※この作品にはオリキャラが出てきます。大体オリキャラでできています。そういったものが苦手な方はブラウザの戻るをクリックしてください。
地底の屋台、人間だけでなく地上の妖怪にすら嫌われた者達の住むこの場所で営業するのは特に力も持たない人間である。
「あんたも大概長生きしてるわよねえ。タチの悪い妖怪やら怨霊ばっかじゃない、ここ。」
霊夢は店主に向かってそういう。
「もしかしたらもう死んでるんじゃないか?足あるか?足」
魔理沙は言いながらカウンターから顔を覗かせる。
「ある?足。ちゃんと生えてる?最近乱暴されてばっかりでさー」
「チッ、あるわね。」
と、魔理沙と一緒に覗き込んだ霊夢の感想。華麗な舌打ちである。
「あれ?今舌打ちされたような。」
「ははは、気のせいだろ。霊夢がそんな事いう訳ないんだぜ。・・・チッ」
「うんうん。・・・あれ?雨かな」
頷いた後屋台の天井を仰ぎながら霊夢と魔理沙に茶碗を出す。中は豚汁、立ち上がる湯気と共にほのかな味噌の香りが辺りに漂う。ゴボウやニンジン、主役の豚肉などに混じってそこそこのサイズのジャガイモがごろついている。
「良い香りねえ。あら、美味しい。私が作るのと何が違うのかしらね。塩加減?」
霊夢は汁を少しすすってから一言、感想を述べる。箸で具をひっくり返してみると銀杏なども入っているようだ。
「ほー、ふんふん。色々入ってるのな~」
魔理沙は具も一緒に箸でかっ込む。
「こーいうのは塩気というより具が多い方が美味しいんだよ。」
「具ねぇ。うちにはそこまで食材がないから無理かしら。」
「茸ならいつでも持っていってやるぜ~」
「あ、そうだ魔理沙。これを見てくれ。」
頭巾は手をポンと叩いてカウンターの中から何か袋を取り出して、魔理沙に渡す。魔理沙は「なんだなんだ?」と言いながらそれを受け取り中を見る。
「おー?茸じゃないか。色々あるなあ。」
「前にお客にもらってね。ただそれらは自分じゃ食べれるかどうかわからなくて困っていたんだ。」
「ふーん、また色々とあるな。森じゃあ見かけないのも多いが大体わかるぜ。」
「鑑定料はここでの飯代でどうだ?・・・というかどうせそう言い出すんだろう?」
「わかってるじゃあないか。それじゃあ少しだけ張り切ってやるかな。」
「あら、だったら私は魔理沙におごってもらおうかしら?」
そのやりとりを見ていた霊夢が豚汁を一旦置いて頭巾の方に向き直る。
「ん~、霊夢はこないだの神社の祭りで場所貸してくれたからな。それで今回の飲み代。それでいいだろ?うちで金落とすなら上の夜雀の屋台で金落としてくれ。頼むから。こないだ帳簿見たら涙が出たよ俺は」
「・・・帳簿?一々メモ取ってたのね。知らなかったわ。」
「でないと忘れるからなあ。あの人は、俺があっちで働いてた頃にこっそりメモ残すように言ってたからな。」
「はっはっは!残念だったな霊夢、鳥頭だからツケとかどうせすぐ忘れるでしょ、なんて言ってたのはいつだっけな。」
魔理沙は茸を鑑定しながら言う。どうやら3種類に分けているようだ。
「煩い、ちゃんとお賽銭が入れば払う気だったわよ・・・魔理沙こそいつもツケてばっかりじゃない。」
「私はちゃんと払ってるぜ~?霊夢と行くとき以外は。ツケもほとんどないし。」
「え?そうなの?」
「まあ、霊夢と行くときは霊夢が払わないからな!私だけ払うと負けた気分になるぜ」
「いや、払えよ。・・・さて、注文はどうしますか?」
「んん?」
「今日はお客さんですからね、ちゃんと接客くらいしますよ。魔理沙さん、霊夢さん。」
頭巾は、先ほどまでより少しだけ、背筋を伸ばし、落ち着いた雰囲気で霊夢達に話しかける。
「あら、器用なものね。」
「ん~・・・さん付け?普段呼び捨ての奴にされるとなんだか変な感じがするな。」
接客というのは商売をする上では重要な要素の一つである。が、幻想郷・・・特に人里以外では商売自体物好きがやっている場合が多い。そのためか、接客も自由にやっている場合が多い。この店の場合これが一番楽な接客方法なのだろう。
「どちらかと言えばこちらの方が素ですかね。」
