痛恨。
目を手で覆い隠し、歯を食いしばり、苦々しく「くっ」と声を漏らしたくなる衝動。
それを何とか抑えつつ、私は少し驚いたように目を見開き、余裕をもって「ほう」と呟いてみせた。
護衛、された。
真占いを噛みにいき、狩人に護衛成功される。
その意味は、狩人視点から占いの真偽がついてしまうということ。
いや、無論「人狼も真偽がついていなく狂人噛みをしたのかもしれない」または「グレーを噛みにいって狐に偶然あたったのかもしれない」――狩人がそう考えれば、この平和が真占い噛みを防いだ珠玉のGJだと認知しないかもしれない。
だが、あちらも自分の推理や感覚に依って、この護衛対象を選んだはずなのだ。その結果である平和は「自分の護衛先が真である」と狩人に思わせるだろう。それが人の心理という奴だ。
もしもこれで狩人が神奈子の真を確信し、延々と護衛し続けるとしたならば……私たちはもう真占いを噛むことが出来ない。狩人が死んだと判断してから再度噛むか、もしくはあえて狂人を噛み、そちらが真と思わせるしかない。……どちらにせよリスクの高い勝負を強いられる。
同じく朝を迎えた衣玖と幽香もそれぞれ、仮面の下では顔を歪ませているのだろう。だが二人とも誤魔化し偽装し、なんとか平常なままに席へと向かっている。
人狼にとって痛すぎる平和。その事実から目を逸らすように、まずは衣玖が高らかにCOした。
衣玖 :「占いCOです。小町さん○でした。理由はステルス気味で発言内容が薄いにも関わらず、得票が少なかった為です。こういうところが残ると厄介ですから」
小町は○を出されて、なんだかホッとしたような表情をした。
ヤツめ、これで衣玖が真だと思ってくれるような、そんな易しい村人のような気がするぜ。
○は誰にでも出せる。自分が○をもらったからといって、その占い師が真に近いということは全くない。
そして衣玖のCOを見てから、紫と神奈子も重ねるように続く。
紫 :「占いCO、大妖精さんは○だった。得票の少ない中から、自分が一番村人だと思ったところを、あえて占った」
ふむ。
まぁ狂人視点、潜伏人狼っぽいところを“占った”というところかな。
神奈子 :「占いCO、幽香●。序盤での殴りが不自然だったのが気になったのでね。案の定、人狼だったわ」
痛恨。
二度目の痛恨。
痛い、痛すぎる。
占いを噛んでの平和までは、まだそのリスクも覚悟してのことだった。
だが、このタイミングで。噛みを失敗したタイミングで。潜伏していた幽香を占ってくるとは……!
共有が潜伏している中での●出し。騙りにとってはそれなりのリスクを伴う行為。ましてや霊能COが霊夢1人で真濃厚、占い結果と霊能結果がたがえば破綻扱いされるであろう状況。
占いの真偽が分からない村人としては当然この●を吊り、霊能結果を見る。霊能結果が違えば、初日霊能でない限り占いの1人が破綻。当然、幽香は本当の●なので霊夢による霊能結果は●になる。
そうなれば村人たちの信頼は一気に神奈子へと向けられるだろう。特に、護衛したのであろう狩人にとっては、真確定といっても良いくらいの状況。
まずい、まず過ぎる。今日は確実に●を出された幽香を吊る流れ。これはさすがに覆せない。
霊夢 :「霊能CO、椛は○だったわ」
幽香 :「ふぅ。まず神奈子は騙りということね。共有伏せ、霊能1で●ということは、おそらくは狂人の特攻かしら? それとも、霊能を人狼が乗っ取った上での●?」
ナズーリン :「平和、そして●か。一気に村が動いたな。平和は狐噛みか? もしくは霊能あたりにチャレンジして護衛されたか……」
魔理沙 :「占い抜きにいって護衛成功されたというのも考えられる。3-1では霊能護衛が安定だ、そこを逆手にとって占いを抜きにきて、狩人がさらに裏をかいたのかもしれない。初日で占いの真偽がついている可能性は十分にあるぜ」
にとり :「確かに紫が対抗占いの形になったから、占いの真偽はついているかも。もし衣玖人狼・紫狂人だったら、人狼目線で神奈子が真判明。……そして平和、その神奈子から●……か。出来すぎかな?」
