてきたかと思うと私にじゃれてきました。ソファの上でこんなに激しく求めてくるだなんて、ようやくペットになってくれる決心がついたのですね。私、うれしいです‥‥‥ごめんなさい、本当は飛びかかってきたパルスィとすったもんだしてました。

「では耳かきでよいですか?櫛もありますよ」
「ぱるっ」
「どっちも嫌ですか、では歌でも歌いましょう。ねんねんころりよ~おころりよ~」
「ぱるっ」
「なぜ寝かせつけようとする。もう諦めたから好きにして頂戴ですか、では遠慮なく」
「畜生嫌味が通じねぇ、妬ましや!」

 そんな自分との葛藤も終え、パルスィは私の膝を枕にして寝ころびます。肩を強張らせて。
 今日は何をするつもりもないのでリラックスしていただきたいところなのですがね。私が何かを企んでいるのではと、思いっきりこちらを警戒しています。これではこちらも居心地が悪いので、おしゃべりで緊張をほぐしてやるのが最善です。横になった彼女の耳かきをしてやりながら、適当に話題を見繕って会話を楽しむとしましょう。

「夕ご飯は何にしましょうか、何か好きな食べ物はありますか?ご飯とみそ汁の和食が食べたいんですか、ではその線で何か考えておきますね。お風呂はどうしましょう、一緒に入りますか?えぇ、一人で入れる?恥ずかしがり屋さんですね」
「一人で話を進めるな」

 心を読めるが故に独断専行してしまいました。パルスィの声を聴いて会話を楽しみたいので、自分の癖は抑えるように努めましょう。結局その後は穏やかなもの。耳かきが終わるまで静かなひと時でした。
 そんなこんなでよい時間になったので、お夕飯の準備をすることに決めました。こちらとしてはもてなしたいので待っていただければよかったのですが、お客様扱いは気に入らない様子。
 最終的に私が折れる形で、二人で台所に立って和食を作ることになりました。パルスィ、普通に包丁の使い方が上手です。ぱるぱる。
 その間もおしゃべりなどを堪能しまして、もちろん今日は泊まっていくのですよね?と半ば力押ししてみると。

「はぁ。明日になったら帰るからね?」
「では今晩はゆっくり休んで行ってください」
「‥‥‥くつろげるかなぁ」

 さすがに夜まで邪魔する気はありません。今日は本当にありがとうございました、楽しかったですよ。口にはしませんけど。
 今度はいつ遊ぼうか。そんな事を考えながら、二人で夕食をとりました。




 そうそう、お風呂は二人で銭湯に行くことにしました。それなら一緒に入ってくれると言ってくれたので。
一緒に首輪も外してあげました。無用の品でしたね。



 ◇



「ねぇお姉ちゃん」

 もう寝ようかという時間。就寝前に自室で読書などをしていましたが、声を知覚して振り向くと、そこにはこいしが立っていました。放浪ばかりしている妹ですが、今日は帰ってきたみたいです。それはうれしいのですが、一つ願うならば、いきなり私の背後に立たないで部屋の扉から普通に来てほしいなと。
 何か聞きたいことがあるようなので、おかえりなさいと月並みに言葉をかけてから促しました。すると。

「お姉ちゃんの隣の部屋でパルスィが寝てたんだけど」
「えぇ、私の新しいペットよ。暇を持て余したから今日一日だけ付き合ってもらったの」
「ふぅん、無意識なんだ。しょうがないなぁ」

 なにが仕方のないことなのかは知りませんが、こいしは笑顔を向けてきました。
そして、私へ意地悪を仕掛けたのです。

「ところでお姉ちゃん。ペットなら私にも貸してくれるよね?」
「う、それは」
「そうだよね、『いい人』だもんね~。自分の隣の部屋だなんてぱるぱる~、どくせんよく~」
「へ?え、いや、ふぇ?な、な、何を勘違いしてるの!?」

 私の顔が熱くなったので、このお話はおしまい。姉を苛めるだなんてひどい妹です。
 そういえば、明日の朝から彼女の顔が見られるのですね。それはとても楽しみ。

「あ。お姉ちゃん変なこと考えてる」
「考えてないっ!」
「夜まで騒ぐ気力があるとか妬ましいわっ!というか静かにしろ~!!」

 壁の向こうから、ちょっと怒った橋姫の声が響きましたとさ。



 
さとりとパルスィでした。
二人はもっと幸せになればいいと思うよ。そんな感じ。

パルスィがぱるっと鳴たら可愛いんじゃないかな。とか。
水崎
コメント



1.奇声を発する程度の能力削除
さとパル良いよさとパル
ぱるって鳴くパルスィ可愛いw
2.削除
ぱるぱるかわいいよぱるぱる。
とりあえず、タイトルでホイホイされました。
面白かったです!
3.oblivion削除
ぱるっ。ぱるっぱるっぱるぱるぱるぱるっ。
ぱ、ぱるぱるっぱっぱるぱるぱーるっ。ぱる。
ぱるぱるっぱーるーぱっぱるっぱるお風呂のシーン詳しく
4.名前が無い程度の能力削除
和むぜ。ところでパルスィのぶんぷは何処ですか
5.名前が無い程度の能力削除
おパル、でいいんじゃないでしょうか
6.名前が無い程度の能力削除
とてもかわいい