「なんだか悪寒がするわね。」
霊夢が腕を擦りながら言う。魔理沙も「同感だ。」と頷く。
「っと、終わったぜ~。」
ここで魔理沙が手を挙げる。どうやら茸の選別が終わったらしい。魔理沙の前のカウンターテーブルには茸が3箇所に分けて置かれている。
「おお、流石に早いですね。えーと・・・解説をお願いします。」
「まあ、大体だが、ここが主に魔法に使われる茸、これらは魔法には使えないがアブない薬が作れる奴、んでここら辺は普通の毒がある奴だな。」
「おお、ありがとうございます。全部ダメかあ。まあ、そんな気もしてたけれど。欲しい物があればそれ、持って行って構いませんよ。」
「ふふん、ありがたくもらってくぜ。」
魔理沙はせっせと茸を自分の帽子につめ始める。その様子を見て頭巾が「入ってた袋、持って行ってかまいませんよ。」と言うとそちらに移し始めた。
「あら、割と真面目に仕分けしたのね。これなんていつか霖之助さんに食べさせたら追い出された奴じゃない?」
霊夢はそういって一つ、茸を指差す。
「頼まれた仕事はちゃんとするぜ。ああ、ちなみに教えといてやるとこいつはまあ確かに食べられなくは無いが多少の幻覚作用があるんだ。」
「へぇ、流石魔理沙さんですね。」
「こっちの妖怪に食わす分には問題ないんじゃない?」
「できませんよ、一応商売なんでそういうのは出せません。まあ確かにここの方々は多少そういう作用があっても気にしなさそうですが・・・」
「試しに食ってみればどうだ?うまいぞ~?」
頭巾が「お断りします。」と言うと魔理沙は「そーか、つまらんな。まあ食うって言っても、もう私の物だからやらなかったけどな」と言って笑う。
霊夢達ののんびりとした談話が続く中、そこに暖簾をくぐる影が二つ
「お邪魔しますよ。」
「こんばんは。店主さん・・・あら、貴女達は」
ここで現れたのは地獄の最高裁判長、四季映姫ヤマザナドゥと地霊殿の主、古明地さとりの二人であった。
「こんばんは、お久しぶりですね。前あった時は夜雀の屋台でしたか。」
映姫は頭巾に向かって声を掛ける。頭巾は二人に「こんばんは、いらっしゃいませ。」と声を掛けた。
「んん~、わからなくもないが嫌な組み合わせだなあ。」
と、魔理沙。ここが旧地獄であり、地獄を管理する閻魔である映姫がここにいて、さとりと知り合いであってもおかしい事ではない。
「休暇だったのでこちらの様子見がてら、ね。貴女達も久しぶりですね。ちゃんと善行は積んでいますか?」
「どうかしらね?・・・というかこいつには聞かないの?」
霊夢はそう言って頭巾に指を刺す。映姫はすぐにはそれに答えず、カウンター席の霊夢達の隣に座る。座ったところでその隣にさとりが腰掛ける。そして、頭巾は二人にお茶の入った湯呑みを出す。すぐに注文が来ないと判断したようだ。品書きはカウンターの内側に用意されるだけだった。
「彼の場合は貴女達とは少し違いますからね。今のまま善行を積んだところで変わらないですから。」
「んん?どういう事だ?閻魔が贔屓でもするのか?」
「・・・言葉の通りですよ。彼が今からどんな善行を積もうが人が死んだ後の行き先などないのです。」
「それだけ業が深いって事?とてもそうは見えないけど・・・」
霊夢が茶をすすりながら頭巾を見る。頭巾は先ほど霊夢達に出した物と同じ豚汁を映姫とさとりに出す。
「・・・少し違うようですよ。私がここにいる事がヒント、ですかね。」
ここでさとりが口を開く。
「あー?さっぱりわからないぜ。覗きでもしたのか?」
「あらあら、店主さん。悪趣味な方だと思われてますよ?・・・それは私も同じ?ふふ、私は自覚ありますからね。」
さとりは一人、頭巾の方を見てくつくつと笑う。頭巾はため息をつき、軽く苦笑いを浮かべた。
「そうではありません。彼の場合は・・・」
と、ここで映姫はちらりと頭巾の方を見る。頭巾が「かまいませんよ」と言ったので映姫は言葉を続ける。
「彼は、"心"を捨てたのです。人が人たる為に必要な"心"を。」
「心を?やっぱりわからんな。心を捨てたらこう・・・ぼーっとしたりなんかこう・・・というか人形みたいになったりするんじゃないのか?」