幽香 :「……私を吊りなさい。そして霊能結果を見て、まずは占い一人が破綻するでしょう。ただし、霊能が騙りという最悪の事態も考えなければ」
天子 :「初日霊能? 考えてないな。幽香は無実の村人にしては落ち着きすぎているわね。――私は神奈子を真寄りで見る。紫は今日の理由も意味がよく分からないしね。なんで村人だと思ったところを占うのよ」
紫 :「いかにも“怪しいところ”はグレランなりで勝手に吊れるでしょう。いかにも村人らしく偽装した人狼を炙り出すのが、占い師の仕事ではなくて? そういった意味で、村人臭いところを占ったという事です」
幽々子 :「狐を噛んだら平和になるんでしょう? それだったら狐を吊る為に狼が●を出すこともあるんじゃないかしら?」
さとり :「ふむ。平和が何によって起きたのか、それによって●の意味も変わってきますね。普通に神奈子さんが真ならば話は早いですが」
映姫 :「神奈子さん真で決め打つのは早計過ぎるでしょう。共有潜伏下での●が、そこまで信頼に影響を及ぼすとは思いません」
こいし :「とりあえずさー。今日は●の幽香を吊るしかないよね。本人もそういってるし、気兼ねなく投票できるわ」
にとり :「確かに平和の朝に●出しというと、狐噛みからの狐告発という線も考えられるな。あえて●を残し、他の占いに占ってもらうというのも手かな?」
霊夢 :「反対よ。幽香が村人だったら、ただの無駄占いだし。吊って色を見させて欲しいわね」
大妖精 :「にとりさんの意見。幽香さんがもし狐だったら、占いで呪殺が起きて神奈子さんが破綻するんですけどね。だけど狐だって保障はないし、普通に吊った方が早いと思います」
ナズーリン :「にとりの発言。自分が占われたくない狐そのものではあるが、流石に露骨過ぎるか?」
小町 :「やっぱりさぁ、共有者が出てないのに●を出すっていうのは本物っぽいと思うんだけど。どうなんだい?」
映姫 :「占いが真狂狼という前提で考えてみましょう。昨晩、占い先のグレーは9人。うち共有が2人、人狼が最大2、狂人が●を出すとなると9分の4が当ててはならないハズレ。ほぼ五分五分の賭けです。一方で人狼が●を出すとなると9分の2、こちらは4分の1程度ですね。このリスクを背負って騙りが●を出すのか否か。真占いならば、無論リスクも何もありませんが」
幽香 :「共有に当てる確率だけで考えないで欲しいわね。霊能が1なのよ? そこで●を出すということは、神奈子が【狂人】で人狼に自分が偽だとアピールする意味があるということ。……狂人なら破綻して吊られても痛くないから。――そうなると紫も衣玖に○を出しているから偽、私の考えなら衣玖が真ね」
霊夢 :「ふーん。自分に●を出した相手を、狂人と決め付けるのか。遺言代わりになる推理にしては、杜撰だと思うんだけど」
小町 :「そうかね? 幽香の立場だったら村にしろ狼にしろ、神奈子偽というしかないんだから、狂人という推理は筋が通っているんじゃないかい?」
衣玖 :「……うーん。私もこの●は狂人特攻に見えますね。まぁ、村人視点ではこの●を吊るしかないのですから、私も投票するしかないですかね。誤爆だとしたら嬉しいですが」
魔理沙 :「神奈子が真なら問題ない。神奈子が狼なら、霊能が乗っ取られている可能性大。神奈子が狂人なら、霊能とラインが切れるのを覚悟で特攻と考えてよい。ということだな」
ナズーリン :「ふむ。吊った結果が分かる霊能が、ここで幽香に噛み付くというのは引っかかるな……」
霊夢 :「おかしいと思ったことを指摘しただけよ」
幽々子 :「……えーっと、結局……今日は幽香に投票すれば良いのかしら?」
天子 :「まぁ、そういう流れよ。……人狼が狐を把握しているとしたら、占いは用済みなのよね。そこが怖いわ」
にとり :「占い抜きかぁ、怖いね。今日のが占い護衛でのGJだったら、引き続き護衛してて欲しいな」