「心のすべてを捨てたわけではありません。彼の場合・・・やめておきましょうか、これは関係ありませんね。ようは彼にはもう人としての死後など存在しないのです。生き物がその生き物としてあるべきために必要な物を捨て去るというのはこの世で最も残酷で重たい罪、到底拭える物ではありません。」
映姫がそう言った所で、魔理沙は「ふぅん、まあいいや」と言って手元の品書きを見始めた。映姫がこれ以上語る気がない事がわかったのだろう。霊夢も魔理沙の持つ品書きを横から覗き込む。映姫とさとりには頭巾からそれぞれ品書きが渡される。
「決まったら言ってくださいね。あ、あと今日は豚汁がサービスで付きますよ。おかわりも・・・まあ良識的な範囲でなら構いません。」
言って頭巾は映姫とさとりにそれぞれ豚汁の入った茶碗を渡す。大きな鍋で作られたそれは、火から離れてすこし立ってほどほどの湯気が立ち、湯気がその香りを持ち上げる。
「あらあら、相変わらず気前が良いことですね。それでは私は・・・筍ご飯と天ぷらの盛り合わせをお願いします。お酒は・・・天ぷらが出来た時にお願いします。」
「それじゃあ私も同じものをもらいましょうか。」
「二人はどうします?」
霊夢達の方を見て尋ねる。すでに天ぷらの準備にとりかかっている様子だ。
「ん~?夜雀の屋台と結構違うんだな。お勧めはどれだ?」
魔理沙が聞き返した。
「さとりさん達が頼んだのが今日はお勧めですかね。」
「じゃあ私はそれでいーぜ!」
「私もそれでいいわ。」
「かしこまりました。」
衣の準備が出来たところで、頭巾は大きな炊飯釜へ向かう。釜の蓋を取ると、大量の湯気が一気にあがり、辺りがだし醤油と筍の合わさった香りに一気に覆いつくされた。
「ん~、やっぱりいいな、筍ご飯ってのは。なんだか見ても食べてもないのに涎が出てきたぜ」
「そうねえ。お汁にもあいそうだし。」
頭巾は、釜の上の方にあるニンジン、油揚げ、筍などの具材を少しおひつに取り出して、残りの具とご飯を釜の中で混ぜる。混ぜ終わった後、必要な分を先のおひつに取り出して、先ほど取り出しておいた具材は少し御櫃に残してまた釜に戻して蓋をした。そして、おひつのご飯を茶碗につぎ、その後先ほどとっておいた具材をその上に飾り付ける。
「あらあら手早いですね。・・・これはまた綺麗に盛り付けましたねえ。」
そうして手元に来た筍ご飯を眺めてさとりは感心する。茶碗には、薄切りにされた筍が真ん中に数枚綺麗に並んでいて、その周りを油揚げとニンジンが綺麗に彩っている。その様子は、ほぼキツネ色と赤の二色なのに、とても綺麗に映る。
「ええ、なんだか食べて崩すのが勿体無い。ああ、でもいい香りです。」
映姫は鼻をすんすん、とさせて香りを楽しむ。
「おいおい、さっさと食べようぜ~。香りと見た目じゃ腹は膨れないからな。腹が減るだけだ。」
言って魔理沙は箸を構える。
「そうね、それじゃあ頂きます。」
霊夢が挨拶をしたところで、4人の食事は始まった。
「んむぁ~、こりゃあ本気でうまいなあ。おい店主!豚汁くれ!」
魔理沙は先ほど空にしていた豚汁の茶碗を頭巾に渡す。頭巾は天ぷらの衣をつけている所だったが、一旦中断して、豚汁のおかわりを用意する。
「これだけ美味しいと、食べ過ぎてしまいそうですね。」
映姫がそう言うと、その横でさとりが「そうですねえ。」と、相槌をうつ。
「ねえ、こっちはおかわりは・・・」「流石に払うもの払ってもらわないと。」
霊夢が尋ねると、すぐに頭巾の答えが返ってきた。
「ところで今日はあのサボり死神はいないのか?」
「ええ、今日は私だけですね。彼女は最近少しまたサボりが増えてきたので今日はしっかり働いてもらっています。」
「どうかしらねえ。今頃またサボってるんじゃない?」
「ふふ、でもその死神さん、優秀みたいですね。随分と信頼されているご様子で。」
「な・・・なななっ!?何をっ」
映姫が少し赤くなる。
「ふふふ、閻魔様、思念がだだ漏れでしたよ?」
さとりは相変わらずいやらしく、くすくすと笑う。