こいし :「今日の平和ねー。狐噛みだとしたら厄介。護衛成功だとしたら嬉しいけど」
魔理沙 :「吊りが増えたのは結構なことなんだがな。人狼にだけ情報を握られる狐噛みはあまり嬉しくないぞ」
さとり :「そうですか? 早目に狐を把握してもらった方が、あとあと勝ちをさらわれなくていいと思いますけど」
神奈子 :「とりあえず、●を吊ってくれれば残り人狼は2、対抗に1人いるとして、あとは狐だな……」
紫 :「この●は狐告発と見ましょうかね。人狼占いがリスクを恐れず●、これは確実に共有ではないと分かっていないと出来ない。つまりは噛んで平和だったと考えるのが妥当」
天子 :「はぁ。……紫の真はないわね。狐告発? だったら霊能が乗っ取られていることを、もっと危惧しなさいよ。――まるで慌てていない。霊能が真なのに人狼がほいほい狐告発して破綻するわけないじゃない」
小町 :「うーん。狐が誰か分かっても、焦ってすぐに●を出して吊る必要もなさそうだよねぇ。吊られるのを待つのが得策じゃないかい?」
幽々子 :「でも人狼からしたら狐って厄介なんでしょう? ●を出すだけで、こんなにあっさり吊れるのなら、幽香が狐で神奈子が人狼でもおかしくないと思ったわ」
大妖精 :「霊能軸とはいえ、盲信し過ぎるのもどうかと思いますが……。明日の霊能結果でかなり展開が変わりますね」
霊夢 :「……それじゃ、今日は幽香吊りね!」
やはり幽香吊りの流れは覆せない。
というより、ここで流れに逆らうのは、悪目立ち以外の何者でもない。
幽香が吊られてしまう以上、私が吊られるのだけは、なんとしても避けなければならなくなった。だから私も怪しまれないよう、この流れに乗るしかない。
ナズーリン :「そろそろ時間だ。それでは投票に移ろうか」
幽香 :「霊能の結果次第ね。それじゃあ後は頑張ってね。代金を支払うのは嫌よ」
大妖精 :「それでは投票しますよ」
映姫 :「今日は幽香を吊りましょう」
さとり :「まぁ、それしかないでしょうね」
幽々子 :「はーい」
神奈子 :「それでは、幽香へ投票をお願いするわ」
天子 :「初日の殴り方からして、人外だと思ってたけど。……人狼?」
紫 :「うーん。村人かしらねぇ。申し訳ないけど、投票するわ」
魔理沙 :「さて、どうなるかな」
こいし :「人狼か狐か。村人って感じはしないわねー」
投票用紙が配られ、議論は終結する。
くそう。なんということだ。
抜群のスタートだと思った2日目から、夜が明けたら大惨事。
ここで潜伏の片方を失うのは痛すぎる。そして狩人は恐らく真占いを鉄板護衛。
これは私が占われないようにしつつ、狩人を見つけ出して始末、そして噛みにいくか……。それとも、もしくは……。
私は幽香の名前を、投票用紙へと記入する。
仇はとる。私だって払う金がないんだ。借金なんかしたくないぜ。
◇ ◇ ◇
紅魔館村 3日目投票結果
魔理沙 (0票)→幽香 | 幽々子 (0票)→幽香 | ナズーリン (0票)→幽香 | 大妖精 (0票)→幽香 |
小町 (0票)→幽香 | さとり (0票)→幽香 | こいし (0票)→幽香 | 幽香 (14票)→神奈子 |
天子 (0票)→幽香 | 衣玖 (0票)→幽香 | にとり (0票)→幽香 | |
霊夢 (0票)→幽香 | 紫 (0票)→幽香 | 映姫 (0票)→幽香 | 神奈子 (1票)→幽香 |
◇ ◇ ◇
一人いなくなるだけで、こんなにも広く感じるとは。
私たちはきっと、同じことを考えていたに違いなかった。
「さて。厳しい状況になってしまったな」
「そうですねぇ。護衛された上に引き当てられるとは……占い抜きは厳しいでしょう」
「ああ、護衛はべったりだろうなぁ」
「まさかとは思いますが、神奈子さんが狐ってことはないですよね」
「100パーセントないとは言えないけど、まあ、ないだろう」
狐が占いを騙ること――ないことはない。しょっちゅうではないが、たまに騙る狐もいる。
だがしょっちゅうやらないということは、それだけ成功する確率が低い作戦ということだ。
まず、狐が占いを騙ることによって、真狂狼狐と占いが4人出てくることになる。この時点で村人全員に狐が混じっていることが濃厚だとバレてしまう。さらに人狼視点では確定だ。
それぞれの占い師がお互いを占う「相互占い」に持ち込まれれば、高い確率で呪殺されるだけである。万が一、生き残ったとしても、人狼が“真占い”や“狂人”を噛めば、残った占いはローラーされる運命にある。
まず占いに狐が混じっているとバレる時点で、勝率が著しく下がるのがこの作戦の大きなマイナスポイントだ。
では人狼が占いに出ずに、真狐狂になったとしよう。これは村人からは真狂狼のように見えるので、すぐに相互占いやローラーにはならない。
だが人狼目線では狐混じりがバレているので、とりあえず占い候補を噛むという作戦を高確率で実行されてしまう。人狼が占いを生かすメリットといえば、狐の処理くらいのものだからだ。
占いを噛むことによって狐も村人が吊って処理してくれるので、喜んで占いを噛みにいける。
さらに仲間がいない孤独な狐は、霊能が真でも偽でも、いつラインを切られるか分かったものではない。だから安易に●は出せないし、破綻しやすい。
唯一「狐の占い騙り」が成功するとすれば、“真占い”か“狂人”が初日欠け、もしくは潜伏死した場合。人狼目線でも狐が占いに混じっていると気付かれず、真か狂人……出来れば狂人に間違われれば、まだ勝機はある。
だがそれは、配役の妙によって成り立つシナリオであり、あまりにも低確率で運任せ。今回の占いCOは3人がほぼ同時であったから、様子見をして出てきた感じでもない。この線はないだろう。
とまぁ、こんな具合で狐が占いに出てくる確率は低い。
しかも、神奈子は●を出してきた。まさか幽香が人狼であると完全に看破して●を出すわけもなく、理由はひとつ、真占いだからとしか言い様がない。ましてや狐であるはずはないのだ。
「狩人を探して、そこから占いを抜いたのでは間に合わないぜ。全員、というか私が引き当てられてから神奈子を噛んでも意味がないからな」
「……作戦変更ですね。【信用勝負】に持っていくしかない」
信用勝負。それは占い騙り(この場合、衣玖か紫。出来れば衣玖)が村人たちから「真占いである」と信用されることを目指す作戦。初日霊能だったりで、霊能が乗っ取れていれば成功する確率は高い。
だが今回、霊夢はほぼ確実に真霊能であろうから、村人に●を出すと霊能とのラインが切れてしまう。それに身内切りできる余裕はもはや無くなってしまった。
さらに、やはり、昨日時点での●出しは信用度の面でも強い。今から信用勝負を仕掛けたとしても、分が悪い感は否めない。
しかし。というか仕方が無い。
狩人に護衛されて平和が訪れるのよりは、今から信用を取りにいった方が良い。
「となると……今日は霊能抜きしかないな」
「そうですね。ただ3-1ラインで●吊り。霊能護衛の確率は相当に高いです」
村人が全員、●を出された幽香に投票したのは、霊能結果を見てラインが繋がるかどうかを知るためである。
だから、今日は絶対に霊能が噛まれるのを防ぎたい。それが村人の心理。
そう、通常であれば、霊能護衛は固い。
「だが、狩人は昨日GJを出している。本人がGJだと思っていれば、あとは神奈子を護衛し続ける……。だから今日、霊夢に護衛はついていない、とは考えられないか?」
「しかし狩人は神奈子さんが真だと確信しているからこそ、霊能結果を確実に村へ知らせたいはずです。昨日GJが出たところを連続して狼が噛むのは心理的に怖い。それを見越して狩人は霊能噛みを読み、霊夢さんを護衛してくるかもしれません」
「……狩人の性格だな、そこは。だが初日から占いを護衛対象にする、その姿勢は占い重視以外の何者でもない。最悪、自分だけが信用していれば勝てると思っていれば、霊能は守らなくても良いと考えるかもしれない」
「霊能を抜いて、信用勝負ですか。明日霊能が噛まれていたら、それこそ神奈子さん盲信になりそうですが……」
どうする?