「あら、あんた閻魔の心も覗けるの?ですか?ふふ、今回は特別ですよ。普段は読めません。ああ、大丈夫ですよ、今日は別に貴女達の心を深くまで覗く気はありませんから。」
霊夢の方を見てさとりは言う。それを聞いて霊夢は「便利な能力だこと。」と、一言で片付けた。
「それじゃあ閻魔も今日は説教はなしだな!」
「・・・まあ、いいでしょう。少なくとも今は。」
「なんだか良い予感はしない言い方だぜ」
「天ぷら第一便、あがりましたよ~。皆さんお酒はどうします?」
ここで頭巾が4人にそれぞれ天ぷらの盛られた皿を配っていく。皿には、筍、南瓜、大葉の天ぷらが盛られている。
「おお~、そうだな。酒は・・・任せるよ。これに合いそうなの出してくれ。」
と、魔理沙。霊夢やさとり達も同様のようだ。
「すぐに用意しますね。」
頭巾はそういうと徳利とお猪口を用意し徳利に酒を注ぎ、それぞれに配る。
「・・・そうだ。霊夢さん、これ」
一段落したところで、頭巾がカウンターの下から何かを取り出して、霊夢に渡す。渡したあとまた何か準備をしているようだ。
「何それ、財布?なんか憑いてるじゃない。」
霊夢がそれを一瞥すると、一言で切って捨てた。
「この間外の世界の人が地底に迷い込んで来てしまいまして、その人の落し物・・・まあ遺品なんですけど」
「あらやだ、死体漁りまではじめたの?」
「どっかの道具屋みたいだぜ。ああ、あいつは墓漁りか」
「違いますよ。その人、死ぬ前に少しここにいたんですけれども、どうやらその時に落として行かれたみたいで・・・、外のお金が入っているようですし、自分で持っていてもその内紫さんに持っていかれそうですし、かといって捨てるのもアレですし。」
「その方随分とお金に執着していたようですね。死ぬ前も死んだ後もお金の事・・・どれだけ金を積んだところで、死後の判決に関係などないというのに・・・。」
「でも死んだ後も、どの道閻魔様のところへは行けないようですね。死体はお燐が運んだみたいですから・・・怨霊となってそこらへんをさまよっているのでしょうね。」
「ほー、まあそんなのは良いから早く食べようぜ。死体の話なんてしても腹は膨れないし楽しい気分にもなれないんだぜ。」
「それもそうね。まあ、ちゃんと供養しておくわ。」
そう言って霊夢はそれを受け取った。
「さて、ああそうそう。これも出そうと思っていたんだ。」
そういうと頭巾はまた何か取り出す。魔理沙はまた一旦箸をとめて「まだあるのかよ・・・」と少し渋い顔をした。
「これ、炒り塩です。これかけて食べてみてください。塩だけでも酒が飲めますよ。これは」
言いながら小さい器をそれぞれに渡していく。
「おお、いいねえ。」
魔理沙は早速それを一つまみ天ぷらにふりかける。白に近い狐色の天ぷらに、しっかりとした狐色の炒り塩がかかる。そしてここでようやく皆が天ぷらに箸をつける。
「ん~っお酒の香り?ああ、酒に混ぜて炒ったの?これは美味しいわね。」
霊夢は塩を少しつまんでそのままそれを舐めて感想を述べる。
「早いもの勝ちみたいですねえ。これ、あんまりたくさん作るのは大変みたいですね。」
「ええ、本当にお酒にも合うし・・・ああ、美味しい。」
「筍ご飯にも合うわねえ・・・これ。」
霊夢はご飯と天ぷらをあわせて食べる。
「なんだとっ!?しまった!ご飯もう残ってないぞ!霊夢ぅ~、ちょっと分けてくれよ~」
「嫌よ。魔理沙が全部食べちゃうのが悪いんでしょ。」
「あら、私に来ますか?私も嫌ですよ。」
魔理沙がさとりの方を向く前にさとりは答える。隣で映姫も「隣に同じです」と言い切る。
「しょうがない。おい店主!おかわり頼むぜ~。金くらい払ってやる。」
頭巾はそれを聞いて「はいはい」といいながら茶碗を受け取り釜から一膳ついで魔理沙に渡す。
「さて、天ぷらの第二便ですよ。前から失礼しますね。」
魔理沙に茶碗を渡し終えた後、頭巾は手元のざるを持って霊夢から順番にそれぞれ天ぷらの皿に追加を乗せていく。追加は椎茸、そしてふきのとうの天ぷらである。全員に配り終えたところで頭巾は一旦肩をぐるぐる回して着物の胸元をはたはたとさせる。揚げ物をして少し暑くなったのだろう。