狩人探しからの占い抜きか、霊能を抜いて信用勝負に持っていくか……。
こういう時に重要なのは、村の流れを読む力だ。
村人たちが、どの占いを信用しているのか、どういう考えで投票しているのか、それを見抜ければ、それを利用して自分たちに都合のよい脚本が作れる。
ただ、その流れの全てを根底から覆す力を持つ【共有者】が所在知れずなのは気がかりだが……。
「いいか、衣玖さんや。今の村人たちの視点は、こうだ」
私は村人用のメモを机の上に置いた。
―――――――――――――――――――――
村人視点メモ 3日目
村人15>13>11>9>7>5>3>
奇数進行7吊り
【占い】
紫 :衣玖◯→大妖精◯
衣玖 :さとり◯→小町◯
神奈子:ナズーリン○→幽香●
【霊能】
霊夢 :椛○
【共有】
???
???
【吊り】
椛→幽香
【噛み】
初日→平和
【グレー】
魔理沙・幽々子・こいし・天子・にとり・映姫(6人)
―――――――――――――――――――――
「次に神奈子さんが魔理沙さんを引き当てるのは、6分の1ですか……」
「まぁ、そこは外してくれることを祈るしかない。で、問題は……。霊能噛みが成功した時のメリットだ。霊能が消えれば、村人に●を出しても破綻しないというのもそうだが、重要なのは村人視点。ここで霊能が噛まれたとなると、人狼がどうしても霊能結果を隠したかったと思えるよな」
「それは当然ですね。しかし、真占いと霊能のラインが繋がるのを恐れたと思われるだけでは?」
「リスクとメリットだ。この場面でどうみても護衛対象の霊能を噛みにいくということは、神奈子の破綻を阻止しなければいけなかったということになるんだよ。むしろ真ラインが繋がるのを恐れるのなら、真占いの方を噛むべきだろ?」
「……厳しいですね。●を出した占いではなく、真霊能を噛んだ理由を“昨日その占いを護衛されたから”なのか、それとも“その占いが人狼だから噛めない”のか。どちらの考えに村人たちが至るか……」
「霊能が護衛されていたら、もう負け確定といってもいいくらいだ。だけど、このまま神奈子と霊能者が両方生きていても勝てる見込みはない。ならば衣玖も生きられる確率がある道を選ぼう」
そこでしばし、衣玖は考え……。
思案を中断するように、すぐさま決断した。
「……霊能、いきますか。それで……占い結果はどうしましょう。私も●を出しましょうかね」
「いや……! 霊能を噛めたら、そこで●っていうのはあざといかもしれないな。にとりや天子、映姫あたりは、共有潜伏下での●もそれほど重要視していないように感じた。むしろ都合よく●を引ける方がおかしいんだ。6分の1や3分の1、引けなくっても問題はないさ」
「人狼が既に全員囲われていて、全く●が引けない。それは真占いにも往々にしてあることですからね。――分かりました」
意見がまとまって良かった。
村人の時も周りを説得する能力は重要だが、人狼が仲間を説得する能力もある意味では重要だ。
数少ない仲間と、貴重な時間を使って喧嘩なんかしてたら、とてもじゃないが勝てないからな。
さて、それで……誰を「占う」かなんだが……。
私が明日、神奈子に引き当てられていないことを前提に考えないとな。
1.とにかく強弁の天子。ここは○をもらったくらいじゃ、衣玖に対する見方は変わらないだろう。自分の意見は曲げないタイプ。そして神奈子真寄り明言。
2.鋭い発言もある、にとり。ただ、ここは臭い発言もあるので神奈子に目をつけられそうだ。先に囲えればスケープゴートにはなりそうだが、私の代わりに占われても欲しい。グレーに残しておきたい。
3.読めない、意見の見えない、こいし。ここは潜伏人狼に見える場所。ただ……役職持ち臭い。ここが狩人だったりすると、わざわざ最大の敵を匿うことになるな……。
4.雄弁リード気味の映姫、ここは共有候補筆頭。COされてグレーが狭くなる前に囲ってしまうか? だが狐であったりすると、処理に困る。ここも放置か。
5.そうすると無難なのは、幽々子に○? 票のもらいどころを占うと心証は悪くなるかもしれない。だが、その信用度を気にしない占い先が、逆に真に見えてくるかもしれない。
恐らくナズーリン、さとりはそういう風に深読みするタイプ。また初心者っぽい幽々子本人も、○をもらって心証が良くなる可能性は高い。
あくまでも推測でしかないが、汎用性の高さ、どんな展開になっても効いてきそうなのは幽々子○か?
昨日の小町○もあるし、衣玖は“そういう”占いの方向性と決めつけた方がいいかもしれない。
……むしろ衣玖を狂人っぽく見せて、紫の心証も良くしたいかな。
「というわけで、幽々子に○とか、どうだ?」
「うーん。そこですかぁ。あんまり信用は得られそうにないんですが……」
「決定権は衣玖にあるぜ。夜明けまで、じっくり考えよう」
そこで衣玖は顎に手を当て、考える素振りを見せた。
だが、やはりすぐに構えを解いて回答する。
「いえ、ここは魔理沙さんの指示通りにいきましょう。村人たちを事細かに分析するのは、騙りの私には難しいです。最後まで生き残る確率があるのは魔理沙さんの方ですし、作戦立案はお任せします」
「おう、任せてくれ。こんな状況からでも、どうにか逆転してやるさ」
私は虚勢で笑顔をみせ、冗談でウインクをしてみせた。
ここからの勝ち筋。
それはとにかく神奈子の真を剥奪すること。
それも自らの手を染めず、そういう流れを作ること。
難しい。
だが、やらねば勝ちはない。
現時点での村における占いの信用度は恐らく
真 神奈子>>>>>>>>衣玖>>紫 偽
贔屓目でみても、このくらいだろう。
これを明日以降
真 衣玖>>>>>>紫>>>>神奈子 偽
こんな有様に変えてやる。
私はそのように決意し、大きく息を吐いた。
同時に、衣玖が噛み対象の名前を書いた用紙を、部屋に備え付けられた投票箱へと、投じた。
いつも楽しみにしてます。
霊能欠けの占い:真狂狼 霊能:狐……前回も霊能欠けだし狐が大胆過ぎるかw
共有欠けだと村人視点でも安心出来なくなるんですけどねぇ
続きも楽しみにしています。
もちろん村人が狐や人狼の振りをしても意味ないのは承知の上ですけどw
基本的に素の村人が他の役職を騙るのは、ゲームとして成り立たなくなってしまうので禁止されています。
村の役職が他の役職を騙るのも、かなりトリッキーなのでそれなりに覚悟はいると思います。
村が役職を騙る意味はない、というより、むしろ仲間を混乱させるだけなので「荒らし」的な行為とみなされているのです。
ただ限定的な場面においては人狼騙りなどをすることがあります。
例えば「村人・狂人・人狼」の最終日になった場合などですね。この時には狂人を騙す為に村人が人狼COをしても構いません。というよりもしないと負けてしまいますからね。
お返事ありがとうごさいます。
占い3人の内訳を考えている時に素人考えに思い付いた事がありまして
今回の場合の占い3人の内訳 真(神奈子)狼(衣玖)狩人(紫)もアリかなぁ……とw
狐が最終的に生き残りにくそうな占い騙りをするのは戦略的に微妙だと思うので狐は無し。
CO順はほぼ同時の紫→衣玖→神奈子ですから、更に4人目で狂人は占い騙りCOしづらい。
人狼視点から見てセオリー通りの狂人だと思われれば噛み対象にされにくく、
村人視点から見てもグレラン対象から逃れられ、序盤での吊り対象にもなりにくい。
狂人視点から見たら…占いに狐が居ると勘違いしそうでしょうねw
真占いが確定するなり噛まれたりして吊り対象になったら狩人COする。
確かに信用されるかどうかは微妙なんですけど、紫なら仲間を混乱させてもやりそうな気もしましてw
続きが気になる。
なるほど。狩人による占い騙りですか。それはかなりのレアケースですね。
村人の役職が占い騙りをするのはデメリットがかなり大きいです。
まず人狼を囲ってしまうという利敵行為を働く可能性があること。ましてや味方に●なんて当てたらリアル狂人(荒らし)と見られてもしょうがありません。
また狂人は吊られても噛まれても痛くないので、基本的には占いCOをしてくるというのが自分の中のセオリーです。
よって狩人COにより占いが4人という状態になるの可能性は少なくありません。そうなると狐混じりと誤認され、真占いに無駄占いをさせる恐れがあります。
また人狼がとりあえず占いを噛みにきたら狩人が噛まれる可能性もありますし、COして真証明しても次の夜には噛まれるので狩人としての仕事を果たせるかは疑問符がつきます。
などの理由により、狩人が占いを騙るのはかなり難しいですね。