「・・・さて出たばかりで悪いですが、私はそろそろ戻らないと・・・。もしよろしければこれ、何かに詰めていただけますか?」
言って映姫は立ち上がる。頭巾は「はい、それでは少しお待ちください」と言って映姫の皿を下げて、残っている天ぷらを容器につめ始めた。
「ん?もう帰るのか?」
魔理沙が尋ねると映姫は
「ええ、先ほど言われたように部下が心配ですからね。なんだかまたサボっているような気がして・・・明日からの準備も必要ですし。」
「小町さんですか、懐かしいですねえ。上で働いていた頃はちょいちょいお店に来て頂いてましたねえ。・・・はい、おまけもつけておいたのでご一緒にどうぞ。」
頭巾は映姫に紙袋を手渡す。映姫が中を確認すると笹の皮が見える。どうやらおにぎりが入っているようだ。
「ああ、わざわざ有難うございます。それでは・・・ああ、それではお礼がてら最後に一つ・・・。決断は、早いほうがよいですよ。」
そういい残して、映姫は去っていった。
「しかし、店主さんは結構顔が広いみたいですねえ。死神さんやら閻魔さんやら。・・・この仕事をしていると、色々な方と知り合える、ですか。ふふ、そうみたいですね。あら、私も?・・・そうですね。」
「しれっと心を読んだり読まれたりすんなよ。嫌じゃないのか?」
魔理沙はさとりと頭巾のやりとりを見て言う。やりとりと言っても喋っているのはさとり一人だが。
「慣れましたからね。普段は結構いじめられてるんですよ?」
そう言って頭巾は笑う。
「あら、退治した方がいいかしら?今日のお礼に、サービス価格で。」
霊夢が札を構える。
「冗談、うちのお客さん減らしてどうするんですか。」
頭巾はそう言って笑う。
「あらそう?残念。」
「あらあら、私だってやられてばかりでもないんですよ?店主さん。」
「・・・試してみる?」
霊夢は一度しまいかけた札を再び取り出す。
「ふふふ、でも今日はやめておきましょう。店主さんもお困りみたいですし。」
さとりは言ってくすくす笑う。
「わかってるならふっかけないでくださいよ。貴女も大概喧嘩好きですよね。」
「どこかの鬼みたい、ですか?ふふ、こちらの方々は結構好戦的ですからね。まあ地上も大差ないでしょう?」
「うん?呼んだかい?」
ここで新しく暖簾を潜る影が一つ。地底の鬼、星熊勇儀だ。うわさをすればなんとやら。である
「あんたか、鬼は神社にいるのでもう間に合ってるんだぜ。」
「はっは!酷い言われようだね。ねぇ?萃香。」
勇儀は笑った後、そのもう一人の鬼の名を呼ぶ。
「ありゃ?ばれてた?」
ここで屋台の中に一人、子供のような人影が一つ、現れた。もう一人の鬼、伊吹萃香である。
「そりゃわかるさ。」
「勇儀さん、萃香さんいらっしゃいませ。食べて行きますよね?」
「「当然」」
「今日はいつにもましていい匂いだったからついつい釣られてしまったよ。」
勇儀は頭をぽりぽりとかく。
「筍ご飯、うまいぜ~」
魔理沙は言って茶碗を見せ付ける。
「本当だ、こりゃうまそうだ。これ頼むよ~。あと天ぷらもね。」
勇儀はそれを見て注文する。霊夢達の皿も見て決めたようだ。その後席につく。先ほど映姫が座っていた席だ。
「私も同じの頼むよ。」
萃香も勇儀に続き、その隣に座る。
「今日も賑やかになりそうだなあ。」
勇儀達に、豚汁を出しながら頭巾はそう呟くのだった。
地底からの帰り道、四季映姫は一人呟く。彼女が地底に来た理由。それは二つあった。一つは灼熱地獄跡の様子見、そしてもう一つは・・・
「そう、早いほうがいい。これ以上遅くしたところで彼には何の得もない、それなのに彼はなぜそうしないのでしょう。古明地に尋ねればわかった事でしょうが・・・私が見たところ、未練がある訳でも、抵抗がある訳でもないというのに。」
手に抱える袋の温かみを感じながら、映姫は少しだけ早く飛ぶ。冷める前に帰って小町と食べよう。そしてもしサボっていたら食べた後に説教をして・・・そんな事を考えながら。
どんな結末になるか、楽しみにしています。
風呂敷の畳み方は色々あるのです。
ご自分で納得の行く畳み方を。
ご馳走様でした。